2012年12月17日月曜日

グーグルが提供するクラウドサービス

 このブログを書き始めてちょうど1年になりました。今年は閏年ですので、毎日、欠かさず書きましたので、このブログで366本目となります。このブログは、何を使っているかといえば、グーグルが提供するBloggerというブログサービスです。
 ブログを始めるまでは、検索以外には、グーグルドキュメント(現グーグルドライブ)をよく使っていました。それは、クラウドサービスというものが、どのようなものなのかを知るためのものでした。それと、もう一つも理由は、ウィンドウズとマックという2以上のシステムがある場合に、データをどうすれば効率的に扱うことができるかを確かめたかったからです。そうして、グーグルドキュメントを使って、検索した結果などを色々と文章へと綴っているうちに、書いたことはネット上で公開されてこそ、価値があるのだという考えが私の中で芽生えました。そして、ブログを始めるに至ったのです。
 このグーグルが提供するブログサービスは、非常に使い勝手がよく、安定性においても素晴らしいものでした。このようなデータを喪失せず、かつ安定的に操作するノウハウは、一体どこから生まれたのでしょうか。そして、私のブログを含めて他にも多く存在するブログの膨大なデータを世界規模で取り扱うことのできる日本企業は存在するのかという疑問も生じされるほど、1年を通じて非常に安定して作業を進めることができました。快適の一言です。決して全ての機能を使っているわけではありませんが、ブログ作成中は動画なども貼ったりして、非常に面白かったという感想ばかりです。最初は、使い始めたばかりのMacの操作に不明な点が数多くあったものの、現在ではブログを作成するに当たっては、iPad、iPhone、ウィンドウズパソコン、そしてMacを総動員しています。一番良かったのは、Google Cromeがインストールされていれば、マックであろうと、ウィンドウズであろうと、リナックスであろうと、自由にワープロ感覚でブログを作成できる点です。

 ブログのテーマは「経済問題を考える」でしたが、ややそれた感は否めません。そして、数はまずまずだと思うものの、やはり時間が限られているため、掘り下げた内容が少なく、浅く、広くという結果となりました。次ぎの1年も同じスタイルで書き続けるかどうか悩んでいました。すると、会社からの業務命令で、ある試験を受けるということになり、試験への準備を進める必要性から、このブログの書き続けるペースを落とさざるを得なくなりました。やや残念な感はありますが、休止はしないつもりではいます。ブログが完全に再開できるのは、3月末以降になります。しかし、復活するに当たっては、「広く、浅く」ではなく、「広く、深く」へとバージョンアップしたいと考えています。それと、いつも試験勉強をしている訳ではありません。試験も2月、3月と時間的にもやや余裕がありますので、ペースはやや落とす予定ではありますが、ブログは書き続けるつもりでいます。上図は、実際をブログを綴っている時のパソコン画面です。
 このような機会とツールを提供してくれたグーグルには感謝です。タダほど怖いものものはありませんが、同社には今後も素晴らしいツールの開発して頂きたいと思っています。グーグルのクラウドサービスには、このBloggerやグーグルドライブの他にも数多くあります。データベースを提供するGoogle App Engineなども有力なツールであり、以前チャレンジしたことがあります。しかし、日本語の参考文献が少ないことで挫折しました。時間ができれば、また、チャレンジに向けて準備をしたいとは思っています。クラウドサービスは、グーグルで初めてどのようなものか知りました。現在では、先駆けであるアマゾンに追随し、マイクロソフトやアップルも参入しています。
 他のブログ作成ツールは使ったことはありませんが、Bloggerは、ブラウザを使ってワープロ感覚でコンテンツを作成できます。これは、アカウントさえあれば、パソコンと場所を選ばないという利点があります。つまり、完全にクラウドサービスであり、Google Chromeなどのブラウザが、パソコンにインストールされていれば、どころでも、いつでもブログを綴ることができるのです。今後、Bloggerのサービスに期待するのは、現在よりもリッチなコンテンツを作成できるようになることです。数式エディタやグラフ作成ツールなどが追加されれば便利です。特に数式を利用できれば、ブログをより学術的な内容へとパワーアップできるでしょう。

