2012年4月30日月曜日

大好きな"Glee"がHuluに登場

踊る合唱団で有名な"Glee"がついに映像コンテンツのストリーミングサービスを手掛けているHuluに登場しました。"Glee"のシーズン1の22エピソードだけですが、私は既にNHKのBSで放送されていた"Glee"のシーズン2を全て録画していますので、これでシーズン1、シーズン2全てのコンテンツが揃ったことになります。今、毎日、ブログを書きながら、この"Glee"をながらで観ています。私の好きな部分をベスト10を挙げるとしたら以下の通りです。

  1. "Don't Stop Beleivin' "を講堂で歌っているシーン(シーズン1エピソード1)
  2. "Don't Go Breaking My Heart"をレイチェルとフィンがデュエットしているシーン(シーズン2エピソード4)
  3.  "Jump"をマットレス店でみんなで歌って踊るシーン(シーズン1エピソード12)
  4. "Need You Now"をレイチェルとパックがデュエットするシーン(シーズン2エピソード11)
  5. "Valerie"を地区大会で全員で熱唱するシーン(シーズン2エピソード9)
  6. "Any Way Want it/Lovin' Touchin' Squeezin' "を州大会で熱唱するシーン(シーズン1エピソード22)
  7. "Silly Love Song"をバレンタインデーの慰めとしてみんなで歌うシーン(シーズン2エピソード12)
  8. "Light Up the World"を全国大会で熱唱するシーン(シーズン2エピソード22)
  9. "Dancing Queen"をサンタナとメルセデスが歌うシーン(シーズン2エピソード20)
  10. "Loser Like Me"を州大会で全員で熱唱するシーン(シーズン2シーズン16)
"Glee"は確かに面白いと思います。もっとも、これはコンテンツビジネスを核に添えた米国の企業戦略が世界を圧倒している姿でもあります。そして、この戦略に従って、米国のコンテンツを積極的に販売しているのは、アップルであったり、アマゾンだったりする事実が浮かんできます。また、マイクロソフト社が明らかな独占禁止法違反をしているのにそれを見逃した米当局の政策は、米国へと外貨をもたらす企業には甘いということを示しているのではないでしょうか。もっとも、"Glee"を観ていると、落ち目の米国がオーバーラップします。つまり、過去の遺産である名曲に再び価値を与え、再利用するという姿です。近年、Lady GaGa、Adeleなど新しいアーティストもどんどんと輩出している米国ですが、過去のアーティストと同列にまで定着するかはやや疑問が残ります。だからこそ、"Glee"という海外ドラマが生まれたのではないでしょうか。以下の写真はHuluのサービスに対応したソニーのBraviaの画面です。表示されているのは、"Glee"のエピソードの選択メニューです。見にくいのですが、"SONY"と"Hulu"のロゴと、「グリー」のエピソードが表示されています。

2012年4月29日日曜日

新しい造船のスタイル、バングラデシュ

私は、少額ですが様々の業種の株式を保有しています。その中には、鉄鋼、外食、電力、電機などの銘柄があり、それらの業種への勉強は自分なりにしています。また、今後、購入するであろう銘柄が含まれている業種についても熱心に調べものをしており、少なからず、このブログでも綴らしていただきました。大損害が出している吉野屋もそうですし、エネルギーに関するブログを書いているのも電力株やエネルギー関連株を保有しているからです。因に、アップルの記述は多いのですが、アップルの株式は持っていません。リーマンショック後に同社の株式が190ドルであった時、購入するかどうかで友人に相談したことがあります。友人いわく、割高だからやめた方がいいというものでした。そして、購入しない決定的な理由は、同社の株式が無配であったからです。結果は、みての通りで、その後、同社の株式は600ドル台へと急騰、しかも配当を復活するというものでした。私の投資活動の中での最大の失敗でした。
今日は、2012年4月25日付『厳しい日本の造船業』のブログの続きです。前置きが長かったのは、つまり私は造船業や重電の株式を持っていないため、造船業に関する知識が全くなかったことです。そして、聞き慣れない企業名がランキングする中で、今治造船グループが日本でナンバー1の造船業の地位に登りつめていたということをブログを書いて初めて知ったことです。株式の購入は限界がありますが、このブログについては幅広い分野について言及していきたいと思っていますので、今日も4月25日に引き続き、造船業について書かせていただきます。それもバングラデシュの造船業です。
2012年4月21日付日本経済新聞朝刊に、バングラデシュの造船業に関する記事が掲載されていました。この地域の経済発展は、世界における貧困撲滅の上で大切であること、4月17日付『インドの貧困問題』のブログで書きました。今日は、その続編ということで書かせていただきます。記事の題目は、『バングラ、造船台頭の芽、解体業が材料供給源に』です。以下引用文。
『南アジアでインドに次ぐ新興国と注目されるバングラデシュで造船業が台頭しつつある。新造船の納入先が国内から海外に広がり、2010年度の船舶輸出は前年度から4倍に増えた。世界3位の船舶解体業が一部再生材料を供給。政府も税制面で支援する。縫製業に次ぐ輸出産業に育てたい考えだ。(中略)
140ある船舶解体業者も原材料調達の面で支える。解体量は中印に次ぐ世界3位で、再生部材の国際価格に影響力がある。解体船から取り出す鉄鋼はインフラ整備や国内向け船舶に使われるが、船舶用ケーブルは輸出向け船舶にも使われ「造船業の成長を支えている」(解体業大手幹部)』
 全然、知らなかった事実です。日本では中古車の輸出が盛んで、ロシアやミャンマーなどへ輸出されています。このような話はよくニュースでも拝見しますが、まさか船舶の解体が産業として成り立っているとは思いませんでした。この地域の貧困率の改善が世界の貧困率改善へと結びつきます。マイクロファイナンスで有名な同国です。今後の発展が期待されるところです。右表は、国連の統計で、『世界国勢図絵』(矢野恒太郎記念会編集・発行)から引用した表です。確かに、日経新聞が指摘するように、衣類・繊維品・ジュート・綿花などの繊維関連の輸出が8割を超えています。同じ記事で、同国の貿易赤字を危惧していましたが、実は経常収支は黒字です。どうして黒字なのかは、経常移転収支が大幅な黒字だからです。経常移転収支とは資金援助や資金協力を示しており、富める国からの援助金によって何とかなっているのが同国の実情です。米国や欧州の経済危機の余波がバングラデシュの経済成長の制約にならなければと思っています。

2012年4月28日土曜日

厳しい日本の造船業

わが国の造船業が激変しているようです。かつて、わが国は造船業トップの地位を占めていた。1986年には建造量のシェアは、日本が49%であったのに対して、韓国22%、欧州12%で、中国に至っては2%に過ぎなかったようです。
 それが2011年は、右図が示しているように、中国がトップ、韓国は2位、そしてわが国は3位にまでランキングを落としています。そして、わが国の造船業に関して全くチェックをしていない間に企業の合併が進んでいるようです。JFEホールディングスと日立造船が出資し2002年に設立されたユニバーサル造船と、IHIの100%子会社であるアイ・エイチ・アイマリンユナイテッドが2012年10月に合併予定となっています。全く知らない名前のカナカナ名の企業ばかりになって、日本の半導体業界の代表格であったエルピーダメモリーやルネサスエレクトロニクス(業績が振るわない)のように衰退しなければとは思っています。そして、右表は、『週刊ダイヤモンド』2012年4月21日号に掲載されていたものをそのまま引用したものです。造船業のトップ3は何と韓国勢が抑えているということに驚きを感じます。日本は11位までに3社がランキングしているだけで、競争力の低下を示しています。同じ記事に今後の造船業に予想が記述されていましたので、引用します。
『08年のリーマン・ショック以降は、世界中で新造船の需要の動きが止まった。にもかかわらず、08年以前に受注した船舶が、これから2〜3年間供給され続ける。世界の造船業は、未曾有の"冬の時代"に突入するのだ』
そうでなくても、追いつめられている日本企業です。上記記事の内容はぞっとするものです。造船業に従事する企業は、三菱重工、三井造船、川崎重工業など総合重機系のものから、今治造船グループ、常石造船、新来島どっくなど専業系のメーカーがひしめき合っています。さらなる合併が必要であると考えられます。

2012年4月27日金曜日

ショック、米国でのBSE感染牛の発見

私の投資スタイルは、業種分散を第一に考えており、偏りがないことを自負していました。しかし、リーマンショック以降の株価下落で、ポートフォリオ全体と日経平均株価の下落との比較から考慮して、偏りがあることを思い知らされました。私の株式のポートフォリオには輸出関連銘柄もありますが、自らが消費者となっている企業を選択的に投資、企業を監視することで、よき投資家であり、よき消費者であるという立場を獲得することを目指していました。これは、企業統治の意味で、いいことだと考えていましたし、今でも株式を保有している企業が提供するサービスや商品に対しては十分に満足しています。
しかし、上記の視点で株式投資をした結果、私のポートフォリオにかなりの歪みがあることが判明しました。つまり、消費者サイドに近い企業が、必然的に多くなってしまうことです。日本企業の中でも、強力な競争力を依然として維持しているのは、ソニーやパナソニックなど川下の企業でなく、素材や部品を供給する、消費者の視点ではなかなかみることのできない川上の企業なのです。例えば、信越化学、東レなどは得意分野において世界シェアで他社を圧倒しており、今後も成長が期待できる一方、国内依存の会社などは、内需の縮小に伴い、成長余力が乏しいと考えられます。
そして、2012年4月26日付山陽新聞朝刊に私のポートフォリオの歪みをさらに痛感させる記事が掲載されていました。それは、米国において6年ぶりにBSE(牛海綿状脳症)の感染牛が確認されたことです。過去のブログでも何度か書きましたが、私は吉野家ホールディングスの株主です。半期ごとに送付される3,000円分の優待券が楽しみしていることは当然として、会社に出勤する前に朝食として牛丼を週に一度ほど食しています。牛肉を米国からの輸入に全量依存している同社にとって、これはマイナス要因となり、私の株式ポートフォリオは、さらにリスクを抱えることを意味しています。記事のタイトルは『米でBSE感染牛、TPPへの障害懸念』です。以下引用文。
『米国で24日、牛海綿状脳症(BSE)の感染牛が6年ぶりに確認された。過去の感染で牛肉輸入に大きな影響を受けただけに、米政府は安全性の確保を強調。日本政府も環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に向けた米国との事前協議で新たな障害の浮上を懸念する。互いの国内事情を背景に両政府は問題の火消しに走った。
「米国内の食肉流通や人の健康には何の危険もない」。BSE感染牛の確認を受け、ビルサック米農務省長官は米テレビ局をはしごし、米国産牛肉は安全だと繰り返した。食肉業界も素早く動く。米国食肉輸出連合会のセング会長は、日本をはじめ世界の輸出先に連絡し、「感染牛の発見は検査システムが機能している証拠だ」と訴えた』
右図、同記事に掲載されていたBSEの発生数の推移を示したものです。劇的に減少している一方で、全頭検査していない米国で、今回発見されたのは気になるとろこです。日本の場合には、コストがかかるものの、全頭検査しており、BSEに関しては安全性は確保されているといえます。一方、米国では、広大な食肉の肥育工場で、全ての報告が適切に行われているかは、工場の経営者でなければわからないところはあります。BSEの問題は、感染牛を食して、それが発症するのに10年単位の年月を要することです。これが、この問題を深刻化させている要因でもあります。
 そもそもは、BSEは牛の感染病ではありませんでした。羊特有の感染病であり、これが牛にまで広がった原因は、英国にあります。それは、羊の残った部分に中らかの加工をほどこしたものを牛の飼料として利用したためです。経済的には合理的であったこの行為は、世界の人々に食の安全性確保という最重要な課題を無視する結果となったのです。このような経済的合理性は、市場経済が支配する現代社会では随所で行われています。食の安全もさることながら、この原料がどのような過程を経て、目の前にあるのかは常に考える必要があります。例えば、チョコレートです。今では、バレンタインデイにはチョコレート(義理チョコを含めて)を女性からもらうというのが当たり前になっています。もっとも、アフリカなどの途上国にて、児童労働を通じてチョコレートの原料であるカカオが生産されているのも事実です(全てのカカオがそうであるとはいえませんが)。
 我々の生活は、どっぷりと市場経済につかっています。しかし、常に、我々は、消費する商品がどのような過程を通じて生産されたことを考えた上で消費するべきです。つまり、良識的な消費行動です。この消費行動を身につけていたのならば、上述したBSEの問題も回避できたのではないでしょうか。

