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2012年10月16日火曜日

荒れ狂う世界各地でのデモ、際立つ中国の異常さ

 今年の9月は世界各国でデモが発生、荒れ狂っているようです。ECBからの支援を受けるため、緊縮策を堅持し、財政削減を進めるギリシャ、スペインでもデモが発生、多数の逮捕者を出すまでに至っています。もっとも、店舗や工場が襲撃されるといった激しいものではなく、火炎瓶を投げるといった過激な行動は、一部に限られており、全般的には穏健な人々によるゼネラルストライキといった性格のものです。これに対して、尖閣諸島の国有化に端を発する中国での反日デモの性質は異なるものです。一番疑問に思うのは、ニュースや新聞などでみるのは、反日デモによって壊された日系企業の工場や店舗などの映像・写真ばかりであり、デモに参加し、暴力行為に至った結果、逮捕者が出るといった類いの情報が入ってこないことです。法治国家である中国は、暴徒化したデモ参加者に対して徹底的に取り締まることは当然のことです。それができないのならば、中国の法律とは一体何であるか疑問を抱かざるを得ないです。法律が政府主導で、いい加減、かつ適当に運用されているのならば、進出している外国企業の全ては、危険に晒されていることを意味しており、いつ暴徒に襲われ、工場や店舗が焼き討ちにあっても、それは中国に進出しているのだから仕方がないという結論になります。
 特に、中国は既に世界第2位の経済力を持っており、世界経済の一員として組み込まれているとともに、IMFやWTOなどにも参加しています。今回の反日デモでも、日系企業の被害の程度からみれば、当然のごとく数千、数万人規模の逮捕者が出ていても不思議がないのに、その姿が映像や写真に映し出されていないのは、その映像・写真の流出が規制されているのか、それとも大規模な逮捕者自体が存在しないのかのどちらかです。Googleが撤退を強いられたや、過去の例からいって前者の可能性も否定はできませんが、どうしても後者の可能性が高いと考えています。明確な暴力行為に対して、処罰をしないならば、法治国家ではありません。そして、法律が適当に運用される国が、国際経済に進出することは許されないのです。それは、ルールで守られた世界経済の秩序の崩壊を意味するからです。
 幸い日本では秩序が保たれているようで、中国系の店舗に対する報復などの暴力行為はないようです。つまり、日本は法治国家であり、暴力行為に対しては、法律に基づく厳正なる処罰がかされるからです。その点は、日本の司法制度は、中国よりも優れているといっても過言ではないでしょう。もっとも、今回は、日本政府もやや矛盾する対応をしています。竹島の問題では、国際司法裁判所に訴えるなどの方向で動いたのに、尖閣諸島の問題では、それを無視して、いきなり国有化という選択をとりました。国の領土であるという自身と根拠があるならば、まずは国際司法裁判所へ訴えるという手段とるべきであったと思います。
 中国リスクが大きくなっている中で、8月の自動車生産実績が発表されました。日系の自動車メーカーは、9月を待たずして減産に入っているようです。デモの影響を受けた9月は、8月よりもかなり落ち込むことから、中国での生産維持にはかなりのリスクがあるといえます。2012年9月27日付朝日新聞朝刊に中国での自動車生産の減産に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『日本車、中国で減産拡大。尖閣問題で販売打撃』です。以下引用文。
 『日系の自動車メーカーに中国での生産を減らす動きが広がってきた。尖閣諸島の国有化で中国に反日感情が高まり、日本車の販売に陰りが見え始めているためだ。主力市場の中国での減産が長引けば、業績の悪化につながることは必至だ。
 中国では、建国記念日の日にあたる10月1日の国慶節をはさんで、今月30日から8日間の大型連休に入る。連休前から工場の操業を止めて、休業日を増やす動きが広がっている。(中略)
 国内の乗用車大手8社が26日発表した8月の生産実績によると、北米や新興国での好調な販売を背景に各社の海外生産は総じて好調だったが、中国での生産台数は工場を持つ6社合計で前年同月比8.4%減の23万7246台。6社中4社が前年実績を下回った。
 中国での8月の販売台数もトヨタなど4社が前年を割り込んでおり、「日中対立の影響が出始めた」との見方も出てきた。中国での販売は、景気減速の影響で減速傾向にあっただけに、日本車を敬遠する動きが長引けば、日系メーカーへの打撃は大きい』

