世界的に共通していますが、若年層の失業率の高さが問題になっています。3月19日のNHKのニュースで若年層の雇用問題が数字以上に厳しいという実態が、内閣府発表の推計により明らかになったことが報道されました。この報道によれば、おととしの春に学校を卒業した人のうち、大学生・専門学校で52%が、高校で68%が就職できなかったり、早期に仕事をやめたりしたことが判明しました。若者の雇用環境が深刻な状況に陥っていることが分かり、これを受けて、政府も早々に雇用対策を打ち出しています。対策の大まかな内容は、大学を中退した人も含め、就職できなかった人の就職支援の強化、大企業への就職志向の高い学生と採用意欲の高い中小企業のミスマッチの解消、非正規雇用の若年層が正規社員へと移れるための支援強化などです。
内閣府の発表を待たずにして、世間一般にも若年層の雇用状況の厳しさは知られており、実態を追認したに過ぎないと思います。右図は、総務省統計局発表の年齢階級別の完全失業率を示したものです。総数の完全失業率は4.6%と、前年同月と比べて0.3ポイント改善しています。わが国の経済にも回復傾向がみえており、それを反映した結果だといえます。象徴的なのは、15〜24歳の完全失業率です。同年齢階級の失業率は9.5%と、ほかの年齢階級と比べて突出して高いことがまず目に入ります。加えて、55〜64歳の年齢階級と同様に前年同月と比べて悪化しているものの、55〜64歳が0.1ポイントの上昇にとどまっているのに対して、15〜24歳では0.9ポイントの上昇と悪化の度合いが全く違うことが分かります。
日本の雇用統計は、事実の断片を表しているに過ぎないという指摘もあり、米国の雇用統計の方がよりシビアに失業者数をカウントしているという見解もあります。特に、長期雇用、終身雇用を基本とし、既得権のある正規労働者を保護、その枠からいったん外れると、厳しいのがわが国の雇用システムです。雇用の流動化の必要性が叫ばれているものの、全てのつけが非正規雇用者や新卒者に回されているのが事実でしょう。
一方、中高年層に対しては手厚い雇用支援が行われています。具体的には、①65歳までの定年の引き上げ、場合によっては70歳までの雇用を続けた企業への奨励金や助成金の提供、②中高年層の再就職の支援や募集・採用時の年齢制限の廃止、②シルバー人材センター事業を推進し、高齢者の多様な就職・社会参加の促進などを唱っています。しかし、このような対策で恩恵を受けるのは、55〜64歳以上の人々であって、未来の日本を担う若者が恩恵を受けることはまずないでしょう。高齢者の雇用が促進された結果、逆に若者の就職が阻害された可能性も十分にあります。年金に関しても、高齢者に優しく、若者に厳しくです。差別用語かもしれませんが、問題の本質は「老害」です。この社会状況が容認され続けているからこそ、バブル崩壊以降の閉塞感から抜け出すことができない日本があるのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