2012年12月2日日曜日

徹底した株主重視の姿勢を貫くキャノンに疑問あり

 私は、キャノンという企業を、ユーザーという立場で常にみています。一眼レフのカメラは、ニコンのD300ですが、コンパクトカメラは、キャノンのPowershotG9であること、プリンタはキャノンの染料系フラッグシップであるPixusPro9000を愛用していることから、キャノンに対する支出はかなりの額に達しています。このプリンタの印刷量は、年末のカレンダーや年賀状の作成以外にも、A3、A3ノビサイズの写真を常設展示している喫茶店が近所にあり、季節に合わせて写真を切り替えている関係もあって、とてつもない量となっています。このプリンタは私のお気に入りで、安定した稼働はもちろんのこと、A3サイズの写真を印刷する上でキーポイントとなるインク使用量が少ないとされ、写真の愛好家である私にとって財布に優しい機種であるともいえます。
 ニコンやキャノンがデジタルカメラを一台売ったところで、出る利益は大したことはないでしょう。一方で、キャノンのプリンタ事業から得られる利益は莫大であり、インクなどの消耗品などの価格も安定していることから、キャノンの利益率の高さを生み出しているといえます。逆に、私のような趣味の世界では、引き続き需要があると思われるプリンタ事業ですが、業務用に限って言えば永続性はないと考えています。これは、このブログの作成おいても、私はペーパレスに固執しているように、クラウドコンピュータやタブレットなど携帯端末を組み合わせれば、近い将来、職場でのペーパレス化を目の前に見えてきているからです。上図は、キャノンの売上高と営業利益の推移を示しています。リーマン・ショック後の業績の悪化は、もちろん世界経済の景気後退を反映したものですが、いずれはペーパレスの流れを受けて、業務用プリンタなどの業績を直撃する可能性は十分にあります。日本企業の中で、国際的にも認知され、高い業績を維持しているキャノンは、ペーパレスの流れを踏まえた上で、新たな分野へのチャレンジが求められているのです。

 こうした中で、キャノンの在庫に関する記事が、2012年11月28日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。キャノンは、リーマン・ショック後も増配を続けており、利益が減少している中でも、2012年12月期の配当金を10円増配することを、同社は表明しています。自社株買いも引き続き実施しており、この増配により、連結純利益に占める自社株買いと配当金との合計の比率(総配分性向)は100%を上回ることになります。この原資を在庫圧縮に求めており、同社がここまで株主を意識する背景には、株式の外国人保有比率が高いことに起因すると考えられます。記事の題目は『キャノン、在庫1000億円圧縮。年内に生産効率化で資金捻出』です。以下引用文。

 『キャノンは2012年12月期末をメドに、連結ベースの在庫(決算書上の棚卸し資産)を9月末に比べ、1000億円程度減らす。中国や欧州の販売減速で在庫が増えているのに対応し、工場の自動化などによる生産の効率化を加速する。今期は減益を見込むなか、在庫の圧縮で資金を捻出。配当などの株主配分を強化し、株価の下支えにつなげる狙いもある。
 キャノンは中国や欧州でコンパクトカメラや事務機の販売が低迷。9月末の棚卸し資産が5900億円強と前年同月末比14%増えた。リーマン・ショック直後の08年9月末以来の高水準で、在庫の圧縮が課題になっていた。この機会を捉え、効率的な生産能力を強化する。
 具体的には、国内外の事務機やカメラの工場でロボットを活用した自動化を進め、製品を従来より短期間で作れるようにする。部材など、製品途中の仕掛かり品として滞留する期間が短くなるため、全体の棚卸し資産の減少につながる。
 また、開発面では3次元CAD(コンピューターによる設計)を活用し、設計段階から不具合検査を徹底する。歩留まり率を改善し、余分な仕掛かり品を減らす』
 右図が示す通り、確かに、キャノンの株価は低迷しています。とはいえ、貴重な資金を余りに株主に還元するという経営姿勢は、潤沢な内部留保を蓄え、長期的な成長を重視する日本企業らしからぬスタイルであり、米企業と似ています。同社の本決算が12月末であることからも、そうした点が伺えます。確かに、米企業の業績は、日本企業と比べて良いといえます。しかし、将来に向けた研究開発や設備投資、内部留保の蓄積は、日米に限らず、世界の企業の共通した課題でもあります。もっとも、光学機器へと特化する道はありますが、ペーパレス化の流れは目前にきており、業態を大きく変貌させない限りは同社の将来はないと感じています。キャノンには、目先の配当ではなく、将来へと向けた投資がもっと必要であるといえます。

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