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2012年11月24日土曜日

貿易赤字が定着、本格的に円安へと向かうか

 日本銀行の政策に対する政界からの注文が多くなっています。私は、このような行為は、国際的な通貨である円への信用失墜を生じさせ、最終的に円安、株安、債券安のトリプル安を招く恐れを抱いています。円高は、確かに国内に多くの工場を持っている製造業にとってマイナス面が大きく、国内経済の空洞化をもたらすというという結果となっています。
 しかし、高齢化社会が急速に進み、団塊の世代が本格的に年金を受給する年齢になっている中、これからも安定して労働力の確保することは国内では困難であり、国内に大規模な工場を構えること自体がナンセンスになると考えています。一方、福祉の現場には、1947〜49年に生まれの806万人もの65歳の高齢者が、たった3年間の間で流れ込んでくるのです。全ての人が福祉のやっかいになるわけではありませんが、多くなることは確かです。そうした現場で人材を確保する必要があり、製造業が国内で大規模な雇用を確保し、ものづくりを進めていく時代は既に終わっているといえます。ただ、付加価値が高く、円高の影響を受けにくい競争力の高い分野は国内にとどまるべきですし、それを失うことは、将来、引き続き国力維持をする上で是が非でも回避するべきです。労働力確保の面から付加価値の低い汎用品の生産は、海外の工場へと移転することはやむを得ないことであり、円高はそうした企業にとってプラスであるといえます。また、コンビニや外食チェーン店も海外へと進出する上においては円高のメリットはあります。
 私が、円安を誘因しようとする論者が好きではないのは、円高のデメリットばかりをことさら強調することです。原材料を調達する上で内需系の企業にとっては円高はプラスであり、エネルギーや食料の確保という安全保障の観点からも円高はメリットがあります。政財界には、円安を待望する人々がやや多い気がします。円高にもメリットはあり、そのメリットが国内へ波及するシステムを構築する必要があるのです。そうしているうちに、円安が急速に進んでいます。貿易赤字が定着する中での流れですが、減ってきているとはいえ経常収支はまだまだ黒字であることから、実需による円安ではないと考えています。
 しかし、円相場の今後の展開は気になるところです。貿易赤字に関連して円相場に関する記事が、2012年11月22日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『貿易赤字定着、円売り強まる。7ヵ月半ぶり82円台』です。市場関係者には、日銀の追加緩和の観測が強まる中で、貿易赤字の拡大の発表があり、市場が敏感に反応したという見方があるようです。まだ、投機的な円売りであり、これが実需の円売りならば、警戒する必要があると思います。以下引用文。
 『外国為替市場で円売りが勢いを増している。21日には7ヵ月半ぶりに1ドル=82円台まで、円安・ドル高が進んだ。衆院選を控え、自民党の安倍晋三総裁が大胆な金融緩和を掲げていることに加え、日本の貿易赤字の定着で実需の円売りも意識されている。
 21日朝方発表の10月の貿易収支で赤字額が10月として過去最大となったのをきっかけに円売りが加速。海外投資家の取引が増えた夕刻に4月6日以来の82円台をつけた。
 輸出は最大の輸出先である中国向けが沖縄県・尖閣諸島問題の影響で落ち込み、輸出企業が稼いだ外貨を円に換える勢いが弱まるとの見方が強まった。「日中関係の早期改善は見込めず、輸出回復は遅れる」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)とみる市場関係者が多い』
 やはり日中関係の悪化が貿易収支の悪化の主因であるようです。日中関係の早期の関係改善が期待されるところですが、そもそも尖閣諸島の問題が、ここまで先鋭化した原因は何であるか、考えてみる必要があると思います。どうして、東京都は、沖縄県の外れにある、この島を購入しようとしたのでしょうか。都民の保養所でも作ろうとしていたのでしょうか。また、都庁の支局でも作ろうとしたのでしょうか。地方に住む者にとっては意味不明の行動をしているように見えます。日本の首都である東京都は一体何を考えているのでしょうか。日本のブレインである東京は本当に大丈夫なのかという疑念も出てきます。

