2012年9月30日日曜日

新日本製鉄と住友金属工業の経営統合と厳しい現実

 ついに、大型の企業統合が実現しました。粗鋼生産、国内1位の新日本製鉄と同3位の住友金属工業が2012年10月1日に経営統合します。これで、世界第2位の粗鋼生産量を誇る鉄鋼メーカー、新日鉄住金が誕生するとともに、各国間の貿易が拡大する傾向の中で、国内での寡占化の問題ではなく、これは、国際競争力の維持を意識した統合であり歓迎すべきことでしょう。これ以外にも、多くの分野での日本企業も徹底的に経営統合を進めるべきでしょう。公正取引委員会も国内市場での寡占・独占の問題を第一に考えるのではなく、国際競争力を維持できるかどうかを第一に考えた施策を求められているのです。予断ですが、このブログを書くまで知らなかったのですが、三菱重工業と日立製作所の経営統合はガセネタだったようです。
 しかし、新会社、新日鉄住金には厳しい船出が待ち受けています。待ち受けているのは、鉄鋼最大手のアルセロール・ミッタル(注1)(ルクセンブルク)ではありません。最大の強敵は、中国鉄鋼メーカーでの過剰設備であり、中国鉄鋼メーカーの設備の稼働率の低下から鋼材価格は下落しているようです。1トン当たりの鋼材価格は、5月比で大きく下落、日本で▲10%(▲はマイナス)、欧州は▲17%、米国は▲10%、インドは▲19%と軒並み下落、そして中国に至っては▲20%ものマイナスを記録しています(注2)。他社との競争はともかく、この世界的な過剰設備に起因する鋼材価格の下落が、鉄鋼メーカーの最大のネックとなっているのです。中国の粗鋼生産量は、いまや世界の40%以上を占めることから、世界経済の減速がもたらす鋼材価格の下落は、今後も続くものと予想されます。

 新日鉄住金に関する記事が2012年9月28日付読売新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。この記事の中で、少しばかり気になった部分があります。それは、電磁鋼板に関するものです。電磁鋼板とは、発電所やモーターなどに使われる高度な技術を必要とする鋼材で、日本企業が強みを持つ分野だそうです。その技術を、OBを通じて不正に流出したとして、新日鉄は今年4月に、韓国ポスコを提訴したとのことです。また、韓国企業か、という印象です。アップルとの訴状合戦でもいえますが、人の技術を盗むばかりで、自らの力でもって新しく、かつ革新的な技術をつくる文化が、きっと韓国には根付いていないのでしょう。同国は、先進国グループに入る依然の問題であり、中国で平然と流通するコピー商品と同レベルの企業文化しかないのが現実です。記事の題目は『新日鉄住金、厳しい船出。中韓勢と競争、見えぬ海外生産』です。以下引用文。

 『10月1日に新日本製鉄と住友金属工業が統合し、鉄鋼業で世界2位の新日鉄住金が発足する。世界一の鉄鋼メーカーとなった新日本製鉄誕生から42年。2度目の大再編で誕生する新会社は粗鋼生産量で2倍のアルセロール・ミッタル、ほぼ同規模の中国、韓国勢との競争にさらされており、直面する課題は多い。(経済部 山下福太郎、秋山洋成)(中略)
 今年4月、鉄鋼業界をとりまく経営環境の変化を象徴する出来事が起きた。
 新会社の最大の取引先であるトヨタ自動車の主要な取引業者で作る業界団体「協豊会」に、海外の鉄鋼会社として初めて世界第4位の韓国ポスコが入会した。同会はトヨタの資材調達担当の経営陣と情報交換ができるメリットがある。トヨタと新日鉄は互いに業界の雄として、鋼材価格の交渉を続けてきたが、ポスコの台頭は今後の価格交渉に微妙な影響を与える可能性がある』
 もともと過剰な高品質の鋼材を必要としない新興国の自動車向け鋼材はともかく、日本国内の造船重機大手の三菱重工も中国や韓国の鋼材を使い始めているそうです。これに加えて、中国の鉄鋼メーカーの過剰設備です。鋼材価格の引き下げなど要求など、新日鉄住金は、設立当初から苦戦を強いられることが予想されます。一方で、企業規模の拡大は、鉄鉱石や原料炭の輸入において主導権を握ることができます。もっとも、ヴァーレ、リオティント、BHPビリトン鉄鉱石大手などが提示する鉄鉱石価格は下落しているとされており、現時点では、原料調達の面で企業統合の優位性を発揮する可能性は低いといえます。ならば、道は一つです。新日鉄住金が進むべき道は、絶え間ない技術の革新を追求することです。欧州、中国、韓国などの企業に技術情報を渡し過ぎた今、遅すぎるともいえますが、革新的な技術をつくり続けていた企業文化は残っています。新日鉄住金が、苦境を生き残り、新たなステップへと向かうことが期待されます。
(注1)記事によれば、アルセロール・ミタルという表記もあり。
(注2)2012年9月13日付日本経済新聞朝刊より引用。

2012年9月29日土曜日

環境への負荷が大きい石炭火力発電への回帰

 今年は、北極海の海氷面積が過去最小となったことが判明しました。宇宙航空研究開発機構が9月20日に発表したデータによれば、マイクロ波放射計が観測した北極海の海氷データを解析した結果、今年の海氷面積は、8月24日に421万平方キロメートルに縮小、それまでの観測史上最小記録を更新したそうです。そして、その後、海氷面積は減少を続け、9月16日には349万平方キロメートルまで縮小しました。北極海の資源開発は航路の開通などで盛り上がっていますが、一方で地球温暖化の危機は確実に進行しているといえます。今年の米国、ロシア、ウクライナ、インドなど穀倉地帯の干ばつ被害は、深刻であり、これも地球温暖化の影響によるものと考えてもいいでしょう。


 こうした中で、日本政府は石炭火力発電所の新増設の再開について本格的に検討に入ったようです。私としては、今更石炭火力への回帰はいかなるものかと思っています。地球温暖化への影響を第一に考えた場合、石炭よりも天然ガスの方が環境に優しく、シェールガスの採掘が本格化しており、今後の低価格の天然ガスが手に入る可能性も出てきており、埋蔵量が豊富であること以外は、石炭の優位性は全くないといえます。石炭火力に関する記事が2012年9月25日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『石炭火力の新増設再開、政府検討、環境評価見直し』です。以下引用文。

 『政府は環境への負荷の大きさから難しくなっていた石炭火力発電所の新増設を認める検討に入る。年内にも発電所の環境影響評価(アセスメント)を見直し、どのような場合に建設を認めるかをわかりやすくする。アセスの審査期間も短くし、民間事業者の投資を促す。東京電力は当面、原子力に代わる電源として石炭火力を新設する方針で、来年にも新たな基準の下でアセスを申請する見通しだ。
 経済産業省と環境省が近く発電所のアセス見直しで協議の場をつくる。年内にもアセスの指針の大枠を固め、来年中の実施をめざす。
 具体的にはどのような環境性能の設備ならば認められるのか、二酸化炭素(CO2)排出量の取引でカバーできるのかといった点を明確にする。審査を通った過去の事例も示し、事業者の参考にしてもらう。ただ、環境省は石炭火力の容認には慎重な姿勢で、議論は曲折も予想される』

 今後の原子力発電の比率に関して、国民的な同意が得られていない中で、すぐさま石炭火力への依存を高めることはできません。原子力発電の停止により、電力事業者の財務体質は弱体化しており、無駄な投資をすることは許されていないのが実情でしょう。国家のエネルギー政策は、社会保障のあり方や橋りょう、道路などの整備などと比べて優先される課題です。エネルギー政策で失敗して滅んだ国は、過去に多くありますし、米国や中国などもエネルギー政策を国家戦略の最優先課題にしています。上図は、経済産業省資源エネルギー庁作成の『エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)』(2011年)掲載のデータから作成したグラフです。日本の1次エネルギーに占める石炭の割合は22%と、アメリカ、ドイツと同水準、英国、フランスと比べてかなり高くなっていることが図から読み取れます。2009年のデータですので、原発は稼働しており、エコ大国と言われた日本が、石炭の依存が高いことには驚きました。この比率を高めるということは、時代の流れに逆行しているともといえ、速やかなるエネルギー政策の決定が求められるのです。

2012年9月28日金曜日

厳しさを増すインド経済、外資導入促進と国内での抵抗

 BRICsの一角であるインド経済が脱落の危機にあります。先進国の成長が鈍化している中で、比較的堅調に推移してきた新興国の中核であるBRICs諸国であるインド経済が本当に失速する可能性が出てきました。インドは、現在は中国に次ぐ世界第2位の人口大国ですが、近年中に中国を追い抜き、第1位の座に付くことが確実視されています。その経済が立ち行かなくなれば、大量の経済難民が発生する事態を生み、国際経済にとって不安定要素となりかねないのが実情でしょう。
 それでは、インド経済が、危機である最大の原因は何でしょうか。それは、国内の貯蓄不足から生じる経常収支の慢性的な赤字です。途上国が高い成長率を維持するには、潤沢な国内貯蓄により経常収支が黒字である必要があるからです。かつての日本もそうですし、中国経済が成功した背景には、国内に潤沢な貯蓄があり、経常収支が定常的に黒字であったことがあります。経常収支の赤字で、かつ成長率が高い国は、常に海外からの赤字のファイナンスを受ける必要があるのです。日本、中国ともに所得が順調に伸び、消費が所得の伸びに追いつかず、国内貯蓄だけで国内投資の原資を賄うことができたのです。一方、経常収支の赤字の国は、何らかな原因に端を発して海外へと資金が流出し始めれば、通貨安をもたらすでしょうし、通貨安が外資の流出を加速させるのです。そればかりでなく、通貨安が引き起こす国内物価の上昇という事態を招き、国内経済・社会は不安定化するのです。どうして、インドが貯蓄不足なのかは詳しく調べたことがないため、詳細は分かりませんが、一部の裕福な人たちを除き、大多数の国民が低所得にもとに置かれ、日々の生活に追われ、貯蓄どころではないことに起因すると思います。下図は、私が作ったインド経済の取り巻く環境を示したものです。
 つまり、インド経済は、慢性化する経常収支の赤字と通貨ルピー安、そしてこの2つの要因に伴う外資の流出に苦しんでいると考えています。こうした中で、インド政府は外資の規制緩和という政策手段を選択しました。この外資規制緩和に伴い国外の大型小売店が進出する懸念から、インド全土で商店の経営者などが抵抗活動を展開、緊張が高まっています。インドの外資規制緩和に関する記事が2012年9月22日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『インド、総合小売業開放。外資規制緩和、日本勢など進出急ぐ』です。以下引用文。
 『【ニューデリー=岩城聡】インドでコンビニエンスストアやスーパーなどの小売業に、地元企業との合弁方式での外資参入を許可することが決まった。日本を含む海外企業は12億人規模の手つかずの市場での事業展開が可能になる。ただ、シン首相の国内の反対を押し切っての強引な決断は政権の弱体化を招く可能性をはらむ。
 20日夜に公示された内容は、これまで禁止していた複数ブランドを扱う小売業に対し、海外企業の出資比率を51%まで認めるというもので即日実施した。①100万人以上の大都市での展開②商品の30%以上を地場の中小企業から購入する-などの条件も付けた。
 シン首相は「これは改革の『ビックバン』。政策の行き詰まりを打開するには勇気とリスクが必要だ」と「市場開放」の意義を強調する』

 規制緩和をにらみ、米ウォールマートは即座に行動、12〜18ヵ月以内にインドで第1号店を開くとのコメントを出しています。しかし、インド国内では、これに反発して、シン首相(右の写真)率いる国民会議派に次ぐ議席を下院で有する「草の根会議派」は早々に連立離脱を表明しました。また、野党側が、全国一斉の抗議行動を呼びかけ、インド各地で商店主らがデモ行進を行う事態に陥っています。もっとも、経常収支の赤字で苦しんでいる、今のインドが、のどから手が出るほど欲しい外国資本からの資金導入は、この方法しかないという印象を受けています。因に、規制緩和の対象となっているのは、総合小売業(複数ブランド)、専門小売業(単一ブランド)、航空業、放送業などで、特に、零細な小売業が多いインドにとって、小売業での外資の導入は「諸刃の刃」ともいえる政策であるといえます。そして、関連する経済的な事項としては、中国、ロシアは経常黒字の国でですが、ブラジルの経常収支は赤字です。ブラジル政府は、輸入した工業製品に高率の関税を課し、国内の製造業を育成する政策を導入したばかりです。このことを踏まえれば、中国、ロシアの経済が順調なのに対して、インド、そしてブラジルの経済はやや不透明感があるといえるでしょう。

