2012年1月31日火曜日

EMS、ODMとは

昨年、アップルのMacBookAirをアップルストアで購入しました。注文してから1週間程度の時間を要することから、大量の注文が入り、在庫切れの状態になっていると思いました。しかし、米Apple社がどこの物流システムを使用しているのか興味があったため、私のMacがどこにあるのかをアップルのサイトで確認してみました。すると、委託業者はクロネコでしたが、「上海港で船積み」という文言があることに気づき、改めて米Apple社は中国でパソコンの生産を手がけていることを認識しました。今日は、『週間ダイヤモンド』2011.11.12号に米Apple社の製品の製造に担っている企業の紹介がありましたので引用します。まず、米Appleが深く関わっているEMSとODMの用語の説明を的確にしている記事(注1)がありましたので引用します。以下引用文。
『「ようやく"敵"と見なされなくなった。つい2、3年前は自分たちの仕事を取っていってしまう招かれざる存在だった。
 こう笑うのは米系大手EMS幹部だ。EMS(Electrical Manufacturing Service)はパソコンや薄型テレビなどのデジタル家電の受託製造専門会社だ。メーカーが基本設計した製品の、部品 調達から量産を請け負う企業だ。
 一方、ODM(Original Design Manufacturing)という業態もある。こちらも、受託先のブランドで製品を製造するが、基本設計まで含めたあらゆる製造プロセスを担う。基本設計をするかどうかがEMSとの違いだ。EMSやODMは製造に特化しているため自社ブランドは持たない。OEM(Original Equipment Manufacturing)は自社ブランドを持ちながら、他社の製品を受託製造する業態を指す。』
米Apple社のビジネススタイルは、このEMSやODMの業態の企業に依存しているとのことです。2012年1月29日付ブログ(題目『生産と在庫の循環』)で米Appleのビジネススタイルについて記述しました。上記の記事を読んだとき、実はAppleはファブレスという企業形態であることに気づきました。ブランドやデザインは米国の本社で決定されているものの、実際の製品の製造はEMSを業態としている企業に委託しているというビジネススタイルだということです。もっとも、ソフトウェアなどは米国で主に制作されていると思われますが、ハードは中国のEMS企業に委託しているのです。
 以下は、携帯電話・スマートフォン、コンピューター(ノートパソコンなど)それぞれの品目におけるEMS、ODM市場で取り扱われている製品の企業別シェアを示しています。ここで目立つのが、携帯電話・スマートフォンで12%、コンピューターなどで28%のシェアを握っているフォックスコンという名の会社です。米Apple社も生産を委託している企業で、薄型テレビなど民生機器では、そのシェアは40%にも達するそうです。
 そこで、世界最大のEMSであるフォックスコンという名の会社を紹介する記事が週刊ダイヤモンドに掲載されていましたので引用します(注2)。以下引用文。
 『フォックスコンというのはブランド名で、正式な会社名は鴻海精密工業という。英名でHon Hai Precision Industryだ。世界最大のEMSで、アップルのiPhoneやiPodのほか、ソニーの液晶テレビや任天堂のWiiなどの製造を請け負っている。
 フォックスコンの強さの源泉は規模の巨大さだ。
 従業員は2011年度中には100万人を超え、ものづくりの基本である金型の技術者だけで3万人を抱える。内陸部の高校の卒業生を丸ごと雇うといった方法で、若い労働者を確保している。
 この規模が生み出すコスト競争力を武器に、次々と液晶テレビやスマートフォン、パソコンなどあらゆる家電の製造を世界中のメーカーから受託してきた。他のEMS、ODMを突き放すシェアを持つ。
 売上高は7兆円に達しており、時価総額はソニー、パナソニック、シャープを超えている。世界で最も多くの電気製品を作っている企業なのだから、当然といえば当然だ。』
フォックスコンは、注目の企業です。今後、継続的に企業ウォッチをしていくつもりです。しかし、EMSを手掛ける企業にブランド名が既についているというのは恐ろしいことです。いずれは、「あの企業に生産を委託しているのならば、某日本企業が提供するこの製品も問題ないですね」という会話が家電量販店の店頭でされているかもしれませんね。まさしく、日本のものづくりの危機です。
(注1)記事の題目は『EMSやODMが支配するものづくり、圧倒的なコスト競争力、製造専門企業を浸食』。
(注2)記事の題目は『従業員100万人超!脅威のEMS「フォックスコン」』。

2012年1月30日月曜日

中国経済の影響

欧州債務危機が深刻化する中で、中国の輸出がかなりの打撃を受ける可能性が出てきました。考えた以上に中国の対欧州の輸出依存とは高まっており、その余波を受け日本の輸出も影響を受けることも想定されます。中国の輸出・生産に関する記事が『週刊ダイヤモンド』2012.1.21号に掲載されていましたので引用します。題目は『ダメージはリーマン超確実!?金融引き締めと欧州危機が襲来』です。以下引用文。
 『中国にとって、欧州は米国や日本を超える最大の輸出先だ。05年以降、輸出全体の2割近くを占めており、電機・機械や軽工業品が主力。欧州もリーマンショック以降、中国への依存度を深めており、最大の輸出先になった。
その欧州を覆う暗雲に、製造現場は深刻さを肌身で感じている。
中国国内3,000社の進出企業を抱える香港工業総会の劉展灝副主席によると、昨秋以降、欧州からの受注は20〜30%、米国も5〜20%落ちており、「このままのペースだと進出企業の30%が3〜5年以内に倒産するか、規模縮小を余儀なくされてしまう」という』
 日本を中心とした「もの」の流れは、私のイメージでは、大まかには日本から輸出された部品や素材が中国、韓国、ASEAN等を通じて、完成品へと加工され、最終消費地である米国や欧州へと輸出されるというものです。もちろん、日本から米国や欧州へと直接完成品が輸出されるケースもありますし、中国、韓国、ASEANで生産された完成品が日本へと輸出されるケースも多々あるが、日本の貿易収支の水準を決めているのは部品や素材の輸出額であると考えています。
今後、欧州債務危機の余波が、中国の輸出に影響を与えるという事態が起これば、中国、韓国、ASEANへの日本の輸出も低迷することが予想されます。そうなれば、足腰が弱くなっている、わが国の経済は円高、相手国の需要減のダブルパンチを受け、景気の回復はさらに遅れることとなります。
 現在、政党間で消費税率の引き上げの議論が活発になされています。仮に、妥協の結果、引き上げには景気動向を踏まえてという条件がつく可能性があり、先送りということも十分考えられます。ところで、団塊の世代は1947〜1949年生まれの世代のことを指しますが、彼らが年金を本格的に受給する65歳を迎えるのは、2012年か、2013年かです。社会保障費の大幅な増加が見込まれることから、わが国は待ったなしの状況になっています。

2012年1月29日日曜日

生産と在庫の循環

生産と在庫の循環に関して新たな動きが出ているようです。わが国では、3.11の東日本大震災とタイの大洪水の際、部品供給がストップ、かなり長い期間、生産が滞る事態が発生しました。トヨタ自動車の「カンバン方式」に代表される部品の在庫を極端にまで少なくする生産体制が、日本企業のコスト削減に寄与し、国際競争力を維持してきたといっていも過言ではありません。しかし、昨年起こった部品不足による生産のストップは過去にも経験していることです。私の記憶の範囲では、トヨタ系のある下請け企業の部品工場が火事か何かで生産がストップしたことで、トヨタ自動車本体の生産ラインも停止、トヨタ系以外の部品工場から急遽調達したということがあります。今回も、これと似た事例ではありますが、影響を受けた規模、期間は過去にないものです。日本的経営の一つである「カンバン方式」を見直す時期にさしかかっているのかもしれません。
2012年1月16日付日本経済新聞朝刊に上記の旨指摘している記事がありましたので引用します。題目は『企業の在庫急増、持たざる経営、予期せぬ転換、震災・洪水機に』です。以下引用文。
 『企業の在庫が急激に増えている。昨年11月の在庫水準は前年同月比で8%増加し、1998年3月以来の伸びを記録した。大企業製造業が2010年10月〜11年9月に実施した在庫投資額は約30年ぶりの大きさだ。東日本大震災などで部品不足に陥ったことを教訓に、ぎりぎりまで在庫を絞る「持たざる経営」を見直す機運が出ている。
日本企業は経営効率を高めるため、1960年代以降に一貫して在庫の圧縮に取り組んできた。トヨタ自動車が開発した「カンバン方式」をお手本に、在庫を減らすことを重要な経営目標とする企業が多い。(中略)
在庫圧縮を見直す直接のきっかけは東日本大震災だ。サプライチェーン(供給網)の寸断により部品調達に支障が生じ、自動車などの減産につながった。タイの大洪水も家電の部品不足を招き、企業の在庫戦略見直しに拍車がかかった。』
過去最高の業績を出している米Apple社は、部品の在庫を極力圧縮する日本企業とは全くことなる経営を推し進めていす。同社は、iPhoneやiPadの新しい製品が発表される数カ月も前に部品メーカーに膨大なロットの部品を発注し、発売直前までに数百万台の完成品を準備するシステムをとっています。これは、日本企業が得意とする多品種少量生産とは相対する少品種大量生産の典型的なスタイルであるとともに、日本企業の躍進の中で廃れていった経営システムでもあります。米Apple社が、このスタイルの経営で、何故、今の日本企業では考えられない高い利益率をだすことができるのには理由はあります。つまり、それはAppleの「ブランド力」です。素晴らしいデザインや機能を持った製品を世に送り出し続け、一種、Appleの魔法ともいえる経営スタイルに消費者はとらわれているといえます。
私も、iPhoneを持っていますが、同社の姿勢が反映された素晴らしい製品だと日々感じており、いまだに2世代前の3GSを愛用しています。最新のアンドロイド携帯と比べて、さすがにスピードは遅くなっているものの、主要なアプリはいまだに利用できます。普段使っていて、全く問題なく、フリーズドすることもないです。 
日本企業も、自らの「ブランド力」を高めることで、利益率を高めるというスタイルへと転換するべき時がきたと思います。これまで、大手自動車メーカーなどは、下請けの部品メーカーにコスト削減やら納期やらの負担を押し続けてきたのです。その結果、中小の企業は疲弊し、バブル崩壊以降、労働者の賃金の減少に歯止めがかかっていません。雇用者所得の減少→消費の低迷→生産の低迷→雇用者所得の減少の悪循環をつくり出している元凶かもしれません。
Apple社がブランドを高めるには、10年くらいの年月を要したと思います。日本企業も、同社をまねるだけではなく、同社のブランド力に、日本企業が持っているものつづりの魂みたいなものを融合させることで新たなステップへと迎えることができると考えています。