2012年12月16日日曜日

わが国のエネルギー政策、カギを握る米国からの天然ガス輸入

 原発再稼働が、スムーズにいくかは、衆議院の選挙に左右されるといえます。もっとも、2012年12月7月に発生した地震により3月11日の悪夢がよみがえり、地震が多い日本にとって原発に依存したエネルギー体制には限界があることを思い知らされました。しかし、一方で地球温暖化の問題は待ったなしの状態にあり、二酸化炭素の排出量抑制に向けた施策も求められています。夏の北極圏の海氷面積は確実に小さくなっており、近年頻発する異常気象も地球温暖化による影響であると思われます。
 農業生産には、気候が安定していることが前提になります。気候が急変動した場合、作付けした農作物が、成長期、収穫期等に打撃を受けることで十分な収穫量が得られないことがあり、干ばつはもとより、多雨でも影響を受けるのです。人口が急増している中で、食料在庫も低水準にある今、気候変動にもっと注視する払う必要があるといえます。こうした中で、11月26日にカタールのドーハで国連の気候変動枠組み条約の第18回締約国会議(COP18)が開催されました。先進国だけが温暖化ガスの排出量削減義務を負った京都議定書から、全ての国が同じ枠組みの中で協力し合う新体制へと移行する転換点となる会議として注目されています。当初は、新体制の工程表づくりが主たる議題であるため、それほどの利害対立はないと予想されていました。しかし、温暖化対策などに使う資金支援の面で協議が難航しました。温暖化ガス排出での先進国と途上国の対立は厳しくなる一方で、景気後退が長引き、環境問題を無視した、経済効率重視へと各国政府が重点を置いている気がします。そうした中で、新エネルギー、シェールオイル、シェールガスなどの登場によりエネルギー政策は根本から考え直す時期が訪れているようです。
 米国では、近年開発されたシェールオイル・ガスにより化石燃料の輸入大国から輸出大国へと姿をかえようとしています。右図は、BPホームページ掲載されているデータより作成した天然ガスの生産量の推移を示しています。90年以降より5,000億㎥強で推移していた生産量は、2010年には6,041億㎥、2011年には6,513億㎥へと急増、2012年にはさらなる増加が予想されています。しかし、産出量の急増により、米国での天然ガスの価格は大幅に下落しており、日本が購入するLNGと比べて5分の1にとどまっています。このため、米国では、日本などへの天然ガス輸出を視野に入れたエネルギー政策の転換が注目されています。
 2012年12月7日付日本経済新聞朝刊には、米国産に天然ガス輸入に関する記事が掲載されていましたので紹介します。日本が輸入するLNGの購入価格は、100万BTU(英国熱量単位)あたり15.4ドルであるのに対して、米国では3ドル台後半だそうです。液化、輸送コストを踏まえても、米国からの輸入は10ドル前後で済むとのことで、商社、電力会社、ガス会社は、独自に輸入計画を策定、安い米国産の天然ガス輸入を実現とともに、カタールなど主要輸入国との価格交渉を優位に進めるという思惑があるようです。記事の題目は、『米産ガス輸入へ前進。エネ省、来春にも許可の見通し。火力コスト抑制、期待』です。以下引用文。
 『【ニューヨーク=小川達也】米国からの液化天然ガス(LNG) 輸入が実現に向けて前進した。米エネルギー省は5日、これまで制限してきたLNGの輸出拡大が「米国の利益にかなう」とする報告書を公表。来春にも同省が輸出を許可するとの見通しが出てきた。割安な米国産を輸入できれば、火力発電の燃料費負担増に歯止めをかけ、電気料金の上昇抑制につながる可能性がある。
 新型の「シェールガス」の採掘技術が確立した米国では、天然ガスの生産量が急拡大ししている。米政府は自由貿易協定(FTA)を結んでいない国への輸出を厳しく制限しているが、日本を含む「非FTA国」からの需要は強い。エネルギー省は昨年5月、当時はまだFTAが発効していなかった韓国などへの輸出計画を初めて許可した。
 だが「輸出が増えれば国内のガス価格上昇につながる」との不満が消費者や産業界から高まり、15件以上申請されていた輸出計画の審査をいったん凍結。中立の専門機関に委託して影響を分析してきた。
 5日の報告書は輸出の利点を強調しており、輸出拡大にお墨付きを与える内容だ。エネルギー省はこれを受け、凍結していた計画の審査を再開する方針を示した』

