2012年3月29日木曜日

一票の格差

私は、一票の格差についてやや無頓着なところがありました。2012年3月1日付日本経済新聞朝刊に、野田首相、自民党党首の谷垣総裁、公明党の山口代表との3者討論で、まず「一票の格差」是正を優先すべきと表明した旨の記事が掲載された。そこで、ここのとろこ「一票の格差」に注意し、ニュース番組を観ていました。私は、一票の格差は衆議院で3倍、参議院で5倍が目安であると認識していましたが、実は、2011年3月23日付けの最高裁判決で、一票の格差が2.3倍であった2009年(平成21年)の衆議院選挙は違憲であるとされていたことを初めてニュース番組で知りました。
 この判決により、格差が3倍であったものが、2倍へと変更を強いられることとなり、国会では「0増5減」案などが提案されるとともに、国会議員の給与削減なども活発に議論されているようです。しかし、私には根本的な疑問があります。何故2倍超や3倍以上が違憲であり、2倍ならば合憲なのかさっぱりわからないことです。現時点で、決して詳しく判決文を読んでいるわけではありませんが、これらの数字の差において合理的、かつ普遍的な説明ができているのかどうか、時間があれば判決文を読んで確認してみたいところです。私に言わせば、2倍としても、3倍としても、憲法14条で定められた「法の下の平等」に反しており、違憲ではないかということです。つまり、国勢調査の結果に合わせる形で、国民ひとりひとりの一票に価値に格差が生じないという状態、つまり一票の格差は1に極力近づけなれば、よっぱどな詭弁を使わない限りは、合理的な説明はできないと考えています。
そこで、一票の格差の実態について調べてみました。右表が、総務省のホームページに掲載されていた、平成22年(2010年)の国勢調査(速報)に基づく、一票の格差を都道府県別に表したものです。縦長の表で読みにくいのですが、せっかく調べたデータですので、そのまま掲載させていただきます。この調査は、衆議院小選挙区、比例代表区に加え、参議院についても詳細に調べています。データ量が膨大になることから、衆議院の小選挙区における議員一人当たりの人口数に絞って話を進めます。調査の結果、人口が最も少ないのが高知県で254,865人であるのに対して、最も多いのが東京都の526,470人であり、その格差は2.066倍となっています。衆議院選の小選挙区に限っても、違憲状態にあるということです。これにどういう方法かわかりませんが、比例代表区の議員数を含めたものが、大体2.3倍になっているのでしょう。
私は、この2倍という数字は、「法の下の平等」という視点では全くもって違憲であると考えています。しかし、それならば、今の制度のもと、単純に1倍にすればいいのかといえば、決してそうではありません。そんなことをすれば、地方と東京都の格差がどんどんと大きくなり、東京都の一人勝ちになってしまいます。安全保障、地域経済の活性化、国土の有効利用などを考慮すれば、東京都への一極集中は望ましくありません。つまり、現行の人口比に応じて議員数を配分する衆議院、参議院という制度そのものに違和感を感じているということです。米国連邦議会の上下院のように、一方は人口比に応じてストレートに議員数を配分し、もう一方は県など行政単位に2人という一定数は配分するという、議会制度に変更した方がいいのではないかと考えているのです。
ここで、米国の選挙制度について簡単に説明した文献がありましたので、その一部を引用します。引用元は、日経文庫の『アメリカを知る』(注)です。以下引用文。
『東部の大都会から西部や南部へという人口の移動は政治的にも一定の影響を及ぼします。米国では一票の格差をなくすために、人口を調べる国勢調査に合わせて大統領選での選挙人数や下院議員の数を頻繁に調整するからです。
たとえば、1980年の大統領選の際には、南部のテキサス州の選挙人数は26でしたが、2004、08年の大統領選では34人に増えました。一方、車の町デトロイトがあるミシガン州では選挙人数が21から17に減りました』
これですと、東部の大都会が衰退し、南部や西部が潤うこととなります。しかし、米国には、下院よりも権限の大きい上院があります。人口比に左右されない米国における上院の存在こそが、今のわが国に求められる議会制度ではないでしょうか。
(出所)実哲也『アメリカを知る』pp186-187、日本経済新聞社、2009年。

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