2012年9月27日木曜日

韓国の長時間労働と女性の雇用問題

 先日、NHKのニュース番組『ワールド Waveトゥナイト』(注1)を観ていましたら、韓国の労働問題について報じていました。報道によると、韓国では、小型トラックを使用した移動販売が流行っており、起業する人々が増加しているといった内容のものです。
 この影響もあって、韓国では小型トラックの需要が増加、新車では2〜3ヶ月待ち、中古車もよく売れているそうです。色々な移動販売があって面白そうなのですが、対象の品目にはコーヒー、日用雑貨、ゴルフ、骨董品など幅広くあり、中には刃物類の研磨のサービスをしている移動販売あります。この移動販売の増加の背景には、もちろん韓国における雇用問題が背景にあります。特に、若者の雇用問題は深刻であり、番組では就職活動で苦戦する若者の姿が映し出されていました。しかし、韓国では依然として長い労働時間で知られており、OECD加盟国でもトップクラスにあるという矛盾があります。つまり、サムスン電子、LG電子、現代自動車など国際的に活躍する企業がある一方で、それら有力な企業に就職できている人々とできない人々との間での格差が拡大しているという実態が浮かび上がってきます。上図は、OECDホームページに掲載の主要国の年間労働時間の比較を示しています。日本は1,733時間とOECDの平均である1,775時間を僅かですが下回っています。これに対して、韓国は2,193時間とOECD平均を大きく上回っているばかりでなく、調査対象となっている国々の中では、メキシコに次ぐ第2位になっています。この長い労働時間をより公平にシェアできれば、韓国の雇用問題はある程度解決することが考えられます。もっとも、詳細なデータを追っているわけでないため、労働時間が長い人々の方が賃金が安いということも推測されます。
 韓国の長時間労働に関する記事が『週刊東洋経済』2012年9月15日号に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『長時間労働、賃金格差・・・、「雇用の質」は最低』です。以下引用文。
 『OECD(経済協力開発機構)が発表したリポート「2012年雇用見通し」によると、韓国の雇用環境について、失業率は世界金融危機前の水準に回復したものの、「雇用の質」は調査対象国の中でも最低水準であることが明らかとなった。
 労働時間はOECD加盟34カ国中2番目に長く、加盟国の平均を2割以上も上回る。一方、所得階層別の賃金格差も拡大しており、男女間の賃金格差は加盟国で最も大きい。近年はパートタイムをはじめとする非正規雇用者数も増加しており、所得格差は固定化しつつある。
 正規雇用者の平均年収は昨年、実質購買力ベースで日本を追い越すなど、経済成長を背景に急速に拡大してきた。他方、低賃金労働者の割合は高まり、社会問題化している。脆弱な社会保障制度が低賃金労働者を増やしている側面もあり、政府は厳しい課題に直面している』
 女性の雇用に関する記述がありましたので、同じOECDホームページで調べてみました。右図は主要国の15〜64歳の女性総人口に占める雇用者の割合を比較したものです。グラフでは、韓国はイタリアを上回るものの、掲載国9カ国の中で下から2番目となっています。これは、女性の社会進出を間接的に表すデータでもあり、立ち後れている韓国の雇用問題を示しています。また、元データでは、調査対象36カ国(注2)中で27番目で、下位にはポーランド、スペイン、スロバキア、ハンガリー、チリ、イタリア、ギリシア、メキシコ、トルコがあるだけです。ここで面白いのは、OECD加盟国の中で最も長時間労働であるメキシコが、トルコに次いで女性の社会進出が遅れていることが読み取れ、長時間労働と女性の社会進出には関連があるのではないかと考えています。
 女性の社会進出が進めば、出生率が低下すると考えがちですが、実態は逆です。米国なども高く、女性の社会進出が最も高いとされる北欧諸国では、高い水準を維持しています。因に、ウェブ掲載データですが、スウェーデンは2.00をやや下回っている程度です。右図はアジア主要国の合計特殊出生率の比較を示したものです。韓国は1.24と、日本の1.39を大きく下回っているのが分かります。図にして意外だと思ったのは、シンガポールと台湾です。現在、シンガポールでは国をあげて出生率の回復に努めている一方で、台湾の低落ぶりはどうしたものかと感じるとともに、特殊な要因があると考えています。
(注1)2012年9月20日報道。
(注2)OECD以外の国が含まれているため。

2012年9月26日水曜日

日本国債の保有、高まる海外勢のプレゼンス

 新聞等マスコミが、円高の要因について報じる時、その背景に比較的に安全資産とされる円を買って、外貨を売るという動きがあったと説明するケースが多いです。そして、外国勢が、ドルやユーロを売ってし、円を買った場合、何らかな形で、円建ての金融資産が増加することを意味します。それが、国際収支統計上何に該当するのかは分かりませんが、どういった形せよ海外勢保有の円建て資産は積み上がってくるのです。
 日本の場合、長年の経常収支の黒字によって積み上がった外貨準備高などは、米国債で主に運用、現在では外貨準備高は1兆ドル以上にもなっています。しかし、中国の外貨準備高は日本とは比較にならない規模になっています。今やその規模は3兆ドルを上回るまでになっており、そうした外貨準備を中国は、以前は米国債で主に運用していました。しかし、昨今では米国に過度に依存することを嫌ってか、ユーロなどの通貨に振り替えているそうですし、中国による日本国債の購入の動きも、新聞やニュース報道でよく目にします。

 こうした流れの中で、海外勢による日本国債の保有比率が上昇していることが分かってきました。日本銀行発表の資金循環統計では、2012年6月末時点で、過去最高の82兆円にも達してるそうです。特に、ここ数年の海外勢による日本国債の購入の動きは顕著であり、国内勢がむしろ減少傾向を示しているのと対照的な動きとなっています。海外勢の国債保有に関する記事が2012年9月21日付山陽新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『海外の国債保有、過去最高82兆円。6月末』です。以下引用文。

 『日銀が20日発表した2012年4〜6月期の資金循環統計(速報)によると、6月末時点で海外投資家が保有する日本国債の残高は前年同月比20.0%増の82兆円となり、過去最高となった。欧州債務問題を受け、比較的安全資産とされる日本国債を買う動きが続いているためとみられる。
 国債残高全体は4.2%増の940兆円。海外投資家保有分の占める割合は8.7%に上昇した。国内銀行や保険会社などが保有する国債も4.6%増の616兆円に拡大した』
 こうした海外勢が保有する日本国債は、たいていの場合、短期国債です。一方で、長期の国債を好むのが国内の生命保険会社となります。上図は、日本銀行調査統計局発表の資料から作成した所有者別の伸び率(対前年同月比)の推移を示したものです。図からは、家計、一般政府・公的金融機関の減少が目立つ一方で、海外、中央銀行(日本銀行)の保有残高が大きく増加していることを読み取ることができます。もっとも、国内の金融仲介機関の伸び率が小さくなったかといえば、決してそうではなく、保険が8.8%増、国内銀行が11.1%増とかなりペースで増加しています。
 2012年6月末時点で179兆円を保有する保険会社は長期の契約で保険資産を運用していることから、比較的に安定した資金であるといえます。一方で、146兆円を保有する国内銀行は、貸出金などの伸び率が低下している結果、運用する対象が日本国債に限定されていることが背景にあります。従って、国内銀行が国債で運用している資金は、比較的安定しているものの、一部は景気の動向に左右されることが考えられます。これらに対して、海外勢は逃げ足が速いことに特徴があります。それは、海外勢はほとんどを短期の国債で運用しているからであり、利回り上昇による価格変動リスクがない代わりに、趨勢が円安方向へと転じた場合、海外勢主導による日本国債の積極的な売り、そして、それがさらなる円安をもたらすこととなります。国債に関して、楽観的な論者が多いという気がしますが、私は楽観的ではありません。
 2014年4月に消費税率引き上げが5%から8%へと引き上げられた後が危ないと考えています。これは、価格的に大きい住宅、自動車、家電製品など耐久消費財を購入が進み、景気は着実に良くなる一方で、資金需要の拡大から国内銀行が保有する国債の残高が減少する可能性もあるからです。家計も、積極的な消費のために預金を取り崩し、かつ団塊の世代のほとんどが年金受給者となっている2014年〜2015年当たりはとんでもない事態になっている気がします。海外勢は、円安の流れが決定的となれば、資金を海外へと持ち去ることとなり、円安傾向に拍車がかかる上、海外勢が国債を売却することで国債利回りが急上昇することが予想されます。

2012年9月25日火曜日

シャープの経営危機、地域経済に与える影響は甚大

 これまで、このブログの中では、シャープの経営危機は、ある意味、国内の企業統合が進むことで、パナソニック、ソニーなどの他の家電メーカーにとってプラスであることを書いてきました。このプラス要因とは、もちろんシャープが持つ優れた技術力が他国に流出しない範囲であり、台湾の鴻海グループによる買収などの恐れが出てきた今では、マイナス面が大きくなってきたといえます。シャープによる自力再建が不可能ならば、速やかなる公的資金の注入などの施策も求められるところです。エルピーダメモリでの失敗は、常に国際的な競争が晒される製造業の企業再生が、日本航空など規制業種の再建と比べて格段に難しい作業であることを物語っています。
 そして、ここへきて問題となってきたのは、シャープの業績悪化に伴う地域経済に対する影響です。同社だけにいえることではありませんが、例えばマツダ、三菱自動車の経営状況が、広島、岡山両県に与える影響はかなり大きいように、シャープも特定の地域に影響を与える可能性が出てきました。以下は東京商工リサーチホームページ掲載のシャープの工場の主な立地場所です。
2012年9月24日付読売新聞朝刊に、シャープの業強悪化が与える地域経済に与える影響に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『シャープ不振、取引先に波及。全国8500社、受注減で人員削減も』です。以下引用文。
 『シャープの業績悪化に対する不安が取引先企業に広がっている。一部の企業はシャープからの受注減で人員削減に踏み切った。全国に広がる取引先は、経営再建の行方を固唾をのんで見守っている。
 東京商工リサーチによると、シャープ本体とシャープの連結子会社(13社)と直接、間接的に取引している企業は国内で約8500社に達し、従業員数は合計約420万人に及ぶ。
 シャープ製携帯電話の組み立てなどを受託している電子機器メーカーのタカヤ(岡山県井原市)は8月末に希望退職の募集を始め、9月15日までに従業員(約750人)の約4分の1にあたる176人が応じた。昨秋から受注が激減し、昨年11月と今年4月には2工場を閉鎖した。「受注回復のめどが立たない」との判断だ。
 シャープに部品を納入してきた大阪市内の樹脂製造会社の経営者は「シャープが開発中だった案件を中止したと聞いた」と不安げだ。受注減とシャープの事業縮小に対して「難局を乗り越えれるのか」と動揺を隠せない』
 シャープの経営危機の余波が大きいのが、主要工場が集中立地する地域であり、広島県、三重県、奈良県に加え、大阪府です。広島県、三重県、奈良県は県全体の経済規模に比して、かなりの数のシャープの従業員が存在しており、直接、間接的な影響が大きいものと予測されます。一方、大阪府は、従業員数も多いことながら、一次仕入れ先が東京都の次に多く、連鎖倒産、従業員の減少のダブルパンチを受けることとなります。
 政府による公的資金の注入や産業革新機構などによる再生プランの策定が急がれるところです。しかし、厳しい国際競争に晒されている製造業の再生は、公的資金を注入して業況が回復した今の銀行や日本航空とは事情は異なります。回復できたのは、銀行、日本航空が典型的な規制業種だからです。債務をカットし、年金をカットすれば、自ずと業績は回復するのです。製造業の場合、時間が待ったなしであること、革新的な再生プランの策定が求められるから難しいのです。もっとも、革新的な再生プランが思い浮かぶのならば、他の企業が既にやっているでしょうし、プラン策定に関わっている当人自らが事業展開を行っているかもしれません。世界の有力な製造業の責任者たちは、他社を出し抜く革新的にプランを常に考えながら行動する、プロの中のプロです。だからトップ企業のトップになったのです。自分がトップをつとめてない企業の再生を手がける公的機関など勤めるはずがないのが実情です。エルピーダの失敗はそこにあり、シャープが後を追わないことを切に祈っています。やはり、ルネサスエレクトロニクスにもいえますが、株価が低迷している中で厳しいのですが、株式交換などの手法を使った国内の企業単独による買収がベストでしょう。

