ラベル デンマーク の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル デンマーク の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2012年12月1日土曜日

ゴタゴタ続きのEUと毅然としたデンマーク

  EU(欧州連合)の12〜20年の予算協議が決裂しました。国内で緊縮財政を進める英独など北部の国々が、EUに対して支出抑制を求めて譲らなかったからです。農業補助金を多く受け取る側のフランスも、英国と対立を深めており、EUからの脱退を望む英国民が過半数を占めるという世論調査もあり、混迷の度合いが増しているのです。
 EU予算に関する記事が、2012年11月25日付読売新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『EU予算協議が決裂。14〜20年計画、支出抑制、英独譲らず』です。ユーロ加盟国内でのゴタゴタ、そしてEUでのゴタゴタと欧州は内部で対立を深めており、ユーロの存続も危うい局面が迎えているといえます。豊かな北部の国々が、財政の厳しい南欧諸国などを援助するしか、危機脱出は不可能なはずですが、文化・言語も違う国境を越えた支援は難しいのが現実です。以下引用文。
 『【ブリュッセル=林路郎、工藤武人】欧州連合(EU)の特別首脳会議は(11月)23日、2014〜20年の予算規模を巡る対立が埋まらず、決裂した。国内で緊縮財政を敷く英独など「北部」の国々がEUの支出抑制を強く求めて譲らなかったためだ。国内で反EU世論が台頭する英国は、EU機関の権限拡大を伴うユーロ圏の政治統合深化とは一線を画す姿勢を改めて鮮明にした。
 ファンロンパイ欧州理事会常任議長(EU大統領)は、予算を7年間で1兆ユーロ(約106兆円)規模とした欧州委員会案の減額修正案を示したが、英独などが「減額が不十分」と拒否した。来年1月に再度首脳会議を開く見通し。
 英独にはオランダやスウェーデンなどの「北部」諸国が同調。一方、EU補助金の維持を求めるフランスや南欧、旧東欧諸国はこれに反対した。ユーロ危機への対処で「緊縮財政か、成長重視か」で割れた南北対立が予算協議にも表れた。
 今回の会議で際立ったのは、統合の核であるEU機関の合理化を強く求めた英国の姿勢だ。
 キャメロン英首相は会議決裂の記者会見で、「欧州委には私より給料の高い職員が200人もいる」とし、「欧州委は支出の1割カットで30億ユーロ(約3180億円)も節約できる。現実を直視すべきた」と怒りをあらわにした』

 同記事によると、欧州委職員3万3,000人のうち16%の年収が1,000万円を超える上、140万円もかかる学校で、EU官僚の子弟が学費免除の特権を得ているそうです。これは、ひどい話です。この資金があれば、ギリシャが緊縮財政を強いられることはないかもしれません。一方で、このゴタゴタの中でも毅然とした対応をしている国があります。それは、デンマークです。2012年7月5日には、ECB(欧州中央銀行)による0.25%の利下げを受けた形で、デンマークの中央銀行は最重要な政策金利である「貸出金利」を0.25%引き下げ、0.2%とすることを発表しました。ここで注目されたのが、政策金利の一つである譲渡性預金(CD)の金利も0.25%引き下げ、マイナス0.2%とし、マイナス金利という新たな局面へと突入しました。

 デンマークは、2000年の国民投票でユーロ導入を拒否しました。今となれば、その選択が正しかったかどうかは不明です。もっとも、経済規模の小さい同国は、ユーロからの呪縛から離れることはできず、デンマーククローネとユーロの相場を一定にする必要性から金利をマイナスへとしたのです。ヨーロッパの国々でユーロを導入していない国は、金融政策に自由度があるということは決して事実ではなく、デンマークの中央銀行は常にユーロ相場を意識した政策が求められるのです。デンマークのマイナス金利に関する記事が、2012年11月25日付朝日新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『デンマーク中銀、通貨高防ぐ。マイナス金利、効果あり? 民間銀にコストしわ寄せ』です。以下引用文。
 『デンマークの中央銀行が「マイナス金利」に踏み込んだ。欧州危機の影響でユーロが売られ、自国通貨のクローネが高くなるのを防ぐのがねらいだ。日本でも自民党の安倍晋三総裁が主張しているマイナス金利。「ゼロより低くできない」といわれた金利がマイナスの世界とは、どういうものなのか。
 マイナス金利といっても、一般の人が民間銀行に預ける利息や、銀行が企業に貸し出すときの金利の話ではない。民間の銀行が、万が一の支払い不足に備えて中央銀行に預けておく、当座預金(準備預金)の一部だ。
 デンマーク国立銀行(中央銀行)が、この金利をマイナス0.2%に設定したのは、7月5日。同じ日に欧州中央銀行(ECB)が政策金利と当座預金の金利を0.25%幅引き下げたことを受けて、同じ幅の利下げをし、マイナスになった』
 マイナス金利に効果があるのかは、今後のデンマークの経済動向次第であるといえます。右図は、ユーロ統計局発表のEU27カ国とデンマークの経済成長率と失業率の推移を示しています。経済成長率は、EU27カ国の方がやや高めである対して、失業率はデンマークがかなり低い水準にとどまっています。失業率の低さは、国の構造問題に起因するものです。国民の間での、ワークシェアなどが上手く機能し、低く抑えられているのかもしれません。しかし、成長率の低さは気になります。リーマン・ショック後のマイナス幅も大きく、逆にそれ以降のプラス幅は小さくなっています。
 日本でもマイナス金利を適用を主張するものがいますが、それは国際通貨として認知されていない円での適用は困難であるといえます。スイスが、スイスフラン高で悩まされた時、無制限の介入を実施した時も、日銀による円売りの介入はほとんど実施されませんでした。ローカルな通貨か、国際的な通貨であるかによって、中央銀行の政策も左右されるのです。

