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2012年10月3日水曜日

相次ぐ化学メーカーの事故、日本触媒の爆発事故

 2012年9月29日に、日本触媒の姫路製作所で爆発事故が発生、消化活動に当たっていた若い消防士1人が亡くなるとともに、35人が重軽傷、従業員1人は意識不明の重体という大惨事となりました。2012年6月8日付『企業の供給責任と三井化学の事故』のブログでは、企業の供給責任に重点を置いて書きました。しかし、今回の事故は、三井化学に続く、化学メーカーによる相次ぐ爆発事故であり、企業の供給責任以前に、化学メーカーの生産現場における安全管理に問題があるという気がします。

 2012年10月1日付のNHKのニュース報道によると、爆発したタンクに貯蔵されたアクリル酸の性質には、発熱を伴う化学反応が急激に進むと、温度が急上昇して爆発する危険があるということです。消火活動に当たって、アクリル酸の危険性に関して工場側から詳しい説明はなったとのことです。そして、消化活動に当たった消防員は、普通の火事は燃えているので、燃えている状況である程度判断できる一方、化学工場の火事は、化学反応がどのように進むか分からず、全く危険性が認識できないという語っています。相次ぐ化学メーカーによる大惨事です。国は安全管理に対して、基準の見直しを徹底する必要があり、警察では、業務上過失致死傷の疑いで、工場の事務所を捜索し、調べを進めています。早急に原因究明をするとともに、この教訓を、他の化学工場でも生かしてもらいたいです。

 もっとも、今回の事故に関しても、企業の供給責任が再び問題となっています。高吸水性樹脂「SAP」の原料となるアクリル酸の生産では、日本触媒は世界大手であり、特に、SAPに関しては世界シェアは3割を占めます。同社からSAPを調達し、紙おむつなどを製造している米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、アジア供給への影響を最小限に抑えるため、代替品の調達を始めたそうです。部品、素材など川上に位置する企業は、供給責任は大きく、貯蔵施設を複数箇所にすること、限界まで在庫を落とさないことなどの対応が求められるところです。この事故に関する記事が、2012年9月30日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『日本触媒の事故、給水材シェア2割、紙おむつ生産に影響。復旧に時間』です。以下引用文。
 『日本触媒の姫路製造所(兵庫県姫路市)で29日発生した事故で、紙おむつなどの製品供給に影響が出そうだ。同工場は紙おむつ向け樹脂の世界シェアで2割、その原料となるアクリル酸で約1割をそれぞれ握る。国内外のメーカーの他メーカーにも樹脂原料を供給しており、価格高騰など影響が広がる懸念がある。
 事故が起きたのは紙おむつ向け高吸水性樹脂「SAP」の原料となるアクリル酸の貯蔵設備。調査や原因究明、再発防止策の策定まで「半年かかる可能性が高い」(化学メーカー)とされ、長期の製造休止は避けられそうにない。
 同社のSAPの生産能力は世界シェアの3割にあたる年47万トン。うち32万トンを姫路製造所が生産している。在庫は1カ月程度という』
 まさしく、企業の供給責任です。もちろん、事故により貴重な人材を失ったことが、まず第一の悲劇です。従って、現在、稼働している他の化学メーカー工場の安全性も危惧されることから、速やかに原因究明を徹底するとともに、事故が起こってからの再発防止ではなく、事故が相次いでいる化学工場に対しては、事前の査察等による、抜き打ち検査・監査等の対応が求められると考えています。

2012年3月11日日曜日

期待される炭素繊維の需要拡大

私は、日本の化学メーカーは、欧米の化学メーカーと比べて規模が小さいという印象を持っています。しかし、規模が小さいながらも、技術水準は高く、特定の分野でもって依然として競争力は維持しているようです。新型で1機目が就航したばかりのボーイング787(注)では、炭素繊維複合材料を多用され、それらのもとになる炭素繊維は、東レが供給していることは有名です。また、ユニクロで有名となったヒートテックなども同社が供給しているようです。東レという会社は凄いですね。

私を30年以上も前からテニスをしていた関係で、炭素繊維には馴染みがあります。当時、テニスラケットには、グラスファイバーを素材として製造、軽くて丈夫であるという2つの特性を持つことで、木製のラケットを市場から完全に駆逐していきました。その後、友人と釣りをする機会がありました。その時には、グラスファイバーがすでに時代遅れとなっており、カーボン製でないといだめだと、購入する際に注意されたことは今でも覚えています。このカーボンこそが先で述べた炭素繊維の本命であり、航空機などに使用される前に一般大衆にもスポーツ用品を通じて浸透していたという次第です。
もっとも、耐久性、安全性の面から航空機への導入は進んでいなかったのが実情でしょう。私の記憶では、初めて炭素繊維を主要部品に導入した航空機は、三菱重工がメインとなって開発されたF-2戦闘機です。一時期、F-2戦闘機の主翼の強度に問題があることが指摘されていましたが、今の化学メーカーは、その欠点を克服し、今回のボーイング787への納入につながったのです。とても日本企業らしいアプローチであったという思いと、現在開発中の中距離ジェット、MRJ(Mitsubishi Regional Jet)にも炭素繊維が多用されるのではないかと期待しています。炭素繊維の製造は、均質の糸を均等に混ぜ合わせるために高度の技術が求めら、日本企業の独壇場になっています。そして、この炭素繊維は、航空機、そして本命である自動車などへの使用が期待されているのです。
2012年3月9月の日本経済新聞朝刊に、『東レ、炭素繊維5割増産、先端素材、世界で最適供給』という題目の記事が掲載されていました。記事の大まかな内容は、東レが2015年までに450億円を投じて、日本、米国、韓国、フランスの工場で設備の新設をすること、需要が9割が海外であり、顧客のニーズに素早く対応する体制を整えるこということです。右図は、東レのホームページで発表された数値に基づき作成した、今後予想される同社の炭素繊維の生産能力の推移を示したものです。2015年時点で年産約3万トンですので、鉄が億トン単位での生産であるのに比べて絶対量には大きな乖離があります。引き続き産業の基盤となるのは鉄であり、それに代わる素材はないでしょう。しかし、航空機や高級自動車など付加価値の高い分野では、炭素繊維の独壇場になる可能性は高いと考えられます。炭素繊維の世界市場シェアで40%を占める東レの活躍が期待されますし、帝人、三菱レイヨンなど東レを追随するメーカーの生産量拡大による低価格の実現が待たれるところです。
(注)ボーイング777では10トンの炭素繊維を、787では35トンに増加したようです。