2012年4月26日木曜日

再生エネルギーの買い取り

普段はこのブログを家で書いていますが、新たな発想もあるかと思い、今日は趣向をかえてドトールコーヒーにて作成してみます。もっとも、電池切れの可能性もあるため、やや少なめの文章で終わらせます。しかし、こうやって外出先でパソコンを使用し、Wi-Fiで接続し、自由にブログの作成ができる時代に感謝ですね。
今日のテーマはエネルギーです。国家戦略の根本は如何に安定したエネルギーを確保するかです。古代国家では、持続可能なエネルギーの確保に失敗し、国家運営が頓挫したケースは数多くあります。メソポタミアの古代国家でも、周囲の森林を伐採しつくし滅んだということが、NHKスペシャルの歴史ドキュメンタリーものでも、ちょくちょく紹介されています。ローマ帝国でも、公衆衛生上の必要から幅広く、公衆浴場が整備されていました。このエネルギー供給のために膨大な森林を伐採、現在の森林が少ない地中海諸国は、ローマ帝国の蛮行の傷跡ではないかと思っています。
米国は、その点を念頭に入れているのか、安全保障とエネルギー問題を戦略的に結びつけ、国家の将来のあり方について考えている姿勢がみられます。もっとも、イラクにまで手を出したのはやり過ぎでした。財政は疲弊し、現在の米国経済の惨状があります。もっとも、この事態を好転させている要因もあります。それは最近着目されている非在来型天然ガスであるシェールガスの存在です。この採掘が順調になれば、米国の経常収支の赤字体質がやや改善する可能性もあり、米国経済にとってプラスです。
一方、中国は、米国よりもしたたかな気がします。中国の今後の発展にはエネルギーの確保が必要条件です。国際的に非難されているスーダンやミャンマーなど問題国といち早く友好関係を結び、欧米諸国が進出できないのを尻目に、利権を確保しているというケースが多々あります。スーダンには石油があり、ミャンマーの沖合にはガス田があると聞いています。余談ですが、中国がミャンマーといち早く友好関係を結んだ背景には、インドを囲むという戦略があるそうです。米国はともかく、中国にとって最大の脅威となるのはインドです。中国からみて、インドをパキスタン、スリランカ、バングラデシュ、そしてミャンマーでつなぎとめ、いわゆる「真珠の首飾り」で包囲するという戦略を意図的にとっているそうです。
前置きが長くなりましたが、本論に入ります。昨日、日本の将来のエネルギー政策の展望を目指した再生エネルギーの買い取り価格の原案がまとまったようです。今日の引用は、岡山県が誇る山陽新聞から出させていただきます。2012年4月26日付山陽新聞朝刊にこのエネルギー買い取りに関する記事が掲載されていました。記事の題目は、『太陽光1キロワット時42円、再生エネ発電買い取り価格、経産省原案、家庭負担100円未満』で、紙面トップに掲載されていました。以下引用文。
『再生可能エネルギーによる発電の普及を促す「固定価格買い取り制度」の詳細を検討する経済産業省の調達価格等算定委員会は25日、太陽光で発電した電力を電力会社が買い取る価格を、消費税込みで1キロワット時当たり42円とする原案を決めた。高めの価格設定となったことで、民間企業の積極的な発電事業への参入が見込めそうだ』
右表が、分野別に示した電力の買い取り価格です。やや高めの設定になったとのことですが、やはり欧米諸国、特に欧州諸国との比較が必要であると思います。これが高いのか安いのかは、やはり国際比較をもってするべきであって、疲弊した電力会社の要望は信用できないともいえます。
もっとも、今までこんな重要なことが決まっていなかったと思うと、情けないという気持ちになってきます。エコ先進国として、20年に続く景気低迷の中でも、世界に誇れる経済体質だと自負していたところがある日本です。化石燃料ばかり輸入している現在、省エネな国家、日本の姿はもうないのです。実は、以前は、私は、わが国の原発政策を支持するという立場をとり、電力会社に投資をしていました。そして、今回の原発事故です。とんでもない損失を被っています。身にしみて、日本の原発政策の失敗を痛感しているところです。残念なことですが、わが国は、将来のエネルギー政策、というよりもむしろ戦略がありません。存亡の危機であるという認識のもと、国家戦略として第一に進める必要があり、決定の遅れが気になるとろこです。
このブログは、MacBookAirの13インチで作成しました。この文章と付随のエクセルデータを作成し、バッテリーの消耗量は28%というところです。7時間くらいバッテリーがもてばいいのですが、ブログの作成が常時ネット接続していることから、やや消耗量が多いような気がします。因みに、ブログの作成時間は、約1時間半というところです。

2012年4月25日水曜日

くすぶる欧州債務危機

2012年4月23日のニューヨークダウが結構下落したようです。この値動きを、4月24日付の朝のNHKのニュースで、オランダの内閣が財政再建協議決裂で総辞職したことを原因の一つとして挙げていました。もっとも、オランダの財政赤字の程度は大した水準ではなく、2011年の財政赤字は、GDPに対して4.7%の赤字にとどまっています。しかし、同国の財政赤字に対する危機意識は高く、政府債務残高のGDP比率は、2010年の62.9%から2011年の65.2%へと上昇したこと、欧州連合の財政規律を守るために、財政赤字を3%以内にとどめる協議に失敗したことが、総辞職の理由となったそうです。
こうした中で、欧州連合統計局が2011年中の財政状況を発表しました。右図がホームページで発表されたデータに基づき作成したグラフです。グラフで挙げた国々は、欧州主要国というよりも、注目国と記述した方がいいようですが、いわゆるPIIGS、欧州の経済大国であるドイツ、フランス、イギリスを比較してみました。次の危機は、スペインだという指摘があり、2012年4月23日付日本経済新聞朝刊にも『スペイン、7.3ポイント悪化』という見出しの記事が掲載されていました。そこで、スペインに関して記述されている部分を引用します。以下引用文。
 『市場参加者が注目するスペインは、財政赤字がGDP比8.5%でEU内で3番目に大きく、債務残高は68.5%と7.3ポイント上昇。サパテロ前政権は同年の財政赤字は6%と計画していた。ラホイ現政権は12年に財政赤字を5.3%まで低下させる方針で、医療や教育分野での歳出削減策を発表したが、市場では銀行部門の救済などで財政状況が一段と悪化するとの懸念が消えない』
私は欧州債務危機についてやや疑問に思う点があります。欧州連合統計局発表のデータをチェックしていると、GDPに対する債務残高の比率が急速に上昇している点です。2011年のデータを2008年からの比較すると、悪いと指摘されているスペインは、28.3ポイントも上昇しており、財政状況が急速に悪化していることはよく分かります。しかし、ギリシャの52.3ポイントの悪化は不正会計があったことから論外として、アイルランド64ポイント、ポルトガル36.2ポイント、イギリス30.9ポイントの悪化と、悪化の程度が大きいことが特筆される点です。短期間にこんなに悪化する原因は一体何かという疑問が残るとろこですね。
 ここでアイルランドのデータをみてみます。同国のGDPに対する2010年の政府支出の比率は前年から何と18ポイントも悪化、前年の48.8%から66.8%へと上昇しています。つまり、当時、金融立国であった同国の債務危機は金融危機に起因するものであると推測されます。そして、スペインが危機であると指摘されているのは、日本経済新聞と同様の論調となり、スペインの銀行の危機が払拭できていないからだと推測されます。以前、スペインの金融についての特集番組をみたことがあります。そこには、低金利の円で資金を市場から調達し、高金利でスペイン国内で貸し付けるという実態を映し出しものでした。米国から欧州へと飛び火したバブル崩壊と金融危機の背景には、意外と日本発の過剰流動性があるかもしれませんね。

2012年4月24日火曜日

決定したIMFの資金基盤強化

G20の合意がなされ、IMFの資金基盤強化が決定されました。欧州債務危機は、次ぎのターゲットはスペインだとも指摘されており、早急な合意が求められるところでした。欧州債務危機の再燃は、世界経済の下方へとシフトさせる要因であり、現時点における最大のリスクファクターであると、私は考えており、早々に日本経済新聞、読売新聞、朝日新聞の3誌を購入し、全てを読んでみました。内容は、ほぼ同一であったものの、それぞれに特徴のある図表を用意し、読者に理解しやすくする努力していることがよく分かりました。しかし、読売新聞だけが、重要なポイントを適切に表現していましたので、このIMFの問題に関しては2012年4月22日付読売新聞朝刊を引用させていただきます。以下引用文。
『20日に閉幕した主要20か国・地域財務相・中央銀行総裁会議は、欧州危機の拡大を防ぐため、国際通貨基金(IMF)の資金基盤を増強することで合意した。その裏では、当初の目標を大幅に引き下げて「合意」の形を整えるなど、薄氷を踏むような駆け引きがあった。(中略)
IMFは当初、危機に陥った国に「融資できる金額を5,000億ドル」増やす目標を掲げていた。
ここでいう「融資できる金額」は、今回合意した4,300億ドルの「拠出総額」とは意味が異なる。IMFは各国からお金を集めても、内部ルールで約8割しか融資に使えないからだ。5,000億ドル融資するには、6,000億ドル以上集める必要があった』
上記の記述に従えば、現時点での融資可能額は3,800億ドルであるので、4,300億ドルの拠出額の上乗せは、4,300億ドル×0.8=約3,400億ドルとなり、合計で7,200億ドルの融資が可能となることを意味します。一方、日本経済新聞では、3,800億ドル+4,300億ドル=8,100億ドルという表現となっています。私は、IMFの仕組みを詳しく知っている訳ではありませんので、どちらが正しいかは現時点では分かりません。しかし、一般的に考えて、拠出額の全てを融資に回せるかといえば、そうではないというのが事実でしょう。私の見逃しかもしれませんが、この点に注意しなければ、記事を読んでいて混乱しますので注意していただければと思っています。右表は、今回のIMFへの国別の拠出額を示したものです。米国が1兆ドルもの財政赤字を抱えていることから、消極的な姿勢をとっていた反面、わが国は一国としては他国を圧倒する600億ドルの拠出となっています。久しぶりのリーダーシップともいえる行動であり、評価するべきと思います。しかし、CDSなど保証債務を通じて、最大の打撃を被るのは米国ですし、ギリシャ政府に不正会計を吹聴したのも、悪名高きゴールドマン・サックスといわれています。欧州債務危機の根本的な原因を招いたのは、米国であもあり、今回の拠出への消極的な姿勢は論外ともいえる対応です。

2012年4月23日月曜日

フランス大統領選と選挙制度

フランスの選挙制度を熟知しているわけではありませんが、今般、フランスで大統領選が行われ、社会党のオランド前第1初期とサルコジ現大統領の決選投票となりました。私が知っているフランスの大統領は、任期が7年と長いこと、議会で支持政党が野党になった場合、大統領は外交に徹することとなり、内政については議会の支持のもと首相が行うとのことです。そして、大統領選には、第1回投票というものがあり、1回目の選挙で一人も過半数の得票率を得ることができなかった場合、1位、2位で決戦投票となることです。
 右表が、2012年4月23日付日本経済新聞夕刊に掲載された開票の途中経過です。社会党のオランド氏がトップ、現フランス大統領のサルコジ氏が2位となっています。今のところ、1位のオランド氏優位で進んでいるとのことですが、二人の得票率が僅差であることから、逆転劇もあるのではないでしょうか。ところで、この結果は、ある意味驚くべきものです。悪名高き、移民排斥を主張する国民戦線を率いるルペン氏の得票率が18%にも達しており、フランス国民のかなりの割合が移民排斥について同調的であるという結果となっています。もっとも、この比率が大統領選の第1回投票率のみで現れる現象ではありません。フランスの議会選挙でも国民戦線がある程度支持されており、移民問題がフランス国民にとって最大の関心となりつつあります。
しかし、フランスの国民議会(下院)の現有勢力はこのような結果になっていません。これは、大統領選の時期がフランス議会選挙とズレているからだけではありません。仮に国民戦線が大統領選と同様の得票率を得たのならば、総議席のうち577のうち103議席を得ることとなります。そうすれば、首相の選出に当たっては、移民排斥を主張する政党の意向を無視することはできず、現時点で、とんでもない事態になっていることでしょう。これからは私が聞いた知識です。フランスの国民議会選挙は、大統領と同様に、第1回目の選挙で過半数を得られなかった場合、決選投票になるそうです。そして、この決戦投票で、仮に国民戦線と社会党の決戦投票となった場合は、国民運動の方が社会党側を支持し、逆に国民戦線と国民運動の決戦投票となった場合は、社会党が国民運動側を支持することが行われているそうです。結果、国民戦線は第1回目の得票率ほどに議席を得ることがないのです。
 フランスの場合、極右が議会を席巻する事態を回避するための急場しのぎであるともいえる状態です。悪い意味で民意が反映されていないことになっています。一方、日本の場合、自民党にせよ、民主党にせよ、移民排斥など極端な主張をする政党は少なく、政治的には似通っている点があることが、今般の民主党政権の登場により証明されました。ならば、フランスのような決選投票を考慮した小選挙区制の導入も考えてもいいのではないでしょうか。そして、なによりも首相を直接選挙にすることです。首相は議会選挙によるものと考えがちですが、イスラエルなどでは、実は首相が直接選挙により選ばれています。国民が総意で選んだのだから、当面は自分が選んだ首相を支持するという状況が生まれれば、政治主導の政局運営ができるのではないかと考えています。わが国も早急な選挙制度の改革が求められるところです。