2012年3月1日木曜日

年金の受給開始年齢

日本航空が予想以上の回復を示しています。2012年2月14日付日本経済新聞朝刊に、低燃費のボーイング「787」などの新鋭機の新規購入などに約5,000億円を投じるという内容の記事が掲載されていました。そして、同社は最終目標である今秋の株式再上場に向けて収益力の強化を狙っているようです。一度経営破綻した企業が復活するというのは、停滞する日本経済にとって「光」であるような印象を与えてくれます。
一方、同社が破綻する交渉において、現役とOBの年金支給額の削減幅が大きな話題となりました。結果は、OBにとってかなり有利な削減幅で妥結しました。年金の受給権がいったん発生すると、それを削減することは容易な作業ではないことがよく認識させてくれる出来事でした。大手企業とはいえ、たったひとつの企業の年金問題でも、これだけもめるのですから、一国全体の受給権に関する議論を円滑に進めることは極めて困難なことでしょう。
ここで、年金の受給開始年齢に関する記事(注1)が、経済誌に掲載されていました。内容を大まかにいえば、デンマークとオランダ両国で、65歳時点の平均余命の伸びにあわせる形で、年金の受給開始年齢を自動的に引き上げることが同意されたということです。さらに平均受給年数は世代が異なっても変えない上、受給月数が同じであれば生涯の受給金額も同じになるそうです。日本では、世代間の年金の受給・負担に関して、不公平感が増大、若い世代を中心に国民年金の加入率が低下するという事態が発生しています。今後、日本の平均寿命は、2010年の女性86.4歳、男性79.6歳から2060年には女性90.9歳、男性84.2歳にまで伸びることが予想されています(注2)。わが国も両国と同様のシステム導入が求められるところです。
もっとも、受給権が発生していない世代の受給年齢引き上げは比較的容易なことかもしれません。既に年金の受給権が発生していたからこそ、日本航空のOBの抵抗が激しかったいえます(つけは最終的に国民負担になっていますので、そのつけを全て返済するまでは、私は日本航空を利用することはないでしょう)。従って、日本の年金問題の本質は、既に受給権が発生している人々の受給額の引き下げ及び受給年齢の引き上げをいかに進めるかです。デンマークやオランダは既に高負担の国になっています。日本のような現役世代と引退世代の問題は解決した上での支給年齢の引き上げだと推測されます。
 右図は、主要国の男女別の平均寿命の比較したものです。わが国は、国民負担率が主要国の中でも低いと言われています。この状況で、平均寿命は主要国の中でトップクラスに属します。先に挙げたオランダとの比較では、男性で1.22歳、女性で4.13歳上回っています。また、国民負担率が日本と同様に低いとされている米国との比較では、男性で2.14歳、女性で4.79歳上回っており、わが国における年金の問題がいかに深刻かが伺えるデータであるといえるます。
上記の記事を読んで初めて知ったのですが、日本でも年金保険料納付者が減ったり、65歳時点の平均余命が伸びると年金支給額自動的にマイナス補正されるという、通称マクロスライドというシステムがあるそうです。しかし、今必要としているのは、年金の抜本的な制度改革です。例えば、現役世代の収入と年金支給額の比率を決定、現役世代の収入が減少すれば、自動的に年金をカットするような仕組みです。今後の政府の対応に期待したいところです。
(注1)高山憲之『Data Focus 年金改革の政治リスク回避に自動安定装置の導入・確立を』、週刊ダイヤモンド、2012年2月18日号。
(注2)人口問題研究所『日本の将来推計人口(平成24年1月推計):死亡中位ケース』、2012年。