2012年9月24日月曜日

米国の軍事費と航空・防衛産業の事業統合

 オバマ大統領が当選した場合、米国の国防費は今後一層削減されることが予想されます。一方で、ロムニー氏が大統領となった場合、「強いアメリカ」を訴えていることから、国防費の削減は進まず、やっとのことで実現した国民皆保険の制度が見直される可能性が高まります。住宅バブル、そして2つの戦争というブッシュ前政権が起こした災いの火消しのため、財政赤字が膨れ上がった米国は、「世界の警察」であり続ける力は既になく、今後は同盟国などに相応の負担を求めてくることが考えられます。普天間の問題が長引いており、財政的な負担もこれ以上求めることができない日本に対して、米国はいつまでもついてきてくれるでしょうか。速やかな問題解決が、今の日本の政治に求められているのです。
 しかし、2012年9月20日朝日新聞朝刊に世界の軍事費に関する記事が掲載されていました。その中に、主要国の軍事費を比較するグラフが掲載されていました。中国の軍事費が増えたことが最近では話題になっており、空母の建造まで着手した同国は、米国にとって最大のライバル国になろうとしています。もっとも、現時点では、米国の国防費は、他を圧倒しており、中国の10倍の規模があります。しかし、中国の軍事費はよくわからない不明な部分があり、かつ意図的に自国通貨安へと導くという政策があります。その結果、購買力平価でみた軍事費は、さすがに今の米国には及ばないものの、数年後には拮抗する可能性は十分にあります。特に、米国政府の債務残高が、名目GDPとほぼ同水準となっていることから、大幅に増額することは到底考えられず、同じ比率がかなり低い中国は、軍事費を大幅に増やす余地があるのは事実です。

 軍事費に関連して、航空・防衛産業の経営統合に関する記事が、2012年9月13日付日本経済新聞夕刊に掲載されていましたので紹介します。航空・防衛産業といえば、統合と吸収の歴史です。現在の米ボーイング社も、マクドネル・ダグラス社を吸収したもので、マクドネル・ダグラスそのものもマクドネル・エアクラフトとダグラス・エアクラフトの統合の結果生まれた会社です。記事の題目は『欧州のBAEとEADS、合併交渉。航空・防衛、最大手めざす。軍事費削減に対応』です。以下引用文。

 『【ロンドン=松崎雄典】欧州の防衛最大手のBAEシステムズと旅客機最大手のEADSは12日、合併交渉を進めていると発表した。政治判断も介在しかねず交渉の行方には予断を許さないが、実現すれば航空・防衛の世界最大手、米ボーイングを上回る売上高になる。欧米の防衛費削減に対応しコスト競争力を高める。
 BAEシステムズは軍用機など防衛で米ロッキード・マーチンに次ぐ規模。EADS傘下のエアバスは旅客機でボーイングと並ぶ最大手だ。両社合計の売上高(2011年ベース)は約990億ドル(約7兆7千億円)と、ボーイングの687億ドルを大きく上回る。
 交渉は途中だが、米国や欧州各国、サウジアラビアなど防衛部門の顧客となっている各国の政府とも、合併の影響などについて協議を始めた』
 オバマ政権も軍事費を削減、欧州諸国は債務危機でそれどころではない状況です。今後は、一層の需要減少が予想される中での防衛産業から強い要求があったのではないかと思われます。ならば、米国でもボーイングとロッキード・マーチンが合併すればいいのではという考えが浮かびます。これをすると、米国で戦闘機を製造するメーカーが一社になってしまうことから、リスクが大きいと思われます。因みに、日本の次期支援戦闘機に決定したのはF-35で、ロッキード・マーチンが製造元です。そして、史上最強といわれるF-22もロッキード・マーチンが製造元のようです。海軍が導入を進めているF/A-18はボーイングが製造元です。ボーイングとロッキード・マーチンが統合すれば、F-22、F-35、そしてF/A-18の製造が一社により独占されることとなります。ややリスク大という印象を受けるところです。

2012年9月23日日曜日

ルネサスエレクトロニクスを取り巻くドタバタ劇

 またかという印象です。破綻したエルピーダメモリの後を確実に追っているルネサスエレクトロニクスを、産業革新機構やトヨタ自動車など官民が上げて支援するようです。私は、そもそもの設立母体であるNEC、日立製作所、三菱電機のうち、どれかの企業が、丸抱えでマイコン事業を引き受けるべきであったと考えています。従って、そのようなスキームでの処理ができない限りは、いくら出資しようとも結果は失敗することは目に見えています。理由は、従業員のモラルです。高コスト故、人員・人件費の削減などを実施する必要があり、それが直接に響くのはもちろんですが、同社のトップの責任やビジョンの欠如が、従業員の心理に影響していることは否めないと思います。やはり、今回の出資に参加、かつ事業本体がしっかりしており、財務体質も良好な特定の企業の傘下に入れるべきです。候補としては、財務体質が良好なトヨタ自動車などが考えられます。もっとも、マイコン事業は、各企業のノウハウが詰め込まれた点で、中立的である必要もあり、トヨタ自動車の完全子会社となれば、他の自動車メーカーの発注が激減する恐れもあります。ならば、パナソニックが候補になりますが、赤字を出し続けており、液晶パネル事業の再編に取り組んでいることから厳しいといえるでしょう。そこで、自動車製造には直接事業に絡んでいないこと、自らがCMOSなど半導体事業を既に手がけている上、リーマンショック以降も黒字を出し続けているキャノンが、適当ではないかと思っています。
 ルネサスエレクトロニクスの株価は元々は10,000円近かったものが、期近では250円前後にまで下落しています。そして、現時点での同社の時価総額は1,000億円程度にとどまっており、企業規模が大きく縮小していることが伺えます。リーマン・ショック前後にキャノンは、1,000億円程度の自社株買いを数度行っており、購入した自社株を使って株式交換によりルネサスの買収は可能です。また、同社が保有している現金等同等物、つまりキャッシュでルネサスの全株式を直接購入し、完全子会社にすることもできます。自動車製造に関連しないこと、財務体質が健全なこと、本業がしっかりしていること、半導体事業に既に取り組んでいることから、キャノンがベストと考えています。
 このルネサスエレクトロニクスに関する記事が、2012年9月22日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。マイコンの市場規模は、2011年で159億ドルです。そのうち、ルネサスの市場シェアは27%ですので、売上高は40億ドルを少し上回る程度です。1ドル=80円として売上高3,000億円強の企業に対して1,000億円もの出資はあり得ない話ですし、期近で出した600億円の赤字も信じられない額といえます。早急かつ抜本的な改革が求められるのは当然として、自動車用のマイコンで市場シェアは高いものの、市場規模のそのものの小ささには驚きを感じます。記事の題目は『ルネサス、官民で買収。革新機構・トヨタ・パナソニックなど。年内1000億円超出資』です。以下引用文。
 『業績不振の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスに対し、トヨタ自動車やパナソニックなど日本の製造業の代表する企業が、政府系ファンドの産業革新機構と組み、1000億円超を共同出資をする方向で調整に入った。すでに交渉中の米投資ファンドへの対抗策をつくり、年内に過半数の株式取得を目指す。ルネサスは車や家電を制御するマイコンで世界首位。基幹部品の安定調達に向け、官民挙げて異例の支援体制を組む。
 出資企業としては日産自動車やホンダ、キャノン、ファナックなどの名前が挙っている。自動車部品メーカーではトヨタ系のデンソー、ホンダ系のケーヒンのほか、世界大手の独ボッシュなど海外勢にも出資を求めている。第三者割当増資などにより産業革新機構と合わせて1000億円超を出資し、ルネサスを共同買収する方針だ。
 現在、革新機構が中心になって出資案を策定中。10月中にもルネサス株主のNEC、日立製作所、三菱電機の3社や、三菱東京UFJ銀行、みずほコーポレート銀行など主力取引行に正式提案する見通し。
 マイコンは車や家電製品、産業機械などに多く使われ、モーターなどの動きをきめ細かく制御するなど頭脳の役割を果たす。ルネサス製は長期間使っても性能が劣化せず、最先端品は他メーカーでも代替が難しい』

 出資する各社は、リストラ費用などの負担は負いたくないが、他社メーカーに独占されるのは望ましくないというが本音でしょう。こうしている中、米アップルのiPhone5がついに発売されました。アップルと韓国サムスン電子の訴訟合戦の中、アップルはサムスン電子からの調達比率を引き下げていることを記述した記事をよく新聞や雑誌の中で見かけます。しかし、今回のiPhone5の心臓部であるCPU、A6チップはサムスン電子に委託生産されたものだそうです。ルネサスが製造するマイコンも、耐久性の面で優れていると言われているものの、生産の遅延や開発能力の低下などの問題が顕在化すれば、その市場へと参入できる大手半導体メーカーは海外には数多くあります。サムスン電子なども着実に実力を上げてきており、製造規模で対応できる唯一の企業である故、対立関係にあるものの、アップルはA6チップをサムスン電子に任せたと思われます。エルピーダの処理に失敗し、ルネサスの処理に失敗しつつある現状を踏まえれば、どこかの日本企業1社の傘下に入れる方向で処理を進めるべきです。そして、その有力な候補としてキャノンがあると考えています。

2012年9月22日土曜日

コンビニ業界の王者、セブンイレブン四国へ進出

 私は、ツタヤのTポイントを貯めている関係で、どうしてもファミリーマートの利用が多くなります。Tポイントはかなり前から注目しており、最大のメリットは、全日空のマイレージにポイント転換できることです。マイレージで直接ポイントを獲得する一方で、Tポイントからのポイントもばかにならない水準になっており、毎年、全日空を利用して北海道旅行へ行くことが出来ます。もっとも、このTポイントのコンビニでの提携先は、そもそもはローソンとの契約でした。それが、ローソンが独自カード「ポンタ」をつくり、Tポイントの陣営から離脱しました。ローソンからファミリーマートへの提携先の変更に伴って、ローソン、ファミリーマート両方でポイントが貯まらない時期、6カ月以上も続くという経験をしました。その時、ローソンには裏切られたという感情があり、それからはローソンは極力利用しないように心掛けています。ファミリーマートがないときは、次の候補としては、セブン-イレブン、そしてサンクスなどを利用し、どうにもならなかった時のみローソンを利用すると決めています。ローソンの切り捨て行為に対しては、本当に腹が立っていますので、ファミリーマートで買ったペットボトル飲料を飲み終わった後、ローソンのゴミ箱に捨てることも多々あります。生活ゴミは禁止されているだけで、このゴミ捨ては違法ではないでしょう。
 2012年9月17日付読売新聞朝刊に大手コンビニに関する記事が掲載されていましたので紹介します。セブン-イレブンがついに四国に上陸、沖縄などを除くほぼ全地域に進出することとなります。セブン-イレブンにいく機会は余りないのですが、たまに行くときはやっぱりセブン-イレブンが一番かなぁ、という印象を受けます。Tポイントがなければ、そしてTポイントの提携先に全日空がなければ、セブン-イレブンを真っ先に利用するところです。記事の題目は『コンビニ出店どこまでも。全国へ、海外へ、異業種へ』です。以下引用文。
 『コンビニエンスストア大手3社が出店ペースを加速している。最大手のセブン-イレブン・ジャパンは四国への進出を決め、全都道府県への進出が視野に入った。異業種との併設店舗も登場したほか、海外への展開も増えており、当面は拡大路線が続きそうだ。
 セブン-イレブン・ジャパンは9日、来春をめどに四国に出店し、2019年2月末までに四国4県に520店を開くと発表した。これで、同社が国内で進出していないのは、青森、鳥取、沖縄の3県だけとなる。
 コンビニ2位のローソンは1997年、同3位のファミリーマートは2006年に全都道府県での出店を果たしている。店舗網拡大を優先した2社に対し、セブン-イレブンは着実に収益が見込める地域に集中的に出店する戦略を採っており、四国でのコンビニの競争が激化するのは必至だ。(中略)
 集客力を高めるため、出店形態の多様化も進む。ローソンは10年に買収した音楽・映像ソフト販売チェーン「HMVジャパン」との併設店舗を5月にオープンした。ファミリーマートも、ドラッグストアを展開するヒグチ産業とフランチャイズ契約を結び、併設店舗を開いた。
 新たな成長の場を求めて、中国、インドネシアなどアジアを中心に海外への進出も活発化している。特に中国では、セブン-イレブン、ローソンが相次いで持ち株会社を設立するなど、体制整備を進めている』
 やはり、王者セブン-イレブンには、売上高、店舗数ともに他の2社を圧倒しているようです。店舗網の優先か、着実な収益かという選択に関しては、後者を選択したセブン-イレブンに軍配が上がっているようです。一方で、震災時にコンビニを利用した女性や高齢者が、スーパーマーケットと比べて、価格が余り高くないことが認知され、流れはコンビニへとぐっと近づいているようです。その象徴的な記事が2012年9月9日付毎日新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『ヨーカ堂、正社員半減、従業員の9割をパートに』です。以下引用文。
 『セブン&アイ・ホールディングス(HD)は傘下のスーパー「イトーヨーカ堂」の従業員をパート中心に切り替え、15年度をめどに正社員を現在の約8600人から半減させる。パート比率を現在の77%から90%に高めて人件費を削減し、不振のスーパー事業の立て直しを図る。(中略)
 希望退職者は募らず、同HD傘下企業への転籍や新規採用の抑制で対応する。主な転籍先は、コンビニエンスストア「セブン-イレブン・ジャパン」本部や直営、フランチャイズ加盟店の店長となる見通し』
 これは、時代の流れです。スーパーから始まったイトーヨーカ堂が、コンビニエンスストアを出店したことをドラマ仕立てにしたNHKの番組「プロジェクトX」を観たときは、出店の指導していた人が、セブン&アイ・ホールディングスのトップになるとは思いませんでした。小売業界は、小さな商店から、大規模店舗へと移ってた後、今度はダウンサイジング波が再び訪れています。イトーヨーカ堂は傘下にセブン-イレブンがあったこそ、業態変化に柔軟に対応できています。一方で、だめだったのがダイエーです。今後は、小売り業界でのもう一つのトップ企業であるイオングループはどうなるのかがポイントであると思われます。