2012年4月22日日曜日

したたかなホンダ

実は、私が乗っている自動車は、ホンダの軽四です。同級生がホンダの中古車ディーラーをしている関係で購入したことともいえますが、そもそも故本田宗一郎氏を尊敬しており、いつかはホンダの車を乗りたかったからです。残念ながら、予算の都合もあって軽四となりましたが、いつかはホンダのハイブリッド車を購入したいと思っています。先ほど、再放送ですが、東京テレビ系列の報道番組で、ホンダ、特に二輪車に着目した特集していました。インドネシアなどアジアを中心に二輪車の需要が伸びていること、その中でホンダが高いシェアを維持していることがわかりました。日本の自動車産業を語るに当たって、やはりトヨタ自動車は無視できない存在です。しかし、次ぎはと考えるとホンダです。しかし、二輪車や航空機産業にまで進出しているホンダは、既に自動車産業という枠を超えた存在になりつつあります。
 2012年4月22日付日本経済新聞朝刊にホンダに関する記事が掲載されていましたので、早々引用させて頂きます。題目は『ホンダ、ハイブリッド技術、中国に供与、エコカー普及主導』です。以下引用文。
 『【北京=遠藤淳】ホンダはハイブリッド車(HV)の基幹技術を中国の自動車メーカーに供与する。合弁事業で組む東風汽車(湖北省)のほか幅広いメーカーを対象に供与を検討。現地メーカーがHVに参入するのを促し、世界最大の自動車市場で普及を目指す。エネルギー消費国としても中国は政府がエコカーの普及を進める計画を打ち出しているホンダはHVを軸に中国で先行する米欧勢への巻き返しを狙う』
ホンダの強みは、HVなど最先端の自動車技術で先頭を行くメーカーでありながら、片方では10万円強の価格と水準で、アジアの途上国の人々でも手が届く商品を提供していることです。右図は、ホンダの二輪車・四輪車の売上高の推移を示したものです。2010年に持ち直しているものの、2011年はタイの大洪水の影響もあり、再び減少している可能性があります。アジアでのブレゼンスは確実に上昇しており、同社のしたたかさが伺えるところです。そして、二輪車に絞ったのが次のグラフです。
右図は、ホンダの二輪車の売上高の推移を示しています。国内、北米、欧州での売上高がどんどんと減少している中、それをカバーするようにアジア及びその他地域が、上記の減少をカバーしています。2011年にはその傾向はさらに進んでいると考えられます。そして、驚くべきは、アジアの比率が45%にも達しており、現地でも圧倒的なシェアを握っているようです。燃費、価格等を考えた場合、アジアの人々にとって最適なのは、依然として二輪車であり、これらから得られるであろう収益が安定しているからこそ、リーマンショック以降にホンダの赤字決算とならなかった理由の一つでしょう。また、同社の航空機分野への進出は画期的なものです。それは経営スタイルのみならず、開発した航空機が、今までになかった主翼の上にエンジンを取り付けるというスタイルだったからです。同社はいつも自らの殻に閉じこもることはしていません。常に、ダイナミズムを感じさせるところがあります。常に変化しているという意味で、ホンダの躍進に勇気づけられます。

2012年4月21日土曜日

業績が回復するキャノン

私は、キャノンというば、まずインクジェットプリンタです。写真専用の染料系のプリンタのフラッグシップであるPIXUS-Pro9000を所有、A3サイズ、もしくはA3ノビサイズの写真の印刷を年間1,000枚程度こなし、4年間の間に全く故障しなかったことから、同社のプリンタに対する印象を極めてよいです。写真が好きな人は、エプソンのプリンタを使用しているケースが多いとよく聞きますが、キャノンの写真用のプリンターは良好な稼働状況を示しており、私のお気に入りになっています。キャノンにせよ、エプソンにせよ、インクジェットプリンタのインク代はばかになりません。キャノンが高い利益水準を得ているのは、プリンタのトナーやインクなどの消耗品の需要があるからです。しかし、私は写真の常設展示をしていますので、キャノンのプリンタを使用するケースは減らないでしょうし、インクは買い続けると思います。
 ここへきての円安傾向がキャノンの業績にプラスに寄与しているようです。2012年4月21日付日本経済新聞朝刊にキャノンに関する記事が掲載されていました。記事の題目は『キャノン2割増益、今期営業利益、円高一服、一眼レフ好調』です。以下記事引用。
 『キャノンの2012年12月期の業績は本業のもうけを示す営業利益が前期比2割増の4,600億円近くに達する公算が大きい。従来予想は3%増の3,900億円。主力のデジタル一眼レフの売り行きが世界的に良く、円高進行も一服も利益を押し上げる。2期ぶりの2けた増益になる。
 今期の想定為替レートは1ドル=75円、1ユーロ=100円としていたが、4月以降について1ドル=80円、1ユーロ=105円と、それぞれ円安方向に見直すようだ。主力製品の販売好調に円高修正による採算改善が加わり、予想利益の大幅な上方修正につながる。純利益も2割増の3,000億円弱と、予想を500億円近く上回りそうだ』
右図は、2002年から2012年(2012年は予想)の売上高、営業利益の推移を示したものです。2007年に売上高、営業利益ともに最高を記録した後、その後の回復力を遅いといえます。マイクロソフトやアップルが過去最高の売上高を更新する中で、日本企業でも利益水準が安定しているとされるキャノンがグラフの程度回復であることは不満が残る結果です。
 もっとも、同社の未来を考えた時、私はやや不安を感じています。記事にはデジタル一眼レフの好調さが指摘されていましたが、同社の主力は依然としてオフィス製品などプリンタ事業であるということです。今、このブログを作成する際に、徹底していることがあります。それは「ペーパレス化」です。データ入力が必要なグラフ作成の際、一切プリンタを使用せず、iPad、iPod Touchなどの複数の携帯デバイスを使用するとともにパソコンのウェブブラウザで対応しているのです。一方、会社では印刷された紙の山に埋もれています。あげくの果てはカラーコピー機まで利用している次第です。今後求められるビジネススタイルの一つにペーパレス化があります。その流れの中で、キャノンがどのような道筋を立てているのかが、一番興味が持たれる部分です。

2012年4月20日金曜日

マイクロソフトの脱ウィンドウズ

IT企業4強は、アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブックであるといわれています。確かに、上記の4社は躍進は素晴らしいとはいえますが、それぞれに対立軸があり、それらがバッティングし合うことで、業績が伸び悩むことも考えらます。例えば、アップルとグーグルではスマートフォンで、グーグルとフェイブックでは広告収入で、アップルとアマゾンでは音楽配信・電子書籍といった具合にです。私は、ツイッターの意味を余り理解していないことからフェイスブックについて語ることができませんが、アップル、グーグル、アマゾンに関しては毎日のように活用しており、素晴らしいサービスを提供していると日々感じているところです。
 ところが、上記の4強に入らなかったものの、依然としてIT業界の巨像であるマイクロソフトの業績が好調のようです。2012年4月20日付日本経済新聞夕刊にマイクロソフトの売上高を過去最高を更新したという記事が掲載されていました。以下引用文。
 『【シリコンバレー=岡田信行】米マイクロソフト(MS)が19日発表した2012年1〜3月期決算は売上高が前年同期比6%増の174億700万ドル(約1兆4,200億円)となり、1〜3月期として過去最高を更新した。業務用部門の売上高が拡大、基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」に頼らなくても、収益を拡大できる体質を築きつつある』
この背景には、サーバー用ソフト「SQLサーバー」が着実に成長、ウィンドウズ部門と肩を並べるまでになっていること、ビジネス用の「オフィス」の販売が引き続き快走していることなどがあります。まぁ、確かに、このブログのコンテンツ作りに活用している主なツールはマイクロソフトの「オフィス」ですし、同社が提供するクラウドサービスである「SkyDrive」はなかなか使い勝手がよく、データの保存場所としてよく利用しています。アップルやグーグルの利用の比重が高まっているものの、依然として私のパソコンライフの中心にあるのは、やはりマイクロソフトであることは変わらない事実です。しかし、同社に対する私の不満はかなり大きいものになっています。例えば、OSやアプリケーションソフトの値段の高さです。利便性やデータの互換性は高いものの、バージョンアップつどに3万円前後もむしり取られるにはかなりの不満があります。加えて、セキュリティーに関しては最悪で、かなりの頻度でアップデートを強いられ、無駄になる時間が多いこと、ウィルスの心配を常にしなければならないことなどがあります。
上表は、マイクロソフト社の2011年及び2012年1〜3月期決算の部門別売上高、営業損益を表したものです。マイクロソフト社は、ウィンドウズ、サーバー&ツール、ビジネスを主要部門としたソフトウェアの会社であることが分かります。今後は、同社はウィンドウズフォンになどにスマートフォン分野に積極的に進出することが予想されています。それは、今年中に発売される次期OSであるウィンドウズ8のインターフェイスが、現在販売されているウィンドウズフォンと同じデザインであることから伺えます。スマートフォンの分野で、iOS、アンドロイド、そしてウィンドウズが真っ向から競争する時期を近づいている気がします。そして、この状態こそが、マイクロソフトの脱ウィンドウズのキーポイントになると考えています。

2012年4月19日木曜日

初めて知ったクアルコムの業績

私は、いわゆる携帯電話を全く所持せずという生活を、2009年12月まで送っていました。そして、初めて契約したのは携帯電話は、実はスマートフォンの先駆けであるiPhoneでした。いきなり携帯なし生活からスマートフォンへの移行でしたので、当時は驚くことばかりでした。音楽もCDをレンタルしたり、購入したりというスタイルで、音楽をダウンロードするという感覚は、全くありませんでした。今では、スマートフォンのコアユーザーであり、一瞬でも手から離すことができないというほぼスマートフォン中毒になっています。
 そうした中で、注目される企業とは、まず第一に端末メーカーそのものである米国のアップルや韓国のサムスン電子です。もっとも、スマートフォンの定着に伴い、一般の人々にも目にするようになった企業があります。それは、米クアルコム社です。同社は、CDMA携帯電話用のチップをほぼ独占しており、好調な業績を維持しているようです。加えて、最近では、アンドロイド系のスマートフォンのCPUであるSnapdragonの設計メーカーであることが知られており、テキサスインスツルメンツ、NVIDIAなどと激しい競争をしているところです。一方、アップルのiPhone用のCPUであるA5チップはアップルの独自設計ということで、製造はサムスン電子です。
 2012年4月19日付日本経済新聞夕刊に米クアルコム社の業績に関する記事がありましたので引用させていただきます。記事の題目は『米クアルコム売上高、過去最高を更新、1〜3月、スマホ追い風』です。以下引用文。
 『【シリコンバレー=奥平和行】半導体大手の米クアルコム社が18日に発表した1〜3月期決算は、売上高が前年同期比27%増の49億4,300万ドル(約4,020億円)となり、四半期としては過去最高を更新した。純利益は前年同期比2.2倍の22億3,000万ドルだった。同社は米アップルなどスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の主要メーカーを取引先に持ち、スマホ市場拡大の追い風を受けた』
これでも、実質1株利益、売上高とも市場予想を上回る水準であったものの、同社発表の2012年4〜6月期の1株当たり利益が市場予想を下回ったことから、18日の同社の株式は前日終値より7%も下落したそうです。右図は、日本経済新聞に掲載されたデータに基づき作成した、米クアルコムの業績です。売上高に対する純利益の割合の高さに驚きを感じます。この利益率の高さは、同社が設計に特化したファブレスであることです。余計な設備投資をせず、経営資源を設計に集中しているからこそ、出し得た利益水準だといえるでしょう。日本にもこのような経営スタイルをとっている企業がもっとあってもいいのではないかと思いますが、やはり製造部門を持ち続けることで、所得分配の公平さに結びつきますので、今のまま頑張ってほしいというのが、私の希望です。
 米クアルコム社の設立に関する記事がネット上にありましたので、一部を紹介します。同社は、アーウィン・ジェーコブズとアンドリュー・ビタビにより1985年に設立された、まだまだ若い企業です。社名のQualcommは、qualityとcommunicationsの造語で、CDMA方式の携帯電話の実用化に成功して成長を遂げました。因に、1〜3月期に得られた携帯電話会社から受け取ったライセンス料は、18億600万ドルにも及ぶものの、減少したのに対して、携帯電話向け半導体の製造・サービスが54%増の31億3,700万ドルに達しています。同社は半導体そのものの製造が利益の中心となっているようです。