2012年1月28日土曜日

今後の世界のエネルギーをめぐる環境

 今年のわが国をとりまくエネルギー事情は、3.11以降大幅な変更を余儀なくされました。賛否両論はあるものの、国連総会で「鳩山イニシアチブ」が発表され、わが国はCO2排出量を25%削減することを目標にかかげました。今では国連総会で日本が注目された機会が少なくなっています。これが最後の場面にならなければと思っています。
 現在は、イニシアチブが発表された2009年9月当時とは様変わりし、中長期的のみならず、短期的にもエネルギーのあり方が活発に議論されており、しかもLNGを中心とした化石燃料供給先の確保が重要課題となっています。ここへきて、米国とイランの対立もあって原油価格の代表的な指標であるWTIが1バーレル当たり100ドル前後まで上昇、イランの出方次第ではさらなる上昇も懸念されているところです。
 それでは、世界経済やエネルギーシェアは、今後のどのように変化するのでしょうか。まず、世界経済です。IMFの資料によると世界のGDPに占めるEU、米国、日本のシェアの合計は、2008年の61%→2015年の52%へとなり、9ポイント低下することが予想されています。グラフのその他にカナダ、豪州などの先進諸国も入っていますが、おおまかなトレンドはつかめるでしょう。つまり、BRICsや途上国のシェアが高まることです。2010年の予想ですので、昨今のユーロ圏の混乱を考慮すれば、2015年時点のEUのシェアは予想よりも低い水準にとどまる可能性もあります。また、円高でドルベースで考えた日本のシェアは高いものの、財政危機→円安という方向へと進めば、日本もシェアもさらに低下する恐れがあります。
 エネルギー消費も同様の傾向がみられます。IEAの資料によるとEU、米国、日本のシェアの合計は2008年の37%→2030年の28%へとなり、11ポイント低下するとされています。GDPと比べて低下幅は大きいですが、これは双方の資料の出所が異なり、比較する年が15年もずれていることが主因です。しかし、GDP、エネルギー消費とも同様の傾向を示しており、ともに先進国のシェアが低下する一方で、BRICs、途上国のプレゼンスが高まることが予想されます。特に、経済発展著しい中国の経済発展の程度及びエネルギーの消費構造の変化次第では、予想を上回る変動の可能性も否定できないでしょう。
郭(2011)(注1)は中国のエネルギー事情を以下の通り示している。以下引用文。
『中国のGDPは(国内総生産)構成で見ると、第二次産業の工業割合は53%(2009年)を占めており、その中のほとんどが、鉄鋼、石油化学、機械、セメントといった重化学産業である。そして重化学産業は、中国の経済成長の主なエンジンとして、その成長を牽引してきている。工業に占める重化学工業の比重は、1998年の57.1%から2009年には70%以上に上昇している。この重化学産業依存型の経済成長は、エネルギー消費の莫大な増加をもたらした。
中国のGDP総額は、78年の3654億元から09年には33兆5353億元に増加し、30年余りで92倍まで拡大している。それに伴い、エネルギー消費量は、6億トンから、31億トンにまで増大した』
 中国の産業構造がエネルギー多消費型の重化学工業に偏重していることが膨大なエネルギー消費の原因としている。また、戦後の高度成長を体験した日本と同様に都市化及び消費行動の変化により、引き続き膨大なエネルギーを消費し続けることを示唆している。図は、単位GDP当たりの一次エネルギー総供給(注2)の国際比較を示しています。ロシア、インドネシア(注3)など主要な原油生産国は別として、インド、中国は経済規模の割にエネルギー効率が低いことがわかります。中国に加え、インドの経済発展のよってエネルギー需給のバランスが崩れ、再び原油価格の急騰招くかもしれません。
(注1)郭四志『中国エネルギー事情』、岩波新書、2011年。
(注2)資源エネルギー庁『総合エネルギー統計』より。一次エネルギー総供給とは、国内での最終エネルギー   消費を賄うため利用されたエネルギー量を、投入された化石エネルギー源の量や、利用された核エネルギ   ー、自然エネルギーの量で間接的に算出したもの。
(注3)インドネシアは、原油生産の低迷から2009年9月にOPEC(石油輸出国機構)から脱退している。

2012年1月27日金曜日

農業の労働生産性

 今日は、日本の農業について少し書かせていただきます。私の知る限りでは、わが国は輸入する農産物に対して高率な関税を課しています。右表はそれを示したものです。白米10kgで4,000円弱というところですが(Amazon.com)、コメの関税が劇的に引き下げられた場合、いくらになるでしょうか。国内の輸送コストや卸・小売りの利益なども考慮しなければならないため、関税の引き下げほどには、小売価格は下落しないことでしょう。
その他にも、農産物は数多くあり、関税の大幅引き下げにより、それら全ての価格が大きく下落したのならば、農産物の生産に携わっていない家計にとって輸入自由化は歓迎すべきものだと思います。しかし、この話は単純ではありません。農産物の生産が主な収入源である家計にとっては大きな打撃になるだけではなく、その結果、今でもすでに多いと指摘されている耕作放棄地を減らすどころか、日本国内は耕作放棄地ばかりになり、不毛の地になってしまいます。また、農業の衰退は、地方の衰退に直結すると考えている人々にも、農産物の関税引き下げはマイナスです。同様に、食糧自給率が40%と主要先進国の中で最も低いのは安全保障上リスクがあると主張する人もいます。一方で、円高に苦しめられている製造業にとって、FTAやTPPに参加することはメリットは大きいたでしょう。農産物の関税引き下げの代償で、輸出品に対する相手国の関税が引き下げられることは歓迎すべきことでしょう。それぞれに立場が異なり、利害関係が複雑に交錯することから、それを一つの意見にまとめて、TPPやFTA等の自由貿易を推進することは、かなり困難な作業になることが予想されます。
 ところで、世界の人口は昨年あっさり70億人を突破しました。わが国にとってやはり食糧の確保は重要な課題でしょう。地球温暖化の影響もあって、昨年だと思いますが、ロシア、ウクライナなどが小麦の輸出を停止しました。その結果、穀物価格は跳ね上がり、一部の国では暴動まで発展しました。図は過去5年間の世界の小麦生産の推移を示したものです。グラフから受ける印象は、世界の小麦生産は伸び悩んでいるということです。現在は中国が人口で世界一ですが、近い将来、インドが世界一という地位に上りつめます。たびたび干ばつで悩まされ、恒常的に食糧が不足しているアフリカ諸国の人口増加率が高いことも気になる点です。やはり安全保障上、食糧自給率の向上を目指した施策が求められるところです。しかし、製造業にとって強力なライバルである韓国が、EUや米国とFTAの交渉を進めています。交渉が成立すれば、韓国製品の関税は引き下げられ、円高に苦しむ日本の製造業はさらに窮地に追い込まれることとなります。両者は相容れない要求なのかもしれません。
それでは、経済的な合理性から考えて、この問題は解決できないでしょうか。経済学は、資源は希少であるという立場から、最適な配分や生産について多く語っています。ここで、農業生産における生産要素の希少性に注目します。農業生産に不可欠なものとして、すぐ思い浮かぶのは労働、土地、水、肥料、農業機械などです。ここでは、話を単純化するため、労働と土地のみを農業生産における生産要素として、生産関数を考えてみましょう。生産物Output、その生産要素を労働Labor、土地Landとして以下を生産関数を定義します。


今回、数式を使った初めてのブログですので、簡略化の意味を含め、上記の通り具体的な式をもって生産関数とします。aはパラメーターで、a=0.5とすると、以下のグラフが作成されます。