 これを契機に中国依存を低めるという選択肢は十分に考えられます。日本と良好な関係にあるASEAN諸国は、中国とFTAを結んでいます。中国への輸出は、ASEAN諸国を通じて行えばいいのです。タイ、インドネシアなどは十分な市場規模を有しており、日本企業にとって魅力的な市場です。それとともに、中国の不透明な法律運用の下で企業やそこで働いている人々を危険に晒すよりも、ASEAN諸国を生産拠点にすることは、日系企業にとってプラスでしょう。いざとなれば、タイやインドネシアのメーカーであると称して、中国へと輸出することは可能でしょう。また、政治力のある米国では、労働コストが徐々に低下しており、生産拠点として魅力が増しているそうです。中国は、米国からの輸出をストップをかけることはできません。日本の自動車メーカーは、米国ブランドで自動車を中国へと輸出すればいいのです。明確な暴力行為を取り締まることができない法律の未整備等のリスクを考慮した場合、生産拠点としての中国の魅力はなくなりつつあります。

2012年3月19日月曜日

FTAによる自動車産業のメリット

最近、FTA(自由貿易協定)、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)など2国間、地域間の自由貿易協定が活発に締結されているようです。わが国は、米国、EUなどとの協定締結が、製造業の最大のライバル国である韓国の後塵に拝しており、対応が遅い日本政府に対してが製造業が中心になって批判されているところです。いち早く米国やEUとFTAを締結した韓国でも、農業分野の切り捨てにつながるとして批判が同国内でされており、自由貿易協定の締結には難しい問題が山積していることよくわかります。しかし、私も、日本の農業分野は重要な存在であると考えており、40%程度まで低下している食糧自給率の惨状を考慮すれば、米国やEUとの交渉において農業分野での相手国に一定の譲歩を得る必要があります。
 協定が行き詰まりというよりは、FTAやTPPの話題があがってきていない中、2012年3月18日付日本経済新聞朝刊に、FTAに関する記事(注)が掲載されていました。以下記事の引用。
 『日本の主要製造業が自由貿易協定(FTA)を活用し、海外生産を拡大する。東芝はインドの火力発電用タービン工場の能力を2015年度までに倍増し、東南アジアなどに輸出する。トヨタ自動車は米国工場から韓国への輸出を始めた。こうした海外工場の第三国向け輸出は10年度で1,888億ドル(約15兆7千億円)と10年前の3倍強になった。関税など貿易の障壁を相互に撤廃するFTAの広がりに対応し、最適地からの輸出に切り替えて国際競争力を高める』
この流れには、国内の空洞化を進めるという批判があるかもしれません。しかし、ここ20年以上もの間、継続的な円高に苦しめられ、グローバルな展開が進めざるを得なかったのは日本の製造業は、ここへきて、その恩恵を享受することができるようになったことを意味しています。まさに、日本の製造業の努力の賜物だという印象を受けます。
以下は、わが国の貿易黒字を稼ぎ続けてきてきれたトヨタ自動車に絞って話を進めます。先進国の中でも自動車の生産が活発な国は、貿易黒字となりやすいという印象があります。そうした中で、外貨を稼ぎ続けてくれたという意味で、同社の貢献は大きかったと思います。上記の記事によると、米韓FTA締結を受けて、米国工場で生産した「カムリ」「シエナ」を韓国への輸出を開始したそうです。これは、米国から韓国へと輸出する乗用車の関税は8%から4%へと順次引き下げられ、17年には完全に撤廃されることを受けての対応です。米国での生産設備増強を続けてきたトヨタ自動車は新たな成長へのステージへと踏み出したともいえます。決定や判断が遅い日本政府を、当てにしなくても競争力ある企業は自らの力でもって市場を開拓することができます。日本の製造業は、これからは政治力が低下している日本政府を当てにすることはできないかもしれません。これからは、米国の工場で生産している自動車であるということが強みとなって、輸出に際して相手国の政治的圧力を屈することなく輸出を拡大されることが自由にできるかもしれません。中国にしても、欧州にしても政治力では、わが国を圧倒しています。その両国と正面から交渉ができるのは、米国くらいしかないでしょう。その逆もしかりです。グローバル展開を進め、現地での生産拡大を続けてきたというメリットは思った以上に大きいといえます。
そして、トヨタ自動車にとって、成長し続けるにあたって、不可欠な要素は、成長著しい新興国における自動車需要を如何に取り込むかです。中国やインドなどでは、同社はやや遅れ気味であることは否定できません。インドではスズキが、中国では独フォルクスワーゲンや米GMなどが先行しているようです。しかし、まだまだ参入する余地はあり、同社による積極的な事業展開が期待されるところです。そして、この中で、大切となってくるのは、米国の政治力です。米国は幸い、賃金水準も十分に低くなっていること、先進国の中で唯一出生率が高いことなど、労働力不足が生産規模の拡大に制約を与えることはありません。米国からの一層の輸出拡大が安定した企業成長には必要だと感じました。
(注)記事の題目は『FTA活用、海外生産拡大、第三国への輸出拠点』。