2012年4月18日水曜日

おいしくなった日本酒

私は、大学時代に日本酒の一気飲みをさせられて以来、日本酒に対するいやなイメージがありました。当時の日本酒はアルコールそのものを飲んでいるといった感覚で、以来、ビールやワインなどが、私のアルコールライフの中心になりました。
ところが、3年前に日本酒のアンテナショップをしている居酒屋に行ったことを契機に考え方が全く変わりました。そこで飲んだ日本酒がとても美味しく、今では日本酒を週に一度は飲んでいるという生活になりました。日本酒のラベルには、大吟醸や吟醸などが記されているケースがあります。最初は何のことか分かりませんでしたが、お店の人に色々と教えてもらい、米の削りの程度によって分類されていることを知りました。また、純米酒などの表現があり、純米酒でないものとの差が今でも理解できていません。これは、お店の人が説明してくれる段階で、既に出来上がっており、全く記憶にないということが原因です。加えて、絞り方にも色々な種類があり、この他、生酒、火入れとか色々な言葉が私が飲酒をしている際に、周囲で飛び交っています。今日は、そこの居酒屋に行ってきたばかりです。酔いが回っていますので、今日のブログはここで辞めておきます。それでは「おやすみなさい!」。

2012年4月17日火曜日

インドの貧困問題

私は、今はまっている海外ドラマが2つあります。一つは、Huluでストリーミング配信されている『ビッグバンセオリー』で、もう一つはWOWOWで放送されている『救命医ハンク』です。この2つにドラマに共通している点が一つだけあります。それは、インド系、もしくはインド出身の俳優が活躍していることです。『ビッグバンセオリー』では、インド出身の物理学者のラージが、お酒を飲まなければ女性と全く話すことができないというキャラで出演、「おたく」4人組の中で微妙な味加減を出しています。一方、『救命医ハンク』には、医療助手のディビア・カダイが活躍、スラリとした容姿で、洗練された身のこなしがかっこよく、彼女も同様にインド系です。もっとも、2人のキャラは真逆にあり、2つのドラマを交互に観ていると、とても楽しくなります。インドには色々な人々がいるのだと感心するとともに、米国をはじめ世界で活躍しているインド系の人々が多くなっていることを痛感するシーンでもあります。
もっとも、本国であるインドは、数字が表している以上に厳しい現実があります。『週刊エコノミスト』2012年4月17日号にインドの貧困問題に関する記事(注)がありましたので、引用させていただきます。以下引用文。
『インド政府はこのほど、貧困層の人口推計値を発表した。2009年度の貧困層人口は3億5,500万人と全人口の30%で、5年前の37%から7%減少したとはいえ、なお多くの貧困者を抱えていることになる。貧困層の割合は州により大きく異なり、最低9%から最高54%まで大きくばらついている。
この推計では、貧困層の定義が問題になる。今回使われた定義は、カロリー摂取に必要な食糧支出、教育支出及び医療支出の額によって設定されている。だが、1人1日当たり支出額に直すと、都市部で29ルピー(約47円)、農村部で22ルピー(約37円)になり、とても生活できる金額ではないとの批判が上がっている。つまり定義次第では、貧困層はもっと増えるということだ。(中略)
インドでは、交差点にいる裸足の物乞い、ほとんど豆の入っていない豆カレーを食べる家族など、あちこちに貧しい人々の存在を感じる。一方、貧しさを生む状況は一律ではないので、本来は貧困層の定義も一律にする必要はない。貧困家庭それぞれに届くような対策プログラムが望まれる』
インドでは、世界一華やかな結婚式が有名です。一方で、経済発展から取り残され、貧困状態にある人々の数でも世界一です。経済発展は望ましいといえますが、貧困問題を解決した上でなければなりません。右図は、主要国の人口推計を表したものです。2020年時点でインドの人口は中国と並び、2050年にはインドの人口が中国を4億人も上回ると推計されています。注目すべきは、インドと宗教的には異なるものの、英国の旧インド領であったバキスタン、バングラデシュを合わせた人口です。2010年で15億4千万人であったものが、2050年には21億6千万人になります。これら3国に共通しているのは、貧困問題が解決していないことです。すぐにでも富める国からの貧困撲滅に向けた支援がなければ、取り返しのつかないことになるでしょう。
(注)記事のタイトルは『インド、貧困層が人口の30%、定義次第でさらに膨らむ』。渡辺泰介(JICAインド事務所次長)。

2012年4月16日月曜日

必要なのか、新幹線の整備事業

 私は、写真撮影、山登り以外にもう一つの趣味があります。それは、鉄道の乗車です。いわゆる「乗り鉄」で、青春18切符は毎年利用しています。5年前の話になりますが、岡山駅から始まった鉄道旅行は、直江津、能代、仙台、宇都宮に宿泊、日程の関係で最後は羽田から航空機を使うという結果となりましたが、「乗り鉄」を自負する私としては満足のいくものになりました。在来線や地域にあるすスペシャルな快速電車を満喫するとともに、旅先の駅弁を堪能する大旅行で、私にとって今でもそれを上回る旅行は経験ないとろです。とろこが、今年の年末は6連休になりますので、今から18切符を使った旅行を計画しているところで、一部特急を使用することになりますが、北海道まで進出する予定にしています。
 今日は、新幹線の整備事業について書かせて頂きます。2012年4月8日付読売新聞朝刊に新幹線の整備に関する記事が掲載されていましたので、早々に引用します。題目は『新幹線未着工3区間、在来線巡り、地元複雑』です。以下引用文。
『整備新幹線の北海道新幹線の新函館-札幌、北陸新幹線の金沢-敦賀、九州新幹線・長崎(西九州)ルートの諫早-長崎の未着工について、5月にも国土交通省が新規着工を最終判断する見通しだ。地元では、経済効果に期待する一方で、並行在来線の扱いを巡る綱引きが、今回も繰り広げられた』
 上記区間での総工事費は、北海道新幹線1兆6,700億円、北陸新幹線1兆1,300億円、九州新幹線は5,000億円で、合計で3兆3,000億円に達します。整備新幹線の事業は、何らかの形で財政の負担があるはずです。現在のわが国の財政事情を考慮すれば、これ以上の推進は望ましくないと考えています。また、「乗り鉄」の私にとって、新幹線事業の拡大は、特色のある地域の特急や快速電車をなくすという結果につながり、鉄道旅行の魅力を低下させることになります。やはり反対です。
 これは公共事業の内訳からいっても同様のことがいえます。右図は、公共事業費が2015年以降増減しないという前提のもと、国土交通省が公共事業の項目別内訳を推移を示したものです。内訳には、新設、災害復旧、更新費、維持管理費のなどがあり、今後、更新費が財政を圧迫する可能性を示唆しています。ここで、2012年4月15日付日本経済新聞朝刊の記事を引用します。記事の題目は、『インフラ高齢化、どう対応。更新も「選択と集中」必要』です。以下引用文。
『使えるおカネは限られているので、新しい知恵や発想の転換が必要という。
 人口減少を考慮すれば、古くなったものを造り直すのではなく、インフラや公共施設などの資産の圧縮が求められる。利用が減った公共施設の統廃合のほか、橋や水道管でも不要な分は更新しないことなどが考えられる』
 つまり、整備新幹線に代表される、これ以上のインフラの増加は、維持、更新費の増加を生むだけであり、逆に公共施設のリストラが必要となるという時期が迫っています。上記のグラフは、公共事業費の減少がなかったケースです。仮に毎年3%の減少になった場合、2022年にも公共事業の全てが災害復旧、更新費、維持管理費で費やされるという推計もあります。今は、東日本の復旧と社会保障の改革に重点を置いた施策が求められるところです。

2012年4月15日日曜日

ビッグマック指数と消費税

2012年4月14日の『週刊ダイヤモンド』に「ビックマック指数」に関する記述がありました。記事(注)によると、英国の経済誌「エコノミスト」が「ビックマック指数」を毎年発表しており、各国のマクドナルドでより販売されているビッグマックの価格を比較することで各国の通貨が割高なのか、割安なのかがわかるとしています。私も各国の物価水準を把握するため、新聞やニュース報道をくまなくチェック、あげくの果ては海外ドラマからも入手するまでにもなっています。この「ビックマック指数」が有用ならば、この苦労を省くことができ投資判断をする際にも参考になると思い、早々にマクドナルドに行き、ビックマックの単品価格をチェックして行きました。

その時、私は、ビックマック、サラダ、アイスコーヒーのセットメニューを注文、ビックマックの単品価格は、メニュー表で確認しました。写真はその時のものです。写真では読み取りにくいのですが、ビッグマックの単品価格は確かに320円となっており、上記の記事のデータと合致することがわかりました。そして、マクドナルドに行った最大の理由は、この320円の価格が消費税を加えたものか、そうではないかということを確かめるためでした。
つまり、消費税や付加価値税が日本では5%であるのに対して、デンマークなどヨーロッパ諸国には25%にも達する国もあることです。ならば、直接データを比べるのは、意味がないことになります。2012年2月22日付『国別製品別の価格差』のブログでも記述したように、この付加価値税が高いことが影響し、ヨーロッパでのAppleの製品が、米国や日本と比べて割高になっていることが判明しました。ビックマックでも同様のことがいえるのではないてしょうか。
右図は、上記で挙げた「ビッグマック指数」の主要国別にグラフにしたものです。スイスとブラジルが突出して高いこと、英国が付加価値税が高い割に、日本より安いということがわかります。スイスにおいてビックマックが高いのは、当然のことながら、一人当たりのGDPが7万ドル程度まで達しており、この所得が水準により人件費が占める割合が総じて高いことに起因したものと考えられます。一方、ブラジルは、所得格差が非常に大きく、ビッグマックを日常的に購入することのできる人々の数が限られていることが原因ではないかと思っています。一方、英国のビッグマックが安いのは、課税・非課税の対象が非常に煩雑であり、以前はテイクアウトに対して非課税であったことが起因しているのはないかと推測しています(現時点では課税・非課税は不明であり、課税対象としたことから、イギリス国民の間で論争が起こっているという記述を読んだことがあります)。
 以上のことから、「ビックマック指数」を参考にするに当たっては、対象の国の付加価値税(もしくし消費税)の水準と所得水準を考慮に入れる必要があることがわかります。
(注)記事の題目は「ビックマック指数、ビックマックの価格を比較すると、その国の通貨が割高か割安かがよかる」。