2012年9月21日金曜日

金融危機とキリスト教の宗派問題、カトリックとプロテスタント

 現在、宗教信者別の人口で一番増えているのが、イスラム教と言われています。現在では世界の宗教信者人口約67億人のうち、21.2%をイスラム教が占めており、キリスト教の33.4%はやはり多いものの、キリスト教がカトリック、プロテスタントに分かれていることを踏まえれば、世界で一番多いのはイスラム教の信者となります。しかし、近年、アラブの春に端を発するイスラムの国々での衝突で報道機関から報じられるように、イスラム教もスンニ派、シーア派という2大勢力が存在しています。イスラム教徒も一言で語ることはできず、国によって宗派はかなり異なるようです。しかし、石油資源を武器に、イスラム教諸国の存在感は日増しに高まっており、いつの日か隣で座っている人がイスラム教徒であるといった時代が、日本にも訪れるかもしれません。

 今日は、経済に確実に影響を与えているであろう、宗教と経済に関する特集記事が『週刊エコノミスト』2012年9月4日号に掲載されていましたので紹介します。右図は、同特集の冒頭に掲載されているデータに基づき作成した宗教信者別の人口を示しています。イスラム教は、飲酒、偶像崇拝を禁止するなど宗教上の厳格さがあるため、色は敢えて白色としました。図からは、やはりキリスト教徒が多いこと、キリスト、イスラム、仏教の3大宗教と言われる中、仏教の人口は、ヒンズーの人口を下回る4位となっています。今後は、インドの人口が急増することから、仏教が占める割合はさらに低下することが予想されます。

 同特集で気になったのは、キリスト教の宗派で、プロテスタントとカトリックの労働観などの相違を記述した記事です。この宗派の違いが、現在の欧州債務危機の原因の一つになっていると示唆している内容で、面白いと思いましたので紹介します。記事の題目は『欧州危機とキリスト教。危機がより深刻なカトリック諸国、勤労や禁欲への思想の違いが影響』(注)で、社会学者マックス・ウェーバーの見方を使って、現在の金融危機を説明しています。以下引用文。
 『ギリシャを含め、カトリックの国々には禁欲や勤労の姿勢が欠けている。ルターが宗教改革を行い、プロテスタントを生んだ意義は、こうした労働観から脱し、勤労意欲を高めさせたことにある。
 その際にルターが注目したのが、「天職」の考え方であった。私たち日本人が、天職という言葉を聞くと、自分にとって最も適した職業というイメージを持つが、ルターの説いた天職には、神から与えられた使命という宗教的な意味があった。
 これに基づいて、プロテスタントの中には、個人に労働に対する意欲があるかどうかが、その人間が救済を約束されている証になるという考え方が生まれた。これは労働=苦役という考え方とは対照的なものである。
 しかもプロテスタントでは、儲けた金については、それを贅沢に消費してしまうことは否定された。儲けた金を資本として蓄積し、新たな事業に投資することが好ましいとされるようになる。ウェーバーは、そこに「資本主義の精神」が生まれたと分析した。
 ドイツなどのプロテスタントの国々の人たちは、こうした精神に則って禁欲的に労働に励んだ結果、安定した経済体制を築き上げてこられた。それに対して、カトリックの国々の人たちはそれができず、奢侈(しゃし)に流れた結果、今日の経済危機を生んでいる。ウェーバーならば、そう分析することであろう』

 この記事の筆者も述べているように、上記の考え方はやや極論であるとした上で、全てのキリスト教徒がカトリックからプロテスタントへと改宗したのならば、今日の金融危機は発生しなかったのかといえば、そうではないとしています。つまり、欧州債務危機のそもそもの発生源は、米国のリーマン・ショックであり、米国ではカトリックの信者が多いものの、プロテスタントが主流派を占めていることから、金融危機全般は、キリスト教の宗派の問題ではないとしています。さらにドイツでの宗派です。ルターの宗教改革後、ドイツではルター派のプロテスタントが主流となるものの、カトリック側の布教活動の成果(?)もあって、現在でもドイツ南部はカトリックが主流となっています。事実、ドイツでは、プロテスタント30%に対して、カトリック31%となっており、キリスト教の宗派の差が欧州債務危機につながったと考えるには不自然さがあります。また、英国でもプロテスタントととはいえ、英国国教会はカトリックの教義と似通っているとされています。欧州経済の南北格差は、それよりも国民性の違いではないでしょうか。やはり温暖な気候に恵まれると、労働への意欲がやや薄れるという気がします。

(注)島田裕巳(宗教学者)。

2012年9月20日木曜日

日本の音楽産業の衰退と先の見えないiTunes Matchのサービス開始

 違法ダウンロードの刑罰化が導入されるとのことです。私の場合、音楽コンテンツは、もっぱらレンタル店でCDを借りてきて、合法的にコピーをして個人的に楽しんでいるとろこです。因みに、合法的にレンタルをしてきたCDであったとしても、多人数で使い回した場合などは違法行為になるそうで、あくまで家庭内での利用に限定されることとなります。そして、特に気に入ったアーティストがみつかれば、お金を払ってCDやDVDを購入するか、アップルのiTunesなどから合法的にダウンロードします。特に、私の場合、iPod Touchを持っている関係もあり、ミュージックビデオなどで音楽を視て楽しむことが多くなってきています。iTunesで多数のミュージックビデオをダウンロードし、私のiPod Touch64Gには100曲以上ものミュージックビデオがインストールされています。
 残念ながら、iTunesでの日本のアーティストのミュージックビデオは限られています。事実、私が購入した100曲余りのうち、日本のものは10曲程度にとどまっています。日本のアーティストも折角、素晴らしいミュージックビデオを制作しているのですから、世界の音楽市場へと目を向けてほしいという印象を持っています。因みに、今、私が、日本のアーティストでよく聴いているのは、"いきものがかり"です。NHKのオリンピック応援歌「風が吹いている」は、ロンドンオリンピックで日本の選手が活躍しているシーンとオーバーラップして感動を呼びます。早々にシングルCDを購入、iPod Touchにインストールして楽しんでいます。そして、是非とも「風が吹いてる」のミュージックビデオを入手したいと思っているとろこです。しかし、"いきものがかり"のミュージックビデオは、アップルのiTunesでは購入できません。どうすれば入手できるのかということで途方に暮れていました。特に、YouTubeで、「風が吹いている」のフルバージョンを視聴してからは、気持ちが抑えられなくなってきました。
 ところが、BSのWOWOWで定期的に放送されているMusic Joyfulという番組があり、それを全て録画していたとろこ、この「風が吹いている」のミュージックビデオのフルバージョンが偶然ですが撮れていました。早速、ウォークマンのZシリーズに、このミュージックビデオを転送し、今は、ウォークマンで「風が吹いている」のミュージックビデオを楽しんでいます。とろこで、入手困難とも言われていた"いきものがかり"のコンサートチケットがついて入手できました。それも、武道館のコンサートです。やっぱり、LIVEが一番ですね。
 ところで、日本の音楽業界の閉鎖性に関する記事が『週刊エコノミスト』2012年8月14日・21日合併号に掲載されていましたので紹介します。私が、これと思ったアーティストのミュージックビデオが入手できず、フラストレーションが溜まっていたところに、この記事です。記事の題目は『違法ダウンロード刑罰化に潜む音楽業界の事情』(注)です。以下引用文。
 『このような日本の閉鎖的な音楽配信市場で今、大きな環境変化が起きている。モバイルにおけるフィーチャーフォン(俗に「ガラケー」と呼ばれる従来型の携帯電話)からスマートフォン(以下、スマホ)への移行である。フィーチャーフォン時代のモバイル向け音楽配信では、通信キャリアがインフラやコンテンツサービス、課金・決済などを一元的に管理していたため、ユーザーはストアや楽曲の探索から購入までを簡単に行うことができた。このキャリア主導の音楽配信プラットフォームは、シンプルで使いやすく優れたユーザーインターフェースを実現し、「着うた」などのヒットコンテンツを生み出すことに成功した。
 しかし、スマホにはキャリアのポータルが存在しない。ユーザーは無数にあるサービスの中からストアや楽曲を探し出し、購入までの煩雑な作業を自力で行わなければならない。また、キャリアや端末ごとに楽曲のファイル形式が異なっていたり、端末によっては対応していないサービスが存在したりする。スマホ向け配信サービスのユーザーインターフェースは、フィーチャーフォン向けに比べて大きく劣っているのである。これはフィーチャーフォンとスマホのインターネットサービスの根本的な仕組みの違いにより生じる問題である。その結果、レコード会社をはじめとする音楽関連企業はスマホでのユーザー囲い込みに失敗し、10年、11年と2年連続の前年割れとなる配信市場の低迷を招いた』
 記事を読んでいると辟易してきます。音楽産業の発展は、そもそもアーティストとユーザーに最大の恩恵がなければなりません。間で仲介する企業なんて必要ないですし、携帯電話のキャリアが支配するというのは異常事態といっても過言ではありません。そして、最近では、アップルのiTunes Matchが、年内に日本でもサービス開始とも言われましたが、著作権などの問題で頓挫しているということをウェブの記事で読みました。iTunes Matchとは、アップルが米国で既に開始している有料の音楽配信サービスです。大まかに言えば、CDなどからiTunesにインストールした楽曲が、iTunesの曲目リストとマッチすれば、当該の音楽データをクラウド化し、iTunesで購入した楽曲と同様の扱いができるようになるというサービスです。特に、日本でも、iTunes in the cloudのサービスが開始されてからは、キーとなるサービスであると考えています。震災や洪水などが多くなっている時代です。思い出のある楽曲をクラウド上で保有できることは、意味のあることだと日々感じています。
 違法なダウンロードを禁止するのは望ましいといえます。これで、音楽業界は低料金、かつ利便性の高いサービスを消費者に対して提供する義務が発生したことを意味します。つまり、有料での入手経路の統一化と特定の企業による囲い込みは防止するべきであると考えています。そして、囲い込みは、取り方によれば独占禁止法に觝触する行為ともいえます。特に、ファイル形式が相違することで、音楽データが別の端末で読めないということはあってはなりませんし、これは音楽という現代の芸術活動への冒涜です。リスクはありますが、日本のアーティストは、閉塞感のある日本の音楽産業のビジネススタイルから、アップルやアマゾンなどの汎用性が高く、国際標準のサービスへと脱却する必要があると切に思っています。
(注)八木良太(尚美学園大学専任講師)。