2012年2月13日月曜日

レアアースとは何

金属には色々な種類があります。最も身近な存在は「鉄」でしょう。ですが、歴史上でもっとも早くから普及した金属は、銅を主成分とし、錫を混ぜた合金である「青銅」でした。青銅の後に鉄が現れ、文明の発展には不可欠な金属となりました。私の記憶では確か、鉄器を持ったヒッタイトがエジプトを征服したということを、歴史の教科書で学んだ気がします。鉄が文明の中心となり、今でも鉄なくして現代の工業社会は考えらないでしょう。こうした中で、最近気になる新たな金属、レアアースという言葉が新聞、雑誌のみならずニュース番組でも特集が組まれています。ここで、レアアースとは何かという疑問が生じましたので、ちょっと調べてみました。
 まず、金属は大まかにコモンメタル(ベースメタル)とレアメタルに分かれるそうです。コモンメタルには、鉄、銅、亜鉛、錫、金、銀、水銀、鉛、アルミニウムの9種類があり、資源量が豊富であり、採掘・精錬が容易で産業のベースをなす金属です。一方、レアメタルには47種類(文献によれば48種類)の金属が該当し、以下の3つの特徴のうち一つでも合致すればレアメタルに該当するとのことです。

  1. 地殻中での存在量が少ない。
  2. 産出箇所が特定の地域に集中している。
  3. 分離・精錬が困難である。

 代表的なレアメタルには、マンガン、クロム、タングステン、モリブデン、アンチモン、コバルト、バナジウムなどの金属があります。以下は、上記レアメタルの生産量、埋蔵量のシェアと用途を表した表です。
中国と南アフリカ共和国が多いのと、政情不安定なコンゴ民主共和国が生産量、埋蔵量で大きなシェアを占めているのが特徴で、少なくとも上記の2.の条件を満たしているといえるでしょう。これ以外のレアメタルで、3族元素(注1)のうち最下部のアクチノイド元素を除いたもの、17種類の金属をレアアース又は希土類金属と呼びます。レアアースの一覧と用途は以下の表の通りです。
この表にある金属の中で、ネオジム、ジスプロシウムなどが磁石、磁性材料の材料に使用され、ハイブッリドカーや電気自動車のモーターやハードディスクドライブ(注2)などの重要な部品に使用されています。特に、最近では磁力が強いということでネオジム磁石(注3)がよく知られるようになってきました。レアアースは、世界各地に存在するものの、中国のレアアースが最も生産に適している状態で存在することから、価格競争力を背景に、、米国、オーストラリアなどの鉱山が相次ぎ閉山に追い込まれ、中国がほぼ独占する事態となっています。つまり、レアメタルの条件である2.と3.に該当する金属こそレアアースなのです。
右図はレアアース生産量の国別シェアを表したものです。中国のシェアが96.7%にも達しています。この状況で、環境破壊を理由(注4)に、中国はレアアースの輸出を制限、日本の製造業が慌てているのです。
2012年1月24日付日本経済新聞朝刊にレアアースに関する記事がありましたので引用します。タイトルは『信越化学、ベトナムに拠点、レアアース加工、初の海外工場』です。以下引用文。
『信越化学工業はハイブリッド車(HV)のモーターなどに使うレアアース(希土類)の加工拠点をベトナムに新設する。2013年2月に稼働し、使用済み磁石や鉱石からレアアースを分離・精錬する。レアアース磁石で世界シェア2位の同社は原料となるレアアースの大半を中国に依存しているが、自前の加工拠点を増やして調達リスクの軽減や磁石の安定供給を目指す』
以上の通り、レアアース磁石の生産をする企業が中国の輸出制限に対応する努力を進めているようです。一方で、レアアースを使用しないモーターの開発も進んでいます。2012年1月11日付日本経済新聞朝刊に『レアアース不要の車モーター、日本電産が量産へ』という記事が掲載されていました。以下引用文。
『日本電産は10日、レアアース(希土類)を使わない次世代モーター「SRモーター」を、電気自動車(EV)やハイブリッド車の駆動用として量産する方針を明らかにした。2013年にも国内外の自動車メーカーに供給する。レアアースの価格高騰に対応し、代替技術の投入で自動車市場の開拓を加速する。(中略)
SRモーターはレアアースを使った永久磁石を使わず、軸の周囲の電気の流れを切り替えて回転させる仕組み。構造が単純で発熱が少ないうえ、低コストで量産できるのが特徴。ただ電流の制御が難しく、振動や騒音が大きい欠点があり、自動車向けの実用化が難しかった』
トヨタ自動車でも、レアアースを使用しないハイブッリドカーもしくは電気自動車の開発をしているようです。自動車の国内生産が低迷する中で、今こそ日本の自動車メーカーの技術力が試されるところです。この技術が開発されれば、バイブリッド車のみならず、電気自動車の分野でも主導権を握ることができるでしょう。
(参考文献)齋藤勝裕『レアメタルのふしぎ』、SoftBank Creative、2009年。
(注1)元素の周期表の左から3列目にある元素。
(注2)ハードディスクの記録メディアを回転するためのスピンドルモーター、磁気ヘッド駆動用VCM(ボイスコイルモーター)などに希土類磁石が使用されている。
(注3)ネオジム磁石とは、ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とする希土類(レアアース)磁石で、ジスプロシウムを添加すると保磁力が向上する。
(注4)レアアースの副産物として放射性物質であるトリウムが産出されるためなど。

