2012年12月10日月曜日

生命保険の比重が大きい家計の金融資産と台頭する損保系生命保険

 私は、生命保険は掛け捨てのものしか加入しておらず、生命保険が金融資産であるという認識は全くありません。ポートフォリオに占める割合が高いのは、債券、株式などリスク商品ばかりですが、日々の価格の上げ下げに一喜一憂するという感覚は全くありません。それは定期的に購入する累投をメインの投資手段としているからでしょう。つまり、長期投資にウェイトを置いたものであり、少しばかり株価が上昇しようとも、利益確定という行為は一切せず、得られる配当金や債券の利子を如何に大きくするかにだけに注視しています。
 株式、債券、投資信託といったリスク商品とは反対にあるのが、元本を保証した銀行預金(ペイオフが実施された場合は除く)や、契約時に確定した給付金を保証した生命保険(変額保険などは除く)です。わが国の家計の金融資産に占める現金・預金の割合が高いことは広く知られています。一方で、年金準備金を含めた保険の占める割合も高いことにも特徴があるといえます。日本銀行発表の資金循環統計における保険・年金準備金とは、積立型生命保険、積立型損害保険、企業年金、個人年金が該当します。私に限った場合、この項目の積み立て額はかなり低い水準であるといえ、標準的な家計とはかけ離れたポートフォリオで金融資産を運用していることが分かりました。日本銀行によれば、2012年6月末時点で、金融資産に占める保険・年金準備金は28.0%にも上っており、やはり、このうち企業年金の割合が高いとは思われるものの、生命保険のセールスの姿勢から考えて、生命保険の残高もある程度の水準に達していることが伺えます。

 リーマン・ショック以降、株式や投資信託を持っていた人々はかなりの損失を出していることが予想されます。しかし、金融資産に占める割合は、株式・出資金が6.0%、投資信託が3.8%といずれも低い水準にとどまっています。結果、リスク商品の下落の影響は限定的であることが推測されます。それで、調べたのが右図です。右図は、家計が保有する金融資産の項目別の伸び率を示しています。家計が株式、投資信託を売却した結果、株式や投資信託の残高が大きく減少しているとも捉えることができますが、株価や投資信託の基準価格の下落などにより投資金額そのものが目減りしたと考える方が自然でしょう。一方で、保険・年金準備金は2010年は減少したものの、それ以降は着実に増加していることが図から読み取ることができます。意外だったのが、債券の保有残高です。国による国債の発行残高の増加と、金融機関による販売促進の努力もあってか、2010年9月以降、対前年比でプラスの伸びを続けています。


 こうした中で、生命保険の分野で損保系が台頭してきている旨の記事が、2012年12月3日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。業際規制の緩和で、損害保険会社が生命保険を販売しており、保険料等収入は、依然として低い水準にとどまっているものの、伸び率自体は堅調に推移し、シェアを着実に伸ばしていることが伺えます。業際を超えた競争は、その便益を受ける家計にとってメリットは大きく、この分野における規制緩和は成功したと考えてもいいでしょう。記事の題目は『逆風下の生保、近く変動進む。損保系が台頭、東京海上、朝日を逆転』です。以下引用文。

 『株安・超低金利による運用難という逆風が吹くなかで、生命保険業界の地殻変動が進んでいる。思い切った販売網の再構築や海外進出など明確な成長戦略を掲げる生保の業績が改善し、身をかがめる生保との成長力に格差がつき始めた。
 業際規制の緩和を受けて、損害保険会社が生保事業に参入したのは1996年10月。それから16年、損保系生保は主要生保の一角を占め、本業の損保事業を上回る収益力を持つまでに成長した。
 規制緩和後の地殻変動を象徴する存在が、東京海上日動あんしん生命保険だ。同社の保険料等収入は、かつての大手5社の一つで、グループ会社が統合を模索した朝日生命保険を上回った』
 金融行政における行き過ぎた規制緩和は、欧米金融機関の業績低迷から学ぶことができます。かつて、日本でも金融危機が叫ばれている時期には、生命保険会社が倒産する事態に陥り、銀行、証券などもかなりの打撃を受けました。リーマン・ショック後は、日本の金融行政が過去の教訓を生かしたせいなのか、欧米の金融機関が業績や格付けを下げているのを尻目に、日本の金融機関の国際的なプレゼンスは上昇しています。欧米の独壇場であった貿易金融などの分野へも、日本の銀行は積極的に進出しています。同様に、生保の分野でも、海外進出などを積極的に進めた生保が業績を伸ばしています。野村證券など大手証券会社はやや苦戦を強いられている感は否めませんが、銀行、そしてこの生保が海外での台頭しているという事実は歓迎するべきことでしょう。

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