2012年4月14日土曜日

労働市場の見方

ケインズの『一般理論』の新訳が文庫本で出版されているということを友人から聞き、早々に購入してきました。出版は講談社学術文庫で、タイトルは『雇用、利子、お金の一般理論』です。翻訳者は山形浩生という方で、この本以外にも、『クルーグマン教授の経済入門』(ポール・クルーグマン著)、『服従の心理』(スタンレー・ミルグラム著)の翻訳も手掛けているようです。私は、大学時代に東洋経済新報社出版、塩野谷祐一訳『雇用・利子および貨幣の一般理論』を完全読破できなかったものの、断片的には読んだという経験があります。当時、私のボキャブラリー不足のせいで、同書は難解だったというイメージがありましたが、新たな訳本の発売を機に完独を目指して頑張ってみようかと思っています。
ケインズの『一般理論』を読むに当たって、原書が出版された当時、主流派であった古典派の経済学に対して、自らの理論はより一般的であるという意味で、「一般」という言葉を著書名に冠したということを、同級生が教えてくれました。そして、いきなり第1章には、そのことを示す部分があり、当時、ケインズが同書の執筆に込めた思いというものが良く理解でき、強いインパクトを受けました。以下引用文(山形訳)。
この本に『雇用、利子、お金の一般理論』という題をつけたとき、強調したかったのはこの「一般」という前振りです。こういう題目の狙いは、私の議論や結論の特徴を、経済学についての古典派の理論と対比されることです。(中略)古典派理論の公準は特殊なケースだけに当てはまり、一般的な場合には当てはまらない、というのが私の主張です。
痛烈な、古典派の経済学に対する批判です。ここまで、ケインズが言い放った背景には、高止まりする当時の失業率に対して、経済学が適切な説明を提示することができなかったことがあります。そして、第2章『古典派経済学の公準』で、雇用の古典理論の2つの公準について記述しています。
いわゆる第1公準は「賃金は、労働の限界生産性に等しい」としており、企業による労働需要を示しています。一方、いわゆる第2公準は「ある量の労働が雇用されたときの賃金の効用は、その量の雇用による限界的な負の効用と等しい」としており、労働者による労働供給を示しています。この2つの公準が成り立つことで、労働市場は均衡した状態にあり、労働者が過不足なく労働の機会が与えられ、失業者のない労働市場が実現しているとしています。そして、この労働市場が均衡するに当たって不可欠な要素に、伸縮的な実質賃金があり、ケインズは、特に第2公準について現実的ではないと批判しており、実質賃金の下方硬直性などを主張、均衡状態にない労働市場の現実を示唆しています。
 それでは、実質賃金が伸縮的な労働市場を図示してみましょう。右図は、縦軸に実質賃金W/P、横軸に雇用量Vをとり、労働需要曲線DDと労働供給曲線SSを示したものです。労働需要曲線がDD、労働供給曲線SSであったとすれば、E点にて需要と供給が均衡、実質賃金がW/P、雇用量Vが決定され、失業者がいない状態になります。ここで労働需要曲線に変動がないとして、労働者数の増加により労働供給曲線がSSからS'S'へとシフトしたとします。実質賃金はW'/P'へと下落するものの、雇用量はVからV'へと増加、新たな均衡点E'が得られることとなり、やはり失業者存在しないことになります。この間、新たな均衡点が得られるまでの時間が最大の問題となります。調整まで時間が長ければ、労働者や企業が受けるであろう損失は大きく、短ければ少なくなるといえます。
それでは、この伸縮的な実質賃金は、現実に存在するでしょうか。米国では流動的な雇用制度があるとともに、労働者の地域的な移動もあり、伸縮的な実質賃金が、ある程度労働市場にて実現されているような気がします。最近では、米国における労働者の賃金が、実質的に中国の賃金と変わらないまで低下しており、輸出拠点としての米国が着目されています。米国で製造された日本メーカーの自動車が韓国へと輸出されるまでになっており、この背景には、米国では労働者が毎月10万人単位で増加しており、労働供給が常に増加していることがあります。
一方、日本はどうでしょうか。日本の雇用者所得は、長い期間を経て、400万円後半から400万円前半へと減少しているとされています。もっとも、失業率は米国のように10%を超えることなく、概ね5%前後で推移しており、雇用情勢は安定しているといえます。しかし、非正規雇用の問題を考慮した場合、雇用情勢はむしろ米国よりも深刻であるともいえます。社会保障や企業年金など手厚い保護下にある正規労働者の存在で、思い切ったリストラのできない企業、そして、低い賃金と安定しない雇用契約で不安定な生活を強いられる非正規労働にとって、今の雇用制度はマイナスであるといえます。調整が長引き、デフレから脱することができない日本経済は、上述した新たな均衡点までの調整の時間が長い体質にあるのではないかと思っています。

2012年4月13日金曜日

イランへの原油依存

私は、イランに対しては、イスラム諸国(注)の中でも比較的に民主主義が根付いている国といったイメージを抱いています。宗教指導者の支持がなければ立候補が禁じられるなど、選挙制度にはイスラム教国特有の性格があり、私には理解できない点もあります。しかし、大統領の3期連続の就任は禁止されており、事実上、3期目に突入したプーチン大統領の支配するロシアとは異なります。ロシアよりはイランの方が民主主義の国であるという認識です。因みに、今、イスラム諸国の中で最も親しみを持っているのは、インドネシアです。私は選挙戦が行われている最中のインドネシアに行ったことがあります。たまたま利用したタクシーの運転手が選挙に関心があったため色々と教えてくれました(偏った情報かもしれませんが)。利権がらみなどやや問題があるという印象もありましたが、きっちりと選挙が行われ、民意のもと大統領が選ばれています。
日本とイランとの関係は決して悪くないと考えています。石油メジャーが原油市場を牛耳っていた時代、出光が日章丸を極秘裏にイランへと派遣、撃沈の可能性があったという話を聞いたことがあります。その後、イラン・イラク戦争で、断念せざるを得なくなったイラン・ジャパン石油化学(IJPC)の件は、アメリカの陰謀めいたところがあります。しかしながら、今のイランは、核問題を抱えていることから、米国主導のイランへの制裁にはやむを得ないでしょう。これ以上の核兵器の拡散は危険であり、イランはIAEAの核査察を全面的に受け入れるべきです。イラン国内での石油消費を考慮すれば、原子力発電への投資は理解できないことはありませんが、IAEAの査察を受けた上、核兵器への転用がきかない軽水炉による原子力発電にとどめる必要があります。
もっとも、イランが強行姿勢に転じた責任は、米国にあります。保守派のアフマディネジャド現大統領の前は、改革派のハタミ氏が大統領を務めていました。同氏は米国や西欧諸国との関係改善に力を入れていた大統領でした。同氏の大統領任期中に、米国は同国との関係改善に進めるべきであったことは周知の事実であり、結果として現在の不安定な中東情勢を招いたといえます。
ここで、経済問題に話を戻します。日本は、中東から大量は原油を輸入しています。そして、イランからの輸入は、わが国の原油輸入量の10%を占めています。原発がほぼ停止し、化石燃料に発電を依存している、現在の日本にとって輸入先の選択肢が減るという事態は避けたいところです。一番気になるのは、中国とイランの接近です。日本がイランからの原油輸入を減少させている中で、結果としてシェアを高めるのは中国です。イランからの原油輸入を減らしている日本の姿勢は評価できますが、利するのが中国だけだという事態は避けなければなりません。
2012年3月21日のNHKの報道で、わが国は、米国防授権法の対象外とされました。一方、中国は制裁の対象国のままであり、今はほっとしているところです。上図は『週間エコノミスト』2012年2月14日号に掲載されていたデータをグラフ化したものです。こうしてグラフにしてみると、中国の原油輸入量のいかに大きいかががよく分かります。日量543万バーレルが原油輸入の11%に過ぎません。中国は原油獲得のためには何でもするという印象が強く、今後、米国との対立は避けられない気がします。
(注)イランにもキリスト教信者はいると思われますので、「イスラム諸国」という表現は適切かどうかはやや疑問が残ります。あくまで、イスラム教徒が国民の大多数を占めるという意味で「イスラム諸国」とします。

2012年4月12日木曜日

知らなかった薬価の引き下げ

2012年4月10日付NHKのローカルのニュース番組『ニュース845』で、緊急医療の中で薬剤師が活躍しているという報道がありました。緊急医療の現場では、患者が服用している医薬品をいち早く把握する必要があり、誤った対応した場合、患者の命の危険につながりかねないからだそうです。番組では、具体的な症例が紹介されており、ERに運び込まれた患者が血液の流れを良くする薬を服用していることを薬剤師が素早く認識し、手術担当の医師に伝えていてる場面がありました。また、医療事故の3割以上を占めるのが投薬ミスで、近年、医薬品の数が大幅に増加したことが背景にあります。医薬品に関する専門的な知識がなければ、対応できないという事態が生じており、医療現場、特に緊急医療での薬剤師の活躍が期待されています。
こうした中で、2年に1回の医療用医薬品の公定価格の引き下げが4月1日に行われました。医療用医薬品の公定価格とは、いわゆる薬価のことであり、厚生労働省が市場調査に基づき、製品ごとに定めるもので、医療費削減を目的に、改定ごとに引き下げられています。2012年4月8日付読売新聞朝刊に、薬価引き下げに関する記事(注)が掲載されていましたので引用します。以下引用文。
『厚生労働省が2年に1度実施する「薬価」の改定が1日に行われ、薬価は平均6%引き下げられた。新薬開発を促すため、独創的な新薬については特許期間中の価格を維持する制度が前回改定から導入されており、有力な新薬を持っているかどうかが製薬会社の明暗を分ける事態となった』
『明暗を分けた要因の一つは、前回改定から試験導入された「新薬創出・適用外解消等促進加算」制度だ。厚労省によると、薬価が定められた1万5000品目のうち、今回542品目の価格が維持された。これらの競争力が高い薬があれば、薬価引き下げの影響を最小限に抑えられる』
この記事は製薬会社ごとの明暗を具体的に記述しています。日本勢では、エーザイの薬価の引き下げ幅が、平均の6%を大きく上回る11%にも達した一方で、新薬の開発に成功したアステラス製薬が、高コレステロール薬「リピトール」が11.3%引き下げられたにもかかわらず、全体では6%強の引き下げにとどまったそうです。また、新薬の開発には数百億円の資金と10年以上の期間が必要であり、資金力に余裕のある外資に有利であるとしています。事実、価格維持がされた認められた製薬会社別の品目数のランキングでは、上位10社のうち8社を外資が占めています。外資系の製薬会社は世界的に展開している企業が多く、資金力・開発力の差が結果にあらわれており、薬価維持の対象となる品目をいかに確保するかが、わが国の製薬会社の今後の課題であるといえます。
 右表は、製薬会社別の品目数のランキングを表したものです。知らなかったのですが中外製薬は外資系だそうです。日本勢で10位以内にランキングしているのは、7位のアステラス製薬と10位の第一三共だけです。外資系の製薬会社の強さが思い知らされる結果です。ランキング外では、大日本住友製薬(品目数19)が12位、塩野義製薬(同15)が13位、田辺三菱製薬(同14)が16位、武田薬品工業(同6)が31位、そして引用文にあるエーザイ(同5)で34位と散々たる状況です。今後、高齢化が進む中で、医薬品に対する需要の増加は確実です。この分野での競争力獲得は必須であり、外資系企業に市場がコントロールされた場合、比較的健全性を維持していると思われる日本の医療制度が崩壊する恐れもあります。TPPの問題で、医療分野において米国は日本に対してかなりの要求をしているようです。ニュージーランドも抵抗しているようですし、自由貿易もいいのですが、医療という自国民の福祉の根本は守られる必要があります。
(注)記事の題目は『薬価引き下げ、日本勢苦境、独創的新薬命運かける。外資、資金力で開発推進』。

2012年4月11日水曜日

コーヒーブレーク

私は、毎日、仕事をして、そして家に帰ったら色々な調べごとをして、ブログを書き続けて4カ月近くになりました。そろそろネタが尽きてきた感は否めません。従って、今日はコーヒーブレークとさせていただきます。私は5、6年前まではウィンドウズのパソコンを中心に仕事や論文の作成をしていました。しかし、ウィルスなどが蔓延、ウィンドウズを中心としたパソコンライフの将来性を危惧、選択肢は余なかったのですが、Linuxを少しばかりかじってみました。ウィンドウズがインストールされていた古いパソコンにFedoraCore4をインストールして、LAMP(注1)を取り込んだシステム作りを試みました。もっとも、システムを導入するまではよかったのですが、個人が趣味でする範囲では、大規模なデータがあるわけでなく、本格的な運用には至りませんでした。そのうちLinuxをインストールしていたパソコンが故障、Linuxを一部取り込んだパソコンライフを断念することとなりました。
でも、システム作りは進めていて、趣味レベルですが、レンタルサーバーと契約し、私が過去に書いた論文や大学に提出したレポートを中心に掲載した簡単なホームページ作成しました。そのために、独自のドメイン名も取得したくらいです。ところが、本格的な運用に入る直前にある問題に直面しました。ホームページに貼り付けつける写真です。やはり著作権違反に觝触することは避けたいと考え、有料の写真や素材を購入して、当初はホームページに貼付けていました。しかし、この部分は、自分で撮った写真を貼る付ける方が自由度が増し、著作権のことも気にせずにホームページ作成に邁進できると考え、そのためデジタルカメラを購入し、写真を撮り始めました。
ここからが大変でした。毎週欠かさず写真を撮りにいくという生活へとシフト、挙げ句の果てはカレンダーまで作るまでに至りました。下の写真(注2)は実際にカレンダー作成に使用した写真です。