上記グラフは、労働Laborと土地Landを独立変数、生産量Outputを従属変数とし、投入される労働、土地が増加するほど生産量は増加するものの、増加率は徐々に低下することを示しています。これは、投入される土地を一定として、投入される労働が増加すれば、増加するほど生産量は増加しますが、限界的に投入される1単位当たり労働に対する生産量の増加率は徐々に低下する。逆に、労働を一定として、投入される土地の面積が増加すれば、増加するほど生産量は増加しますが、限界的に投入される1単位当たりの土地に対する生産量の増加率は徐々に低下することをそれぞれ示しています。これは直感的に分かることです。例えば、土地は1haとして、そこで働く労働者数が、一人ずつ増えていくと、生産量は徐々に増加しますが、最後は足の踏みどころもない状態になります。一方、労働者1人に与えられた土地が、1haずつ増えていくとどうなるでしょうか。どちらの場合にせよ、投入される生産要素が増えるごとに徐々に限界的に生産量は減少することになります。
私の意見は、現在、農業生産に関する生産要素で、相対的に希少と考えられるのは、労働ではなく、機械設備てもなく、土地(豊富な水と表土で満たされた肥沃な土地のことです)であることです。今後、増加率は低下してくるものの、世界の人口は80億、90億を目指して増加し続けます。世界の全ての人々の胃袋を満たすにはどうしても、限られた土地という生産要素の中で、食糧の増産を進めなければなりません。ならば、米国など労働生産性を徹底的に高めた大規模な農業ではなく、日本など土地生産性が高い比較的小規模な農業が見直されてもいいのではないでしょうか。今日は、数式や数学ソフトの初めての導入です。厳密さに欠いた文章となりましたが、今後はより精緻なものにしていきます。

(参考文献)
浅利一郎、久保徳次郎、石橋太郎、山下隆之、『はじめよう経済学のためのMathematica』、日本評論社、1997年。
奥野雅寛編集、『ミクロ経済学』、東京大学出版会、2008年。





2012年1月26日木曜日

次は債券か、株式か

資産の選択には様々なものがあります。値動きが激しく、デフォルトのリスクもある株式、確定した利息を長期間受け取ることのできる債券、収益性が低いがリスクも低い銀行預金など金融資産のほか、土地・金などの現物資産もあります。自分の年齢やライフスタイルなどを考えて、人生設計に応じた金融資産・実物資産の最適な配分を構築することが求められるところです。現実の日本人の一般的なスタイルは、金融資産のほとんどを銀行預金等安全な資産へ投入、このほか生命保険に加入するなど、リスクを回避し、リスクをヘッジする姿勢が徹底しているようです。やはり、1%前後の利回りをつけている債券はやや疑問があるものの、バブル崩壊後、最低水準にまで落ち込んでいる株式は、今後、魅力的な投資対象になるのではないかと思っています。
 私は株式投資の専門家ではありませんが、株式投資をするに当たって参考となる代表的な指標であるPER(株価収益率)くらいは知っています。PERは以下の式で求められます。


これは、1株当たり当期純利益が変わらないとすれば、株価が上がればPERは上昇し、株価が下がれば低下することを意味します。逆に株価が変わらないとすれば、1株当たり当期純利益が増加すればPERは下落し、1株当たり純利益が減少すればPERは上昇することになります。つまり、高すぎるPERは株式の売却のタイミングであり、低すぎるPERは株式を購入するタイミングをそれぞれ示しており、PERが10倍程度の場合、株式を購入するタイミングであるとされています。上のグラフは世界の主要株価の予想PERと予想増益率を示したものです。予想としているのは、株式を購入するに当たって現時点のPERではなく、将来時点のPERが重視されるからです。期近で高い利益を出したとしても、例えば1年後の利益に減少する予想があれば、現在のPERが低くとも、1年後のPERは上昇し、株価は割高感が出て、逆に下落する可能性が高まるからです。グラフから世界各国の株価はの予想PERは決して高い水準ではなく、個別のリスクは別として株式を購入するタイミングではないかということが読み取れます。
因みに、私が知っているもう一つの指標にPBR(株価純資産倍率)というのがあります。PBRは以下の式で求められます。


 この指標の目安は、PBR=1倍を上回っているかどうかです。PBRが1倍の時、株価が解散価値に等しいとされ、1倍を下回ると株価は割安であるされています。株式が暴落している日本では、PBRが1倍を下回っている企業がたくさんあります。PBRが1倍を下回っているのは、トヨタ自動車(2012年1月20日現在0.85倍)、ソニー(同0.58倍)、新日本製鐵(0.69倍)、三菱UFJフィナンシャルグループ(同0.54倍)などがあり、それらは日本を代表する企業であり、今後の景気次第ではありますが、現在は割安であると考えてもいいでしょう。
 ここで、1をPERで割ると、(1株当たり純利益)÷(株価)が求められます。これを1株当たり純利益率とします。そして、仮にこのうち50%を株主に配当金として支払ったとすれば、これは株式の配当利回りになります。雑な計算で申し訳ないのですが、これを推定配当利回りとして、10年物の債券利回りと比較したのが、右図です。日本、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランスなどの国では、安全資産としての債券の評価が高く、その結果債券価格が割高となり、債券利回り(注)が低い水準にとどまっているため、推定配当利回りが債券利回りを大きく上回っていることがわかります。つまり、上記の国に限っては、債券投資をさらに進めるのではなく、割安と思われる株式へとウェイトを置いた方がいいのではないかと考えているところです。
(注)債券利回りのデータは、2012年1月20日付。Bloombergより。

2012年1月25日水曜日

IT業界の4強

今、この瞬間、私は、米Google社が提供するブラウザソフトChromeを使って、Bloggerにてブログを綴っています。Googleが提供するサービスは、私が主に利用しているものとしては、検索サービスのほか、Blogger、ドキュメント、YouTube、Gmailなどがあります。それに、ソニー製のアンドロイドOS搭載のウォークマンも持っていますので、まさにGoogleに囲まれた生活を送っているます(注1)。全てが無料のサービスなので重宝していますが、タダほど怖いものはないとも思っています。実際、Googleが上げている利益は凄まじく、広告収入主体ですが、このビジネスから得られるチャンスの多さが伺えます。Googleの提供するサービスは、個人情報の流出や利用などが懸念されますが、今のところ実害はありませんので、このまま使い続けていくつもりです。
ITmediaニュースにGoogleの決算発表が掲載されていましたので、そのまま引用します。 
 『【佐藤由紀子、ITmedia】米Googleが1月19日(現地時間)に発表した第4四半期(10~12月期)決算は増収増益で、売上高は初めて100億ドルを超え、過去最高を更新した。だが、トラフィック獲得経費(TAC)を除いた売上高はアナリスト予測を下回った。欧州経済の停滞が広告収入に影響したという。
 同四半期の売上高は前年同期比25%増の105億8000万ドル、営業利益は18%増の35億700万ドル、純利益は6%増の27億500万ドル(1株当たり8ドル22セント)だった。TACが18%増の24億5000万ドルに上り、これを差し引いた売上高は81億3000万ドルで、アナリスト予測の84億1000万ドルを下回った。』
 アナリストの予想を下回ったものの、米Google社の売上や利益の伸び率は驚かされます。これだけGoogleが躍進すれば、伸びた分だけ割を食っている会社や業界もあるはずです。例えば、広告業界、放送業界などです。最終消費財を提供する会社も、放送や新聞など既存のメディアへ広告を提供するより、ネット広告の方が効果が高いと判断したのでしょうか(注2)
 Googleの躍進も目立ちますが、IT業界にはほかに巨像がいます。以前、日本経済新聞社に掲載されていた記事では、IT業界のビック4は、Google、Apple、Amazon、そしてFacebookだそうです。ここで4社の株価の推移を比較しようと思い、YahooFinanceにアクセス、データを取得しようとしたら、Facebookだけヒットしませんでした。それで、慌てて検索をかけてみると、Facebookはまだ上場していないようです。日本経済新聞Web版によると、来春に向けてIPO(新規公開)を予定しており、予想される時価は1,000億ドルに相当するそうです。Google、Apple、Amazonの株価を比較していると、AppleやAmazonが着実に上昇しているのに対して、Googleの株価は伸び悩んでいるようにみえます。この間、株式分割はないようなので、AppleとAmazon両社の業績が良すぎるということも考えられます。
 ここで、ITのビック4に対して私が抱いている印象を書かせていただきます。まず、Facebookですが、ツイッターを利用してませんので、よくわかりません。Appleは、Mac、iPhoneなどを製造、販売するとともに、音楽や映画の配信、ソフトウェアの配信や開発で収益を得ています。私にとって最も理解しやすい会社です。次に、Amazonです。Amazonは世界最大の通信販売会社です。私もちょくちょく利用しており、家にはAmazonの段ボール箱があちこちにある状態です。それに、音楽や書籍のオンラインによる配信や、素性がよく分からないのですがクラウドサービスをしているようです。Googleは上記にて述べた通り、様々なネット事業を手掛けています。
 仮に、私が株式を購入するとしてら、4社の中のうちどれでしょうか。4社の共通点は、現時点で配当金は支払われていないことです(上場していないFacebookは当然ですが)。Appleの株価は上昇し過ぎという感があります。すでに時価総額は3,918億ドルに達しており、エクソン・モービルの4,193億ドルと首位争いをするので高くなりました(2012年1月20日現在)。本命はAmazonか、Googleかと思っています。前者は、Appleが得意とする音楽配信、書籍販売のみならず、Kindleという携帯端末まで販売し、Appleと競争しています。同様に、GoogleはアンドロイドOSを提供、AppleのiPhoneのシェアの伸び悩みの一因にもなっています(伸び悩んでいるのではなく、アンドロイドのスマホが熟れ過ぎですね)。ともに、時価総額最大のIT企業から利益やシェアを奪っており、今後の収益の上昇が期待できるからです。今後の展開に注意を要します。
(注)正確にいうと、Googleばかりでなく、AppleのMacやiPhone、ソニーのウォークマン、テレビやBDレコーダー、Panasonicのパソコンなどがありますので、全てがGoogleではありません。
(注2)最近、英Financial Timesが広告収入ではなく、ネット配信を含めた購読者から購読料へと収益の軸足を移しているようです。広告収入はある意味、広告主である企業に紙面の内容を左右される可能性があるため、英FTによる、この選択は正しいと考えています。