 1973年の第1次オイルショック発生当時、私は子どもながらエネルギー資源の枯渇に関して恐怖を抱きました。それは、30年後にはエネルギー資源はなくなり、経済的な打撃を受けるという内容のものでした。それから40年近くがたった今でも、石油、ガスなど化石燃料の埋蔵量は増え続けているのが実情です。技術進歩の凄さには敬意を表するものの、化石燃料の消費に歯止めが掛らなくなっています。上表でのシェールガスの米国での資源量は、750TCF(兆立方フィート)です。100立方フィート=2.8317㎥ですので、単純計算で21兆㎥です。2011年の米国における天然ガスの産出量が6,000億㎥であることから、予想量は意外と少なく約35年分となります。しかし、今後も技術開発の進歩、埋蔵地域の発見により増加することが予想されることから、既存の天然ガスの加えると、米国のエネルギー事情は当面は自給率が上昇することが期待されます。皮肉にも地球温暖化の結果、北極圏の海氷が解け、北極圏での石油・ガスの開発も視野に入ってきています。人類は永遠に化石燃料を掘り続ける勢いでようとしているのです。しかし、経済重視、環境軽視のエネルギー政策により、しっぺ返しを受ける可能性は十分にあり、今年の干ばつによる穀物受給の逼迫は、それを物語っている気がします。

2012年12月15日土曜日

銀行融資に回復の兆しがある米国と日本の現状

 金融は「経済の血液」とも呼ばれ、個々の主体が円滑な経済活動をする上で大切な働きをしています。その中核にあるのは、銀行であり、銀行の健全性は、経済の健全性を指す指標であるのです。日本の銀行は、金融危機を脱する過程の中で、徐々に回復傾向を示す一方で、2008年9月に発生した金融危機をきっかけに欧米の銀行が業況を悪化させたことで、大手銀行の格付けでは逆転現象が起こっています。

 こうした中で、日本の銀行(邦銀)の活躍の場が国際金融市場で広がっています。イスラム金融、資源開発、貿易金融などの分野で、邦銀がプレゼンスを高めており、新聞紙上でも、邦銀の活発な活動を示す記事が賑わしています。2012年12月11日付日本経済新聞夕刊にも、トルコの海峡トンネル事業で、融資の主導をとって三井住友銀行が、欧州や韓国の公的金融、トルコの地場銀行と組み、総額10億ドルのプロジェクト融資を実施する旨の記事が掲載されていました。それでは、この華々しい邦銀の活動は、日本国内ではどうなっているのでしょうか。リーマン・ショック後、大きなマイナスを記録した後、ややマイナス幅が縮小、2011年下半期は何とかプラスへと転じました。物価下落が進行している日本国内では、資金の借り入れ手は、実質的な負担額は大きくなります。この状況下で、銀行にとって貸出金は伸ばすどころか、借り入れ側から常に一定額が返済されているのです。従って、景気後退に入った現在、邦銀が国内で貸出金を継続的に伸ばすことは困難な状況下にあるといえます。この点においても、デフレ経済から脱却できない、わが国経済の実情があります。


 一方、世界最大の経済規模の米国ではどうなっているのでしょうか。米国経済は、失業率が高止まっており、「財政の崖」の影響で景気後退局面へと突入することが危惧されています。しかし、人口が着実に増加している米国は、月間15万人程度(注)の雇用の場が提供されない限りは、失業率はどうしても上昇してしまいます。一方で、この人口増加は、米国経済の最大の強みでもあり、世界経済のリーダーであり続ける原動力となっています。そして、米銀の融資の増加傾向が鮮明になっており、日本とは異なった方向へと動き始めました。人口が増加していることは、持ち家や自動車への持続的な需要拡大が見込まれるため、融資残高がある一定水準にまで低落した段階で、どうしても揺り戻しがあるのでしょう。米銀の融資に関する記事が、2012年12月11日付日本経済新聞夕刊に掲載されていましたので紹介します。以下引用文。

