米国は、車社会です。日本では若い人を中心に車離れが進んでいるといわれています。一方、国土が広大であり、公共交通機関の整備に膨大なコストがかかる米国社会にとって、依然として車は生活必需品であり、それゆえガソリン価格の上昇は国民生活に直接関わる問題であるといえるでしょう。
2012年2月25日付日本経済新聞朝刊に米国のガソリン価格に関する記事がありました。記事によると、米エネルギー省発表の全米平均のガソリン価格は、レギュラーで1ガロン当たり3.59ドル(1リットル当たり76円)に達し、2011年9月半ば以来の高水準となったとしている。昨年の9月にもガソリン価格が4ドル間近まで上昇、米経済の下振れリスクとなったことからも、現在、失業率等の改善がみられ、ゆるやかな回復傾向がしめしている米経済に水を差す恐れがある。また、米国の家計の可処分所得に占めるガソリンに対する支出は大きく、これ以上のガソリン価格の上昇があれば、心理面でマイナス面が働きやすいと指摘している。
右図は、原油価格の推移を示しています。リーマンショック直前に原油価格は150ドル近辺にまで上昇、その後、30ドルまで下落しました。改めてグラフにしてみると、リーマンショック前後の原油価格の値動きは凄まじいものがあります。上記記述で問題となっている2011年9月のガソリン価格の高水準は、2011年4月に1バーレル当たり110ドルを超えた後、タイムラグを伴ってガソリン価格へと波及したことが図からわかります。天然ガスの自給率が高くなっている米国でも原油の輸入依存度は依然として高く、原油価格の上昇は日本と同様です。つまり、原油の場合、原油産出国から積み出しをして、長い時間をかけてタンカー等で自国まで輸送するため、このタイムラグが発生すると考えられます。イラン問題もあり、原油価格の高止まりが長期化する可能性は十分にあります。その結果、米国内でのガソリン価格上昇に歯止めがかからず、ひいては米大統領選にも影響を与えることが予想されことから、オバマ大統領が神経をとがらしている姿がうかがえます。
右図は、米金融当局による金融緩和の影響をフローチャートにしたものです。景気回復を狙った金融緩和は、米国の場合、結果として商品市況の上昇→長期金利上昇→ドル高へと結びつきます。最近、30年物の米国債の利回りは上昇傾向にあり、2%台後半であったものが、3%を少しばかり上回るという水準まで上昇しています。現在、円安が進行しているのは、米国における長期金利の上昇による日米金利差の拡大ではないかと私は考えています。日本による金融緩和とは異なり、世界通貨であるドル故、景気回復を狙った金融政策には限界があるといえるでしょう。
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