2012年3月15日木曜日

懸念される米国の物価上昇

デフレが深刻化しているわが国でも、イランの核問題に端を発する原油価格の高騰、円安の進行に伴いガソリン価格が上昇し、レギュラーガソリンの小売価格は150円台に突入しました。先の政策提言で、日本銀行は目標とするインフレ率を1%としていますが、意外と簡単に目標に到達するかもしれません。ガソリン価格は当然のことながら、わが家の周辺では野菜の価格も上昇しています。いつも近所の八百屋さんで購入していたのですが、昨年までですと旬の野菜が100円程度の価格で入手できていました。しかし、今年は異変が起こっています。高いというよりも、陳列されている野菜自体が少なくなっており、購入することすらできなくなってしまいました。知人に東京在住の方がいます。その方は、帰省する度に、近所にある八百屋さんで野菜をごっそりと購入するそうです。私の先入観なのかもしれませんが、西日本の野菜が東日本へと出荷され、その影響を受けて周辺の八百屋で品不足となっているのではないかと考えてます。
 パソコン、テレビなど耐久消費財の価格は、価格性能比を考慮した場合、10年、20年前と比べて劇的に下がりました。テレビなどは、日立がテレビ事業からの撤退を余儀なくされるほど下落していますし、パナソニックが7,800億円もの赤字を記録したのも、テレビ事業への過大な設備投資だけではなく、家電製品など耐久消費財全般での価格下落の圧力が背景にあります。私は、帰宅途上に家電量販店があることもあって、毎日立ち寄っては価格のチェックするという日々を送っています。家電製品の価格ばかり気にして、本当に大切な足もとの価格上昇に対して少なからず無頓着になっている気がします。私にとって価格が上昇した製品は、タイの大洪水の影響を受けたハードディスクくらいです。
 しかし、油断は禁物です。生活防衛のための節約生活にとって驚異となる物価上昇は、確実に忍び寄ってきています。食料品、燃料価格、電気料金など昨年から引き続き上昇傾向にあり、家計をやり繰りしている専業主婦の方にとっては、実感での物価上昇は1%以上になっているかもしれません。原油価格、穀物の価格は、投機筋の影響もあり、国際価格はかなり高い水準になっています。しかし、わが国で、インフレの実感が乏しいのは、円高の進行によって打ち消されているだけです。今後、一本調子で円安が進行すれば、制御不能のインフレが、わが国を襲うことは否定できません。過度な円高へのマイナス心理は捨てるべきです。円高にも、それなりのメリットはあります。
一方、米国は、物価に関していえば通貨高という恩恵を受けにくい経済です。それは、商品の国際価格が、米国ドル建てで表示されており、それらの国際価格の上昇は米国内の物価上昇へと 直結するからです。Bureau of Labor Statisticsによれば、米国の2012年1月の消費者物価の上昇率は、1年前と比べて全品目ベースで2.9%上昇しています。特に食品4.4%、ガソリン9.7%などの上昇幅は顕著となっています。食品・エネルギーを除いた全品目ベースでは2.3%にとどまっていることから、食品やガソリン価格の上昇が、今後家計の消費支出にダメージを与える可能性が高まっています。消費の低迷は、明るい兆しがみえてきた米国経済にとってマイナス要因であり、物価上昇、特にガソリン価格の上昇が大統領選の争点になっていることからも、深刻な状況に伺えます。
 物価の上昇懸念は、日本と異なり、米国では長期金利に影響を与えます。ここのところ、米国の30年国債の利回りは急上昇していることから、市場がインフレに対して警戒感を抱いている可能性は否定できません。それが結果として、円安を誘因しているとも考えられます。3月16日には、2012年2月の消費者物価指数が発表されます。食品、ガソリンなどがどの程度上昇するかがポイントとなるでしょう。

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