2012年9月19日水曜日

景気との連動性あり、低下する米国の合計特殊出生率

 どうも米国の合計特殊出生率が低下し始めたようです。先進主要国では唯一、人口の維持に必要な2.1をキープしていたのですが、失業率の高止まり、経済成長率の低下を背景に2を下回るまでに低下しているようです。合計特殊出生率とは、女性が出産可能な年齢を15〜49歳までと定義し、それぞれの出生率を出し、足し合わせることで人口構成に伴う偏りを修正、女性一人が産む子どもの数の平均を求めたものです。ニュースでもよく報道でされ、「1人の女性が生涯に産む子どもの数」と言ったりもしています。
 日本では2.1どころか、2005年には1.26にまで低下、少子高齢化の問題が叫ばれている中でちょくちょくと話題となっていました。幸いなことに、日本の合計特殊出生率は、1.26を底に期近の2011年には1.39にまで回復しています。一方、2012年9月10日付『実力をつけた韓国経済と沈没する日本経済』のブログの中で躍進を続ける韓国経済について書きました。そのブログは、今の韓国経済には、独創性、独自性がやや欠如しており、この点が韓国経済にとっての死角があるという結論で結びました。しかし、もう一つ死角があるとしたから、この合計特殊出生率の低下です。2009年のデータですが、韓国の合計特殊出生率は1.15にまで低下しています。原因は分かりませんが、38度線で北朝鮮と対峙している韓国は、徴兵制度により多くの若者ががかり出されています。急速な人口減少は、高齢化とともに、労働人口の減少を招くことで、日本よりも深刻な事態で招く恐れがあります。
 合計特殊出生率の低下は、女性の社会進出や晩婚化によりもたらされると言われていますが、やはり経済情勢の悪化も低下の要因と一つであるといえます。それが顕著にあらわれたのが、米国での合計特殊出生率の低下です。右図は、日米の合計特殊出生率の推移を示したものです。米国経済の景気の絶頂期である2007年の2.12をピークに大きく低下し、2010年では1.93にまで落ち込んでいます。2008年9月には、リーマン・ショックが起こっていることから、特に失業率の高止まりが影響しているものと推測されます。
 この主因は、「産み控え」という減少であり、経済環境が好転するまでは回復はしないとの見方もあるようです。この米国の合計特殊出生率に関しての記事が『週刊エコノミスト』2012年9月18日号に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『米国経済崖っぷち。生産性の鈍化や高齢化で劣化し始めた米国経済』です。以下引用文。
 『出生率の低下は先進国共通の話題だが、米国だけは例外とされてきた。
 ところが、その米国で出生率の低下が報告されている。米疾病管理予防センター(CDC)によると合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数)は、リーマン・ショック前の07年をピークに低下が続き、10年には人口の自然減につながる1.93%まで低下した。また、出生数も431万人をピークに減少が続いている。
 主な原因とされているのが、ヘザーさん(記事の冒頭に説明あり)のような景気の先行きを懸念しての「産み控え」だ。出生率の低下は、足元の経済成長に悪影響を及ぼすことはもちろん、将来的な成長期待を低下させ、需要の減少、物価の下落などを引き起こす。その典型例が、少子高齢化が急速に進み、デフレ社会に突入した日本だ。米国でも、このまま低出生率が続けば、GDPの7割を占める個人消費を直撃しかねない』
 記事では、3人目の子どもをあきらめる米国人女性を紹介していました。3人目が問題になることに驚くとともに、女性の社会進出が日本よりも進んでいるとされる米国では、子どもを持つことへの要求は強く、素晴らしいことだと感じました。もっとも、今の米国経済は、「日本化」という問題が叫ばれています。長期金利の推移が日本と近似していることから、そのような指摘があるのです。しかし、失業率が高止まりし、経済成長がさらに鈍化すれば、日本と同様な事態になり、少子高齢化が、さらなる経済の悪化をもたらすといった可能性も否定できません。経済危機を発端に起こった少子化が、さらなる経済危機をもたらすという悪循環から、今の米国はいち早く脱することが求められるのです。この点では、人口の多い中間所得層を重視、高所得者に対する課税強化を打ち出しているオバマ大統領の政策方針の方が、ロムニー氏の政策よりも、長期的には米国経済にプラスであるといえるでしょう。

2012年9月18日火曜日

日本で稼ぐ外資系生保とプレゼンスの低下する「かんぽ生命」

 私は、生命保険は基本的に捨て金だと思っています。だから、掛け捨ての保険にしか入っていません。しかし、簡保だけは例外的に小額ですが契約しており、満期になれば返戻金が手に入りますし、途中で死亡した場合、死亡保険金が遺族の手に入ります。それでも葬式代が出せればという程度の認識であり、私の資産形成の中では極めて小さいというのが実情です。
 もっとも、日本国民全体からいえば、生命保険は大切な金融資産であり、家計の金融資産に占める生命保険のウェートはかなり高いとのことです。しかし、バブル崩壊前は、結構な配当金が出ていましたが、崩壊後は生命保険の配当金は基本的に出ないという認識であり、国民の持っている金融資産が適切に運用されていないと今では考えています。特に、20年物などの超長期の日本国債を生保などが積極的に、かつ独占的に購入することで、むしろ国債の利回りの低下に関与、政府の財政規律を完全に失わせる要因となっています。この一連のブログでも、かつて規律のない財政運営を行っていたスウェーデン政府に対して、スウェーデンの大手生命保険が抵抗したことについて書きました。財政規律を健全化しなければ、この大手生保は、スウェーデン政府の発行する国債は一切購入しないと宣言、慌てた同国政府はこれに従う形で財政規律を取り戻しましたという話です。日本の場合、大手生保といい、かんぽ生命といい、日本国債を積極的に購入し続けており、むしろ日本政府の財政規律を完全に喪失させている存在になっています。
 それでも、特別会計の財源であったかんぽ生命保険の総資産の残高は、2001年の127兆円をピークに減少傾向に入り、2010年には97兆円まで減り、大台の100兆円をついに下回りました。かんぽ生命保険が民営化された後も、減少傾向を示している原因はよくわかりません。しかし、右図をみていると、銀行などが積極的に生命保険を販売し始めた頃とほぼ同時期に、かんぽ生命の総資産が減少し始めた気がします。今後、引き続きかんぽ生命の総資産は減少することが予想されています。これは国債の安定購入策先が少なくなっていることを意味することから、政府は早急に財政規律を回復させることが求められているのです。
 一方で、外資系の日本での活動に関する記事が2012年9月11日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。日本での生命保険の保険料収入のシェアは、国内系58.2%、かんぽ18.7%、損保系3.8%である中で、外資系の生命保険のシェアは19.2%にも達しており、日本では稼いでいるという実態が分かってきました。もっとも、オランダの金融大手であるINGは日本の生命保険事業から撤退する方針を表明、勝ち組と負け組がはっきりしてきた結果ではないかと考えています。記事の題目は『欧米生保、日本が稼ぎ頭。来店型など新販路に対応』です。以下引用文。
 『米アメリカンファミリーや仏アクサなど欧米の保険大手が日本の生命保険事業で収益を稼ぐ構図が鮮明になっている。営業利益全体に占める日本事業の割合は直近で決算で2〜8割。来店型店舗や銀行の窓口販売など新たな販売網に迅速に対応したことが事業拡大につながっている。欧州債務危機の影響で欧米の収益は伸ばしにくく、日本頼みが続きそうだ。(中略)
 日本は米国に次ぐ生保大国。契約者の平均寿命が長いことが高い利益率をもたらしており、欧米の保険大手はアジアの中で日本市場を重視している。外資系の日本のシェアは12年3月期に計19.2%にまで高まり、かんぽ生命保険を逆転した。
 00年までがん保険や医療保険は外資や中小保険会社しか販売できず、外資はこうした分野でのシェアがもともと高かった。国内生保の破綻が相次いだ1990年代後半以降は、破綻生保の受け皿となり、顧客基盤を広げた。外資の存在感が増しているのは国内勢の対応の遅れを示している』
 つまり、日本で稼いだ分は、何らかな形で海外への資金流出となります。ここにも、バブル崩壊の痕跡が残っており、失われた20年が、失われた30年となりそうな、日本の象徴的な存在ともいえます。記事によると、日本は米国に次ぐ、生命保険大国だそうです。米国と日本に共通し、欧州と違うといえば、欧州諸国と比べて、日米の社会保障は決して充実していない点です。将来に対する不安が貯蓄過剰に向かわせている実態がここにもあります。そして、国内の生命保険のプレゼンスの低下は、国債の安定的な消化機能が減退しているともいえます。日本は政府は財政規律の回復に向けた政策を進めるべきであり、残された時間はかなり少ないと言っても過言ではないでしょう。

2012年9月17日月曜日

存在感を増すロシア、LNG供給の分散化とその危険性

 どの程度の原発依存とするかという合意形成がなかなか進んでません。原発ゼロという意見が大勢を占めるとてって過言ではありませんが、産業界からは電力料金の上昇を懸念し、反対意見を述べる方々もいるようです。ニュース報道でみたのですが、電炉メーカーは、大量の電力を使用することから、鉄の生産は夜間に行い、補修作業を日中、一部の照明を切り、薄暗い中でやっています。中小企業でも電気料金の引き上げに悲鳴を上げています。既に「原発ゼロ」ではなくなっていることから、電気料金の引き下げと代わりに、原発再稼働への積極的な議論があってもいいと思います。2012年9月9日付読売新聞朝刊には、「地球を読む」というコラムで、葛西敬之JR東海会長が『国益に背く「原発ゼロ」』というタイトルで、かなり強い論調で「原発ゼロ」の非現実性を訴えています。以下引用文。
 『「民意に従う」と政治家は言う。一方、民意を啓発し、先導すべき時に政治家が大衆迎合し、専門家が沈黙したために滅びた愚行の先例に人類の歴史は満ちている。大衆は自分が求めるものの代償が何かを必ずしも自覚せず、現実を見て初めて「そうだったのか」と気付く。商品の生産計画をアンケート結果に依存する経営者は、会社を倒産させる。今般のエネルギー・ミックス議論のやり方は、こうした経営者と酷似する。賛否を問われる国民の多くは、原子力エネルギーを捨てた場合、どんな代償を払わねばならないかを知らさせていないか、あるいは、十分に自覚していない。今までと同じ生活水準を維持しつつ、原子力だけを捨てることが出来ると思い込んでいるとすれば誤りだ。
 先導すべき民意に追従して「原発ゼロ」を口にする政治家、沈黙する経済人やテクノクラートたち。今目覚めなければ、日本は亡国の世界史に新たな1ページを加えるだろう』
 私の「原発」に関する意見は、まず急にゼロにすることは現実的ではないことです。そして、公正な立場から実施された原発のストレステストをしっかりした上で、稼働できる原発は速やかに再稼働させるとともに、廃炉も着実に進めるということです。そして、新たな原発は建設しないこと、その間の20〜30年の間に再生可能エネルギーへと転換していくことだと考えています。財政危機が叫ばれている中で、既存のエネルギー資源は最大限有効することが大切です。30年もしくは40年の寿命のマックスとした場合、稼働させていない間にも、原子炉は着実に劣化していくのです。残された時間は少ないです。早急な対応が求められるところです。
 原子力発電所の稼働率が劇的に下がっている中で、注目されているのが天然ガスです。温暖化ガスが、石油・石炭と比べて少ない上、地政学的なリスクも少ないのが天然ガスです。右図は、天然ガスの国別埋蔵量を示しています。日本の天然ガスの輸入先は、マレーシア、オーストラリア、カタール、インドネシア、ブルネイが上位5位を占めています。カタールは豊富な埋蔵量があり、紛争などのリスクがない限りでは、長期の安定供給先としての有望であると思われます。一方で、マレーシア、オーストラリア、インドネシアの埋蔵量は限られていることから、今後の輸入量拡大には期待が持てないのが実情でしょう。特に、インドネシアでは、国内消費量の増加が見込まれており、輸出どころではなくなる可能性があります。
 こうした中で、近隣かつ、紛争地域でないエリアからの天然ガスの安定供給が求められています。今般、APEC首脳会議の際、日露の首脳会議が行われ、天然ガスの供給に関する覚書が取り交わされたようです。2012年9月9日付毎日新聞朝刊に、この首脳会議に関する記事が掲載されていましたので紹介します。以下引用文。
 『ロシア・ウラジオストクで8日行われた日露首脳会議で、当地の液化天然ガス(LNG)基地の建設計画を促進する覚書が交わされた。6日には、マツダとロシアの自動車大手ソラーズの合弁工場開所式にプーチン大統領が飛び入り参加し、日本からの投資を支援する姿勢を演出。LNGの生産・輸出と日本企業の進出を軸に、極東開発が活発になるとの期待が高まっている。
 首脳会談では、高原一郎・経済産業省資源エネルギー庁長官とロシア国営ガス会社のミレル社長が覚書にサインし、野田佳彦首相とプーチン大統領に報告した。
 サハリンで産出する天然ガスをパイプラインでウラジオストクまで運び、海外輸出用にこのLNG基地で液化する。覚書は▽ガスプロムが今年末までに基地建設に投資するかを決定▽日本企業の出資参加に期待・・すると明記。建設が決まった場合、LNGを円滑に輸入できるよう、ガスプロムと日本企業との協議を経産省が支援することも盛り込んだ。事業総額は1兆円規模とされ、18〜20年ごろから年間1000万トンの生産を目指す』 
 天然ガスの埋蔵量最大のロシアからの輸入増加を支援する動きには、賛成したい気持ちがあります。しかし、ロシアは、政治的に抵抗するウクライナに対して、パイプラインによる天然ガスの供給を停止するといった強行手段をかつてとりました。その余波を受ける形で、西欧諸国にガスが行き渡らないという事態が発生するなど、過度な依存は危険であると考えています。しかし、埋蔵量を考えれば、ロシアへの一部依存はやむを得ないことでしょう。
 もっとも、供給を開始する時期に問題があります。上記記事によれば、ロシアからの天然ガスの供給は、2018〜20年ごろからの開始としています。原発停止により、天然ガスは、今まさに必要としている資源であって、10年程度先は取り巻く環境が大きく変動していることが予想されます。それは、輸入先の大きな変動であって、特に、米国からシェールガスの本格輸出が開始される時期と合致している点です。現時点では、国内需要を賄うだけで手一杯である感は否めませんが、ロシアからの供給が本格化する2010年当たりには、米国は天然ガスの純輸出国となっている可能性はあります。日本のLNGの長期契約であるため、割高な価格で輸入していることが指摘されています。ロシアとの契約に際しても、米国からの輸入を駆け引きに入れた、価格交渉ができればと考えています。