2012年1月24日火曜日

アメリカン・フットボールと野球

 先ほど、前日に録画していたNFL(National Football League)のAFC/NFCのチャンピオンシップを視聴し終えたところです。ペイトリオッツは、トム・ブレイディが不調だったものの、スーパーボール進出は順当だったと思います。しかし、最後の23ヤードのフィールド・ゴールの失敗はまさかの結果です。キッカーのプレシャーが如何に大きいかがよく分かりました。一方、ジャイアンツは絶対負けると思って試合を観ていました。ジャイアンツのオフェンスが全般的に抑えられていたという印象で、49ersのターンオーバーがなければ、きっと負けていたでしょう。青色吐息の中、相手側のミスを逃さず、しぶとく持ちこたえたイーライ・マニングはさすがですね。ディビショナル・プレーオフでパッカーズに負けると思っていましたので、ジャイアンツのスーパーボール進出には非常に驚いているところです。2月5日(日本時間の2月6日)のスーパーボールは、4年前の因縁の対決です。当日が楽しみです。
 米国の人気スポーツというば、NFL、NBA(National Basketball Association)、MLB(Major League Baseball)だと思います。その中でも、個人的にはNFLが一番好きです。何と言っても1シーズンの試合数がNBA、MLBと比べて圧倒的に少なく、プレーする人にとっても、観戦する人にとっても1試合、1試合の重みが大きく、1試合当たりの緊張感がNBAやMLBとは違います。好みはそれぞれなので、これはあくまで個人的な意見ですのでご了承願います。
 アメリカン・フットボールは、野球やバスケットと異なり、個人の能力よりは組織力のウェイトが高いというスポーツです。プレー経験豊富なヘッドコーチの元、才能ある強いリーダーシップを持ったクォーターバックが、チームを統率し、個々の選手がそれぞれの役割を果たすというスタイル(いわば組織)は、アメリカ社会そのものにもみえます。つまり、国民の支持(チームのメンバーの信頼)を背景に、議員・閣僚等(ヘッドコーチ)の意見を聞きながら、大統領(クォーターバック)が強いリーダーシップを発揮し、社会全体(試合の流れ)を変えていくのです。
 一方、日本でメジャーなスポーツといえば野球です(注)。野球にも組織力というものはありますし、リーダーシップもあると思います。しかし、クォーターバックみたいな存在は見当たらないです。野球ではピッチャーの存在がやたら目立ちますが、先発ピッチャーが常に試合に参加することは物理的に不可能です。従って、ピッチャーはアメリカン・フットボールでいうクォーターバックみたいな存在にはなり得ないということです。
日本では、アメリカン・フットボールはマイナーな存在で、野球がメジャーであるというのは誰もが一致した意見でしょう。日本で野球がどうして好まれるのはわかりませんが、政治・経済・会社組織などあらゆる局面で、今の日本には強いリーダーシップが求められています。現在、わが国は、震災復興、エネルギー政策、消費税税率の引き上げなど難題が山積みとなっています。日本社会にも、絶対的な支持を受けたクォーターバックみたいな存在が必要ではないかと、試合中継を観ながら感じました。
(注)他にもサッカー、相撲など人気スポーツは数多くありますので、あくまで個人的な意見です。

2012年1月23日月曜日

鉄は国家なり

産業革命以降、「鉄は国家なり」といわれ、鉄の生産量こそが国力そのものであるされて久しいです。私の記憶では、生産量第1位の地位にのぼりつめたのは国は、イギリス→ドイツ→米国→日本→中国の順で移り変わっています。日本が1位の時期がかつてあったこと、現在の米国と中国の経済規模の差があることを考慮すれば、時の経済力1位の国とは必ずしも一致していませんが、国の経済の勢いと鉄の生産は一致するようです。日本では鉄は「産業のコメ」(注1)ともいわれ、経済成長に必要なインフラ整備に不可欠な資源と位置づけられています。急速にインフラ整備を進めている中国の生産量が、現在世界最大であるのは理解できます。さらに、日本とは異なり、人口の絶対数で多い上、国土も日本の30倍近くあることから、鉄の需要や生産は日本とは比べられない規模となるでしょう。
2012年1月21日付日本経済新聞朝刊に「日本の粗鋼生産」の速報値が発表されていました。それで、早速、日本の粗鋼生産の推移を調べてみました。リーマンショックの翌年である2009年の大幅な減少は、世界経済の低迷による需要減少によるものです。一方、2011年の減少は、円高とタイの洪水による輸出減少に、3.11の東日本大震災による生産停止というサプライサイドの要因が加わったものです。私が知っている限りでも、震災による影響で、新日鉄の釜石製鉄所、住友金属鉱業の鹿島製鉄所、JFE傘下の東北スチール(注2)などが操業停止に追い込まれました。これに、タイの洪水と急速に進む円高が加わったことになります。まさに、ダブルパンチですが、前年比1.8%の減少にとどまったのは、確認したわけではありませんが、中国への輸出が順調だったからではないでしょうか。
 それでは、2012年の見通しはどうでしょうか。最大のトピックスは、日本での業界1位と3位である新日本製鉄と住友金属工業の合併です。合併比率は、新日本製鉄1に対して、住友金属工業0.735です。新日鉄にとって高すぎるというイーメジでしたが、住友金属工業の株価に現れていない技術力を評価した上での比率だそうです。この結果、新日鉄は特損を計上しているようです。
そして、中国の需要がどうなるかです。欧州危機はともかく、中国経済は引き続き絶好調のようです。中国財政省発表の2011年の国と地方を合わせた中国財政収入が前年比24.8%増加したという記事が、2012年1月21日付日本経済新聞朝刊に掲載されていました。企業所得の増加を背景にしたもので、これは、税収増による国の財政政策の余地がまだまだあることを意味しており、日本の粗鋼生産にはプラスに寄与すると思います。上記のグラフは、日本と中国の粗鋼生産の推移を指数化したものです(注3)。中国における粗鋼生産の規模のもさることながら、その伸び率も凄まじさを教えてくれます。鉄鉱石の価格が高騰していますが、やはり中国の需要拡大が主因ですね。
(注1)鉄が「産業のコメ」といわれるのに対して、銅は「産業の血管」といわれる。
(注2)東北スチールは電炉メーカー。
(注3)2003年における日本の粗鋼生産を1として算出。

2012年1月22日日曜日

日米の就業者数の推移

日本で雇用統計といえば、私の場合、すぐ頭に浮かんでくるのが完全失業率です。米国も同様で、先日、2011年12月の失業率が米労働省から発表され、11月の8.7%から8.5%へと改善、2ヵ月連続の低下に驚いたばかりです。一方、日本では、現時点11月分のデータが公表されており(12月分は1月31日に発表されるとのことです)、9月と同じ4.5%となっています(総務省統計局労働力調査ホームページより)。失業率を直接比較した場合、日本は米国と比べてかなり低い水準をとどまっていることが分かります。もっとも、労働力人口や失業者の定義は、各国によってかなり開きがあり、失業者の定義は、米国よりも日本の方が低く見積もられているといわれています。また、雇用の流動性が高い米国と比べて、日本の場合、終身雇用の枠から一度外れると、再び元の枠へと戻るハードルは高く、日本の失業者や非正規労働の実態は米国よりも厳しいことが推測されます(注1)
米国では失業率と同様に就業者数も重視されます。それで、21世紀に入ってから米国と日本の就業者数の増減がどのように推移してきたのか興味を持ちました。左図がそれを示したものです(注2)。2009年の米国の就業者数の大幅な減少は、2008年9月のリーマン・ショックによるもので、同ショックが米国経済に与えた影響が如何に大きかったがわかります。2003年から2007年の間、米国の就業者は大きく増加、同時期の米国の経済が好調さを反映している一方、人口の差を考慮しても、日本の増加数は小幅にとどまっおり、回復感に乏しかったという印象です。日米の好況感の差は、就業者数の増減の推移にはっきり現れており、米国におけるこの期間における就業者数増加を考えれば、ある程度の反動が起こっても不思議はないと思います。因に、統計をとることができた、2001年〜2011年10月までの就業者数増減の合計は、米国は300万人超の増加であるのに対して、日本は100万人弱の減少となっています。
 米国は300万人も就業者が増加したのに、この間の失業率が6%弱から8.5%へと上昇、就業者が減少した日本は5%強から期近の4.5%へと逆に低下しています。これは、日米の労働力人口の差によるもので、米国経済の底力を表しているともいえます。つまり、労働力人口や15歳以上64歳以下の人口が減少傾向にある日本とは異なり、米国は毎月万人単位で就業者が増加しなければ、失業率がすぐに上昇してしまうことを意味しています。
米労働省のホームページをチェックしていると興味深いデータが掲載されていました。それは、州別の失業率です(注3)。最高のネバダ州の13.0%に対して、最低のノースダコタ州は3.4%にとどまっています。要因はわかりませんが、この開きは何と9.6%もあり、この差こそ、労働者の州を越えた移動を促し、雇用が流動化する一因です。因に、米国で一番人口の多いカリフォルニア州の失業率は11.3%で、全国平均を大きく上回っており、米国の雇用情勢は依然として厳しいことが伺えます。
(注1)大瀧雅之、『平成不況の本質-雇用と金融から考える』、第1章、岩波書店、2011年。
(注2)このデータは定義にやや厳密さを欠いている。これは、雇用統計に関する私の理解不足によるもの。
(注3)2011年11月時点。

