2012年3月18日日曜日

国債利回りの上昇

円安が進み、輸出企業を中心に業績回復が見込まれることから、日経平均が当面の目標であった1万円を超えました。今後、一層、円安が進むことを専門家等が指摘しており、円安、株高という持ち望んだ相場状況が訪れることが期待されます。日本銀行が、大胆なさらなる金融緩和が功を奏したとも考えられますが、日本の国債利回りは1月4日の0.985%(10年物、日本相互証券)から3月15日の1.055%へとむしろ上昇しています。やはり、この円安は、海外の金利上昇に伴うものであって、長期金利はそもそも制御不能であることから、日本銀行の政策がプラスに寄与したという根拠は今のところないと考えてもいいでしょう。
右図は、今年に入ってからの日、米、英、独の国債利回りの推移を示したものです。同じ期間で、米国の30年物国債が3.03%→3.41%、英国の30年物国債が3.10%→3.43%とともに0.3%から0.4%ほど上昇しています。一方で、ドイツの10年物国債は、1.93%→1.96%と小幅の上昇にとどまっています。英国の事情はよく分かりませんが、特に米国ではエネルギー、食料品を中心に物価が上昇傾向にあり、インフレ懸念の発生に伴う国債利回りの上昇であるされます。この金利高が米ドルの水準を高めているだけで、今後、ドル高に伴う米国企業の利益水準の低下が危惧されるいることからも、ドル高が長引けば米国経済の失速の可能性が出てきます。
 ドイツのことは余り調べていませんので正確なことはいえません。しかし、ドイツの金利水準は年初からほとんど変動してないのは、年末にかけて欧州債務危機によりリスクプレミアムが発生、ドイツの国債の利回りもこの流れに引っ張られ形で既に上昇していたのではないかと推測しています。しかし、3月12日には1.76%にとどまっていたことから、ここ数日の国債の利回り急上昇はインフレなどが懸念された結果ではないかともとらえることができます。詳しい分析は、今後の国債利回りの推移を注視するしかありませんが、特に、ギリシャ国債が格付けが引き上げられたこともあり、リスクプレミアムによる上昇ではないと考えています。
 それにしても、グラフにしてみて再認識できるのですが、4カ国の中で、日本の国債利回りはかなり低い水準にとどまっているのがわかります。わが国の潜在成長率が低下していることを反映し、国債利回り低下しているという論者もいます。しかし、私には、金融機関がリスクを取らず、国債ばかり投資している姿が頭に浮かんできます。米国の場合、無節操な金融政策や財政政策をすれば、国債利回りは上昇します。一方、わが国では、そのような状況は起こらず、結果として財政規律を歪めているのです。
 いつ頃かという記憶はないのですが、スウェーデンのある金融機関が、スウェーデン政府の財政政策を批判、これ以上赤字を垂れ流すのならば、国債は購入しないという宣言をしたことがあります。これを危機であると認識し、同政府は財政再建に向けて努力をしたという話があります。日本の金融機関も毅然とした対応が必要です。国債の購入比率が高いことを盾に、政府に財政規律を求めることは可能だと思います。この状況を放置し、政府の危機意識が低下した結果として、今回の税制改革で、消費税率引き上げに失敗したのならば、日本銀行とともに日本の金融機関も断罪されるべき存在であることはいうまでもありません。

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