 『【ニューヨーク=蔭山道子】米国で銀行融資の増加傾向が鮮明になってきた。米銀の9月末時点の融資残高は前年同期比3.7%増の7兆4106億ドル(約610兆円)だった。2009年6月末以来3年3ヵ月ぶりの高水準。企業向けの順調な伸びに加えて、家計向け融資も2四半期連続でプラスとなった。金融危機後の貸し渋りが収束し始めた可能性もあり、米景気が底堅い一因にもなっている。(中略)
 家計の借り入れ需要が伸びている様子は、米連邦準備理事会(FRB)が7日発表した10月の消費者信用残高からもうかがえる。同残高は前年同月比6%増の2.75兆ドルとなった。銀行が徐々に融資基準を緩め始めた結果、自動車やクレジットカードのローンが借りやすくなり、個人消費を下支えしている可能性がある。
 ただ、銀行の審査基準の緩和が遅れる住宅融資は伸び悩む。住宅の新規購入ローンや借り換え、持ち家の含み益を担保とするローンなどを合わせた残高は2.45兆ドルで0.3%減った』
 日本では、消費者金融に対する規制が強化されています。借り入れ残高は、年収の3分の1以下に抑えることが義務付けられました。これは多重債務者問題を解決することを目的としていますが、そうでなくても消費が弱い日本経済にとってプラスかどうかは甚だ疑問であるといえます。私は、日本経済にとって最大のネックは政府の債務残高であると考えています。国債の発行残高が急増する中で、この消費者金融に対する規制は、私にとっては、銀行に集まった資金が円滑に国債へと振り向けるための施策にしかみえません。一方、米国では、消費者によるダイナミックな消費が続いています。借金ばかりする米国の消費者が決してベストとは考えていません。環境のことを完全に無視し、派手にプレゼントやパーティーをやっている姿が、テレビ画面から映し出され、「米国人=過剰消費」というイメージをどうしても持ってしまいます。格差社会が進んでおり、全ての国民が、豊かな状態とはいえないのが今の米国ですが、日本と比べて根本的に違っているところがあります。それは、米国人は、将来に対する見方が楽観的であること、国の代表者である大統領を自らが選んでいることです。わが国では政治の混乱が長年叫ばれ、将来に対する希望を失いかけている若者も多い気がします。日本にとって、米国から学ぶことはまだまだあるのです。
(注)ベビーブーマーの高齢化により減少が示唆されている。

2012年12月14日金曜日

米国の量的緩和の強化とFRBの資産規模の膨張

 日本では、衆議院選挙の最中、日本銀行による金融緩和の強化を訴えている政党があります。日銀による、これ以上の金融緩和にはやや無理である感があるとともに、その効果は小さいという判断でいました。ところが、円相場が円安方向へと進み、選挙後をにらんだ投機的な動きなのか、貿易赤字の定着、経常収支の黒字幅の縮小を反映して、実需の円売りが進んでいるのかは、現段階では不明ですが、少なくともアナウンスメント効果はあったようです。

 一方で、高止まりする失業率に悩まされている米国でも、米連邦公開市場委員会(FOMC)よる一層の量的緩和の強化が決定されました。今回のサプライズは、金融緩和に、失業率を6.5%程度まで低下させるという政策目標が設定され、低下した時点で緩和政策を縮小するとしたことです。米国でも、リーマン・ショック後の財政赤字の拡大は、問題視されており、債務残高が急増した結果、金融政策に過度に頼った政策しか打ち出すことができないのが現状です。いわゆる「財政の崖」を回避するため、民主党と共和党の協議が行われているものの、対立が根深く減税措置の期限が切れる年末に間に合わない可能性が高まっており、この一連の決定は、危機回避に向けた金融緩和の強化であると考えられます。