2012年1月21日土曜日

FXに一言

私は、会社で投機行為を禁止されているため、FX取引をした経験がありません。もっとも、FXの取引データは、外国為替の今後を予想するための有益な情報を提供してくれます。以下はClick365のホームページに掲載されている通貨ごとの為替売買動向のデータをグラフ化したものです。このデータが優れているのは、日本円(JPY)を基準とした売買動向だけではなく、ユーロ(EUR)と米ドル(USD)の為替動向を示したEUR/USDの売り建玉、買い建玉のデータも提供してくれているところです。因に、ZARという見慣れない通貨があります。これは、南アフリカランドのことです。どうしてZARなのかというと、同国はボーア戦争で有名なオランダ系の移民が多く、オランダ語表記で南アフリカ共和国のことをZuid Afrikaansche Republiekということに由来しているそうです。
 グラフの見方を説明します。まず、単位である1枚は1万通貨単位を示します。レバレッジをかけている取引ですので、実際の投資額は分かりませんが、例えば米ドルで10倍のレバレッジならば、米ドル1枚の投資は実際には1000米ドルだけですみます。そして、売り建玉とは、外貨の売り建をしていることで、その逆は逆です。米ドルで考えた場合、1枚の売りをすることは、1万米ドル相当の外貨の売りをかけていることを表します。そして、この時、レバレッジ10倍ならば、1000米ドルのみ投入だけでいいことになります。仮に1米ドル=100円から1米ドル=90円となったならば、100万円-90万円=10万円の利益が発生、10万円の投資額が20万円となって戻ってくることになります。FXは先物と基本的に同様ですので、米ドル相場が下落し、その時に売りを建てていれば、利益はプラスになります。私は、もっぱら現物投資ですので、基本的に相場が下がって儲かるということはありませんが、FXは相場が下落していても儲けることができるというのが最大の特徴です。
 グラフから読み取れるのは、対円では、全ての通貨で、買い建玉枚数が売り建玉枚数を上回っていることです。つまり、外貨が日本円に対して上昇した場合、利益が出るというロングポジションにあるいうことです。上記で有益な情報であると書いたのは、FX取引には必ず反対売買が発生するということです。つまり、買い建玉が売り建玉を大きく上回っているということは、将来の外貨売りを示していることになり、円相場の急落はないことがわかります。どの水準で購入したかという詳しいヒストグラムが手に入れば、より詳しいリサーチができると思います。
 『週刊ダイヤモンド』2011.11.26号で、野口(注)が政府・日本銀行による10月31日付けの為替介入に否定的な見解を示し、介入はFX取引を行っている投機家たちを利するだけであると、かなり強めの論調でコメントを寄せています。以下記事の一部引用です。題目は『5時間で300億円超! FX投機で空前の利益』です。
 『私は、これまで  「FXは危険な投機だからやめた方がよい」と言い続けてきた。しかし、政府がこういうことをやってくれるなら(為替介入のこと)、話は全く別だ。仕事などほっぽらかして、一日中為替動向に全身全霊を投入したらよい。そして、日本政府が介入に踏み切ったと見たら、ただちにドル買い注文を入れる。  
「市場は介入を警戒している」と報道されている。とんでもない。全世界のFX投機者は、日本政府が次のぼろ儲けの機会をいつ提供してくれるかと、一日千秋の思いで待っているのだ
 私も現物投資が原則ですので、FX取引に対しては否定的です。事実、外貨の相場が上がると見せかけて、外国人投機家は逆に投機的な円買いをして、FXの反対売買が自動的にかかるシステムが対応できないほどの円相場の急上昇をもたらすということが現実に起こっています。この結果、FX取引者に証拠金以上の損失を与え、逆に円の投機売りをした外国人投機家は莫大な利益を手にするという手法があるそうです(これを「ロスカット狩り」という)。野口の記事は、本質的には政府・日本銀行による無意味な介入を批判したものだと思います。しかし、自国通貨高に悩まされていたスイスが、スイスフラン高を阻止できたのと違って、現在の円高水準は厳しいです。スイスは、スイスフラン高に対して無制限の介入を実施すると宣言したことで、スイスフランの独歩高を阻止したそうですが、日本の場合、主要通貨の一翼を担っているだけに、このような為替介入ができないということがネックになっています。
(注)野口悠紀雄、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問。


2012年1月20日金曜日

気温上昇は本当

私は趣味として、登山やトレッキングをしているついでに写真を撮っています。2009年と2011年に北海道へ行き、登山もしくはトレッキングをしました。たまには息抜きもいいと思いますので、今日は写真をアップしてみます。すぐ下の写真が北海道ウトロ付近から望む知床連山で、2009年1月下旬に撮ったものです。前日の気温はかなり下がったものの、トレッキングの日は天気となり、美しい山々と姿を写真に収めることができました。

 もう一つの写真は、2011年10月下旬に北海道最高峰の旭岳頂上から望む黒岳付近を撮ったものたです。当初は10月25日の予定でしたが、天候が荒れるという天気予想があったため、10月27日に変更、無事登頂成功、ピーカンの下で気持ちのいい登山ができました。本当に晴れた日なら、旭川市内も一望できるそうですが、私が思うに標高1500m付近に厚い雲があり、残念ながらベストなシチュエーションにはなりませんでしたが、黒岳、トムラウシ山など名の知れた山々を直に見ることができて感動しました。当日の気温は、旭川市内で氷点下になる旨予想されていましたが、実際には市内でプラス5度C、リフトの駅(標高1500m付近)で氷点下1度C、山頂でマイナス5度Cくらいでした。もっとも、登山の途中で10mくらいの風に吹かれましたので、その時は本当に寒いと感じ、一時は断念することも考えました。もっとも、旭岳の場合、中腹くらいから山頂を直接見ることができ、雪が舞っていなければ、大した風ではないとのこと、ツアコンの人に教えていただきました。
 私は、岡山県在住ということもあり、鳥取県にある大山は年に2〜4回程度登ります。あと、四国の最高峰石鎚山も5回ほど登頂した経験があります。もっとも、2つの山の頂上の標高はともに2000mを切っており、今回旭岳の登頂で初めて2000m超の山に登ったことになりました。今年はさらに高い山を挑戦してみる予定です。
それでは、経済の少しばかり話題を戻します。気温の変化は経済活動に大きな影響を与えます。わが国の場合、一般的には夏が暑く、冬が寒いと景気にとってはプラスであるといわれています。原因を詳しく調べたわけではありませんが、ストーブやエアコンなど冷暖房器具、衣料品などの販売が好調になるからだと思います。そこで、行ったことのある北海道のウトロと旭川市内の平均気温の推移をグラフにしてみました。グラフを見る限りでは、1990年前後が高かったことはいえます。それと、2009年の例外を除いて、ウトロよりも旭川市内の方が気温がやや高くなったようにみえます。推測ですが、海岸沿いにあるウトロの方が海の影響もあり、気温の変動が緩慢なのではないでしょうか。本来は、長期データを用い、統計的な処理をして、結論を導くものですが、切りがないので、今日はこの程度でやめておきます。
 2011.1.14日の報道番組で気温に関する面白いことをキャスターが語っていました。今年の冬が寒いのは、温暖化減少に伴って、海流の流れが遅くなっているからだそうです。これを裏付けるデータがほしいですね。