 この尖閣諸島は、日中間で問題が先鋭化するまでは、米国は日本との安全保障の対象範囲であるとしていました。しかし、最近の米国は、日中両国間での平和的解決を望むとコメントするなど、中国との関係を悪化させたくないと姿勢へと転じています。ごたごたしている日米関係、弱まる日本経済、中国経済の成長、韓国との良好な関係、そしてオバマ大統領の再選を踏まえた場合、米国にとって日本のプレゼンスは一層低くなってきています。そうした中で、唯一の日本の優位性は、米国債を大量に持っていることだけです。円安は、これから米国債を購入しようとする者にとって最大のネックです。円安だけにメリットがあるのではないです。円高にもメリットはあります。株式市場は円安にだけ一方的に反応し、大幅な株高となっています。これでいいのかという疑問を生じさせる市場の動きです。残念です。

2012年6月19日火曜日

通貨高に悩むスイスと日本

ギリシャの再選挙が財政緊縮派の勝利に終わり、円相場が再び円安方向へと転じることが期待されました。しかし、予想に反し、ユーロ相場は1ユーロ=99円59銭(日本時間2012年6月19日午後9時現在)と対円で100円割れの状態となっており、ややがっかりとした感があります。対ドルでも1ドル=78円88銭と円相場の上昇が止まらなくなっています。適正の円相場はどの程度かは分かりませんが、IMFが発表した日本経済に関する報告書では、円相場は中期的な観点からして「幾分過大評価」という認識を示したようです。こうした自国通貨の継続的な上昇に悩まされている国が、もう2つあります。身近な国では中国です。中国は、急速な人民元高が輸出産業に与えるマイナスの影響に配慮、対ドル相場の急激な上昇を回避するため、人民元に対して市場介入を行っています。
そして、もう一つの国は、危機を迎えているヨーロッパ諸国に囲まれる中、自国通貨の存続を選択したスイスです。スイスには、機械製造や時計などに代表される輸出産業があり、日本と同様、経済成長にとって自国通貨高はマイナスに作用すると考えられます。右図は、対円ユーロ、対円スイスフラン、スイスフラン/ユーロの相場を示したものです。2011年9月に、スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は1ユーロ=1.20スイスフラン以上のスイスフラン高を阻止するため、無制限の自国通貨売り、ユーロ買いの介入を実施すると宣言しました。その後、スイスフランは、対ユーロでやや下落、1ユーロ=1.20スイスフランのボーダーラインを辛うじて維持しています。しかし、ここへ来て、再びスイスフラン相場に緊張感が出てきているようです。ロイターのWeb版にスイスフランに関する記事が掲載されていましたので紹介します。スイスも自国通貨高に悩まされており、総裁が辞任するなど、そこには同国の中央銀行が四苦八苦している姿が見えてきます。以下引用文。
 『[ベルン 14日 ロイター]スイス国立銀行(中央銀行)は14日、スイスフランの上限として昨年9月6日に設定した1ユーロ=1.20スイスフランの水準を維持することを決めた。外貨を「無制限に」買い入れる準備ができるているとしている。
 中銀は声明で「現在でも依然としてスイスフランは高水準にある。一段の上昇は国内の物価と経済に深刻な影響を与える可能性がある」と指摘。「中銀はこれを容認しない。必要ならば、いつでもさらなる行動に出る準備がある」とした。
 中銀は具体的な行動内容には触れていないが、ジョルダン総裁は最近、ギリシャがユーロを離脱すれば、資本規制などを検討すると明らかにしている』
断固たる態度で徹底的に行動するスイス国立銀行の姿勢は評価できるものの、この無制限の介入はスイス国内で過剰流動性を生み、不動産投機、ひいてはインフレをもたらすなどの弊害が考えられます。また、結果として通貨高を防止できず、さらなる自国通貨高になれば、中央銀行が評価損を抱え、政治問題化することも指摘されています。マイナス面はあるものの、スイスに習って、わが国でも同様に、日本銀行が断固たる決意でもって、円高を抑制する政策が求められるところです。しかし、スイスフランと円では置かれている状況が違います。それは、外貨準備による保有など円は既に国際的な通貨となっており、無用な介入は他国から批判されること、そもそもスイスフランとは市場規模が異なり、介入による影響が限定的であることなどがあります。また、スイスと同様に資本規制をちらつかせるなどは、日本にとってあり得ないことです。
 円高はしばらく続くと予想されます。つまり、避難先を失った投機的な資金は、日本やスイスなど金融システムが安定している国や経常収支の黒字国へと確実に流入します。その結果の通貨高ですので、ユーロ圏や米国の経常収支の黒字化は半永久的に無理としても、金融システムが正常化するまでは止まりません。スイス国立銀行の今後の政策が注目されるところです。