3月8日、財務省から発表された2012年1月の国際収支速報によれば、モノ・サービス、配当・利子など海外との総合的な取引の結果を示す経常収支が、前年1月の5,472億円の黒字から4,373億円の赤字へと転落したことがわかりました。
まず、1月の貿易動向は、輸出額が欧州債務危機、円高の影響に加え、中国の旧正月に合わせて輸出を絞ったことが影響し、前年同月比8.5%の減少の4兆3,536億円にとどまりました。一方で、輸入額は、原発停止に伴う液化天然ガス(LNG)などの燃料の輸入量が増えたことに加え、原油価格の上昇による輸入代金の増加が響き、同11.2%増の5兆7,353億円へ大きく増加しました。この結果、1月の貿易赤字としては、1996年以降の統計では最大の1兆4,747億円の赤字となりました。所得収支の1兆1,326億円の黒字ではカバーできなくなり、経常収支ベースで大幅な赤字となったようです。経常収支の赤字規模も、リーマンショック直後の2009年1月の1,327億円を大幅に上回る水準であり、昨年の貿易赤字が31年ぶりの赤字に陥るなど経常収支の赤字化が定着する懸念があります。
もっとも、わが国の所得収支の黒字幅はむしろ増加傾向にあり、楽観的な見方もできます。右図は1996年以降の1月の経常収支、貿易収支、所得収支の推移を示したものです。2008年1月の所得収支は、1兆4,484億円に達し、その後、リーマンショックの影響を受け、9,159億円まで減少するものの、その後は2年連続増加しているようです。これらは、あくまで1月のデータですので、通年のデータとは差があると思います。しかし、感覚的な話しにはなりますが、通年の経常収支の推移と大きな乖離はないようにみえます。
この経常収支の赤字をみて、昨日の外国為替市場は円安へと向かっているようです。その結果、輸出関連銘柄を中心に株価も上昇しています。これにより過剰な円高が回避され、輸出が回復し、経常収支も黒字化することも考えられます。もっとも、財務省発表の2月上中旬の貿易収支は依然として686億円(前年同期は4,544億円の黒字)の赤字を記録したことから、通年での経常収支の赤字化は現時点では否定できないでしょう。
特に、円安が進んだところで、欧州、米国中心とした海外需要そのものが萎縮している中で、本格的な輸出の回復が期待できないのも事実です。一方で、今の日本は、構造的なエネルギー問題を抱えており、引き続き大量の液化天然ガスを輸入する必要があります。天然ガスの国際価格が上昇している最中、円安が進行すれば、円建てでみた燃料代金はむしろ大幅に増加する可能性があり、通年で2年連続の貿易赤字に陥ることも十分に考えられます。これに加え、海外政府の発行する債券の利回りが低下しており、配当・利子収入などが減少、所得収支の黒字幅が縮小する可能性もあります。政府の赤字が拡大の一途を辿っており、それらのファイナンスには海外の貯蓄がどうしても必要であり、今後の国際収支は目が離せないとろこです。
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