2012年1月19日木曜日

軽自動車に言及、TPPで思わぬ影響

先日、『ニュージーランドに一言』というブログ(2011年12月25日公開)で、ニュージーランドの乳製品の輸出事情を書きました。わが国がTPPに参加することで、乳製品価格が下落、家計のコスト削減につながると思って喜んでしまいました(注)。もっとも、その時引用した記事には医療問題に関するものがありました。米国式の医療制度が加盟国全体に強いられることが記述されており、少なからずマイナスの影響があることを認識、手放しで歓迎できないことがわかりました。今日は、TPPに関して、家計に直撃する要求が、米国からされる可能性がある旨の記事が、2012月1月15日付日本経済新聞掲載されていましたので、早速引用させていただきます。記事は、日本の「軽自動車」に関するものです。以下記事引用。
 『米通商代表部(USTR)は13日、日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に関する米業界団体からの意見の公募を締め切った。団体からは日本の交渉参加を支持する声が多かったが、市場開放の促進を求める要望が目立った。米自動車大手は日本の交渉参加に反対意見を表明し、日本独自の軽自動車規格の廃止を求めた。(中略)
 一方、米自動車大手3社(ビッグスリー)で構成する米自動車貿易政策評議会(AAPC)は、自動車市場の閉鎖性を理由に、日本のTPP参加には「現時点では反対」と表明。日本独自の軽自動車規格について「優遇措置はもはや合理的な政策ではない」「日本メーカーだけに恩恵がある」とし、廃止を主張した』
 確かに、軽自動車規格は、日本独自の規格です。私としては全く認識がなかったのですが、日本の自動車産業が脆弱だった時に、通産省(現「経済産業省」)がつくった究極の非関税障壁です。現在、私が乗っている自動車も軽自動車です。自家用の乗用車タイプですので、年間の軽自動車税は7,200円で済みます(自家用の貨物タイプならば4,000円です)。一方、これが軽自動車以外ならば、税額は、自動車の種類、用途、排気量などにより決めらます。グリーン化税制により排出ガスや燃費の性能に応じて、税額が変動する場合がありますが、一般的には排気量1リットル以下29,500円、1リットル超1.5リットル以下34,500円、1.5リットル超2リットル以下39,500円となっています。軽自動車と比べて、小型車、普通車の税額はかなり高いものとなっています。
 上図は、わが国の乗用車生産の推移を表しています。トラックを含めて、2010年は774万台にとどまっており、かつて国内生産1,000万台を誇っていた時代が懐かしく感じます。この中で、乗用車生産に占める軽自動車の割合がが2009年に大きく上昇していことがわかります。リーマンショック後、小型車、普通車が欧米を中心とした輸出市場が低迷したことに影響を受け、大幅に減少したのに対して、国内市場向けの軽自動車販売が安定していたことに起因するものです。
 私は、軽自動車に対して2つの考えがあります。一つは、日本の狭い道路事情を考えた場合、小回りのきく軽自動車が適していること、もう一つは、国内向け、海外向けに2種類の製造ラインを作らなければならなく、メーカーにとって負担になることです。どちらがベストなのか、今のところはっきりしませんが、外圧に屈して軽自動車を一方的に廃止するということは避けるべきです。製造ノウハウなど蓄積された技術は多いですし、未来世界を描いた映画に登場する自動車は日本の軽自動車のスタイルそのもののケースが多いからです。じっくりとした議論が必要とされる分野です。
(注)これには一定の留保事項があります。なぜなら私は毎年北海道へ自然探索の旅をしているからです。疲 
  弊する北海道の酪農現場を直に見ており、関税の撤廃もしくは引き下げという事態となれば、個別の所得補  償制度を導入し、酪農業者の雇用を維持するべきだと考えています。

2012年1月18日水曜日

米国株式指数と美人投票

将来の株式相場を予想することはできるだろうか。現在の株価が高いのならば、今後下落するであろうし、安いのならば今後上昇する可能性は大きくはなる。しかし、今の株価が高いのか、安いのかを決める基準に確固たるものはない。確固たるものがあれば、株式投資で儲けることは容易であろう。しかし、現実にはそのような基準は存在しない。仮に存在するならば、誰もが同じ行動をとることによって、株価の水準は下方もしくは上方へとオーバーシュートすることとなる。例えば、確固たる基準からいって株価が今安いのならば、株式を売る市場参加者は全くおらず、売買は成り立たないからだ。結局、買い気配で市場は終了してしまうであろう。
 投資家それぞれに基準とする株価があるからこそ、株式の売買が成立するのであって、将来に不確実性があり、かつ個々の市場参加者の投資スタンスに相違があるからこそ市場での価格形成が安定するのである。これに、ポートフォリオで運用している年金基金などが加われば、ポートフォリオに起因する株式の売買が自動的に発生するため、市場はさらに安定する。市場参加者には、一般的に投資家(インベスター)、投機家(スペキュレーター)、裁定取引者(アビトラージャー)の3種類がいる。個々に抱いている市場感やポジションが確実に異なることで、市場の厚みが増し、さらに株式市場は安定するのである。
2012.1.13付報道の『ワールドビジネスサテライト』(東京テレビ系)で、米国市場の株価に関するコメントがありました。大まかな内容は、「米国の株式市場は1月に上昇すると通年で上昇する可能性が高い」とのことです。早速、調べてみたのが右の表です。2000年以降の11年のうち1月の騰落と通年の騰落が一致したのは、8年であり、かなり高い確率だと思いました。参照期間をより広くとれば、統計的な有意をチェックすることができるかもしれません。さらに、報道でも指摘していたのですが、米大統領選のある年は、一致する可能性が高いそうです。因に、2000年、2004年、2008年が米大統領選があった年です。なんと、全ての年で騰落が一致しています。驚きです。2011年末のNYダウ工業株30種の終値が12,217.56ドル、2012月1月12日(ブログ作成時の最新のデータ)の終値が12,422.06ドルで、今年は200ドルほど上昇しています。そして、今年は米大統領選ですので、このままのペースでいけば、通年でプラスとなるかもしれませんね。
 これは株式のテクニカル分析の一種と考えてもいいです。株式市場で形成する価格でもって、将来の株式市場を予測するというもので、手法自体は数多いのですが、私の知っているのは限られています。知っているものを敢えて上げるとしたら、ゴールデンクロスとデッドクロスです。前者は短期の移動平均が長期の移動平均を上回ったポイント、後者は短期の移動平均が長期の移動平均を下回ったポイントをそれぞれ指します。前者が購入のタイミングで、前者は売却のタイミングになります。面白いのは、一部の市場参加者がこの指標を参考にして投資スタンスを決めていたのならば、有効かもしれませんが、全ての参加者がこのタイミングで売買したのならば、株価は不安定となり、やはりオーバーシュートすることとなり、指標自体の有用性はなくなります。
 報道された時、これはケインズのいう「美人投票」に近いものだと感じました。美人投票は、ケインズの『一般理論』(注1)が参考になりますが、今は手元にないため、野村證券のホームページ(注2)に掲載されているものをそのまま引用させていただきます。以下引用文。
 『有名な経済学者のケインズは、玄人筋の行う投資は、投票者が100枚の写真の中から最も容貌の美しい6枚を選び、その選択が投票者全体の平均的な好みに最も近かった者に賞品が与えられるという新聞投票に見立てることができるとした。 各投票者は、自身が最も美しいと思う写真を選ぶのではなく、他の投票者の好みに最もよく合うと思う写真を選択しなければならないことを意味する。何が平均的な意見になるのかを期待して予測することになる。 株式投資に関しても、投票者(=市場参加者)の多くの人が、容貌が美しいであろうと判断する写真を選ぶことが有効な投資方法であるということ。
つまり、経済のファンダメンタルは度外視して、米国の1月の株価の騰落と通年の騰落が一致するということだけに注目し、それを市場参加者全員が知ったならば、株式を購入する投資家が増え、その結果、株価は上昇することになるをなるのです。とりあえず、今年は米大統領選挙に当たる年です。今月の米国株式市場の動向に注目したいと思います。
(注1)J.M.ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』、塩野谷祐一訳、東洋経済新報社、1983年。
(注2)野村證券ホームページ『証券用語解説集』の「美人投票」。



2012年1月17日火曜日

スマートフォンの興隆

私は、スマートフォン(以下スマホ)を2009年12月に初めて手に入れました。それまで、従来型の携帯電話も持っていない生活でした。しかし、スマホ導入後は、生活スタイルそのものが一新、パソコンの使用頻度が低下する一方で、スマホのウエイトが飛躍的に上昇しました。スマホの利便性は、外へ持ち出すことが手軽であることは言うまでもありません。でも家にいても便利な専用のソフトを使用することでパソコンなしでも素早く、円滑に適切な情報へとアクセスできる環境が整っているからです。今や、私の家ではパソコンよりもiPod(Wi-Fiの接続環境があるため)、iPhone、iPadの稼働率の方が高くなっています。 
 私のネックは、iOSの端末ばかりで、アンドロイドの端末がないことです。世界でのシェアでもアンドロイドの躍進が目立ち、iPhoneのシェアはどんどん低下しています。米Google社の開発能力はすごく、2年も経っていないと思いますが、私が知っている限りではAndroidOSのバージョンは1.6→2.x→3.x→4.xと矢継ぎ早にアップされています。因に、バージョン3.xはダブレット型端末用のOSで、4.xからは携帯端末とダブレット型端末のOSを統合するとともに、ドュアルコアのプロセッサーに対応しているとのことです。ある調査によれば、米Google社の社員は、労働時間のうち2割を自分の研究活動に費やさなければならないそうです。この研究活動が原点となり、新たなサービスにつながったというケースも多いそうです。Google恐るべしです。
2012年1月15日の日本経済新聞社朝刊に『家電量販店、スマホに活路』という見出しの記事が掲載されていました。以下引用文。
『家電量販店各社がスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の販売を強化する。エディオンは体験型売り場の設置店舗数を今秋まで3倍に増加。ヨドバシカメラやコジマも携帯電話売り場を広げる。スマホがけん引する形で、各社の携帯電話売上高は拡大中。主力だった薄型テレビは販売台数の大幅な減少が見込まれており、スマホを収益の柱に育てる』
この記事に、面白いデータが記載されていました。端末本体の粗利益率は10%程度ですが、大半の顧客が2〜3個程度の購入、これらアクセサリーの粗利益率は3〜4割と端末本体よりも高いということです。
ここで、米Apple社に関する記事がありましたので引用します。シェアが低下しているものの、iPhoneの影響力は依然として絶大です。iOS5.1やiOS6の噂も出ているようですし、今春にも次期タブレット端末であるiPad3(仮称)の発売されるようです。2012年1月15日日本経済新聞朝刊に『米アップルが部品調達先公表』の見出しで米Apple社に関する記事が掲載されていましたので引用します。
『【ニューヨーク=共同】米アップルは13日、部品調達や生産委託にかかわる世界の主な156社の企業名を初めて公表した。日本のソニーやシャープ、東芝、パナソニックのほか、韓国のサムスン電子、LGグループ、米インテルなどがならんだ。
携帯電話iPhone(アイフォーン)や多機能端末iPad(アイパッド)向けに大量受注が見込めるアップル製品への関与は、供給側メーカーにとって重要。
これまで調査会社の分析による推定であったが、アップルが公式に認めた。
日系ではほかに、セイコーエプソンやエルピーダメモリ、TDK、ローム、村田製作所、旭化成なども名を連ねた』
これまで秘密扱いとなっていた部品の供給先が公表されたわけです。米Apple社の意図は分かりませんが、以前、同社の部品調達が独特である記事を読みました。他の企業が部品を買いたたく傾向がある一方で、同社は他の会社よりも高く買う代わりに、ロットや納期、品質などに対して、とてもシビアな要求をしてくるそうです。