 FRBによる量的緩和策の効果的な手法として、短期の国債を売却し、長期の国債を購入するツイスト・オペが実施されていましたが、今月をもって終了します。これにかわって導入される新たな手法は、短期国債の売却を停止する一方で、引き続き長期の国債は購入し続けるとしており、FRBの資産の膨張が懸念されています。右図は、FRBホームページ掲載の"Flow of Funds"から作成したFRB(Monetary Authority)の資産残高の推移を示しています。リーマン・ショック直後から急増、期近の2012年第3四半期では、危機発生直前のほぼ3倍に当たる2兆5,000億ドルにまで達しています。この水準が適正かどうかを判断する国際的な指標はありませんが、米国の名目GDPは15兆ドル超ですので、FRBの資産規模は名目GDPの15%前後に当たることになります。日本の名目GDPが500兆円弱であるのに対して、日銀の資産残高が156兆円ですから、米国の量的緩和は、日本ほどではありません。しかし、基軸通貨国である米国の過度な金融緩和は、商品市場へと資金が流入し、過去にもインフレ懸念を生じさせる結果となっています。インフレ懸念は、長期金利を上昇させる原因になります。従って、今回のFRBの課題は、長期金利は上昇させない程度の規模まで国債を如何に購入するかであるといえます。
 2012年12月13日付日本経済新聞夕刊に、米国の量的緩和に関する記事が掲載されていましたので紹介します。この量的緩和には、1〜2年先の物価上昇期待が2.5%を超えないということが前提条件に入っています。日本とは違って、ただ単に緩和すればいいのではなく、インフレ率の加速を回避しながらの金融緩和ですので、難しい舵取りが必要となるのです。そして、大切なのは、バランスシートの拡大は一時的であるとし、政府の財政を助けることではないことを明記している点でしょう。記事の題目は、『米、量的緩和を強化。失業率に政策目標。6.5%程度まで』です。以下引用文。
 『【ワシントン=矢沢俊樹】米連邦公開市場委員会(FOMC)は12日の会合で、失業率が6.5%程度(11月は7.7%)に落ち着くまで事実上のゼロ金利政策を続けることを決めた。米連邦準備理事会(FRB)が失業率の水準を政策の目安にするのは初めて。毎月450億ドル(約3兆7000億円)ずつ期間の長い国債を買い入れる量的緩和の強化策も表明。矢継ぎ早の緩和策で景気と雇用を刺激する。(中略)
 バーナンキFRB議長は会合後の会見で、新たな失業率目標を導入した理由を「政策がどう発展していくかを知らせる意味で役立つ」と説明。失業率が6.5%を下回るのは15年半ばごろと見込んでおり、解除の目標時期は実質的に変わっていないと強調した。
 さらに「その水準に到達したら緩和的な政策を縮小し始めるという目安のようなもの」と述べた。6.5%に近づいたらすぐにゼロ金利を解除するのではなく、景気や物価を総合的に判断して決める姿勢を示した。
 また、FOMCは同日の会合で今月末にツイスト(ねじれ)・オペが終了するのに伴い、その後も米長期国債を現在と同じ額の毎月450億ドルずつ買い入れることを決めた。議長は「緩和状態を著しく拡大したとは考えていない」と語り、従来の量的緩和策を補強するとの認識を示した』

 短期の国債を売却しないことで、これまで以上に市場へと多額の資金が流れ込むことになります。この結果、目標とした15年半ば頃までに、FRBの資産がどの程度まで膨張するかが分からなくなってきました。また、住宅ローン支援のカギとなっている住宅ローン担保証券(MBS)を毎月400億ドルずつ購入、国債買い入れ策と合わせると、毎月850億ドル規模の量的緩和となります。米国での金融緩和は、穀物、金、原油などの商品市場へと資金が流入し、物価が高騰したことは記憶に新しいです。結果、米国の長期金利が上昇し、それに引っ張られる形で、ドル高傾向になりました。ドル高は、国際な展開をしている米国企業の業績の足を引っ張ることとなります。その影響を考慮した場合、過度な金融緩和は望ましくない施策であるのです。

 私は、金融政策に過度に依存した政策運営には否定的な見解でいます。それは、金融政策は、緩和の時ではなく、引き締めの時こそ効果を発揮するからです。金融緩和主導で景気回復を目論んでいた日本経済は、危機から20年たった今でも未だに明るい兆しが見えてきません。その点も参考しにした上で、米国は別の政策を選択した方が望ましいと考えています。