2012年1月19日木曜日

軽自動車に言及、TPPで思わぬ影響

先日、『ニュージーランドに一言』というブログ(2011年12月25日公開)で、ニュージーランドの乳製品の輸出事情を書きました。わが国がTPPに参加することで、乳製品価格が下落、家計のコスト削減につながると思って喜んでしまいました(注)。もっとも、その時引用した記事には医療問題に関するものがありました。米国式の医療制度が加盟国全体に強いられることが記述されており、少なからずマイナスの影響があることを認識、手放しで歓迎できないことがわかりました。今日は、TPPに関して、家計に直撃する要求が、米国からされる可能性がある旨の記事が、2012月1月15日付日本経済新聞掲載されていましたので、早速引用させていただきます。記事は、日本の「軽自動車」に関するものです。以下記事引用。
 『米通商代表部(USTR)は13日、日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に関する米業界団体からの意見の公募を締め切った。団体からは日本の交渉参加を支持する声が多かったが、市場開放の促進を求める要望が目立った。米自動車大手は日本の交渉参加に反対意見を表明し、日本独自の軽自動車規格の廃止を求めた。(中略)
 一方、米自動車大手3社(ビッグスリー)で構成する米自動車貿易政策評議会(AAPC)は、自動車市場の閉鎖性を理由に、日本のTPP参加には「現時点では反対」と表明。日本独自の軽自動車規格について「優遇措置はもはや合理的な政策ではない」「日本メーカーだけに恩恵がある」とし、廃止を主張した』
 確かに、軽自動車規格は、日本独自の規格です。私としては全く認識がなかったのですが、日本の自動車産業が脆弱だった時に、通産省(現「経済産業省」)がつくった究極の非関税障壁です。現在、私が乗っている自動車も軽自動車です。自家用の乗用車タイプですので、年間の軽自動車税は7,200円で済みます(自家用の貨物タイプならば4,000円です)。一方、これが軽自動車以外ならば、税額は、自動車の種類、用途、排気量などにより決めらます。グリーン化税制により排出ガスや燃費の性能に応じて、税額が変動する場合がありますが、一般的には排気量1リットル以下29,500円、1リットル超1.5リットル以下34,500円、1.5リットル超2リットル以下39,500円となっています。軽自動車と比べて、小型車、普通車の税額はかなり高いものとなっています。
 上図は、わが国の乗用車生産の推移を表しています。トラックを含めて、2010年は774万台にとどまっており、かつて国内生産1,000万台を誇っていた時代が懐かしく感じます。この中で、乗用車生産に占める軽自動車の割合がが2009年に大きく上昇していことがわかります。リーマンショック後、小型車、普通車が欧米を中心とした輸出市場が低迷したことに影響を受け、大幅に減少したのに対して、国内市場向けの軽自動車販売が安定していたことに起因するものです。
 私は、軽自動車に対して2つの考えがあります。一つは、日本の狭い道路事情を考えた場合、小回りのきく軽自動車が適していること、もう一つは、国内向け、海外向けに2種類の製造ラインを作らなければならなく、メーカーにとって負担になることです。どちらがベストなのか、今のところはっきりしませんが、外圧に屈して軽自動車を一方的に廃止するということは避けるべきです。製造ノウハウなど蓄積された技術は多いですし、未来世界を描いた映画に登場する自動車は日本の軽自動車のスタイルそのもののケースが多いからです。じっくりとした議論が必要とされる分野です。
(注)これには一定の留保事項があります。なぜなら私は毎年北海道へ自然探索の旅をしているからです。疲 
  弊する北海道の酪農現場を直に見ており、関税の撤廃もしくは引き下げという事態となれば、個別の所得補  償制度を導入し、酪農業者の雇用を維持するべきだと考えています。