2012年10月6日土曜日

レアアースの輸入先に変化あり、低下する中国依存度

 昨年当たりから、中国がレアアースの輸出規制を実施、わが国の産業界にはかなりの影響があったと思われます。わが国では、レアアースの中国依存を低下させるべく、ベトナムなどに積極的に投資、輸入先としての中国依存を低下されるとともに、輸入先の多様化にある程度成功した模様です。最近では、採掘方法に課題があるものの、日本近海にもかなりの量のレアアースが眠っていることが確認されました。将来的には日本国内での自給自足も可能であると期待されています。
 まず、レアアースの輸入先に関する記事が2012年10月4日付毎日新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『日本の調達先分散、影響。中国、レアアース規制せず』です。以下引用文。
 『家電製品やエコカーなどの素材として重要な資源である「レアアース」。日本への最大の供給元の中国は、10年の沖縄県・尖閣諸島沖漁船衝突事故で、対抗措置として対日輸出を規制したが、今回はレアアースというカードを切っていない。中国は00年代に世界の供給量の大半を握っていたが、大口需要家の日本企業などが代替品の開発や調達先の分散を進めた結果、需給バランスが変化し、輸出が減少したことが背景にある。今後の中国の対応が注目される。【北京・出井晋平、立山清也】
 日本はレアアースの調達先の多様化を進めた結果、中国への依存度は確実に低下している。輸入に占める中国産の割合は10年に8割超だったが、今年1〜6月は5割を切った。代替品の活用などで全体の輸入量も減っており、今年1〜6月は一昨年の半分以下。中国の輸出規制で昨年夏に急騰した価格も、今年夏にはピークから7割程度低下した。
 日本の残る課題はレアアースの中でも希少性が高い「重希土類」と呼ばれる分野の確保だ。なかでもハイブリッド車(HV)などに使われる「ジスプロシウム」は今も圧倒的に生産量の多い中国産に9割超を頼る。ジスプロシウムについても住友商事がカザフスタンでウラン採掘の残存物から回収する事業に着手したほか、三菱マテリアルがHVの廃車からの回収を始める方針だが、本格的な調達には時間がかかりそうだ』
 確かに、上図が示すように、今年に入ってからの中国の依存度は、2010年比べて大きく低下しており、2012年1〜6月では半分を切るまでになっています。一方で、中国もレアアースの輸出枠を前年比で2.7%増やすことを発表しています。この背景には、日米、欧州連合(EU)が、2012年6月に中国によるレアアースの輸出枠の設定は世界貿易機構(WTO)に違反しているとして提訴したことがあります。

 しかし、中国の埋蔵量は膨大であり、将来的には中国への依存度が高まることが予想されます。そうした中で、期待されるのが、日本の排他的経済水域(EEZ)を含む太平洋の海底に高品位のレアアースを含む泥が堆積していることが、日本の研究者により発見されました。特に、海底に眠るレアアースが注目されるのが、泥を引き上げて酸で処理すれば容易に抽出することができ、アルカリで中和すれば安全に処理できることです。これに対して、中国ではレアアースの抽出過程で、どうしても副産物として放射性物質の一種であるトリウムなどがゴミとして残ってしまい、環境・健康問題を引き起こす原因となっています。ここで、ゴミと表現しているのは、トリウムは、トリウムを使った原子力発電が研究されているものの、実現のめどがたっていないことです。

 日本近海は、資源の宝庫です。日本の国土面積は、世界ランキングは、62位にとどまっているものの、領海と排他的経済水域(EEZ)は世界ランキング6位です。そして、そこには世界有数の漁業資源があるというのはともかく、最近ではメタンハイドレートの存在が確認され、エネルギー資源の自給自足も可能になるのではないかと期待されているところです。それに、レアアースの存在です。わが国は、海に囲まれているという利点を最大限生かした政策が求められるのです。上記に加え、洋上の風力発電も期待されている分野であり、かつ、最も実現性が高いともいえるでしょう。

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