2012年3月11日日曜日

期待される炭素繊維の需要拡大

私は、日本の化学メーカーは、欧米の化学メーカーと比べて規模が小さいという印象を持っています。しかし、規模が小さいながらも、技術水準は高く、特定の分野でもって依然として競争力は維持しているようです。新型で1機目が就航したばかりのボーイング787(注)では、炭素繊維複合材料を多用され、それらのもとになる炭素繊維は、東レが供給していることは有名です。また、ユニクロで有名となったヒートテックなども同社が供給しているようです。東レという会社は凄いですね。

私を30年以上も前からテニスをしていた関係で、炭素繊維には馴染みがあります。当時、テニスラケットには、グラスファイバーを素材として製造、軽くて丈夫であるという2つの特性を持つことで、木製のラケットを市場から完全に駆逐していきました。その後、友人と釣りをする機会がありました。その時には、グラスファイバーがすでに時代遅れとなっており、カーボン製でないといだめだと、購入する際に注意されたことは今でも覚えています。このカーボンこそが先で述べた炭素繊維の本命であり、航空機などに使用される前に一般大衆にもスポーツ用品を通じて浸透していたという次第です。
もっとも、耐久性、安全性の面から航空機への導入は進んでいなかったのが実情でしょう。私の記憶では、初めて炭素繊維を主要部品に導入した航空機は、三菱重工がメインとなって開発されたF-2戦闘機です。一時期、F-2戦闘機の主翼の強度に問題があることが指摘されていましたが、今の化学メーカーは、その欠点を克服し、今回のボーイング787への納入につながったのです。とても日本企業らしいアプローチであったという思いと、現在開発中の中距離ジェット、MRJ(Mitsubishi Regional Jet)にも炭素繊維が多用されるのではないかと期待しています。炭素繊維の製造は、均質の糸を均等に混ぜ合わせるために高度の技術が求めら、日本企業の独壇場になっています。そして、この炭素繊維は、航空機、そして本命である自動車などへの使用が期待されているのです。
2012年3月9月の日本経済新聞朝刊に、『東レ、炭素繊維5割増産、先端素材、世界で最適供給』という題目の記事が掲載されていました。記事の大まかな内容は、東レが2015年までに450億円を投じて、日本、米国、韓国、フランスの工場で設備の新設をすること、需要が9割が海外であり、顧客のニーズに素早く対応する体制を整えるこということです。右図は、東レのホームページで発表された数値に基づき作成した、今後予想される同社の炭素繊維の生産能力の推移を示したものです。2015年時点で年産約3万トンですので、鉄が億トン単位での生産であるのに比べて絶対量には大きな乖離があります。引き続き産業の基盤となるのは鉄であり、それに代わる素材はないでしょう。しかし、航空機や高級自動車など付加価値の高い分野では、炭素繊維の独壇場になる可能性は高いと考えられます。炭素繊維の世界市場シェアで40%を占める東レの活躍が期待されますし、帝人、三菱レイヨンなど東レを追随するメーカーの生産量拡大による低価格の実現が待たれるところです。
(注)ボーイング777では10トンの炭素繊維を、787では35トンに増加したようです。

0 件のコメント:

コメントを投稿