2012年9月16日日曜日

ボーイング787に初搭乗、ついでにアップルストアへ


 「いきものがかり」の日本武道館コンサートのチケットが取れましたので、この度、東京へ行ってきました。震災などがあった関係もあり、3年ぶりの東京行きでしたので、東京がどのように変化したかが楽しみでした。もっとも、滞在時間が35時間と短かったことから、ピンポイントで行ってみたい場所へ行くという日程になってしまったのが残念です。しかし、振り返ってみて東京を堪能できる旅であったという印象です。私は、普段からエコを標榜している立場にありますので、旅行では電車を利用するケースが多いのですが、飛行機も必ず年に1〜2回は利用します。因みに、私が記憶している限りでは、岡山〜羽田便で私が搭乗したことのある機体は、ボーイング 767、ボーイング777、そしてエアバスA320などがありました。


 この旅で、最初に感動したのが、岡山空港〜羽田空港間は、特段のトラブルがない場合、全てボーイング787で対応していることを、全日空のコミュニケーターに教えてもらった瞬間です。因に、全国ニュースにはなっていないかもしれませんが、オイル漏れを原因に、エンジンから煙が出るという事件があったばかりです。電子系統のトラブルも頻発しているそうで、第一号機を手に入れた全日空は、運用テストをさせられているようなものです。これで、ボーイング787に初体験できると思い、最初からテンションがあがりぱっなしでした。空港につくなり展望デッキに行き、787のビデオをiPhoneで撮ったのが一連のビデオと写真です。そして、機内に入ってからがさらに感動ものでした。まず、席の配列は、2-4-2となっており、長さの割に幅が広い機体となっていることに気付きました。そして、この機体構造となった結果、客席の上の部分が広くなり、圧迫感の少ないという印象を受けました。


 座席には、タッチパネル式のディスプレイが設置、色々な情報や番組を中央の画面で観るという必要がなくなりました。このような機体は初めてでしたのでさらに感動した次第です。航空機に搭乗する経験の多い方々にとっては、当たり前なのかもしれませんが、私にとって初めてのハイテクを備えた座席シートでしたので、搭乗中はずっと触り続けていました。そして、リアルタイムで機体の情報が入り、この機体が33,000フィートの高さで巡航すること、最大速度は時速800km/h強であることを知ることができました。一つ分からなかったのが、USBポートがあったことです。もしかしたら、パソコンを持ち込んだ場合、インターネットへの接続が可能ではないのかと考えました。ネットで調べると、USBに対応した充電機器が、これを通じて充電できるそうで、スマホも大丈夫ではないかと書かれています。次は、絶対に試してみます。機内で電子機器を使用することにはやや抵抗もあり、やはり一度の搭乗ではポーイング787の全てを知ることはできないという印象です。つまり、ボーイング787は別次元の航空機であるのです。インターネット接続の関しては書かれていませんでしたが、このポートを使って音楽や映像を楽しむことができるという記述を発見しました。今日は文章がやや乱雑なのですが、シートが離れている知人とお話しできる機能もついているようです。


 そして、ハイテク機器に囲まれた機体を満喫し、あっという間に飛行時間の1時間20分が過ぎたという印象を受けました。そして、羽田に着き、最初にどこへ行ったかといえば、前日にiPhone5の発表があったばかりでしたので、アップルストアに行けば、iPhone5はないでしょうが、せめてiPodの新型は実機体験できると考え、東急に乗り、東銀座駅に向かいました。残念ながらiPodの入荷は2012年9月21日金曜日だそうです。そして、アップルストアは行ったことがない私にとって店内での製品の配置やひっきりなし来店者が訪れることに圧倒されました。製品がないものの、店員の接客などを見ていてあっという間に時間が過ぎてしまいました。

 そうこうしている内に「いきものがかり」のコンサートの時間になってしまいましたので、早々に日本武道館の方へ向かいました。そして、「いきものがかり」のコンサートを堪能し、久しぶりの東京旅行は終わりました。

2012年9月15日土曜日

シリコンウエハーで活躍する信越化学工業とSUMCO

 現在の私の一番の関心事が、パソコンやスマホなどIT関連機器ですので、ブログの話題の取り上げ方にやや偏りがある気がします。今日も何度か言及したことがある半導体シリコンウエハーに関することで、信越化学工業とSUMCOの業績について少しばかり書きます。
 この一連のブログでは、ソニー、パナソニック、シャープなど家電製品やAV機器を製造・販売するコンシューマーサイド、つまり川下側に位置する企業が、苦境に陥っていることを度々記述しました。そして、円高が定着する中で、これら業種の企業は、国内での空洞化は避けられないものの、企業が生き残るためには、海外への進出を主軸においた今後の経営方針が求められます。ならば、川上側に存在する企業は安泰なのかといえば、決してそうではないのです。典型的な素材メーカーであり、世界シェアも高い、半導体シリコンウエハーを製造・販売するSUMCO、信越化学工業の業績が決して良くないことが分かってきました。まずは、ホームページ掲載の決算短信から両社の売上高の推移を示してみました。上図によると、2007年度をピークに、SUMCO、信越化学工業とも売上高が大きく減少していることが読み取れます。リーマン・ショックの影響は大きく、売上高は、07年度のピークからの比較ではSUMCOは48.0%減、信越化学工業は23.9%も減少しているのです。これは、海外での需要の減少及び円高による採算性の悪化が考えられます。
 そして、もっとひどいのが、営業利益です。信越化学工業はやや持ち直し感があるものの、SUMCOに至っては09年度、10年度と2年連続の営業赤字へと陥りました。信越化学工業が持ち直したとはいえ、同社の営業利益はピークの2007年度の半分程度まで落ち込んでいます。ところで、同時期の信越化学工業の売上高は23.9%減少であったのですから、営業利益の減少が如何に大きかったかが分かりますし、同社の営業利益の減少が売上高の減少に原因とするものではなく、円高等による採算性の悪化ではないかと推測されます。
 ところで、SUMCOの業績回復に関する記事に2012年9月8日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『SUMCO、49億円黒字。2〜7月最終。半導体ウエハー堅調』です。以下引用文。
 『SUMCOが7日発表した2012年2〜7月期連結決算は、最終損益が49億円の黒字となった。前年同期は13億円の赤字で、2〜7月期としては4年ぶりに黒字化した。スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の需要拡大で半導体用シリコンウエハーの販売が底堅かったうえ、不採算の太陽電池向けウエハーからの撤退も損益改善に寄与した。
 売上高は前年同期比19%減の1086億円。スマホやタブレット(多機能携帯端末)の需要が伸び、半導体用シリコンウエハーの販売は底堅く推移した。同社の主力品は高機能半導体などに使う直径300mmのウエハーが中心でニーズが高い。ただ、前年同期は震災直後に取引先が在庫確保のためにウエハーの調達を急増させ、今年はその反動が出て全体としては販売数量が減少した』
 改めて、両社の規模を考えていると、川上に位置する企業であり、世界市場でのシェアも高いことから、規模の大きい売上高と高い営業利益が予想していました。しかし、蓋を開けてみると売上高規模もたいしたことなく、営業利益率も普通の企業遜色ががないということが認識できました。右図は、信越化学工業のセグメント別の売上高と営業利益の全体に占める割合を示したものです。営業利益の%と売上高の%を比較した場合、営業利益>売上高となっているセグメントが相対的に利益率の高い分野が大きいといえます。図をみていると、塩化・化成品など汎用品の利益率が極端に低下していることが、別のセグメントでの営業利益がプラスとなっている主因であること分かります。
 2012年の従業員数は、信越化学工業が16,167人であるのに対して、SUMCOでは8,328人と大きく開きがあり、今後は、SUMCOが取り巻く環境が厳しくなることが予想されています。同社と信越化学工業の業況に一段として開きが発生することになるでしょう。川上に位置する業態にあっても、継続的な研究開発を進めるとともに、競争力のある製品を世に送り出さない限り、衰退は目に見えているのです。

2012年9月14日金曜日

2016年に1000兆円を上回る公債残高とヨーロッパ経済

 内閣府から今後の経済財政に関する中長期の見通しが発表されました。発表された資料によると、成長シナリオでは2014年には4%もの名目成長率が期待され、公債等の残高は増え続けるものの、対名目GDP比率では2013年をピークに徐々に低下するものと試算されています。私は、この試算はやや甘いのではないかという印象を持っています。それはヨーロッパ情勢に不透明感が増しており、下手をすれば、世界同時不況という事態を招きかねないと考えているからです。その中心にあるのが、やはりスペインです。同国のカタルーニャ州が中央政府に対して救済を求める事態となっており、ヨーロッパ危機は深刻化しているようです。 

 スペインのカタルーニャ州は、バルセロナを州都とする同国の経済的な要であり、GDPの5分の1を占めています。人口規模も同国第2位の地位にある同州が、今般、中央政府に対して支援を求めましたことにより、ヨーロッパ情勢は見逃せない状況となっています。人口規模1千万人のギリシャ危機の解決でもかなりの出血を強いられる形となったヨーロッパです。5千万人近くの人口規模を有する国が破綻した場合、問題はヨーロッパのなかで収まらなくなることは必至であり、世界経済へと飛び火することが予想されます。ヨーロッパの経済規模はそれもど大きく、ユーロ相場の上げ下げはもちろん考慮しなければなりませんが、少なくともユーロ相場が高かった時期のEU諸国の経済規模は、世界最大を誇るまでになっていたからです。