最初のうちは、主に「花」を被写体に写真を撮っていました。ところが、ある日「ツバキカンザクラ」という早咲きの桜を撮っていると、そこにメジロがやってきているのに気づきました。この出会いこそが、私とって本当の写真ライフの始まりでした。ホームページの作成やパソコンライフのことは全く忘れて、4年間で2〜3万枚ほどの写真を撮りまくりました。北海道から南九州まで旅行をしたくらいです。まさしくミイラ取り(鳥!)が、ミイラになったのたのです。野鳥を探索していると色々な出会いがあってとても楽しいです。まったく成果がない時期もあったり、色々な野鳥に立て続けに出会ったりしました。最近では写真を撮らなくても、野鳥を観察するだけでもだけで満足できるようになりました。まさしく愛鳥家への転身です。
今日は、簡単に終わらせます。そして、経済に関する「ネタ」探しのため、書籍を読むことにします。日中に書籍を購入しました。本の題名は、PHPビジネス新書出版、浜矩子『「通貨」を知れば世界が読める』です。表題をみて、同意見ですので買った本です。今日はこれを読みながら寝床につくとします。因みに、写真はライフワークになっていますので、野鳥に限らずいい写真が撮れれば、ぼちぼちアップしていきます。
(注1)LAMPとは、Linux、Apache、MySQL、PHP(又はPython、Perl)の頭文字をとったもの。
(注2)写真の野鳥名は、上からジョウビタキ、メジロ、ツグミです。

2012年4月10日火曜日

驚愕のDTCP-IPと消費者余剰

私は、昨年の7月に薄型テレビを購入、その後11月になってからブルーレイレコーダーとブルーレイの再生専用機を手に入れました。因に、3機種ともソニー製品で、全てがネットに接続されているのが特徴です。結果、知らぬ間に、ファームウェアがバージョンアップされ、色々な機能がどしどしと付加されており、テレビライフが徐々にですが、充実化している日々を送っています。過去のブログでも何度が紹介したことのある映画や海外ドラマのストリーミングサービスである"Hulu"(フールー)も付け加えられた機能の一つです。最近のアップグレードですと、ブルーレイレコーダーにUSBで接続されたハードディスクに保存されている映像コンテンツを直接、ブルーレイディスクにダビングできる機能が付き、とっても便利になったという印象です。
私がテレビ三昧の生活をはまっている中で、最近まで知らなかったのですが、DTCP-IPという、聞き慣れぬ技術があります。今回、私が購入したブルーレイレコーダーと薄型テレビが、何とこのDTCP-IPに対応していることを今まで知りませんでした。ところで、DTCP-IPとは何かということです。DTCP-IPとは、Digital Transmission Content Protection Over Internet Protocolの略で、家庭でネット接続されている機器間で著作権で保護されたコンテンツをやり取りする際にコンテンツを暗号化する技術のことです。パケットを暗号化することによって、盗聴等により不正コピーの防止を目的とした技術であり、今後、このDTCP-IPに対応したデバイスがどんどんと発売されるようです。
早速にDTCP-IPを試してみました。ブルーレイレコーダーをDTCP-IPのサーバーとして、薄型テレビをクライアントとして接続、HDMI端子に接続していない状態で、ブルーレイレコーダー内の映像コンテンツをテレビの画面に映し出すことに成功しました。素晴らしいの一言です。そして、驚いたのは、ソニータブレットが今春からDTCP-IPに対応、Wi-Fiを通じて、ブルーレイレコーダーのハードディスク内に保存された映画やドラマを視聴することができるようになるそうです。
ここで、経済に話を戻します。国内でブルーレイレコーダーを販売しているのは、私が知っている限りでは、ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、三菱電機の5社があり、この他にも輸入品もあることから、多数の企業が参入、かなり厳しい競争が繰り広げられています。それらの企業の中でも、これ以上の負担はできないと考えているところもあり、日立がテレビ事業から撤退したように、何社かは事業から徹底という事態になりかねないというのが実情でしょう。ソニー製品でAV環境を統一している私にとって、ソニーが撤退すれば、元も子もないというのは事実であり、それは是が非でも回避したいところです。もっとも、ソニーが生き残るのならば、ソニー以外の4社が徹底すればいいのではないかという考えも出てきます。しかし、私の本音は違います。上記の5社がそれぞれ生き残り、競争状態が持続することが望ましていと考えているのです。それは、競争状態が持続すれば、シェアを伸ばそうと各社が新しいアイデアを機器に取り込むことが期待されるからです。つまり、これは競争激化による消費者余剰の拡大を意味しているのです。競争が余りに厳しいことは、企業の利益を圧迫するという指摘もあり、マイナスの面があるものの、消費者である私にとって、消費者余剰の拡大は望ましい状態であるといえます。
ここで、消費者余剰とは何かという疑問が生じます。それでは、これを図示してみます。右図は、供給曲線、需要曲線を示しています。右上がりの曲線が供給曲線、右下がりの曲線が需要曲線で、供給曲線と需要曲線が交わっている価格Pで、供給と需要が合致していることを意味しています。ここで消費者余剰とは、黄色で示した部分です。そして、ブルーレイレコーダーの市場で生じているのは、競争により本来の均衡価格Pよりも低い価格P1にまで価格が低下(価格の低下を意味するものは、価格が一定でも、新しい機能を織り込むことで実質的な価格が低下することも含める)、供給量が一定とすれば、灰色の部分だけ消費者余剰が拡大していることです。この価格は、供給曲線を下回る水準であることから、長続きしないともいえますが、ブルーレイレコーダーはAV機器関連の中心的な存在であり、戦略部門です。赤字が出ても、企業サイドの思惑として、簡単には撤退することはできず、製品の供給を続けることが十分に考えられます。
確かに、過度な競争は、結果として参入する企業を減らすことになります。しかし、日本でのガラパゴス携帯でいえるように過度な競争があったからこそ、海外の企業がその響を受け、アップルのiPhoneが生まれたということは否定できないでしょう。ブルーレイでの競争も同じことがいえます。日本企業はビジネス的には失敗を犯していることは否めないのは事実です。もっとも、その競争がもたらしたともいえるスピルオーバーによる世界経済へのプラスの影響は計り知れないというのも事実です。日本企業がなかったら、今のアップルも、サムスンもなかったのです。ビジネスモデルの失敗ばかり指摘されるケースが多々ある昨今、私は、むしろ日本企業の健闘に世界の人々はもっとエールを送ってもいいのではないかと考えています。

2012年4月9日月曜日

止まらない企業の海外進出

日本企業による対外直接投資が止まらないようです。昨今、企業による国内投資が減価償却費を下回り、国内での資本ストックが減少に転じたことがよく指摘されており、今後、日本国の潜在成長率がさらに低下する恐れがあることが予想されています。もっとも、企業は、日本国内の停滞感にとらわれることなく自由な投資活動を海外にて展開し続けており、成長に向けた努力を怠っていないというのが実情です。それを表したのが、財務省発表の対外直接投資であり、対外直接投資のネットの流出額は、1985年で約1兆5千億円であったものが、2008年には約13兆2千億円にも達し、その分、国内での投資が抑制され、投資額が減価償却費を下回る事態を生み出したことは否定できないでしょう。
 右のグラフは、財務省発表の対外直接投資の推移を表したものです。流出とは、日本企業による海外企業に対する直接投資を示し、いわゆる対外直接投資を指します。一方、流入とは、海外企業による日本企業に対する直接投資を示し、対日直接投資といわれるケースが多いようです。
流出である対外直接投資に注目すると、グラフから2008年にピークを迎え、その後、2009年、2010年と連続減少していることがわかります。これは、海外の需要減少に起因するものです。一方、2011年に大幅に増加しているのは、過度な円高による日本企業の海外進出の拡大を意味していると思われます。なぜなら、2011年には欧州欧州債務危機が顕在化、米国、欧州といった主要な市場における需要が減退しているからです。これ以上の円高は、日本企業の国内生産での採算性を悪化させ、企業の海外進出が加速、国内の空洞化の危機が日本経済の潜在成長率をさらに低下される可能性あるといえます。
もっとも、企業が生き残る上で、投資活動の停止は望ましくないことです。部品や素材など付加価値の高い産業を国内にとどめた上で、付加価値の低い汎用品の最終生産などは積極的に海外へ移転することが望ましいといえます。このことは、今後予想される国内の労働人口の減少に対応できるだけでなく、汎用品を海外で生産することで、進出国やその周辺国の需要の掘り起こしにも寄与する可能性があり、対外直接投資の増加はむしろ歓迎するべきだことだと私は考えています。そして、この対外直接投資には、2つの流れがあるようです。
1つは、FTAです。日本はFTAの締結は、競争相手である韓国と比べてやや出遅れています。そうした中で、欧州への輸出拠点としてタイやインドが注目されています。2012年4月2日付日本経済新聞朝刊に『FTA活用へアジア強化、欧州などへの輸出拠点に、関税負担を軽減』という題目の記事が掲載されていました。記事の大まかな内容は、タイを中心としたASEAN諸国に、製造コストの低下を狙って日本の自動車メーカーが積極的に進出、これに伴い自動車の部品を供給する企業も同地域やインドへの進出が加速しているとのことです。この背景には、自由貿易協定(FTA)を生かし、東南アジア諸国連合(ASEAN)や欧州への輸出拠点として活用する狙いがあるそうです。
もう1つは、世界の低所得者の市場を開拓するという流れです。上記の流れは、年間所得2万ドルを超える欧州や3,000ドルを超えるASEANなどをターゲットとしたものです。一方、年間所得が3,000ドルを下回る人口は約40億人にも上り、これらの人々をターゲットをしたビジネスが注目されているようです。同日の日本経済新聞朝刊に『世界の低所得者、開拓、40億人、将来の成長市場』という題目の記事が掲載されていました。記事によると、ホンダが5万円を切る低価格二輪車をタンザニアで、第一三共はマラリア治療薬をインドで、ファーストリテーリングはバングラディッシュで生産や販売を拡大されるそうです。また、低所得者層は所得ピラミッドの底部を構成することから、「ベース・オブ・ピラミッド(BOP)」と呼ばれ、新興国市場に続く購買層になるとみて、欧米の企業がBOPビジネスに積極的に展開しており、日本企業が出遅れていた分野であると指摘されています。これらの人々へ製品を供給するため、日本企業による先進国や新興国以外での直接投資が活発化することが予想されます。
上述した2つの流れは、対外直接投資につながることで、国内の空洞化を招く恐れがあります。しかし、日本企業が投資活動をストップすれば、日本そのもののダメージはむしろ加速すると思います。これら海外での低価格の消費財や汎用品を生産する企業の国際的な展開が、むしろ付加価値の高い日本国内で製造された部品や素材の輸出に結びつくからです。日本の製造業は海外へ進出するためのノウハウをかなり蓄積しています。これら企業が先陣を切り、この円高でも耐えうる日本国内に温存された企業の輸出へとつながれば、その意義は大きいと感じます。

2012年4月8日日曜日

コマーシャルペーパーの発行残高

2012年2月16日付『日本銀行のバランスシート』のブログにて、日本銀行の貸借対照表を掲載しました。その中で、平成23年9月末の貸借対照表の資産の部に「コマーシャルペーパー等」が1兆4,646億円計上されていることに気づきました。国債84兆円3,671億円とは比べて比較にならない残高ですが、平成17年9月末の貸借対照表には計上されていなかった勘定科目です。最近では、日本銀行は、コマーシャルペーパー(以下CP)を積極的に購入しており、市場へと資金供給するための手段を増やしているという姿が伺えます。
実は、2012年2月6日付『欧州銀の負の影響』のブログでも、CPについて僅かですが言及しています。そのブログを書いているうちに、外貨MMFの投資対象に外国の大手銀行が発行したコマーシャルペーパー(以下CP)が組み込まれていること知りました。CPは私の資金運用に少なからず影響を与える存在です。そこで、CPについて少しばかり調べてみました。
 まず、市場規模です。ある記事によれば、2011年末の残高が16兆円5,427億円に達したとの記述がありましたが、残念ながらこのデータを見つけることができませんでした。図は、日本銀行統計局発表のデータから作成したものです。2011年末時点で、CPの発行残高は、銀行等引受分10兆1,227億円、銀行等発行分6,144億円だということがわかりました。これ以外にもMMFなどが購入している分もあるそうで、最近では巨額な補償問題を抱えた電力会社が積極的にCPを発行、機関投資家が引き受けているそうです。本来は、長期の借り入れで調達すべき資金ですが、電力会社のリスクを嫌ってか、長期での資金調達ができない結果、電力会社はCPへ依存しているそうです。16兆円という規模は、CD(譲渡性預金)35兆5,866億円、公社債現先21兆7,477億円と比べてやや小さいものの、無担保コール3兆6,686億円、有担保コール13兆9,056億円の市場規模を上回っており、企業の資金調達の手段としていは定着しているようです。
そして、CPとは何かということで簡潔にまとめられた記事がありましたので、引用させていただきます。引用元は『プレジデント』2012.3.5号で、記事の題目は『「会計」考現学112』です。以下引用文。
『CPは支払い期日までの期間が短い約束手形で、額面の金額から利息分を引いた額が貸し付けられる「割引方式」で発行される。償還までの期日は1年未満で、特に30日以内の短期で発行されることが多い。
発行できるのは上場会社の中でも一部の優良会社に限定され、担保は不要。その分、確実に支払い(返済)ができるという信用性が必要とされる』
日銀の公開市場操作の結果、資産の部に組み込まれていると思われるCPの残高です。企業の短期の資金調達ばかりでなく、MMFの運用先にもなっており、今後の市場規模の拡大が見込まれる金融商品でしょう。