2012年12月13日木曜日

今後のカギを握るアジアの成長率の上方修正

 事実上、日本が景気後退へと突入したようです。ヨーロッパ経済もマイナス成長が続いており、「財政の崖」を迎える米国経済は、先行き不透明感が増しています。世界経済が景気後退に入るか、否かの崖っぷちにいる中で、期待されるのは、今や機関車役となっているアジア、特に中国、インド、ASEAN諸国の経済成長です。アジア諸国の特徴は、所得水準もまずまずの水準に達している上、人口規模も大きいことです。消費者の購買意欲が旺盛であり、自動車など耐久消費財などの需要拡大が予想されており、日本企業にとっても有望な市場となっています。
 右図は、アジア開発銀行ホームページ掲載のデータより作成した、アジアの主要国の一人当たりGDPを示しています。各国のデータの比較がしやすいように、シンガポールは除いていますが、同国は40,070米ドルに達しており、日本を凌ぐまでになっています。個別にデータみると、中国がタイを僅かに上回っていること、マレーシアが突出していることが読み取ることができます。しかし、人口規模も大きいパキスタンは1,050米ドル、バングラデシュは700米ドルと低い水準にとどまっており、成長著しいインドも1,270米ドルであることから、アジア諸国の中でも豊かな国とそう出ない国の二極化が進んでいるようです。

 こうした中で、東南アジアの経済成長率が上方修正されました。アジア開発銀行(ADB)発表によれば、10月時点の見通しと比べて、インドがやや下方修正、中国が変わらずとなる一方で、ASEAN主要5カ国であるシンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピンの成長率が上方修正されました。やはり、この中の本命は、インドネシアと私は考えています。人口増加が著しいイスラム教国の中でも、民主化が進み、天然資源だけに依存しない経済構造へと脱皮しつつある同国は、日本企業の有望な市場であるともに、生産拠点としての地位を高めることが予想されるでしょう。アジア開発銀行の経済見通しに関する記事が、2012年12月7日付日本経済新聞夕刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『東南ア成長率、上方修正。アジア開銀、今年5.9%予想。内需、輸出減を補う』です。以下引用文。

 『【マニラ=佐竹実】アジア開発銀行(ADB)は7日、2012年の東南アジア5カ国の実質国内総生産(GDP)成長率の予想を5.9%に上方修正したと発表した。欧州債務危機の影響で先進国の需要が低迷する中、強い内需が輸出の減少を補うフィリピンやインドネシアなどの底堅い経済がアジア全体の成長を下支えする構図だ。成長する内需を取り込むために進出する日本企業も増えている。(中略)
 東南アジア諸国連合(ASEAN)主要5カ国では、12年の成長率予想を10月の前回よりも0.3ポイント引き上げた。13年も5.8%へと0.1ポイント上方修正。欧州債務危機などを受けて輸出は減っているが、内需の強さがそれを補っている』
 記事を読んで驚いたのは、フィリピンの経済成長率が、中国と肩を並べていることです。先行するシンガポール、マレーシア、タイ、インドネシアと比べて、政情が常に不安定さがあったことから、やや出遅れていたフィリピンも成長軌道へと突入したようです。以前は、ASEAN諸国とのやや対立感がありましたが、円高を契機に日本企業が、国内の工場をASEAN諸国へと一斉に移転、工業国への脱皮が進み、世界経済の成長セクターへと登りつめたのです。そして、中国や韓国と異なり、日本は、ASEAN諸国とは良好な関係維持するとともに、領土問題もありません。これら諸国の成長は、日本企業にとってプラスであり、所得水準がより一層高まれば、EUのような経済統合へ向けた合意形成もできるかもしれません。インフレ、経常赤字、財政赤字などがネックとなり、インド経済に失速感がある中、世界経済にとって東南アジア諸国の持続的な成長は、希望の星ともいえるでしょう。

