2011年12月26日月曜日

国債利回りの上昇リスク


 2011.12.27付週刊『エコノミスト』に、『国債利回り上昇を招く、内外市場の不安定化』という記事が掲載されていました。(徳岡)(注)は、この記事で我が国の国債の利回り水準に警鐘を促しており、注目すべき部分がありましたので、今日はこの記事についてコメントをさせていただきます。冒頭に国債のリスクについて簡潔にまとめられていましたので、その部分を引用します。
 『日本国債については、中・長期的に、少子高齢化に伴う貯蓄率の低下により利回りの上昇の圧力が生じるほか、潜在的に①企業部門からの資金流入減、②世界市場からの波及、③国内市場の不安定化に起因する利回り上昇のリスクがあると考えられる』と(徳岡)は指摘している。
 ①は、高齢化や所得の減少に伴い、家計の貯蓄率が低下、毎年100兆円(新発債に加え借り換えを含む)以上の国債が無事消化できているのは、借金を返済する行為を通じて資金余剰となっている企業部門の貯蓄があるからだとのことです。景気が失速し、設備投資を積極的に行えない現在の状況が続けば問題ないものの、復興需要等により景気が上向けば、国債を消化する資金が欠乏、国債の利回りが上昇する恐れがあるとしている。
②は、米国債との連動性を指摘している。本文の中で、『信用リスクの指標である国債の「クレジット・デフォルト・リスク(CDS)プレミアム」を見ても、その相関は米国債と日本国債との間で非常に高くなっている』と記述、『10年物の米国債の利回りが1%上昇すれば(あるいは、米国債利回りを1%上昇させるような世界経済の変化があれば)、同年限の日本国債の利回りは0.15%上昇することになる』と推計している。つまり、ユーロ危機を受け、比較的に低位で推移している米国債の利回りが、今後上昇し、正常な利回り(国債残高の推移、米国経済の状況、国際経済の影響が適切に反映されている利回り水準)へと回帰すれば、日本の国債利回りも上昇する可能性があるとのこと指摘している。
 また、海外投資家による日本国債の保有割合は6%程度にとどまっているものの、国債の先物市場では、海外投資家が3~4割を取引しているとしている。先物と現物の裁定取引が働けば、国債の現物市場にも影響が波及する恐れがあり、海外投資家の投資スタンスが我が国の国債市場に影響を与えることを述べている。これは、私が全く認識していなかった事実であり、今後データを収集する必要があると考えています。
 ③は、国債利回りのボラティリティーに関する記述です。これは、必ずしも利回りの一方的な上昇がなかったとしても、利回りの変動幅が大きくなれば、リスクを嫌う銀行などの大口投資家が国債の保有を回避し、その結果、国債利回りが上昇することを示している。現在のように、低利で推移している時、長期国債の価格変動は、高い時と比べて大きくなる。これは一般的なことですが、ケインズが『一般理論』にて記述しているように、ある一定水準にまで国債の利回りが低下すれば、極端な流動性選好の状態になり、利回りはこれ以上低下しない「流動性のわな」に陥ることとなります。
 我が国の財政について危機意識を持っている方々は誰もが認識していることで、国債のデフォルトリスクを回避する方法は、ただ一つで、結局のところ適切かつ健全な財政運営しかないと思っています。
(注)徳岡喜一(国際通貨基金アジア太平洋局エコノミスト)。

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