2012年3月24日土曜日

キャノンか、ニコンか

私の趣味の一つに写真撮影があります。その時、常に考えるのが、キャノンか、ニコンかという選択肢です。しかし、ここへきて、レンズ交換型デジタルカメラのシェアに大きな変動があり、キャノン、ニコンがともにシェアを落とす一方で、ソニーなどがシェアをアップさせています。この背景には、レンズ交換型デジタルカメラの中でも、軽量かつ安価なミラーレスのタイプが人気を博し、そのカテゴリーへの進出が遅れたキャノン、ニコンがともにシェアを落とすという構図がみえてきます。
 右図は、2012年1月20日付日本経済新聞朝刊に掲載されたレンズ交換型デジタルカメラのシェアを示したものです。前年と比べて、キャノンが2.3%、ニコンが5.5%もシェアが低下、それに対してソニーが1.8%、その他が6.0%もシェアがアップしています。これは、上述した通り、ソニー、オリンパス、パナソニックがそれぞれミラーレスのカメラを先行発売した結果でする。これに追随する形で2011年10月にようやくニコンがNikon1J1、Nikon1V1というミラーレスの2つの製品を投入、シェア奪還に向けて動いてきました。一方、ミラーレスカメラに対するキャノンの動きは遅く、レンズ交換をしないタイプのコンパクトデジタルカメラとミラーレスのカメラの中間みたいな存在である、コンデジではなり得ない大きさの1.5型の画素サイズを搭載したコンパクトカメラの発売を予定しています。
キャノンは、ミラーレスで先行する4社とは違う方向性を見いだそうとしているのではないでしょうか。ミラーレスを発売している企業は、ある意味、自らが持っている既存のカメラ市場を浸食するかもしれない製品を提供しています。一方、キャノンは既に高いシェアを持っている主力のカメラのシェアとバッティングしないカテゴリーで勝負しようとしています。デジルタカメラ市場は、最終消費材の中で唯一高い世界シェアを維持している分野です。日本でのシェア=世界シェアとなっている競争力の高い企業ばかりが存在しているのが特徴です。
 ここからは、キャノン、ニコンに着目して話を進めます。両社はともにカメラメーカーという印象が強いというのが一般的な見方です。しかし、両社ともにカメラばかりを生産しているわけではありません。カメラ事業からすでに脱皮し、それぞれが別の方向へと向かっているの実情です。2012年新春号『日経会社情報』によれば、キャノンのセグメント別の売上高はオフィス53%、コンシューマー37%、産業機械9%であるのに対して、ニコンは精密機器24%、映像67%、インストルメンツ6%となっています。インストルメンツとは、半導体製造装置のことで、これはレンズの生産技術を生かしたもので、この分野でも、わが国は競争力を維持していると思われます。つまり、両社はカメラーメーカーではないのです。そして両社が違う方向性で事業展開しているのが特徴であるといえます。しかし、両社を比べた時、もっとも違うと感じるのは、その事業規模です。カメラのシェアが均衡している両社ですが、連結決算での売上高、営業利益、純利益の間で3〜5倍以上も大きな開きがあります。これは、キャノンが良くて、ニコンが悪いという意味ではありません。両社は、同じ土俵から成長した企業ですが、ともに大きくなるにつれて事業展開を拡大し、依然として競争力を維持している数少なくなってきている日本企業の代表格であるといえるでしょう。そして、国際的にも評価が高い結果、外国人株式の保有比率は、キャノンが40.2%、ニコンが29.6%といずれも高い点で共通しています。
しかし、リーマンショック以降、代表的な日本企業の多くが赤字決算を出す中で、キャノンという会社の凄さというものを痛感しています。トヨタ自動車を筆頭に、パナソニック、ソニーなどの内外に知られる企業が軒並み赤字決算が出ている中、利益を出し続けているのがキャノンです。確かに、ここへきてのユーロ高はキャノンにとってかなりのマイナスであったことは間違いありません。しかし、2011年12月の決算でも2,486億円もの純利益を出しています。ニコンも凄い会社だと思うのですが、2010年3月期決算で126億円の赤字を出しています。キャノンの持っている特許の価値(特許数ではなく特許そのものが持っている市場価値)は、IBMに次ぐ世界2位だそうです。円相場がやや軟化している中、2012年は、キャノンの底力が発揮されるのではないかと期待しているところです。

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