2012年12月12日水曜日

持ち直しつつ欧州経済とユーロ、株価の相場

 この1年を振り返って、世界経済を揺さぶったの第一の要因は、ユーロ債務危機といえるでしょう。ギリシャ危機が深化し、結局は国債のデフォルトにまで至り、混乱はピークに達しました。その後、欧州委員会、ECBなども対応が後手に回り、資金を拠出する側であるドイツなど豊かな国々と南欧など資金を受ける側であるスペインなどと間で対立が激化、ユーロ圏で経済規模第4位のスペインに危機が広がって時は、ユーロという通貨そのものの存続の危機が叫ばれるようになりました。
 この間、ユーロ相場は大きく値を崩し、ヨーロッパ圏に輸出している日本企業にも収益面で影響を与える事態にまで陥りました。中国も成長率の鈍化傾向を示し、主因はヨーロッパ向けの輸出の減少である示唆されています。もっとも、このユーロ相場も、7月を底に回復傾向を示し、ヨーロッパ経済に対する見方がやや良くなっているようです。暫定的な基金であるEFSFから移行する形で、常設のESM(欧州安定メカニズム)が、2012年10月に正式発足し、危機回避に向けた対応が着実に進んでおり、これを好感した結果かもしれません。
 株価も上昇傾向にあり、欧州の主な株価指数であるDAX(ドイツ)、CAC40(フランス)、FTSE100(イギリス)も、5月、6月当たりを底に回復傾向にあります。欧州債務危機に世界経済が引っ掻き回された1年です。欧州経済の回復なくして、世界経済の本格的な復調はなく、今後の動向が気になるところです。欧州経済に関する記事が、2012年12月9日付日本経済朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は、『欧州、じわり資金回帰。株・通貨・国債、トリプル高。債務危機「最悪期脱す」』です。以下引用文。
 『【ロンドン=松崎雄典】欧州金融市場に投資資金がじわりと戻っている。南北の経済格差などユーロ危機の病巣は深いものの、当面は分裂などの大混乱を回避できるとの楽観論が広がっているためだ。ドイツなど主要国がユーロ圏を守る姿勢を鮮明にして、まとまらない政治への「信頼の危機」はひとまず収束。株式や通貨、国債は、そろって高値圏にある。
 今夏ごろに風向きは変わった。欧州中央銀行(ECB)が「期間も量も制限する」としていた南欧国債の購入姿勢を変更し、満期まで3年以下の国債を「無制限」に買うことを打ち出した。
 南欧に緊縮や財政規律を強く要求したドイツも、追加支援や救済条件の緩和に柔軟になった。ギリシャ離脱の影響を真剣に議論し「ユーロ分裂を招きかねないとの判断から支援に積極的になった」(独運用会社)との受け止めが多い。
 ここ2年間で、財政規律を高める財政協定や銀行の資本増強、銀行同盟への取り組み、欧州安定メカニズム(ESM)の創設など、徐々に危機対策が進んだことも安心感につながる。ギリシャの経常収支が9月まで3ヵ月連続で黒字になるなど、南北の競争格差に改善の兆しも見える。
 信用リスクを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS、5年物)の市場で、独国債の保証料率は0.3%強と、米国債(0.4%弱)を下回る。一時は南欧の危機がドイツの信用力を揺るがしかねないとして、1%を上回っていた』 
 ESM、EFSFの資金総額は、7,000億ユーロにも及び、このうちドイツの負担額は3,000億ユーロです。一時は、独憲法裁判所で、ユーロ諸国に対する支援が違憲か、どうかが審議された。審議の結果が発表されるまでの間、今後の欧州債務危機はどうなるのか、世界から注目されました。最終的には合憲と認められ、それを受けてESMが正式発足に至ったものの、その対応の遅さには、いら立ちを感じました。ギリシャの債務危機は、恒例行事です。来年の春先当たりから危機再燃という事態を回避するべく、EU、ECB、各国政府は事前の対応が迫られているのです。

