2012年12月6日木曜日

感覚を失わせる投資信託への投資の危険性とETF後進国の日本

 私は、基本的に投資信託は購入しないという姿勢で投資をしています。それは、投資信託の投資対象となっている企業の中に、軍需産業に従事したり、銃器を売却して儲けている企業が入り込む懸念があるからです。これ以外にも、バブルを発生させ、それを崩壊させた銀行、インサイダー取引を行った大手証券会社、オリンパスなど不正会計を行った企業、政治献金などでいつも問題となっているゼネコンなども投資対象外です。とにかく、株式投資は資金を出した範囲での有限責任あるものの、投資した企業が不正を行った場合、限定的ではありますが、その投資家にも倫理的な責任はあると思います。
 実は、私も若干の投資信託は持っており、リーマン・ショックの元凶ともなったファニーメイとフレディマックの債券を間接的に保有しています。また、外貨MMFには、日本で不正行為を行ったBNPパリバの債券もしっかりと組み入れられています。以下は、外貨MMFの目論見書に記載されているBNPパリバの部分で、記載によれば、ポートフォリオ全体の3.62%をパリバのコマーシャルペーパーで持っていることになります。
投資信託への投資が良くないのは、株式を直接持っている人々よりも無自覚に、かつ無感覚に不正を行った企業の株式や債券を購入している可能性が高くするからです。むしろ、投資信託への投資は、銘柄を指定して株式投資することよりも罪深い行為といえます。それは、直接株式を購入した場合、自らが反省する機会も与えてくれますし、株価が下がり損失を出れば、痛い目にあってさらに反省することになるからです。そういった感覚が投資信託には完全に欠如していることに問題があるのです。特に、紛争国からの輸入や児童労働によって産出された原材料を使った製品を製造・販売している企業にはかなり注意する必要があります。真の意味で、倫理的に問題のある投資となってしまう恐れがあるからです。
 先日、BS世界のドキュメンター『血塗られた携帯電話』は、フィンランドのノキアについて報じていました。番組は、携帯電話に使われている部品に、紛争で多くの人々が苦しんでいるコンゴ民主共和国で産出された希少金属が使われている可能性があることを示唆した内容です。最初のうちはノキア側は知らぬ存ぜぬという態度をとり続けていましたが、粘り強い取材と調査の結果、ノキア側はその事実を認めました。北欧の優良企業、ノキアですら、このような状況です。まして、それ以外の国々の企業は、どんな不正行為(又はモラルハザード)をやっているのか全く分かりません。とにかく、十分に調べた上で、投資をしなければ、まさしく「血塗られた投資」になってしまうのです。上の写真はノキアの携帯電話のラインナップのほんの一部です。ノキアばかりが悪者になってしまいましたが、携帯電話を製造・販売している他の多くの企業も同様のことがいえるのです。アップルのiPhoneの製造ラインでも、自殺者が多数出たということが一時期問題となったことを記憶しています。
 それならば、消費者として企業を選別することも大切であるともいえます。しかし、消費者の立場でもってここまで反応した場合、何も出来なくなってしまいます。あれも駄目、これも駄目です。従って、一部にフェアートレードとして販売されている商品・製品があるものの、そこまでの注意喚起を商品の表示には現状は行っておらず、事実を知らない限りはやむを得ないという気がします。それほど数多くの商品・製品に囲まれているのが、我々の生活なのです。しかし、投資は別物です。悪徳な事業をしている企業、モラルハザードを起こしている企業、環境を悪化させている企業への投資は控えるべきです。それは、投資家には、常に倫理的な責任があるからです。そして、投資信託への投資には、そういった企業の株式や債券が混入されている可能性はどうしても高まってしまい、無意識のうちに購入する危険があるのです。この無意識こそ、最も罪深い行為であるといえます。意識している投資をしている私ですら、BNPパリバ、フレディマック、ファニーメイの債券を間接的に保有しているからです。
 それでも、投資信託の本数は増加し続けており、特に証券取引所で取引される上場投資信託(ETF、Exchange Traded Fund)は手軽さから人気を博しているようです。もっとも、日本では、上場本数が米、英、独などと比べて極めて少なく、ETF後進国でもあります。特に、日経平均株価に連動するといった指数連動型の上場投資信託の取り扱いは非常に容易く、投資経験の浅い投資家にはお勧めのリスク商品であることは間違いないでしょう。しかし、素人といえども、投資家としての責任を考えた上で、目論見書などをじっくり読んでから投資することが大切です。ややズレている感はありますが、米国などでは投資に関する教育を子どもの頃からしているそうです。日本では、投資は敬遠、銀行預金に邁進している家計の姿があります。その資金の一部、例えば10%でも株式市場へと流れれば、株価は確実に回復します。投信の危険性を書きながら、投資を勧めるというやや矛盾する内容となってしまいましたが、つまり私が言いたいのは投資には色々な考えやスタンスがあるということです。私の投資スタンスは決して他の人の見本になるものではありません。しかし、多様なスタンスの人々が市場へと参入すれば、株式市場は安定化し、結果、リーマン・ショック以降の株価底割れと、その後の回復力の鈍さは回避できた可能性は高いといえるでしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