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2012年5月3日木曜日

債務危機、オランダに賞賛

私は、20年以上も前にオランダに行ったことがあります。行った理由は、私が利用した航空会社が、羽田発の台湾国籍の中華航空であり、同社のヨーロッパへの窓口はオランダしかなかったためです。もっとも、価格が安かったこと、オランダへは一度行ってみたかったことから、満足のいく旅行の出発ができたと今でも思っています。アムステルダムの近くにあるスキポール航空に着いた時には、初めてのヨーロッパ一人旅でしたので驚きで一杯でした。そして、アムステルダムに着いた後は、路面電車に乗り、ユースホステルに3日間宿泊、短期間ではあったものの、同市内を散策するとともに、レンブラントの「夜警」をみた時の感動は、今でも忘れられません(意外にコンパクトな場所に納められており、私にとって初めて鑑賞する有名な絵画でした)。その後、ゴッホ美術館に行ったりしたりして、のどかな観光をしたという記憶が残っています。もっとも、落ち着いて考えみると、オランダは凄い国だということです。中国のことを気にせずに、ヨーロッパ国々の中で台湾の航空会社の便を受け入れていたのですから、信念というものを感じさせられるところがあります。
 そのオランダの信念が本当だったことが、今回は債務危機の局面ははっきりしました。財政赤字をEU各国が決めた国内総生産比率で3%以内にするため、内閣総辞職、政局がしばらくの間、不安定化する可能性も否定できませんが、国民の危機意識を反映したものと、私は勝手ながら判断しています。今日の引用は、2012年4月28日付朝日新聞朝刊からです。記事の題目は『「優等生」オランダ、欧州危機の波、総辞職条件に緊縮策。世論も真っ二つ』です。以下記事引用。
 『財政赤字の削減策を巡り内閣が総辞職に追い込まれたオランダで4月26日、与党と一部野党が財政緊縮策で合意した。27日には9月上旬の総選挙日程も決める。欧州経済の「優等生」のオランダにまで混乱が広がった背景に、財政規律は守りたい一方、歳出削減を急いで景気を悪くしたくないという欧州共通の悩みがある。(中略)
 オランダ国債の格付けは最上位の「AAA」(トリプルエー)という欧州経済の「優等生」。格付け大手3社から最上位を得ているのは、ユーロ圏ではほかにドイツ、フィンランド、ルクセンブルクだけだ。政局の混乱が続けば、国債が格下げされかねない。最終的に緊縮策で合意できたのは、賛成した各党にこうした危機感が募ったからだ。
 ただ、最近の世論調査では、緊縮策に反対してきた左翼・社会党が大きく支持を伸ばす一方、ルッテ氏(暫定首相)の自由民主党も支持が高く、世論は左右に分裂。「総選挙後の連立の組み合わせはかなり難しい。組閣は来年初めまでかかるかもしれない」(地元記者)との見方があり、政局の不安定さは続きそうだ』
 こうした危機意識がないのが日本です。消費税率の引き上げだけで何年も時間を浪費しているのが、わが国政治の実情です。わが国を含め、主要国で財政秩序の回復が維持できない中、オランダの選択は無駄にはならないと思います。ここで、ユーロ統計局発表のオランダのGDPと財政の状況を紹介します。上表は、2008〜2011年の同国のGDPや政府の歳出入を示しています。GDPが着実に増加するものの、2009年から入ってからの歳出の増加が財政赤字拡大の原因となっています。しかし、財政赤字のGDP比率が2011年ベースで4.7%にとどまっていること、緊縮策が選ばれたことなどから、格下げとなったフランス国債とは事情は異なるようです。因に、フランスの財政赤字のGDP比率は5.2%であること、債務残高のGDP比率も85.8%(オランダは65.2%)にも達することから、オランダのAAAとフランスのAAは納得がいくところです。市場では、次はスペインだという指摘がされていますが、やはり本命はフランスです。同国の財政運営次第では、ユーロ圏の財政規律が崩壊、ユーロの暴落が懸念されています。

2012年3月1日木曜日

年金の受給開始年齢

日本航空が予想以上の回復を示しています。2012年2月14日付日本経済新聞朝刊に、低燃費のボーイング「787」などの新鋭機の新規購入などに約5,000億円を投じるという内容の記事が掲載されていました。そして、同社は最終目標である今秋の株式再上場に向けて収益力の強化を狙っているようです。一度経営破綻した企業が復活するというのは、停滞する日本経済にとって「光」であるような印象を与えてくれます。
一方、同社が破綻する交渉において、現役とOBの年金支給額の削減幅が大きな話題となりました。結果は、OBにとってかなり有利な削減幅で妥結しました。年金の受給権がいったん発生すると、それを削減することは容易な作業ではないことがよく認識させてくれる出来事でした。大手企業とはいえ、たったひとつの企業の年金問題でも、これだけもめるのですから、一国全体の受給権に関する議論を円滑に進めることは極めて困難なことでしょう。
ここで、年金の受給開始年齢に関する記事(注1)が、経済誌に掲載されていました。内容を大まかにいえば、デンマークとオランダ両国で、65歳時点の平均余命の伸びにあわせる形で、年金の受給開始年齢を自動的に引き上げることが同意されたということです。さらに平均受給年数は世代が異なっても変えない上、受給月数が同じであれば生涯の受給金額も同じになるそうです。日本では、世代間の年金の受給・負担に関して、不公平感が増大、若い世代を中心に国民年金の加入率が低下するという事態が発生しています。今後、日本の平均寿命は、2010年の女性86.4歳、男性79.6歳から2060年には女性90.9歳、男性84.2歳にまで伸びることが予想されています(注2)。わが国も両国と同様のシステム導入が求められるところです。
もっとも、受給権が発生していない世代の受給年齢引き上げは比較的容易なことかもしれません。既に年金の受給権が発生していたからこそ、日本航空のOBの抵抗が激しかったいえます(つけは最終的に国民負担になっていますので、そのつけを全て返済するまでは、私は日本航空を利用することはないでしょう)。従って、日本の年金問題の本質は、既に受給権が発生している人々の受給額の引き下げ及び受給年齢の引き上げをいかに進めるかです。デンマークやオランダは既に高負担の国になっています。日本のような現役世代と引退世代の問題は解決した上での支給年齢の引き上げだと推測されます。
 右図は、主要国の男女別の平均寿命の比較したものです。わが国は、国民負担率が主要国の中でも低いと言われています。この状況で、平均寿命は主要国の中でトップクラスに属します。先に挙げたオランダとの比較では、男性で1.22歳、女性で4.13歳上回っています。また、国民負担率が日本と同様に低いとされている米国との比較では、男性で2.14歳、女性で4.79歳上回っており、わが国における年金の問題がいかに深刻かが伺えるデータであるといえるます。
上記の記事を読んで初めて知ったのですが、日本でも年金保険料納付者が減ったり、65歳時点の平均余命が伸びると年金支給額自動的にマイナス補正されるという、通称マクロスライドというシステムがあるそうです。しかし、今必要としているのは、年金の抜本的な制度改革です。例えば、現役世代の収入と年金支給額の比率を決定、現役世代の収入が減少すれば、自動的に年金をカットするような仕組みです。今後の政府の対応に期待したいところです。
(注1)高山憲之『Data Focus 年金改革の政治リスク回避に自動安定装置の導入・確立を』、週刊ダイヤモンド、2012年2月18日号。
(注2)人口問題研究所『日本の将来推計人口(平成24年1月推計):死亡中位ケース』、2012年。