2012年12月11日火曜日

拡大が期待される自動車向け炭素繊維

 今年の9月、ボーイング787に初めて利用し、東京へ行きました。787は、機内に聞こえてくるエンジン音が小さく、座席にハイテク機器を装備、光量の調整機能が窓に付いているなど驚くことばかりでした。それまで、私が乗ったことがある機種がボーイング767やエアバス320などやや世代の古いものしかなかったため、いきなり最新機種であったことからビックリしたのでしょう。
 ボーイング787に乗った後、同機種にやや興味が持ったため、調べてみると、この機体には50%もの炭素繊維が使用されていることが分かりました。右図は、ボーイング社提供の資料で、787の素材別の部品を示したものです。炭素繊維が50%であるのに対して、アルミ20%、チタン15%、鉄10%にとどまっており、これからの航空機製造では、炭素繊維が主役になることが予感される事実です。当然、競争相手であるエアバスでも同様に炭素繊維を使った部品を中心とした機体が設計・製造されることが予想され、炭素繊維の分野で圧倒的なシェアを持つ日本企業の活躍する場が増えることが期待されています。
 とろこで、炭素繊維といっても色々とあるようです。原材料別ではPAN系、ピッチ系及びレーヨン系などがあり、1980年代からは異方性ピッチ系炭素繊維が加わり、日本の炭素繊維生産は、品質・生産量ともに世界一の実績を上げています。そして、炭素繊維は単独で使われることなく、セラミックス、金属などを母材として複合材料の強化及び機能性付与材として使用されるそうです。高化強度、高化弾性率など優れた機械的性能と低密度、低熱膨張率、耐熱性、化学的安定性、自己循環性など炭素を原料とした特徴を併せ持つことから、幅広い用途に使われます(注)。上図は、炭素繊維協会ホームページ掲載データから作成した炭素繊維の出荷状況を示すグラフです。リーマン・ショック後に大きく減少しているものの、2010年、2011年には成長軌道へと回復、今後は順調な拡大が期待されています。

 こうした中で、炭素繊維の使用でも、本命中の本命である自動車向けの炭素繊維製造に関する記事が、2012年12月2日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。炭素繊維への需要は、鉄などと比べてコストが高いことから、航空機など付加価値の高い最終製品に限定されると思っていました。自動車向けで用途が広がれば、今の炭素繊維市場とは比べることができない巨大な市場が目前に迫っていることを意味しています。記事の題目は『車向け炭素繊維量産。帝人、米でGMに供給。300億円投資』です。以下引用文。

 『帝人は鉄より軽くて強度の高い炭素繊維を世界で初めて自動車向けに量産する。米国に約300億円を投資し、2015年までに生産能力を4割拡大する。米ゼネラル・モータース(GM)が量販車種に採用する計画で、帝人はGMへの主力取引企業として契約を結ぶ。車体を軽くできる炭素繊維の採用は日欧勢も検討中だが、本格的に導入するのはGMが初めて。車の主要素材の座を巡り、鉄鋼、化学大手の競争に拍車をかけそうだ。
 炭素繊維は鉄と比べて強度が10倍、重さも大幅に軽い。米ボーイングの新型旅客機「787」の機体に東レ製の炭素繊維が採用され注目されたが、中長期的には自動車産業が最大の需要家になると予測されていた。
 GMと帝人は昨年提携し、量産技術の確立を目指していた。今回、GMが炭素繊維を使用するのは15年以降に発売する一般向けの主力車種。強度が必要な骨組みの「構造材」といわれる部品の一部を鉄と置き換える。車の見栄えに影響する車の外側部分についても採用を検討していくという』
 自動車に炭素繊維を導入することは、懐疑的に思っていた私にとって寝耳に水です。そして、炭素繊維といえば、東レという印象が強く、この記事で帝人も東レに肉薄する規模であることを初めて知りました。因に、東レの炭素繊維の生産能力は年間1万8千トンで、2位の帝人が1万3,900トンです。億トン単位の鉄とは規模が全然違い、自動車の分野で、どの程度が鉄から炭素繊維へと移行できるかのは不明です。鉄にも、事故を起こした際には板金塗装で簡単に修復できること、また、柔軟さという性質から、潰れることで人の命を救うというプラスの性質があります。一部にとどまるというのが、私の考えですが、GM、帝人の成功次第では、流れが大きく変わる可能性があるといえます。
(注)炭素繊維協会ホームページを参考。