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2012年11月15日木曜日

米国、「財政の崖」に向けて政策協調なるか

 米大統領選でオバマ大統領の再選が決まり、年末から年始にかけて急激に進む財政引き締めの回避が期待されています。ベイナー下院議長も「悪質な喧嘩は避けるべきである」と主張、共和党議員もこれまでのところ耳を傾ける姿勢をとっています。しかし、与党民主党と野党共和党の基本的な意見の違いは変わっておらず、このままいけば数々の減税案が失効するとともに、年明けには強制的な歳出のカットが行われます。この結果、米国経済は急速に悪化、大幅なマイナス成長に陥る懸念が出ています。
 米連邦議会の選挙結果は、上院、下院ともで民主党が獲得議席をやや伸ばしています。上院で引き続き、与党民主党が過半数を確保したものの、下院では野党共和党が過半数を抑えることで、ねじれ現象が続くことになりました。オバマ大統領は、選挙期間中、富裕層向けの減税廃止を強く訴えていました。これに対して、共和党の有力議員はこれに反対、あくまで税控除廃止などで歳入増を図っていくとしています。一方の民主党は、議席を伸ばした関係もあるのか、富裕層への増税案で勢いがついているようです。つまり、民主党、共和党の意見の対立をむしろ深めており、両党間での政策の調整は未だ結論が出ていません。
 こうした中で、11月16日には、ホワイトハウスに議会指導者が集まり、本格的な交渉が始まります。しかし、協議を急ぐ必要があり、結果次第では、減税措置が随時失効し、平均的な世帯は3,700ドルもの負担増を強いられることになります。先の選挙では、オバマ大統領支持とロムニー候補支持で真っ二つに割れた米国です。国民の間で広がった亀裂を速やかに修復し、融和を進めることが求められます。1期目の後半で「決められない政治」に陥った米国の政治は、大きな課題に向けて「決められる政治」へと変貌できるかが注目点です。「財政の崖(フィスカルクリフ)」に関する記事が、『日経ビジネス』2012年11月12号に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は、『"宴"の後の米国に迫る現実』です。以下引用文。
 『これは2012年末から訪れる急激な財政緊縮を指す。12月31日をもって給与税減税やブッシュ減税と称される所得税減税など各種の減税措置が期限を迎える。一方、2011年に策定した予算管理法によって、2013年1月から国防費をはじめとする歳出削減措置が自動的に始まるなど、国民にとって負担増となる歳入増と歳出カットが同時期に発生する。
 これらは、課題である連邦債務の削減にはプラスに作用する。しかし、米国の景気回復が力強いとは言い難い中で一連の措置が発動されると、景気の足を引っ張りかねない。議会予算局は、このままだと2013年上半期の実質GDP(国内総生産)成長率はマイナス2.9%、通年でもマイナス0.5%になると試算。年末が景気急落の境目になりかねないことから、「財政の崖」と呼ばれるようになった』
 ユーロ圏財務相会議では、ギリシャ議会が厳しい緊縮策を可決したにもかかわらず、ギリシャ支援の先送りを決定するなど、ヨーロッパでは不穏な空気が漂っています。このままでは、ヨーロッパの経済はおかしくなることは必至です。これに加えて、米国が「財政の崖」を転がり落ちれば、世界経済はさらに先行き不透明感を増すことになります。右図は、米国連邦予算の歳出入と収支の推移を示したものです。図をみる限り、いくら経済再建のためだとはいえ、ここ3年の米国の財政赤字はひど過ぎる感があります。かつてレーガン政権時に、米国の財政赤字が世界各国から批判されていました。それから比べても、現在の財政赤字は常軌を逸しています。格差の是正から、失業者や若者など社会的な弱者に対する救済は継続する必要がありますが、企業、特に米金融業界への救済措置は制限する段階にきています。その中で、富裕層への減税措置の廃止及び増税は、米議会予算局の試算でも影響は限定的であるとしており(2012年11月10日付毎日新聞朝刊『富裕層増税、影響限定的。議会局試算、減税延長と比較』)、適切な政策であると考えられます。

2012年3月8日木曜日

共和党予備選の結果

2012年2月6日の米大統領選の共和党予備選・党員集会のやま場であるスーパーチューズデーの結果が判明しました。開票の結果、10州のうち6州を制した穏健派のロムニー氏が引き続き優位であるようにみえます。しかし、2月7日付けのNHK午後7時のニュースでは、人口構成で全米の縮図とされるオハイオ州での指名争いで2位をいくサントラム氏との差が1ポイントと僅差であったことから、共和党の候補者選びが長期化の様相を呈していると解説しています。
米共和党の場合、通常ならば候補者選びが長期化すればするほど、有権者の関心が高まり、大統領選で優位に働くそうです。しかし、今回の指名争いでは、史上最悪の中傷合戦が展開されており、候補者の印象が長期化するほど悪化すること、失業率が低下するなど米国の景気に明るい兆しがみえてきている中、オバマ大統領の支持率が持ち直していることから、共和党にとって今回の長期化はマイナスに作用するとしています。開票結果は、ロムニー氏が勝ち切れなかったというもので、オバマ大統領に対抗できる候補であるされる同氏が、保守派の間での支持率が低いこと、景気回復に対する具体的な提案がなされていないことなどが背景にあるとされています。最悪の場合、共和党の指名争いは、2012年8月に開かれる共和党大会にまで持ち越される可能性も出てきており、今後、同氏が米国をより良い方向へと導きことができる道筋を如何に具体的に提示し、保守派層での支持を如何に獲得するかがポイントとなります。
 因に、米国では保守派はロムニー氏嫌いといわれています。ここで、米国における保守派とは何かという疑問が生じます。米国の保守派に関して分かりやすく記述している記事(注)が、『週刊東洋経済』2012年3月10日号に掲載されていましたので一部を紹介します。同記事によれば、1950年代に「保守主義」という言葉が使われるようになったそうです。リベラリズムや理想主義が社会的混乱をもたらしたとし、ユダヤ・キリスト教倫理に基づく秩序の復興と階級社会の必要性を訴えたとされるのが「伝統主義者」です。もう一方に経済的自由こそが自由の基礎であると主張するリバタリアン(市場主義者)があって、両者をもって保守派の本流であるとしています。その後、両者の意見が対立するものの、「融合主義」という考えが主張される中で、思想的な対立が克服され、現在では保守派の「エバンジェリカル(福音主義者)」を取り込みという形で、政治力を発揮するようになっています。その政治運動の矛先にあったのが共和党であり、以降、共和党=保守派というイメージが強くなっています。保守派とはいっても米国では色々な主義主張があるようです。以下が大まかな分類です。

  • 倫理や社会秩序を重視する「社会的保守主義者」
  • 小さい政府や減税を主張する「財政的保守主義者」
  • 規律緩和と自由競争を旗印にする「リバタリアン」
  • 外交的タカ派の「ネオコン」
  • 孤立主義を主張する「ペイリオ・コンサーバティブ(超保守主義者)」
このうち「ティーパーティー運動」は共和党主流派に反発した「財政的保守主義者」の運動だそうです。私の印象からして、伝統的に米国の共和党選出の大統領は、日本にとってプラスとされています。しかし、私を含めて日本人にとって馴染みがないのは、むしろ米国の保守派の人々であり、彼から支持する政党こそが米国の共和党です。
(注)題目は『保守主義と共和党』。