 そして、世界経済を成長セクターであった中国も、そのヨーロッパに対して積極的に輸出することで、高い経済成長を持続できたという側面は否定できず、今後、さらなる経済成長の鈍化が予想されています。日本の輸出産業も、ヨーロッパへの直接的な輸出に加え、中国への輸出を通じてヨーロッパ経済にどっぷりと依存した形で実績を上げていたことが伺えます。スペインでは、歳出の削減がさらなる雇用減と歳入減を招く悪循環に陥っており、動きの鈍いECBに頼った救済策だけでは既に限界が見えてきています。スペインの問題は、いまや世界の問題となっており、IMFなどと速やかに協調体制を確立することが求められています。
 今後、わが国でも経済成長の鈍化懸念が指摘されている中で、甘いと印象は否めませんが、「経済財政の中長期試算」に関する記事が2012年9月1日付山陽新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『借金残高、16年度に1000兆円突破。国と地方、内閣府試算、消費税増でも拡大』です。以下引用文。

 『内閣府は31日の閣議に国と地方の財政の将来像を示す「経済財政の中長期試算」を提出し、国と地方を合わせた借金残高が2016年度に1千兆円の大台を突破するとの予測を示した。23年度には1297兆8千億円、国内総生産(GDP)比で220.8%に増えると見込んでいる。
 政府は財政再建に向け、21年度以降にGDP比の借金残高を低下される目標を掲げているが、達成は難しい状況だ。(中略)
 23年度の国と地方の借金残高は、12年度の887兆7千億円と比べて46%も増える。このため国債費は23年度に12年度の2倍強の47兆4千億円に達すると見込んだ。
 15年度の国と地方の基礎的財政収支の赤字をGDP比で10年度から半減させる目標は達成できるとした。ただ、20年度までに収支を黒字化する目標は難しく、20年度は15兆4千億円の赤字になると試算した』
 米国、中国、そして日本の経済は、ヨーロッパの問題解決が如何に進んでいくかにかかっています。基礎的財政収支、つまりプライマリーバランスの黒字化は、現時点でも達成不可能になっており、さらに世界経済の成長が鈍化した場合は、政府見通しを下回る可能性が十分にあると考えています。

2012年9月13日木曜日

ユーロ相場に回復感、独憲法裁判所のESM合憲判断とオランダ総選挙の結果

 ユーロ相場を今後の行く末を決定づけるであろう大きなイベントが無事に終わったようです。それは、独憲法裁判所によるESM合憲に関する審議とオランダ総選挙です。まず、独憲法裁判所は、ESMへの資金拠出に対して合憲であると判断しました。その結果を受けけか、ユーロ相場はやや持ち直しているようです。

 しかし、2012年9月11日には、スペインで最大の経済規模を誇るカタルーニャ州の州都バルセロナで150万人が参加する自治権拡大を求める大規模デモが行われました。州側は「州の課税権を拡大すれば財政再建は可能」であると主張、スペイン中央政府との対立が表面化する事態に陥っています。つまり、余談は許さないというのが実情であるものの、南欧諸国を支援する側であるESMが、独憲法裁判所の判断を受けて10月から発足することが決まったことは朗報です。これに関する記事がNHK NEWS WEBに掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『ESM 独憲法裁判所が合憲判断』です。以下引用文。

 『ヨーロッパの信用不安対策の重要な柱で、ユーロ圏の各国が資金を出し合う新たな基金「ESM=ヨーロッパ安定化機構」について、ドイツの憲法裁判所は、資金の拠出は合憲だとする判断を示し、ESMは、近く最大の出資国であるドイツでの承認を経て、来月にも発足する見通しとなりました。
 ユーロ圏では、財政状況の悪化した国を支援する「ESM=ヨーロッパ安定機構」という新たな基金の発足に向け、各国の承認手続きが行われてきたが、ドイツでは、与野党の議員などが「ESMへの資金の拠出は議会の予算権を侵害し、違憲だ」などとする訴えを起こしたことから、承認が見合わせていました。
 12日に開かれた審理で、連邦憲法裁判所のフォスクーレ裁判長は、ESMへの資金の拠出について、「憲法に違反しないという結論に達した」と述べ、合憲だとする判断を示した』
 ESMについは既に活動しているものと思い込んでいましたので、まだ発足していない事実を知り驚いた感があります。日本や米国などでは、金融危機が勃発した際には、速やかに中央銀行の資金提供と政府による財政支援が決定されました。これは、ヨーロッパのように国が違うとなると対応が遅くなるということを教えてくれる事実であり、資金を拠出する側、受け入れ側双方に問題があり、欧州債務危機は根深いということがよく理解できます。
 そして、もう一つのイベントがオランダの総選挙の結果です。2012年9月13日日本時間午後10時時点ですが、単一通貨ユーロを尊重する2党で過半数を占め、オランダが危機対策などを大幅に修正する可能性は低くなったそうです。オランダ総選挙に関する記事が2012年9月13日付日本経済新聞Web刊速報に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『オランダ総選挙、首相率いる中道右派が優勢か』です。以下引用文。
 『【ハーグ=御調昌邦】オランダは12日、下院選を実施した。地元メディアによると、ルッテ首相率いる中道右派の自由民主党(VVD)が僅差で野党・中道左派の労働党を抑え、第1党を維持する見通しだ。上位の2政党は、基本的に欧州連合(EU)や単一通貨ユーロを尊重する政策を掲げており、同国が危機対策などを大幅修正する可能性は低くなった。ただ連立交渉には不透明な要素も残っている。
 オランダでは今年4月に財政再建策をめぐる政党間調整が不調に終わり、政権基盤が崩壊して下院選が実施されることになった。選挙の直接的な原因となった財政政策が最大の争点となった』

 因みに、野党の労働党は、EUの基本政策を重視しながらも、国内の緊縮策の緩和などを主張してきました。しかも、前回選挙を10議席上回る勢いで議席を獲得しており、今後、連立交渉が難航することが予想されます。一方で、緊縮策に強く反対する左派の社会党は改選前と同数の15議席にとどまり、加えてEUからの離脱が掲げる極右の自由党は大幅に議席を減らす見通しです。ドイツとオランダ両国の財政状況は比較的に安定しています。上記2つの結果は、ユーロ存続にはプラスであるものの、ドイツで違憲を申し立てた与野党議員やオランダの総選挙の実施の背景には、南欧諸国に対する支援拡大に反対している人々が、両国には少なからず存在することを示しています。オランダで再び総選挙という事態となれば、これは欧州債務危機の再燃を意味しています。既に、この債務危機は、欧州内での解決は不可能な状況に陥っており、それらに属さない米国、中国、そして日本などが本格的に支援をする必要が出てきているのかもしれません。そうなれば、IMFが問題解決を主導、容赦のない財政再建が求められることとなります。

2012年9月12日水曜日

便利なモバイルルーターと携帯電話の利用料金の国際比較

 私は、4年前ほどからiPhoneのユーザーとなって、外出先でのデータ通信を常に気にしています。いつも、どうすればコストを下げれるかを考えており、現在では一つの結論に達しています。まずは、音声通話は極力せずに、メールだけで連絡することに徹することです。LINEなどを使用すれば便利だと思います。そしてモバイルルーターを1台契約し、iPhoneやパソコンなどの全てのモバイル機器を、1台のルーターを通じてデータ通信することです。このパターンが料金を一番抑えることができるモバイルの環境であると思っています。今では、NTTドコモが提供するLTE対応のモバイルルーターが発売されていますが、私の場合、購入時にLTEサービスが開始されていなかったため、現在でもFOMAのモバイルルーターを愛用しています。このブログを屋外で作成する時も、パソコンをFOMAで接続して対応していますが、エラー、回線速度において特に不満なく利用しています。以下が、私のモバイルの環境です。
 アップル製品が多い中で、肝心のインターネットへの接続は、NTTドコモのモバイルルーターを使用しているのです。7月25日からソフトバンクがプラチナバンドでのサービスを開始しましたが、一度もiPhoneを使ったデータ通信をしたことはありません。ソフトバンクのショップに聞いたところ、このプラチナバンドは、音声サービスに対応したものであって、データ通信に関しては変更ないとのことです。つまり、データ通信については、NTTドコモの方が、依然として通信品質が高いということが考えられます。もっとも、私のiPhoneの契約は、少しでも接続すると課金される2段階定額にしているため、一度も試すことができていないでいるのが実際のとろこです。ソフトバンクのデータ通信について非常に興味があるため、いずれは試してみるつもりでいます。
 ところで、携帯利用料金に関する国際比較をしている記事が2012年8月29日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。結果は、予想通り、東京が高く、ソウルが安いということです。記事の題目は『携帯料金、東京が最高。世界7都市、総務省調査』です。以下引用文。
 『総務省は28日、世界主要7都市を対象とした2011年度の通信サービス価格調査を発表した。東京の携帯電話利用料は1カ月当たり6687円で、ニューヨークなどを上回り最も高かった。音声以外のメールやデータ通信の価格が高いことが影響している。初めて調査したスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の利用料金も東京が最高だった』

 データ元である総務省のホームページに、記事の内容よりも詳しいカテゴリーで調査結果がありましたので少しばかり追加します。レポートを詳しく読んでいると、上記の記事に掲載されているグラフがフィーチャーフォンを対象とした利用料金であることが分かりました。記事にも説明があったのですが、グラフだけをみると勘違いするところでした。因みに、フィチャーフォンとは、いわゆる高機能の従来型の携帯を指し、料金の前提となる利用頻度は、音声99分/月、メール438通/月(うち発信215通)、データ155MB/月としています。一方、スマホの利用頻度は、音声61分/月、メール438通/月(うち発信215通)、データ1.6GB/月としており、データ通信の量を多く見積もっています。上図は、総務省発表のレポートに基づき作成したもので、フィーチャーフォン、スマホともに東京が割高になっていることが分かります。

 IT先進国といわれ、日本をも上回る通信環境であるとされる韓国・ソウルの利用料金が最も安いことが気になります。スマホ普及には利用料金の引き下げは不可欠です。もっとも、利用料金の引き下げは、過度なアクセスを生じさせ、システム全体がシャットダウンする恐れがあります。最近、NTTドコモで相次いで発生した不手際は、スマホ普及によるアクセス量の増大が背景にあると思います。しかし、現在の利用料金の高さを考慮すれば、ダムや道路など無駄な公共事業はすみやかに停止し、いまや生活に不可欠なインフラであるネットの回線速度や品質の向上への投資は、官民一体となって進めるべき事業ではないかと考えています。

2012年9月11日火曜日

厚生労働省、高齢化社会へ向けた新たな施策

 わが国の衰退を象徴する問題として、いつもクローズアップされるのは、既に減少へと転じている人口と、その高齢化率の急激な上昇です。そして、生産年齢人口が大幅に減少する一方で、65歳以上の人口は今後大幅に増加することが確実な状況にあり、早急に対策が求められるところです。もっとも、日本が鎖国をしていた江戸時代の人口が3千万人程度です。技術が劇的に進歩している中で、そこまで日本の人口は減る必要はありませんが、自国で食料が十分に賄うことができる程度にまで減ったとしても、国土の狭さを考えれば、特段不思議ではないとは思っています。
 しかし、産業界からは、労働人口の減少は労働力不足を生じさせ、国内需要の減退とともに、企業そのものが弱体化する可能性を示唆する声が多い気がします。一方で、人口がある程度減少すれば、人口密度は劇的に低下し、少しは住みやすい世の中になるという可能性もあります。東京など大都市圏では、人口は過剰にまで集中、通勤だけでもかなりのストレスを抱えている人々が多いと思われる中、ゆとりある生活を取り戻すには、ある程度の人口減少はやむを得ない気がします。つまり、私は、人口減少そのものは深刻な問題ではないと考えているのです。そして、目指すは、ヨーロッパの中でも豊かとされる北欧です。人口規模に比して広大な国土は、人々に豊かさを体現させる最も有効な手段であるのです。しかし、そこに至までには乗り越えなければならない深刻な問題があります。それは、団塊の世代などの引退に伴う急速な人口構成の変動です。今のペースで高齢化が進めば、現役世代への負担は多大ですし、肉体的に過酷な労働を強いられる介護の現場では人手不足になることが十分に予想されます。
 特に、問題となっているのが、認知症のお年寄りの急増です。右図は厚生労働省推計のデータです。認知症のお年寄りの数は急激に増加しており、当初の推計よりも10年も早く300万人を超えたことが判明しました。今後も増加傾向を示し、8年後には410万人に達することが予想されており、認知症のお年寄りを受けている施設が足りなくなる恐れが指摘されています。2012年9月5日付NHK午後7時のニュースでは、この問題について詳しく報道していました。厚生労働省が、打ち出した5カ年計画の柱は、「早めの診断や治療により症状を抑え、家族の負担を軽減し、自宅で療養できるお年寄りの数を増やす」という内容です。
 これをフローチャートにしたのが上図です。対策は、①地域ごとに支援チームを設置し、認知症の早期発見と継続的な治療の実施、②早期診断可能な医療体制の確立、③自宅で介護が困難なお年寄りに対する施設受け入れ人数増の3つの柱で構成されています。専門家は、何よりも早期発見の大切さを指摘しており、病状の進行を和らげる治療薬等も開発されていることから早期発見できれば、家族や社会への負担も軽減できるとしています。報道は、早期治療の重要性と家族だけではなく、地域で支えるという点を強調する内容になっており、好感の持てる内容でした。