2012年2月12日日曜日

トランス脂肪酸に課税

わが国でも、やっと消費税率に引き上げに関する積極的な議論が国会等でされるようになりました。しかし、税率引き上げには、国民の支持を不可欠です。そのためには無駄な支出を徹底的に洗い直し、これ以上の無理だという水準にまで経費・人件費の削減を進めることがどうしても必要です。今日は、消費税率が高いとして知られているデンマークの消費税(注1)に関して、面白い記事がありましたので引用します。引用もとは『週刊エコノミスト』2012.1.31号で、記事のタイトルは『デンマーク、相次ぐ増税も反対なく、信用喪失に危機感共有』です。以下引用文。
『デンマークで昨年10月、バターや牛乳など飽和脂肪酸を含む食品に課す世界で初の「脂肪税」が導入された。また、今年1月からはチョコレートやアイスクリーム、ビールやワインなど砂糖やアルコールを含む食品も税率を引き上げだ。高福祉・高負担の国として知られるデンマークは、消費税率が25%と欧州各国のなかで最も高く、食料品への軽減税率もない。欧州経済が悪化するなかで相次いださらなる増税。しかし、反対運動はほとんど起きていないのが特徴だ。
その理由の1つは、「国民健康増進」という大義名分。飽和脂肪酸は過剰接種すれば動脈硬化などを引き起こすといわれ、医療費の抑制も狙いとする。また、増税が小幅なのも国民の負担感を少なくしている。脂肪税では飽和脂肪酸1キロ当たり16デンマーククローネ(約210円)で、例えばバター(250g)の価格は15.5クローネ(約205円)から18.1クローネ(約240円)に引き上げられる計算だ。
そして、何より財政赤字解消への理解が広がっていることが大きい。デンマークは人口約550万人の小国で、欧州共通通貨ユーロにも加盟していない。一方、昨年の財政赤字は対国内総生産比3.8%の670億クローネ(8,840億円)で、12年は950億クローネへ拡大すると見込まれる。国の信用を失うことの危機感を共有し、工夫して税収増への努力を重ねるデンマーク。他国が学ぶべき点は多そうだ(岩本達弘・JETROコペンハーゲン事務所長)』
右のグラフは、各国の付加価値税率(又は消費税率)を比較したものです。デンマークとスウェーデンの税率は25%と最も高い水準にありますが、ギリシャやイタリアなど財政問題が危機化している国々の税率も高いことが特徴的です。やはりデンマークという国は凄いですね。風力発電の導入にいち早く取り組み、エコの先進国ともいわれる同国。以前は日本がその地位にいたのですが、完全に抜かれてしまいました。消費税のあり方、財政のあり方、そしてエネルギーのあり方を議論するに当たってはデンマークから学ぶべき点は多そうです。
また、最近問題となっているトランス脂肪酸に関してもデンマークは先進国です。日本は特段の規制はありませんが、デンマークでは2003年に食品中のトランス脂肪酸の量を全脂質の2%までとする罰則規定のある行政命令を制定し、2004年より施行されています。ここで、トランス脂肪酸に関する記述がありましたので引用します。ポーラン(2009)(注2)は、著書の中でトランス脂肪酸の危険性を指摘している。以下引用文。
 『コーン油は料理用のサラダ油のオイルとして利用されるか、あるいは水素添加されたマーガリンや加工食品に使われる。水素添加とは、脂肪を室温で個体に保てるよう、水素原子の脂肪分子に付加することだ(もともとは動物脂肪の健康的な代用品としてつくられたが、現在、医療研究者は、このトランス脂肪酸はバターより動脈に悪影響を及ぼすと考えている)』
この文章を読んでから、わが家ではトランス脂肪酸の含まれていないマーガリンを使用するようになりました(注3)。健康と思って、マーガリンを使用していましたが、バターの方が健康に悪くないというのは本当に驚きでした。
(注1)日本では消費税と呼ばれるが、海外では付加価値税がそれに当たる。税の負担が付加価値ベースでなされることで相違するものの、最終的には消費者が負担するという意味でほぼ同様な税。
(注2)マイケル・ポーラン『雑食動物のジレンマ』第5章、ラッセン秀子訳、東洋経済新報社、2009年。
(注3)小岩井農場のホームページにトランス脂肪酸に関する記述あり。それによるとそもそも日本人は、欧米人と比べてトランス脂肪酸の摂取量が少ないとのことです。