2012年2月23日の『ユーロ相場の本格的回復なるか』のブログで、ギリシャの追加支援策が合意されました旨記述しました。その中で、民間債権者が保有しているギリシャ国債が2,000億ユーロにものぼることが判明、合意により53.5%削減の削減が決定された場合、損失は1,070億円にも達することを記述しました。その後、2012年3月9日付日本経済新聞朝刊に、ギリシャ政府は、民間債権者のうち90%の同意を取り付けることを目標としており、最低でも75%以上の合意が得られれば、債務削減を実施する方針であるとする記事が掲載されていました(注)。
また、上記記事には、欧州メディア発表によると、既に6割超の投資家が同意していること、BNPパリバなど欧州の大手金融機関は、無秩序な市場混乱を回避するためには、削減に応じた方が望ましいと判断、3月8日までに削減に応じることを明らかにしたことが記述されていました。一方で、ヘッジファンドなどは態度を明らかにしていないようです。ギリシャ国債の問題は、国内問題にとどまらず、国際問題へと発展したことが、処理を困難にした理由です。上図は、民間が保有するギリシャ国債の債権者割合を示したものです。ギリシャの銀行やギリシャ国内の投資家が保有している国債は、全体の36%に過ぎず、欧州の銀行を始め、保険会社、ヘッジファンドなど海外の債権者割合が実に64%にも及ぶことが分かります。海外の投資家は、その国に属していないことから、国益にかなった行動をするとは思えません。ギリシャ問題が深刻化した原因は、ギリシャ国民とって大切な金融資産である国債を、高い投資リターンを追求するヘッジファンドなどが投機の対象とし、先物を利用したり、短期での売買を繰り返した結果だと考えています。債務削減に応じてないヘッジファンドの態度からも、そのことが伺えます。
株式と異なり、債券は怖いということを友人に聞いたことがあります。債券は、一度不安定になれば、わが国の場合、取引の中心が市場取引ではなく相対取引であることから、正常な値が付かないどころか、売却すらもできないそうです。その点が株式と違うところです。最近では、東京電力の債券が問題になりましたが、バブル崩壊以降の一部上場の建設会社の債券が暴落、「馬券債券」とも称され、利回りが30%超になったことが話題になったこともあります。
ここで、わが国の国債のどの程度の割合を外国人が持っているのかが気になりましたので調べみました。財務省作成の2011年度版『債務管理リポート-国の債務管理と公的債務の現状-』によると、2011年12月末時点で4.8%(速報値)であり、ギリシャと比べてかなり低い水準にとどまっていることがわかります。
しかし、私には2つの注目点があります。一つは銀行による国債保有です。銀行に次ぐ残高を保有する生命保険の場合、保険金の支払いサイクルと保険料収入のギャップが大きく、資金の長短のバランスを考慮する必要は低く、安定したリターンが得られることから、特に超長期国債を購入するようです。一方、銀行は、資金を預金という短期資金に依存しています。しかも、株式会社であり、時価会計を採用していることから国債の価格変動により決算内容が大きく変動する経営体質になっています。リーマンショック以降、わが国の国債利回りは低下の一途をたどっています。この中で、期近の決算では、国債から得られた収入により銀行の決算内容が好転しました。これは、逆に言えば、国債の利回りが少しでも上昇した場合、銀行の決算は悪化することを意味しており、相場状況に次第では、銀行は決して安定した投資家ではないということです。日本国債の引き下げも取りざたされている中、銀行がこのまま国債を安定的保有し続けるかは疑問が残ります。
もう一つは、経常収支の赤字です。2012年1月の経常収支が赤字になったことです。経常収支の赤字は、国債の円滑な消化には、海外投資家によるファイナンスを必要であることを意味しています。海外の投資家の国債保有は、短期債に集中していることから、逃げ足は速いでしょう。銀行や海外投資家へと、これ以上依存度を高めることは、流動性の短期の国債をより多く発行する必要があるといえます。結果として国債のデュレーションは短くなります。借換債を含めた国債の年間の消化は、2012年度の予定では169.6兆円です。安定した投資家が少なくなっている状況で、この額を今後何年も持続することは不可能だと感じています。
(注)記事の題目は『「無秩序なデフォルト」回避へ、ギリシャ債務削減、75%の合意確保か』。
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