2012年4月7日土曜日

市場規模の小さい映画産業

私の消費支出はいつも歪みがあります。少し前までは写真撮影に夢中になっており、カメラやレンズなど写真関連の支出が、消費支出のうちかなりの割合を占めていました。今は、ネットワークやパソコンの環境をウィンドウズパソコン主体のものから、iPhoneやMacなどアップル製品に全面移行している最中のため、通信費やパソコン代が圧倒的なウェイトを占めるようになってきました。また、本を読んだり、映画館へ行って映画を月に2度ほど定期的に観ていることから、書籍や映画代などの娯楽代も馬鹿にならない水準になっています。もっとも、上記の項目については一般の家計と比べてやや大きいと感じるものの、支出の大半を生活に不可欠な、食費代や光熱費、住居費など占めていることは言うまでもありません。
しかし、アップルの提供するiTunesに夢中になってからは、様相が大きく変化してきました。特に、iTunesが提供するコンテンツに映画が含まれてからは、家で映画を観るという機会が増えてきた気がします。そして、昨年の7月に26インチですが、最新の薄型テレビも購入した上、AppleTVも設置しました。私の購入した薄型テレビがたまたまネットに対応したモデルであったため、NHKオンデマンドとも契約、ストリーミングでの映画放送も堪能しています。そして、極めつけは、BSの有料チャンネルであるWOWOWにも加入しました。それからは、映像関連の支出が、食費を上回るまでになり、家計をかなり圧迫するというのが事態です。先のブログでも記述しましたが、上記の支出に加え、Huluなるストリーミング放送にも契約、毎日が映画や海外ドラマ三昧という生活を送っており、出不精に拍車がかかっています。
 そこで私生活の中心に位置している映画産業の市場規模を調べてみました。経済産業省発表の資料によると、なんとパチンコホールの売上高が8兆円超に対して、私の好きな映画産業は1,000億円に満たない767億円にとどまってます。確かに、日本での映画一本の興行収入が100億円を超えるということは余り聞いたことはありません。ヒットしてもせいぜい10億円程度です。感覚的には上記の数字は合っている気がします。
しかし、コンテンツのビジネスは、アップルが見せたように、デバイス等を製造するメーカーが飛躍する上で不可欠なアイテムであることは言うまでもありません。日本の映画産業の発展は、それだけには留まらず、レンタルDVDなどサービス産業の発展に直結するとともに、配信ビジネスを通じて、デバイスを製造するメーカーなどにも波及する可能性は十分にあると考えています。デバイスの製造ばかりに傾注し、不況だ、不況だといっているばかりでなく、映画や音楽などコンテンツのビジネスの市場規模拡大の育成に目を向けることが必要です。モノからヒトへの変革をうたっている現政権は、ヒトにウエイトを置いた政策運営を進めていくことを明言しています。ならば、世界市場にうって出ることのできるコンテンツビジネスを展開できる人材育成にも投資をする必要があると思います。

2012年4月6日金曜日

変化の激しい繊維メーカー

戦後まもなく、日本経済は繊維業を中心に復興、米国の同業界を追いつめまで至った。そして、長期間にわたる日米繊維交渉の結果、日本が繊維製品の輸出自主規制に同意、その代償として沖縄返還へと結びついたといわれている。もっとも、衣料用繊維は、ここ30年は中国製品などの安価な輸入品に押され、現在では衣料品の9割以上に輸入された衣料用繊維が使われている。この間、繊維業界は苦しい立場に追い込まれたものの、カネボウのように事実上消滅した企業もあるが、研究開発を進めることで業態を劇的に変化させ、一部の企業には炭素繊維や高機能フィルムなどの分野で世界のリーディングカンパニーとなっているものもある。特に、躍進が目立つのが、化学繊維を創業製品として、化学メーカーへと脱皮した東レ、帝人、三菱レイヨン(三菱ケミカルHDの子会社)、旭化成、クラレです。
 2012年4月1日の朝日新聞朝刊に繊維業界の現在を簡潔にまとめた記事(注)が掲載されていましたので引用します。以下、記事の一部引用。
『(繊維各社の)開発力は産業用でも発揮されている。
 鉄と比べて重さが4分の1、強さは10倍という炭素繊維は日本を代表する素材。開発で先行した欧米メーカーは1990年代までに採算が取れないと撤退や事業縮小したが、日本勢は生産開始から約40年かけて用途開発を温めてきた。ボーイングやエアバスが採用した航空機が昨年デビューし、自動車メーカーとも共同開発が進む。東レ、帝人、三菱レイヨンの3社の世界シェアは7割だ』
 『クラレは昨年10月、国内の工場で約130億円を投じ、「光学用ポバールフィルム」の増産を発表した。液晶テレビの偏光板のもととなるフィルムで、世界シェア8割を握る稼ぎ頭だ。液晶テレビの価格が大幅に下落するなか、高機能を背景に価格を維持している』
 『化学繊維は石油を原料に化学的に合成してつくる。70年代の石油ショックを機に、化学繊維を作る技術をもとに新規事業を相次ぎ立ち上げた。旭化成、東レ、帝人、クラレ、東洋紡、ユニチカなど化学繊維大手の大半で、創業製品の繊維より樹脂や化成品など繊維以外の事業が売上高の半分以上を占める。旭化成は93年、クラレは07年に証券取引所の上場業種を「繊維」から「化学」に変えた』
繊維業界は、驚くべき変化を遂げている。これ以外には、化学メーカーにシフトしていないものの、化学繊維を主たる製品としている東洋紡などでも変化がみられる。同社は医療分野に進出、血糖値測定で使われる診断薬の原材料メーカーで世界シェア1位となっている。また、化学繊維ではなく、天然繊維を創業製品とする日清紡HDでも自動車部品などへ進出、ブレーキ部品製造などで自動車の高性能化を下支えしている。
右表は、日本の大手繊維メーカーの売上高、営業利益を示したものです。化学繊維系から化学メーカーに脱皮した企業の規模が総じて大きいことがわかります。この中で注目すべきは、外国人持ち株比率です。日清紡HDを除いて、化学メーカーへと脱皮した5社の同比率が高いことです。特に、クラレなどは35.7%にも達しており、海外からの注目度合いが高いことが伺えます。まずまずの営業利益を出しており、ほぼ壊滅状態のパナソニック、ソニー、シャープなどの電気機器メーカーとの差が大きくなってます。
(注)題目は『21世紀の繊維、新素材開発で勝負、高機能、まずは国内生産』。

2012年4月5日木曜日

危機的な厚生年金基金の財務状況

  証券取引等監視委員会により、AIJ投資顧問の強制調査が行われました。虚偽の運用条件を示すなどし投資一任契約を顧客と結んだ疑いが強まり、同社を金融商品取引法違反(契約に関する偽計)の疑いで調査、運用損失は累計で1,092億円に及ぶことが判明しました(2012年3月24日付日本経済新聞朝刊)。デフレが進行する中で、高い予定利率をこれ以上維持することは困難であり、厚生年金基金の財務状況の一層厳しくなることが予想されます。このことは、積み立て不足を補てんする義務がある企業経営にも少なからず影響を与えることから、早急な予定利率の引き下げなどの対応が求めらます。
右図は、厚生年金基金の掛け金総額と給付総額の推移を示しています。団塊世代の年金受給が本格的に始まっており、現役世代の絶対数が少なくなっている上、所得水準も減少傾向にある中で、2009年から2年連続で、給付総額が掛け金総額を上回っています。これは積立金の取り崩しを意味しており、加えて長期化する運用実績の低迷が続いていることから、2011年以降も、この逆転現象は続くことが予想されます。因みに、同じ資料によると平均標準給与は、2007年の332,010円から2010年の320,752円と減少しています。
基金の財務状況の悪化につけ込んだのがAIJの問題であり、デフレが続いている中でも確定給付を続けており、年金の実質的な手取金額の増加を放置していることに根本的な問題があると思います。もっとも、以前ブログでも書いたことですが、年金の給付額の引き下げは極めて困難な作業です。従って、年金受給者への課税強化、そして消費税率の引き上げなどが適切な方法であり、新たに徴税された税金でもって年金の国庫負担分を引き上げることが妥当な選択であるといえます。
ここで、税金の注入先は、企業年金基金ではなく、あくまで基礎年金です。なぜなら、厚生年金基金の受給者数は284万人に過ぎず、年金全体の受給者からいって恵まれた経済環境にあります。しかし、企業年金という一部の人々の権利を満たすため、企業業績の悪化する事態は避けるべきです。結果として企業業績の低迷を通じて、わが国の年金全体の財政状況に影響する恐れがあるからです。年金制度を語るにあたって、企業年金基金の問題は放置できないとろこです。やはり本命は、給付額の引き下げです。

2012年4月4日水曜日

止まらない東京への集中

東京への集中が止まらないようだ。2011年には象徴的なことが起こりました。それは、東京証券取引所と大阪証券取引所の経営統合に向けた合意がかわされたことです。経営統合という言葉が用いられていますが、事実上、東京証券取引所による大阪証券取引所の吸収合併であり、この分野での東京へと集中が加速しそうです。今後、名古屋証券取引所など、このほかに存在する証券取引所の地位は一層低下するばかりか、存在意義を問われることになるでしょう。この結果、地方に生活の本拠地を置く私にとって寂しいことに、東京以外に本社を置く企業が減ることとなります。
東京への一極集中は望ましくなく、地方への分散や分権の必要性が長年議論されています。道州制の導入なども、その流れの中にあるといえます。しかし、企業の集中度合いを考えれば、東京への集中はむしろ進んでいるようです。右表は、米国、日本の国別の企業の時価総額ランキングを示しています。日本の時価総額ランキング上位10社のうち、なんと7社が東京に本社を置いています。NTTドコモ、NTT、JTは公社時代の名残りであり、これら企業が未だに上位にいること自体が信じられないことです。三菱UFJと三井住友FGは金融セクターとしての東京の地位によるもので、公社系の3社と含めて、10社のうち5社が規制の対象業種であることが特徴です。東京に本社を置く例外的な存在は、ホンダとキャノンで、外国人株式保有比率がともに高く、国際的に知名度もある製造業であることです。救われるのは時価総額1位が愛知に本社を置く、トヨタ自動車であることと、ファナックの本社が山梨県所在の私が知らない村であることです。日産自動車はルノー傘下の企業ですので論外です。
一方、米国はといえば、ニューヨーク州か、カリフォルニア州のどちらかに本社を置く企業が多いのかと思っていました。しかし、実際に調べてみると、カリフォルニア州に本社を置くのは、アップル、シェブロン、グーグルの3社で、ニューヨーク州に至ってはIBMの1社だけです。AT&Tがニューヨークに本社を置いていないのは意外でした。アップル、グーグル、マイクロソフトなどは新興のIT企業です。ウォールマートも1969年設立ですので、歴史は浅いといえます。これら比較的に新しい企業が4社もランキングインしていることは、素晴らしい事実であるといえます。
私が言いたいのは、日本の企業は新陳代謝が進んでいないということです。米国でもAT&Tやゼネラルエレクトリック、エクソン・モービルなど歴史のある企業が上位に依然としてくい込んでいるものの、それらの業態は設立時代からの原型はとどめていないというのが事実です。日本にもアップル、マイクロソフト、グーグル、ウォールマートみたいに新しくて、国際的にも競争力がある企業が伸びてもいいのではないでしょうか。それを進めるには、まず東京からの脱出や東京の呪縛からの脱却を図ることが不可欠だと思います。製造業の主戦場は、国内ではなく海外になっています。特にアジアを意識して、九州などに本社機能を移すのもいいのではないでしょうか。
私は岡山県と京都府以外に住んだ経験がありません。しかし、大分県に転勤した友人の誘いで、何度か大分県に行ったことがあります。大分県はいいですね。温泉の湧水量は何と日本で一番多いそうです。そして別府の温泉は奇跡です。場所によって湯質が異なるのです。また、関サバ・関アジに代表される海の幸、豊後牛などの山の幸にも恵まれています。東京で通勤地獄にもまれ、時間を浪費するよりも、大分県などにいっそう本社機能を移転するなどして、従業員が生活をする環境をがらりと変えることで、個々人の発想の転換を促すこともできます。
この頃、日本は意外に広いと感じています。それは物理的に広いという意味ではありません。江戸時代にヒトの往来を制限したことで、地域地域に色々な文化が根付いています。それぞれの地域には衣食住全てにおいて個々の文化が存在します。そういう意味で日本は広いのです。東京みたいに狭いところへ1千万人以上ものヒトを閉じ込めることは、これら地域に根付いた文化を軽視しているといえます。情報がないから仕事ができないという人々がいるかもしれませんが、ネットで世界がつながっているのですから、情報は岡山県にいても、リアルタイムのものを得ることができます。事実、このブログに綴っている内容も、海外のホームページからダイレクトに集めたものが含まれているのです。
今、視点を変えた企業経営が求められています。視点を変えるための発想の原点は、生活している環境に左右されるかもしれませんね。