2012年9月10日月曜日

実力をつけた韓国経済と沈没する日本経済

 アップルとグーグルの代理戦争とも言われる、アップルとサムスン電子の訴訟合戦の行方が気になるところです。アップルは、サプライヤーとしてサムスン電子をはずす方向で動いているようですが、実力を付けた韓国サムスン電子からの脱却は完全にはできないそうです。特に、iPhoneの頭脳に当たるA5チップ、最新型のiPadに搭載されているA5Xチップなどはアップルの独自に設計したものですが、どうもサムスン電子に生産を委託しているようです。因みに、このブログを作成しているMacBookAirに搭載されている256MBのSSDもサムスン電子製です。ウェブの情報ですが、このAirが発売された時、サムスン製、東芝製のどちらのSSDの方が性能が高いのかというレビューを目にしました。結論は覚えていませんが、私のAirの稼働率は高く、非常に高い満足度を得ていることから、少なくともサムスン電子におけるSSDの生産能力は高いものと判断されます。
 残念ながら、コンシューマーサイド、特に電子機器、電子部品の分野ではサムスン電子の方が、日本企業よりも競争力があり、米企業の中でもいまや最強ともいわれるアップルとガチで訴訟合戦を繰り広げる点は、その競争力の強さを物語っているともいえます。鉄鋼、造船などの分野では日本企業は既に競争力を失いつつあり、半導体製造装置、シリコンウェハー、製造機械、炭素繊維などさらに川上に位置する業種でなければ、韓国企業には対抗できないのが実情でしょう。幸いなのは、上記業種において日本企業は依然として強い競争力を維持していること、最大の輸出品である自動車では、トヨタ、ホンダが世界市場を引っ張っている点です。この強さを端的に表しているのが、日本は韓国に対しては依然として貿易黒字であるということです。逆の意味で、日本にとって、韓国企業は大切な貿易相手でもあることは忘れてならない事実でしょう。両国間にある領土問題を速やかに解決し、お互いに感情的にならないで対処することが求められます。

 そうした中で、国債の格付けに関して厳しい現実を見せつけられるニュース報道がされました。2012年9月7日付のNHKのニュース番組「ワールド Waveトゥナイト」によれば、フィッチ・レーティングスが、韓国の国債の格付けを「A+」から「AA-」へと1段階引き上げたそうです。引き上げの理由は、順調に経済成長を続けていること、すぐに北朝鮮との衝突が起きることは現実的ではないということです。逆に、フィッチ・レーティングスは、財政再建の取り組みが遅れていることを理由に、2012年5月に日本の国債の格付けを「AA-」から「A+」へと1段階下げたばかりで、今回の韓国の国債の引き上げにより格付けが逆転したこととなります。2012年8月に、ムーディーズでも韓国の国債の格付けが引き上げられ、現時点では日本と同じAa3となっているそうです。ムーディーズは、日本の国債をネガティブとしている可能性があり、今後、ムーディーズの格付けでも逆転することが予想されます。概算要求が、ついに100兆円の大台に乗りました。震災復興への予算配分が4兆円にも上ったことが増大の要因ですが、無節操な財政拡大は歯止めを掛けなければ破綻は必至です。ギリシャ、スペインと同じように、財政を健全化するに当たって真っ先にカットされるのは公務員給与と公務員の人員削減です。そのことを踏まえているのかどうかは不明ですが、それとも取れるとき、出来るだけ搾り取るというのが、公務員の姿勢なのかもしれません。とにかく、韓国と日本の格付けの逆点現象は、実態にかなっているというのが私の意見であり、予算編成をする方々も、この事実を真摯に受け止める必要があると思います。

 右図は、OECDのホームページ掲載のデータから作成した、日本と韓国の実質経済成長率と失業率の推移を示しています。2003年以降のデータですが、成長率、失業率ともに、韓国経済のバフォーマンスは日本経済を上回っていることが分かります。しかし、韓国経済が無敵であるとはいえません。死角はあります。例えば、産業構造が依然として日本からの輸入に頼っています。また、私が記憶している限り、少なくとも科学分野でのノーベル賞の受賞はなく、特に物理学賞などがない点からも基礎分野での研究活動は立ち後れていることが推測されます。日本人では、戦後間もない1949年に湯川秀樹氏がノーベル物理学賞を受賞したのを皮切りに、1965年には朝永振一郎氏、1973年に江崎玲於奈氏が受賞、近年ではノーベル賞の受賞は恒例行事にもなっています。鉄鋼、造船、半導体などの韓国企業の躍進は目立ちますが、日本の企業が長年培った技術なくしてあり得なかったことでしょう。次は、韓国の順番です。韓国発の技術が世界をリードする時代です。米アップル社でも独自性が問われました。そして、サムスン電子のGalaxyS3に搭載されているアンドロイドOSは、グーグルが開発したOSであり、グーグルは広告収入を得るために、OSの使用を開放しているだけです。現時点では、韓国が独自性を発揮し、世界市場で活躍することは、日本の存在なくして不可能であると私は考えており、所詮、日本の二番煎じをビジネスモデルでカバーしているというイメージが強いといえます。ビジネスモデルの分野で長じているのは、当然のごとく米企業です。米企業と韓国企業のスタイルは完全にバッティングしているとともに、両者が衝突する場面が、今後増えることが予想されます。

2012年9月9日日曜日

アマゾンのタブレット市場強化と出遅れた感のある日本の電子書籍市場

 私は、電子書籍に関しては、3年前以上も前にiPhone3GSを使って購入してからは、熱烈な利用者です。購入した電子書籍は100点以上にも上り、それら全てがアマゾンが提供するキンドル対応の電子書籍です。従って、電子書籍を読むとしたら、iPhoneやiPadなどを立ち上げ、アマゾンが提供しているiPhone、iPadアプリ、キンドルを使用して、電子書籍を読んでいます。タグなどが簡単に付けることができ、付けられたタグがネットを通じて、パソコン、iPad、iPhoneなど異なるデバイス間でデータの共有化できることから、非常に重宝しています。また、利用開始当初に購入した経済学の古典であるJ.M.ケインズ著『雇用・利子および貨幣の一般理論』やマックス・ウェーバー著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』は、ともに2ドルとか、3ドル程度に入手できた記憶があり、価格の安さに非常に驚いた次第です。因みに、アップルを通さないアプリを通じた課金に制限を加えたことから、現在ではiPhoneのキンドルアプリで書籍の購入はできなくなっており、それらはパソコンを通じてアマゾンの米国のサイトに直接アクセスし、購入した後、それぞれのデバイスへと書籍データをダウンロードするという形をとっています。
 このほど、米アマゾンが、アップルのiPadに対抗するべく、新しいタブレット端末、キンドルファイアHDを発表、独走するアップルにiPadに対抗できるかが注目されています。2012年9月8日付朝日新聞朝刊にアマゾンのタブレット端末に関する記事が掲載されていましたので紹介します。自社製の端末が売れれば、アマゾンにとってプラスであるものの、書籍データはアマゾンのクラウドに保存され、あらゆるデバイスで書籍を読むことができるので、高性能の自社製端末の販売にはやや疑問が残ります。記事の題目は『タブレット、激安時代へ。アマゾン、新型「キンドル」今月発売』です。以下記事引用。
 『米アマゾンは6日、新型のタブレット端末「キンドルファイアHD」を発表した。画面の解像度を高めつつ、主力モデルの価格を199ドルと据え置いて値ごろ感をアピールした。各社が200ドル(約1万6千円)を切る商品を投入する「激安化」の流れを、日本のメーカーはどう迎え撃つのか。
 「HD」は昨秋発売したキンドルファイアを全面刷新した。カメラ内蔵で一部は次世代高速通信にも対応。低価格モデルは14日から出荷を始めるが、日本など米国以外での販売は未定だ。旧モデルも一部機能を改良し、2割ほど値下げして159ドルで販売を続ける』

 アマゾンが、キンドルの価格を抑えることができるのは、購入されるであろう電子書籍の販売で利益が出るからであり、ソニーなど日本のメーカーとは置かれている状況が違います。電子書籍の販売でトップランナーであるアマゾンならではのタブレット端末(右図はキンドルファイア)であり、私個人としては価格低下による電子書籍市場の拡大が実現できるのならば、日本のメーカーでなくても構わないと思っています。そして、私が最も期待しているのは、アマゾンによる日本の電子書籍市場への進出です。漫画などの電子書籍化はかなり豊富なコンテンツ量があり、eBookJapanで漫画を100冊程度購入した経験がありますが、実は日本の小説やビジネス書などに関しては、対応状況が各社バラバラと印象もあり、一切手を出したことがありませんでした。

 そうした中で、電子出版の世界規格であるEPUBで国内41の出版社が、導入に向けたガイドを作成したようです。このEPUPは、かなり前から存在しており、日本市場を意識してか、バージョン3では縦書き、ルビにも対応しており、速やかな導入が待たれていました。このEPUBに関する記事が2012年9月8日付読売新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『電子書籍「世界規格で」、41出版社が指針』です。以下引用文。
 『主要出版社41社でつくる日本電子書籍出版社協会(電書協、代表理事=野間省伸・講談社社長)は7日、電子書籍を欧米の標準的な規格「EPUB(イーパブ)」を使って作るための指針となる「制作ガイド」を策定した。11日に詳細を発表する。主要出版社がEPUBによる電子書籍制作に足並みをそろえて取り組む姿勢を示した格好で、電書協は今後、端末メーカーなどに対し、このガイドに則した閲覧ソフトや端末の開発を要望していく。(中略)
 ただ、出版社側にとっては、同じEPUBを使っても、パソコン、スマートフォン、電子書籍端末などで閲覧ソフトの種類が異なると電子書籍の制作方法が細部で違ってくる。同じ作品なのに複数の方法で電子書籍を作らなければならない手間を嫌い、EPUBの作品が思うように増えないのが現状だ。今回、電書協がEPUBの制作ガイドを定めたのは、ガイドに則した方法で制作した電子書籍なら、あらゆる端末で読めるようにすることをメーカーなどに促す狙いがある』
 この流れは歓迎すべきことであり、アマゾン、ソニー、シャープなど利用する端末の違いによって電子書籍が読めなくなることはなくなる事態は避けられる方向へと向かっているようです。しかし、問題点はあります。それは、私がアマゾンのキンドルを利用する理由にあります。それは、アマゾンは業績を着実に伸ばしている、世界でも有力な企業の一つであるということです。電子書籍は、通常、利用している端末に書籍データが保存されているか、提供企業のデータセンターで購入履歴が保存されているかで、所有権が明確になります。電子書籍に不安を感じるのは、サービスを提供する企業の経営状況が盤石かどうかに、依存していることが否めないからです。従って、赤字決算となっているシャープが「XMDF」という規格で電子書籍のフォーマットを策定し、数万点規模のコンテンツを準備したとしても、これら企業の行く末がしっかりしていない場合、電子書籍の購入に二の足を踏んでしまうのです。上図は、私が購入を予定している電子インクの白黒モニターのキンドルです。ソニーも赤字、シャープはやばい状況であるある中、提携企業がしっかりとしていたとしても、アマゾンへの魅力は、ビジネスモデルがしっかりしていること、経営も盤石であること、そして私が本を読むと思われる10〜20年の間は存続しているという確信です。アマゾンに対抗するには、日本のメーカーは、出版社を取り込んで上で、購入した書籍の保存に関するコンソーシアムみたいなものをつくることが求められるでしょう。