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2012年12月9日日曜日

存在感を増す政府系ファンドと日本の株式市場

  2012年12月2日付『徹底した株主重視の姿勢を貫くキャノンに疑問あり』の中で、キャノンの株主重視の姿勢に対してやや批判的なことを書いたばかりです。しかし、増配などで、海外ファンドをうまく取り込み、株価を引き上げることは、株主だけでなく、企業自身の将来の成長力にとって決して悪くないはない面もあります。上記のブログでは、内部留保が減少する点だけに着目し、配当に回すよりは長期的な視点にたって投資活動を続けることの方が、同社には必要である旨強調しました。
 一方で、キャノンは、株主を間接的に支援する自社株買いを実施しており、確認できる範囲では、2012年12月期第3四半期のバランスシートで221億円もの自己株式を保有しています。この自己株式は、企業買収を株式交換でする際に活用できるようで、株価の上昇は、この点においてプラスであるといえます。従って、株主だけにとってプラスであるように思われがちな配当金の増額は、内部留保の浪費というデメリットだけではありません。それが、株価上昇という結果をもたらせば、企業買収によって、業務分野の拡大を目指す企業にとってメリットは大きいといえます。
 そうした中で、政府系ファンド(SWF、Sovereign Wealth Fund)が、資源高を背景に存在感を増しています。政府系ファンドを積極的に活用し、資金を効率的に取り込むには、株主を重視した企業経営が求められます。やはり外国人保有比率が高いキャノンにとって配当政策は、死活問題であり、在庫を極度に圧縮してまで、キャッシュ確保をしようとする姿勢には正当性があるといえます。上図は、政府系ファンドの資産規模の推移を示しています。2008年9月のリーマン・ショック後にやや減少しているものの、その後は右肩上がりに増加していることが分かります。2012年9月末時点では、5兆ドル(約420兆円)を上回っており、東証1部の時価総額が270兆円にまで落ち込んでいる日本の株式市場にとって、これら政府系ファンドを如何に取り込むかが、今後のカギを握っているといえます。
この政府系ファンドに関する記事が、2012年11月29日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。やはり、原油価格が高止まりする中で、潤沢な資金が産油国に蓄積されており、中東ばかりではなく、ロシア、アフリカ、アジアのファンドの資産規模が確実に大きくなっています。記事の題目は『政府系ファンド膨らむ。アジアなど設立相次ぐ。資産残高420兆円』です。以下引用文。
 『政府系ファンド(SWF)の資産増加が続いている。資源収入の拡大による経済成長を背景に、アジアやアフリカ諸国でファンドの設立が相次いでいるためだ。世界の政府系ファンドの資産残高は9月末時点で5兆1350億ドル(約420兆円)となった。ファンドの資金は先進国の株式や不動産市場などに流入し、相場の下支え役として存在感を増している。
 米ソブリン・ウエルス・ファンド研究所の調査によると、9月末時点の残高は直近の4年間で約3割増えた。リーマン・ショックを受け一時減少したが、それ以降、増加基調が続く。民間の投資マネーである世界のヘッジファンドの残高が2兆ドルといわれる中、急増ぶりが目立つ。
 オイルマネーに潤う中東や貿易黒字の中国などに加え、アジアやアフリカの資源国でも余剰資金の運用手段として新たなファンドが立ち上がり始めた。短期売買を中心とするヘッジファンドに対し、政府系ファンドは中長期の視点で投資する傾向が強く、相場の安定や長期的な上昇に寄与するとの期待がある』

