協定が行き詰まりというよりは、FTAやTPPの話題があがってきていない中、2012年3月18日付日本経済新聞朝刊に、FTAに関する記事(注)が掲載されていました。以下記事の引用。
『日本の主要製造業が自由貿易協定(FTA)を活用し、海外生産を拡大する。東芝はインドの火力発電用タービン工場の能力を2015年度までに倍増し、東南アジアなどに輸出する。トヨタ自動車は米国工場から韓国への輸出を始めた。こうした海外工場の第三国向け輸出は10年度で1,888億ドル(約15兆7千億円)と10年前の3倍強になった。関税など貿易の障壁を相互に撤廃するFTAの広がりに対応し、最適地からの輸出に切り替えて国際競争力を高める』この流れには、国内の空洞化を進めるという批判があるかもしれません。しかし、ここ20年以上もの間、継続的な円高に苦しめられ、グローバルな展開が進めざるを得なかったのは日本の製造業は、ここへきて、その恩恵を享受することができるようになったことを意味しています。まさに、日本の製造業の努力の賜物だという印象を受けます。
以下は、わが国の貿易黒字を稼ぎ続けてきてきれたトヨタ自動車に絞って話を進めます。先進国の中でも自動車の生産が活発な国は、貿易黒字となりやすいという印象があります。そうした中で、外貨を稼ぎ続けてくれたという意味で、同社の貢献は大きかったと思います。上記の記事によると、米韓FTA締結を受けて、米国工場で生産した「カムリ」「シエナ」を韓国への輸出を開始したそうです。これは、米国から韓国へと輸出する乗用車の関税は8%から4%へと順次引き下げられ、17年には完全に撤廃されることを受けての対応です。米国での生産設備増強を続けてきたトヨタ自動車は新たな成長へのステージへと踏み出したともいえます。決定や判断が遅い日本政府を、当てにしなくても競争力ある企業は自らの力でもって市場を開拓することができます。日本の製造業は、これからは政治力が低下している日本政府を当てにすることはできないかもしれません。これからは、米国の工場で生産している自動車であるということが強みとなって、輸出に際して相手国の政治的圧力を屈することなく輸出を拡大されることが自由にできるかもしれません。中国にしても、欧州にしても政治力では、わが国を圧倒しています。その両国と正面から交渉ができるのは、米国くらいしかないでしょう。その逆もしかりです。グローバル展開を進め、現地での生産拡大を続けてきたというメリットは思った以上に大きいといえます。
そして、トヨタ自動車にとって、成長し続けるにあたって、不可欠な要素は、成長著しい新興国における自動車需要を如何に取り込むかです。中国やインドなどでは、同社はやや遅れ気味であることは否定できません。インドではスズキが、中国では独フォルクスワーゲンや米GMなどが先行しているようです。しかし、まだまだ参入する余地はあり、同社による積極的な事業展開が期待されるところです。そして、この中で、大切となってくるのは、米国の政治力です。米国は幸い、賃金水準も十分に低くなっていること、先進国の中で唯一出生率が高いことなど、労働力不足が生産規模の拡大に制約を与えることはありません。米国からの一層の輸出拡大が安定した企業成長には必要だと感じました。
(注)記事の題目は『FTA活用、海外生産拡大、第三国への輸出拠点』。
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