 左図は、米Gartner発表のメーカー別携帯電話端末の世界シェアです。2011年第1四半期のデータですので、現在は大きく変動していると思いますが、グラフから読み取れるのは、依然としてNokiaのシェアが高いことです。途上国では、従来型の端末が主力であり、スマホ等の高機能端末へのニーズが低いことが原因であると思います。Samsung社が生産するアンドロイド端末であるGalaxyが米国でシェア1番となっており、通年では同社がNokiaを上回っている可能性が高いです。

2012年1月16日月曜日

ユーロの激しい下落

ユーロの動揺が激しいです。私もまさか1ユーロ=100円をあっさりと割り込むとは予想していませんでした。そこで今日は、ユーロについて書かしていただきます。日本経済新聞2012.1.11付朝刊に、ユーロに関する記事がありました。題目は『ユーロに不安、逃げるマネー、売越額が2週間連続最高/円・ドル上昇』です。以下引用。
『ユーロからドルや円への資金流出が止まらない。外国為替市場ではユーロは対円で約11年ぶりの安値を連日更新。欧州債務問題の長期化でマネーが欧州から逃げ、これまでユーロを買っていた国内の個人投資家の売買も変わってきた。欧州では今後、重債務国の国債入札や重要会合が目白押し。不安心理から市場でユーロ先安感がくすぶっている。
ヘッジファンドなど投機筋の動向を映すシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物取引でユーロの売越額は3日時点で約174億ユーロとなり、2週連続で過去最高を更新した。一方、円の買越額は7060億円と、前週(昨年12月27日)の2.5倍へと急拡大した。安値圏のユーロから高値圏の円に資金が流入するのは市場のリスク回避姿勢を反映している』
 上記で、記述されているのは、主に投機的な資金の流れであり、実需に伴った取引はどの程度を目指しているのかが気になるところです。そこで、ユーロ相場によって影響を受ける有力企業の代表格であるキャノンが想定しているユーロ相場をチェックしてみます。同社の2011年10月25日発表、2011年第3四半期決算説明会の資料によれば、11年第4四半期のユーロの想定相場は1ユーロ=105円で、ユーロに対して1円の円高で売上29億円、営業利益17億円減少すると予想しています。因みに、米ドルの想定相場は、1米ドル=77円で、米ドルに対して1円の円高で売上52億円、営業利益24億円の減少としています。一見、米ドルの影響の方が大きい気がしますが、それぞれの為替相場の水準が違いますので、詳しい影響については弾力性を計算する必要があります。
グラフは、対円、対ドルのユーロ相場を表しています。円独歩高という状況ではなく、ユーロの独歩安という状況になってきました。そして、ここで実需に基づくユーロ相場はどの程度なのかを引き出す上で重要な記事が、『週刊東洋経済』2012.1.14号に掲載されていましたので、そのまま引用します。題目は『10年ぶりのユーロ100円割れ、輸出企業の実需売りが下落圧力』です。以下引用。
『実需面でもユーロには下落圧力がかかっている。「100円割れへと下落していく過程で日本の輸出企業の多くは、リスクヘッジのためのユーロ売り予約を入れていない。100円割れとなってようやく動き始めた」(高島修・シティバンクチーフFXストラテジスト)からだ。こうして実需の売りがユーロ相場を押し下げていくと見られ、1ユーロ=95円前後まで下落する可能性は十分にある。
11年12月以降105円と見ているトヨタ自動車をはじめとして、日本の輸出企業の多くは100円台をユーロ想定レートとしている。キャノンが年間で1円の対ユーロ円高で50億円強営業利益が減少するなどドルほどでないにせよ、ユーロ安は輸出企業の業績の足を引っ張る。欧州の景気減速と合わせ、二重の打撃となる』
投機的なユーロ売りは、最終的には反対売買による差金決済となる。従って、過剰なユーロ安が投機筋の行動により招かれたものならば、ある程度の水準になれば、利益確定のユーロ買いが発生する。しかし、投機的なユーロ売りに、実需のユーロ売りが加われば、ユーロ底割れという事態を招くかもしれない。因みに、Webでの情報で、紙ベースの資料ではないのですが、対円ユーロ最安値は、2000年10月26日の1ユーロ=88.96円だそうです。年度内にも、最安値を更新するかもしれません。

2012年1月15日日曜日

ユーロ加盟国の国債格付けの格下げ

予想はされていましたが、ついに米格付け会社によるユーロ圏9カ国の国債格付けが引き下げられました。2012年1月15日付け日本経済新聞朝刊の『欧州危機対応に警鐘、仏など9カ国格下げ』の見出しの記事がトップになっていました。昨年12月のEU(欧州連合)首脳会議で包括的な合意がなされたものの、対応が後手に回っていることが問題視されています。今後もECB(欧州中央銀行)、IMF(国際通貨基金)の資金力に危機対応に頼ってしまっている綱渡りの状況が続いくとしています。以下記事引用。
 『ユーロ圏には不吉な「13日の金曜日」だった。米大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が昨年12月5日に格下げ検討を表明し、「Xデー」がいつかと市場関係者は気をもんでいた。発表直前の格下げ観測を受け13日の欧米株式市場は下落、ユーロにも売りが広がった。
 フランスとオーストリアは最上級格付を失い、ユーロ圏で「トリプルAクラブ」の国はドイツなど4カ国に減った。その影響は各国が共同で保証する安全網、欧州金融安定基金(EFST)が出す債券の格付けや調達金利に及ぶ可能性がある。EFSTは高い格付けの国が低い格付けの国を支える仕組み。ユーロ圏全体の信用が下がればそれも難しくなる』
 特に、厳しさを増しているのは欧州の金融機関である。ユーロ圏の国債を大量に保有している欧州の銀行が、資金ショートを防ぐため、銀行間で短期の資金を調達しようとも、貸し借りがしにくくなっています。このこれには、欧州の銀行が預金ではなく、債券発行等による資金調達の比率が高く、かつオーバーローンであるケースが多いことが背景になっています。また、資金余剰となっている銀行も、リスクの高い銀行への貸し出しを抑制、低利でも安全なECBに預金するという行動をとっている。結果、資金不足を銀行は、ECBの特別措置に基づいた1%の低金利の融資を受けることとなり、欧州の金融は事実上ECBの管理下に入っているという状況です。
 上記の表は、日本経済新聞社に掲載された表に、S&Pのホームページからのデータを付け加えたものです。英国、カナダ、オーストラリアが依然としてAAAの格付けを得ているほか、ユーロに加盟していない北欧のノルウェー、スウェーデン、デンマークも同様です(因に、ギリシャはCCの格付けで敢えて表に入れていません。現時点でのユーロ加盟国は17カ国ですが、ギリシャの記載がないため、16カ国のみの表示になっています)。BB+の格付けから投資不適格となります。つまり、現時点でキプロス、ポルトガル、ギリシャの国債が投機的水準となっています。特に、イタリアの2段階の下げは厳しく、イタリアの動向次第では、ユーロ危機による世界経済への打撃は大きくなることが予想されます。
 週明けのユーロ相場が気になるところです。1月13日の米国の株式市場はユーロ危機に嫌気を示し下落しました。週明けの日本の株式市場は、前日のNYでの株安及び円高の進行という2つの要因のため、下落する可能性が高いのではないでしょうか。