 確かに、11月に入ってから米株式市場がやや軟調気味です。その背景の一つに、米企業の本決算を前に、ヘッジファンドの決算があり、確定売りが発生しやすいことがあります。政府系ファンドは、中長期の視点で投資をすることから、それら資金の呼び込みは株価安定に寄与します。一方で、中長期的に成長余力がないと判断された場合、企業の株式は売られることを意味しています。従って、安定して増加する配当の原資を確保するため、成長分野への投資は不可欠であるとともに、業績を上げることが常に求めら続けるのです。最近、インテルの株価がやや低迷しています。同社の株価は、大体20ドル前後で推移、配当利回りは4.5%前後とになっています。配当すら出さないIT企業が多い中で、まずまずの配当利回りといえます。しかし、パソコン市場が成熟化し、成長性が見込めないと判断したウォーレン・バフェット氏のファンドが、最近、インテル株を売却しました。その後、30ドル近くまで上昇していた株が20ドルを切るまで下落、結果として配当利回りが上昇しました。
 政府系ファンドの資金を呼び込むためには、今の日本企業の業績は悪すぎます。トヨタの配当金も一時は、1株当たり140円にも達していました。2012年度は50円です。減配続きに、配当利回りが1〜2%程度では、政府系ファンドを呼び込むには力不足といえるでしょう。

2012年5月11日金曜日

大台を割った日経平均

今年に入ってから、日本銀行の金融緩和が功を奏し、円安へと導くことにある程度成功し、それに連動してか、3月末には日経平均が1万円台の大台に乗ったばっかりです。その後、ギリシャが総選挙で組閣に手こずり、フランス大統領選でのサルコジ大統領の敗北、イベリア半島リスクの顕在化などにより欧州債務危機の再燃、円相場が再び上昇しています。これに伴い、円高を嫌気してか日経平均株価が下落へと転じ、終値ベースで今日はついに9,000円台を下回ってしまいました。もっとも、どん底であった2011年は過ぎ、日本企業には一部で明るい兆しがみえてきているのも事実です。例えば、今日の個別銘柄の動きでは、ニコンが2013年3月期の決算予想で営業利益が12.4%増の2ケタ増加ということが好感され、前日比195円高(+8.56%)の大商いとなっています。このほか、電機関連でも、パナソニック、シャープ、ソニーは大幅減益となっており、ぱっとしないところもありますが、日立、三菱電機、東芝は社会インフラなどを収益源として、業績の回復が期待されています。企業によりまちまちとのなっているのが、今期の決算発表であり、今後は業績を伸ばす企業の割合が多くなっていけば、株価の本格回復へと向かうことが期待されます。
 『2012年週刊ダイヤモンド』2012.5.12/19号に、日経平均株価の動きのクセについて記述した記事が掲載されていました。記事の題目は『ヘッジファンドの売り出る5月、今年も円高・株安のリスクは大』です。以下引用文。
 『「4月高値・5月転換の月」となる要因は何か。まず、需給要因では、国内機関投資家の決算対策売りが3月中に終了し、4月新年度入りとともに、積極的な売り手が消えることが挙げられる。外国人投資家の積極姿勢が継続すれば、自然に株価に上昇圧力が強まる。
 その高値形成後は、4月中はもちあい相場となるケースが多いが、5月に相場は急落する。最大の要因は、日本株の買い主体である外国人投資家が、スタンスを変更することが多いためだ。
 ヘッジファンドの多くは、11月本決算・5月中間決算を採用している。5月は、半期決算をにらんで、積み上げたポジション(取引残高)のアンワイド(巻き戻し)を行う時期なのだ。そして、彼かはポートフォリオを修正・再構築し、下記の相場に備える』
 同記事は、ウォールストリートに"Sell in May And Go Away"(5月に売ってどっかへ行け)という格言があることを記述、日本の株式相場にこそ、この格言が当てはまるとしています。右表は、2000年以降の日経平均株価の月間騰落率を示したものです。13年間で5月の相場が大きく下落しているのは、今年を含めて7年です。年初からの動きにも注視する必要があることは当然ですが、5月が下落しやすい月ということは決して当てはまっていません。しかし、上記の記事により、株式市場における有力なプレーヤーであるヘッジファンドの決算月が11月本決算・5月中間決算と判明した意味は大きいと思います。もっとも、20年以上も下落傾向が続く日本の株式市場だかこそ当てはまるともいえます。通年では、日本企業の業績の本格回復し、米国経済の復調に加え、ユーロ債務危機の回避が現実となれば、大幅に上昇することも現時点では否定できないでしょう。テクニカル面で、5月の下げ相場にはある程度意味があるとして、今後の株価について過度に悲観的になる必要はないと考えています。