2012年4月3日火曜日

競争が激しい半導体業界

英国の市場調査カナリスによると、2011年第4四半期の販売台数で、スマートフォンがパソコンを上回ったようです。パソコンの販売台数は前年同期比16.3%増の1億2,020万台と好調であったものの、スマートフォンの勢いは止まりません。スマートフォンの販売台数は、何と同56.6%増の1億5,850万台にも達し、パソコンだけという時代は終焉を迎えつつあります。通年でも、パソコンが4億1,460万台にとどまる一方で、スマートフォンは4億8,770万台とスマートフォンが独走状態に入っています。それならば半導体業界でも激震が走り、パソコンのCPUの製造で業界トップのシェアを有する米インテルの半導体全体でのシェアが低下することが予想されます。
しかし、事情は異なるようです。昨年の半導体シェアに関する記事が、2012年3月27日付日本経済新聞夕刊に掲載されていました。記事の題目は『昨年の半導体世界シェア、インテル、過去11年で最高』で、米インテルの好調さを示唆しています。記事によると、同社は付加価値の高い製品の販売を増やしたこと、独社から携帯電話用半導体の事業を買収したことが寄与し、シェアが前年比で2.5ポイント上昇し、過去11年で最高の15.6%にまで伸ばしたそうです。付加価値の高い製品とは何か分かりませんでしたが、携帯電話用半導体を手掛けたということは注目に値します。パソコンの成長に限界がみられる中、今後、同社がスマートフォンなどのCPU製造に手掛けることは予想されます。ウィンドズフォンなどを土台にすることが近道ですが、アップルのMacのCPU供給を一手に手掛けているという実績を買われて、iPhoneへのCPU提供などもあっていいのではないでしょうか。特に、MacのOSであるOSXとiPhoneのOSであるiOSが徐々に親和性を高めていのます。ならば、iPhoneのCPUにもインテルが供給してもおかしくないと思います。そして、どういう形になるか分かりませんが、同部門でトップシェアを誇るクアルコムに挑むことは十分に考えられます。因に、クアルコムは世界シェアは1ポイント上昇の3.3%にとどまっており、スマートフォンの原価に占めるCPUの割合が小さいことが伺えます。
ここで、驚くのは、半導体最大手とインテルといえども、そのシェアは15.6%にとどまることです。業界2位のサムスン電子は、DRAMでは圧倒的に強いものの、フラッシュメモリーではシェア4位の東芝と激しいシェア争いをしています。特に、アップルとサムスン電子が繰り広げているスマートフォンの訴訟合戦の影響で、アップルがフラッシュメモリーをサムスン電子以外から調達する可能性もあり、東芝の大逆転の可能性も否定できないでしょう。そして、業界3位のテキサス・インスツルメンツとルネサスエレクトロニクスはASICで強いようです。ASICとはApplication Specific Integrated Circuitの略で、特定の用途向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路の総称です。つまり、DRAMやフラッシュメモリーとは異なり、ASICとはプログラミングが書き込まれた半導体のことです。このほか、日本企業で活躍しているのは、日亜化学工業があり、発光ダイオード(LED)の需要拡大を背景に、売上高を34.1%増加させています。
半導体市場は、今や3,000億ドルを超える市場規模に達しています。DRAMやフラッシュメモリー、CPUなどに目を奪われがちですが、半導体には色々な種類があり、特殊な部門に特化した企業が多いのです。

2012年4月2日月曜日

債券投資と裁定

株式投資はややバクチみたいな性格があります。ポートフォリオを十分に考え、理論的な解釈を行った上で投資したとしても、やっぱり儲けや損失が出る時は、個別銘柄の話題性など理論では説明ではない部分で生じる可能性が高いです。もっとも、20銘柄以上をポートフォリオに組み込むことができる財力を有するものにとっては、ある程度、個別株式の価格変動リスクは制御できるかもしれません。しかし、これは庶民にとって膨大な資金を必要なことから困難なことであるといえます。
 一方、債券投資は理路整然としており、リスクが小さい投資方法であり、本来、日本国民は債券投資などをもっと積極的に行っていもいいと感じています。2012年3月30日付の『リスク回避な家計と合成の誤謬』のブログでも、家計の保有する金融資産のうち、5%を株式、3%を投資信託、2%を債券といった具合に、債券投資の割合が小さいことがわかりました。債権残高が1,000兆円に及ぶ市場規模にも達することから、債券投資について考える機会がもっとあってもいいと思います。勉強不足は否めませんが、今日は債券について少し書いてみます。
 債券は、大まかにクーポンのある利付債とクーポンのない割引債に分けられる。日本人にとって馴染みがあるのは利付債であり、現在では割引債を購入したことがある人は少数ではないかと思います。以前は、無記名の金融債などで割引形式のものを購入した人がいたかもしれませんが、金融債自体の発行が少なくなっており、債券投資における我々の選択肢は減っているといえます。
 ところで、利付債の利回りと割引債の利回りは単純に比較できないところがあります。それは、クーポンのある利付債は、受け取った利息を再投資した場合に得られるであろう利息を含めて利回りを計算する必要があるからです。それを考慮した場合、利付債の利回りの計算はやや複雑になること、利息に対して税金が源泉徴収されること、実際には再投資が容易ではないことなどから、実勢の利回りとやや異なることとなる。
 一方で、クーポンのない割引債の場合、途中で税金を徴収されることなく、利息の再投資に対するリスクもないため、償還まで保有した場合、利回り自体が全てが一つの債券の価格でもって計算されることとなり、実勢の利回りと近似する。上記の性格を考慮すれば、同じ残存期間の債券で考えれば、利付債の方が割引債よりも利回りが低くなる一方で、利回りが同一ならば、割引債の方の残存期間が短くなるであろう。
 某証券界社の米国債の利回りで比較しよう。米国の利付国債で、残存期間が29年10ヵ月物の利回りと割引債の残存期間23年10ヵ月物の利回りが同じ3.17%となっています。また、残存期間27年10ヵ月物の割引債に至っては3.25%と、残存期間が短い債券の方が利回りが高いという逆転減少が生じており、このことは、上の理由、特に再投資の部分で説明できるといえます。
 上記で、私は債券投資を進めていますが、債券にとって最大のリスクとは、インフレです。わが国の10年物の国債が1%前後で推移している中では、将来のインフレに対するヘッジができません。従って、今、考えるならば、外貨建て債券への投資だと思っています。日本人が外貨建て債券へ投資するに当たって考えなければならないのが、まず、為替です。そして、相手国の潜在成長率及びインフレ率などです。ここで面白いデータがありますので、ご紹介します。私は、たまたまオーストラリアドル建て債券の価格を追っていました。投資をするというよりは、オーストラリアの経済を知る上で役立つデータだと考え追っていたものです。具体的には、欧州開発復興銀行のオーストラリアドル建ての割引債です。
 右表は、同じ債券を4つの日付で利回り、豪ドル建ての価格、円豪ドル相場、日本円での時価を示したものです。2011年12月7日は、長期金利の低下によって、豪ドルが大幅に下落、債券価格が39.47豪ドルであるにもかかわらず、日本円で表した価格は3,124円にとどまっています。一方、2012年3月26日には、37.88豪ドルと債券価格が最も安いにもかかわらず、長期金利高に引っ張られる形で、豪ドルが上昇、結果として3,283円と日本円でみた価格は高くなっています。結局、上記のデータをみる限り、最も効率的に購入できたタイミングは、2011年12月7日であったことがわかります。
 しかし、ここで注意点があります。仮に2011年12月7日時点で、短期の豪ドル債か豪ドルの現金・預金を1豪ドル=79.16円で購入し、仮に、それでもって2012年3月26日に37.88豪ドルで、上記債券を購入することができれば、最も効率的な投資方法となります。これが手数料なしで実現出来たのならば、79.16円×37.88豪ドル=2,998円で上記債券を購入することができます。通貨と債券を購入するタイミングをずらすことができれば、最高の投資となるのです。もっとも、個人投資家にとって、通貨と債券の購入するタイミングをずらすことはなかなか出来ないことです。今日は、支離滅裂な内容になりました。債券は理路整然としています。それを語るに当たっては、相応の知識が必要です。これを機に債券に関して調べていくつもりです。

2012年4月1日日曜日

光合成の解明と水資源の大切さ

私は、やや「科学技術おたく」ぽいところがあります。毎月「日経サイエンス」「ニュートン」を定期購読しており、科学の分野で新たに解明された事実があれば、知人に話しています。昨年の日本は大変な状況にあり、科学雑誌に目を向ける時間がなかったのが事実でした。その中で、私は完全に見落としていた科学的な発見があったことを先ほど知りました。
それは、2012年3月25日付毎日新聞朝刊を行きつけの喫茶店で読んでいる時でした。日本化学会が2012年2月に『30年後の夢のロードマップ』を発表した旨の記事が掲載されており、その中に人工光合成の実現が含まれていることに驚きました。2008年4月号の「ニュートン」に、光合成のメカニズムの中で、どのように水を分解しているかが解明されていないとのことのこと説明されていました。以下「ニュートン」の引用文です。
『水分子から生じた酸素原子は、結合して酸素分子となり、大気へ放出される。それこそが、私たちが呼吸の際に吸いこんでいる酸素なのだ。
ただし、水分子がどのようにして分解されるのか、正確なことはわかっていない。下の実験(乾電池を使った水の電気分解の実験)のように、水を分解するには電源(乾電池)が必要なはずだが、植物はどこに電源をもっているのだろう。実は、植物による水の分解は、"光合成に残された最大のなぞ"といわれている。その解明に向けて、世界の研究者が研究をつづけている』
この記事を読んでから"光合成はまだ解明されていない"と思い込んでいました。しかし、人工光合成の実現がロードマップにあることから、もしやと思い、慌ててウェブで確認してみました。すると、2011年4月に「光合成における水分解」が解明されたことが、大阪市立大学のホームページに記載されていました。ついに、光合成の全容が解明されたのです。以下にホームページ記載の記事の引用です。
『大阪市立大学・複合先端研究機構の神谷信夫教授(物質分子系専攻)と岡山大学大学院自然学研究科の沈建仁教授(バイオサイエンス専攻)らの研究グループは、光合成において光エネルギーを利用し、水を分解して酸素を発生させる反応の謎を解明しました』
マンガン原子4個、カルシウム原子1個、酸素原子5個で結合された金属・酸素クラスター上で進行していることは分かっていたものの、正確な化学組成と詳細な原子配置が明らかになっていなかった。昨年の話ですが、このほど化学組成と原子配置が解明されたそうです。そして、この水分解によって発生した酸素は放出される一方で、取り込まれた水素イオンが、世界最小の分子モーターであるATP合成酵素を1秒間に17回回転させるエネルギーとなるのです。
水分子のうち酸素が排出される一方で、取り込まれた水素は光合成の中で重要な働きをするのです。今後の経済を語るに当たってやはりキーポイントとなるのは、「水」だと感じました。水がなければ植物は光合成をすることができないのです。バーチャルウォーターを考慮した場合、日本の水資源の自給率は100%を下回っているそうです。特に、農業用の水確保は安定的な世界情勢を確立する上で重要であり、チグリス・ユーフラテス川におけるイラクとトルコの対立に代表される国際河川の水管理は議論を要するところでしょう。上図は、ニッスイアカデミーのホームページに掲載されていた『世界の水資源の動き』というリポートから抜粋したデータです。1995年に35,720億トンであった水の需要が、2025年には49,120億トンまで増加することが示されていました。3月26日の『世界の森林資源』に綴ったように、水を如何に確保すること、そして水を如何に効率的に利用するかが大切なことになってきました。