2012年1月14日土曜日

牛丼の原価計算

財政や金融など難しいことばかり書いていると負担が大きいので、今日は週に一度はお世話になっている牛丼について綴ります。私が毎日通勤している途上には、大手牛丼チェーンの3つの店舗があります。具体的には吉野家(吉野家の「吉」は性格にいうと下の棒の方が長い「吉」ですが、フォントにないので「吉」と書きます)、松屋、なか卯がそれぞれ1店舗ずつあります。
 なかば習慣化していますが、各々の店舗内を少しばかり覗き、お客さんのはいり具合をチェックしています。また、実際に店舗を利用する時は、従業員の対応や牛丼の味(煮すぎではないか、具材の配分は適切かです)、そして汁の入り具合を細かくチェックしています。汁の入り具合と書かせていただいのは、私は「つゆだく」の牛丼が大嫌いです。一時期、ある牛丼家に入ると、そこの店長らしき従業員が盛った牛丼が、いつも「つゆだく」となっており、辟易したという経験があります。
 牛丼は私が大学時代からの長い付き合いです。初めて牛丼を食べた時、その味に感激しました。今は、年をとったせいなのか、それとも競争激化の中で牛丼チェーン店が質を落としているのか、それとももっと美味しい食事を知ってしまったのかどうかわかりませんが、最近は味に対して感動をすることは余りありません。もっとも、定期的に行われているセールで、たまたま牛丼並盛りが280円の時に店舗を訪れた時には、その安さに感動します。この感動するかどうかの基準となるのは、大学時代よりも安い価格で提供しているかどうかです。
 ここで『週間ダイヤモンド』2011.11.26号に、米国牛の輸入が緩和された場合の牛丼の粗利の変化に関するシミュレーションがありましたので、引用させていただきます。
図は、PowerPointで作成したものを、jpegファイルに転換、貼り付けたものです。久しぶりのPowerPointです。Mac版の2011を使用しましたが、以前のウィンドウズ版の2007より使い勝手が良くなっています。牛丼の定価が320円であること、粗利が40%であることなど計算前提に粗さがありますが、根拠となるデータがきっとあるのでしょう。上図は、米国産牛肉の輸入緩和措置があれば、牛丼の並盛りの粗利は192円→213円へと増加することを示しています。因みに、牛丼並盛り320円は、少なくとも吉野家ではありません。吉野家の並盛りは380円ですので、対象はゼンショーHD(なか卯、すき家)、松屋HDのものです。
 実は、私は吉野家HDとゼンショーHDの株主です。牛丼への思い入れは大きく、結果、株主になった次第です。ところで、私の周囲では、知らない会社の株式に投資し、利益が出たら売却するという投機家的な行動をする人々がやたら目立ちます。やはり、個人投資家の基本スタンスは、投機的な売却は控え、長期保有による運用だと考えています。いずれのスタンスにせよ、会社が倒産した場合、損失が出ますが、自分が愛用している製品や、日々食している牛丼を提供している会社なら、失敗しても愛着がある分、許せる気がします。もっとも、この前提には、損失が余り大きくないという条件があります。つまり、一つの銘柄に集中して投資するのではなく、ポートフォリオを組んで投資をすることが大切ですね。

2012年1月13日金曜日

設備投資の投資収益率の低下

昨日、引用した藻谷(2010)にここ数日のブログの中で自問自答していた問題が適切に記述されていた部分がありましてたので、早速引用させていただきます。引用箇所は、第7講の『内需がなければ投資が腐る』のパラグラフです。以下引用文。
『マクロ経済学では、貯蓄は投資の源泉です。高齢者が死ぬまで貯蓄を抱え続けても、よしんばそれが株価下落や為替変動で目減りしたとしても、貯蓄は債券、株券などの購入を通じて投資側に回るので、その投資を受けて経済は拡大する。だから問題はないか・・・・というわけですね。
実際問題、日本の投資は海外、特にアジアで現地の経済を急拡大させました。シンガポールの一人当たりGDPが日本と同等となったのも日本の投資なしでは考えられません。ですが国内への投資は同じようなペースで日本の経済を拡大させたでしょうか。いいえ、この10年以上、名目値で日本のGDPはほとんど変わっていないのです。つまり総じて、投資に見合ったリターンが上がっていない(投資収益率が極めて低い)ということになります。
何故でしょうか。すでに何度も触れたように、生産年齢人口=旺盛に消費する人口の頭打ちが、多くの商品の供給過剰を生み、価格競争を激化させて、売上を停滞ないし減少させてきたからです。そういう局面では、生産能力増強投資はもちろん、新製品開発投資であっても価格転嫁が困難です。つまり投資収益率が低くなります』 
この引用は、ここ数日悩んでいた問題を解決してくれる糸口となります。これは企業のトップにより決断された設備投資が上手く機能していないことを意味しています。加えて、貯蓄性向が高い中で、投資を行った場合、それから得られる乗数効果は低下することとなる。消費性向をc(0<c<1)、投資をI、所得の増加をΔYとすれば、乗数効果は以下の式により示される。

                 ΔY=I/(1-c)

 これは、一単位の投資が増加すれば、それ以上の所得増をもたらすことをしめしている。昨今、高齢化に伴い家計の貯蓄率が低下していることが指摘されている。ならば、投資の乗数効果が高まっているのではないかと考えるはずである。ここで、投資のもう一つの面、つまり資本ストックの蓄積という面を考慮すれば、問題は複雑化する。右図は、設備投資の結果蓄積された民間部門の全産業ベースの資本ストックと名目GDPの関連を図示したものである。資本ストックの蓄積がどんどんと進む中で、名目GDPの成長がほとんどないことは、設備投資の投資収益率を低下させている。あげくは過大な減価償却費の増大により、企業利益が圧迫、新規の設備投資が全くできない状態になり、最終的には雇用者所得の減少へと波及することとなる。よくわからないが、所得の減少、高齢化を原因とし、家計の貯蓄率が低下している。名目GDPが増加しない結果、設備投資の投資収益率の低下している。資本ストックの過大な蓄積による減価償却費の増加し、企業の内部留保の増加する一方、企業の利益率が低下しているようだ。これらの要素がリンクしながらブラックホールのごとく日本経済が収縮してしまっている気がします。
最後に、藻谷(2010)の同じパラグラフの最後の部分を引用します。
『投資があれば経済が拡大するというマクロ経済学の定式?は、この「投資が腐る」という、市場経済の現場では当たり前に起きている現象を勘案していないです。投資額が永遠不滅に目減りしないのであればよかったのですが、現実には投資の時価は売上の状況によって柔軟に上下します。そして投資の時価の減少は、その分だけ経済を縮小させることとなります。投資がなければ経済が拡大しない(投資は成長の必要条件)というのは事実です。ですが、投資さえあれば経済は拡大する(投資は成長の十分条件)というのはとんでもない間違いです』
私は、この意見に賛同します。世界経済と比して相対的に小さくなった日本市場で、重複した部分での競争は投資収益率の低下を招きます。つまり、「腐った投資」です。例えば国内のテレビメーカーは、パナソニック、ソニー、シャープ、東芝、三菱電機などがあります。自動車でも少なくともトヨタ自動車、ホンダ、日産、マツダ、スズキなどがシェアを争い行ってます。このような状況が続けば、韓国の現代自動車やユーロ安の恩恵を受けている独フォルクス・ワーゲンに負けてしまいます。合併・統合を進める必要があると思います。
(注)藻谷浩介『デフレの正体-経済は「人口の波」で動く』、角川書店、2010年。

2012年1月12日木曜日

景気変動と人口動態

今日は、鳥取県の皆生温泉に来て、ブログの作成を試みます。携帯用のWi-Fiルーターに接続し、Googleにアクセスしているいるところです。接続状況は安定している上、まずまずのスピードが維持できています。非常に快適な環境です。ノートパソコン、特に、このMacを宿泊先に持ち出してネットで接続するということは未体験ですので驚きです。
 行きの電車の中で新書一冊を読み切りました。久しぶりに経済関連の書籍です。書籍のタイトルは『デフレの正体-経済は「人口の波」で動く』(注)です。結論は、日本の景気変動の大きな波の根底にあるのは、人口動態であることです。藻谷は、同書の中で、過去の大きな経済のターニングポイントにも人口規模に比して大きすぎる団塊の世代の存在に起因して発生しているものがあることを指摘しています。面白いと思ったのは、1940年〜50年に生まれた世代が、一般的に一戸建てを欲しがるといわれる40歳代になったのが1980年代後半であり、バブル時期に重なることです。この事が、同時期のバブル経済をもたらした旨を示唆、これは、私に全くなかった視点であり、調べる価値のある記述です。
 以前、実質GDPの項目別寄与度を表したグラフを作成しましたが、今日は、そのグラフの民間住宅投資の寄与度のみを表したグラフを作成しました。グラフから、80年代後半の民間住宅投資の寄与度が如何に大きかったかがわかります。特に1987年度単年ではプラス1.1%の寄与度を記録するなど同時期に土地バブルが発生したことが伺えます。同年の成長率は6%で、今では考えられない水準にまで達しており、民間住宅投資に加え、消費支出、民間設備投資も絶好調であったようです。そして、わが国にとって最悪だったのは、この時期、米国の貿易赤字と財政赤字の拡大が顕著となり、その原因として日本国内の需要不足に伴う輸出超過が問題視されていました。これに対して、わが国も、米国の膨大な双子の赤字は、米国自身の過剰消費による貯蓄不足を原因とするものだと反論してきました。しかし、結局、外圧に屈するという形で、総額で(私の記憶では)600兆円の財政政策を実施することを約束させられました。消費、住宅投資、設備投資など民間部門が絶好調ならば、通常、財政は引き締め気味の施策をとるのが一般的な経済政策です。しかし、わが国は愚かにも、この時期に、寄与度で測って、政府消費支出がプラス0.6%、公的資本形成プラス0.5%という拡張的な財政政策を行ってしまいました。これが致命的となり、バブルが発生、その後の日本経済の凋落を決定づけてしまいました。
 同書は、経済をサプライサイドである人口動態に比重を置いて説明しており、上記のような短期的な政策の失敗があることは根本的な原因ではないという立場をとっています。しかし、私は短期的な施策の失敗が回復を遅らせていると側面も否定できないと考えています。とりわけ、ドイツとの比較です。ドイツは、東西ドイツの統一という大問題を成し遂げ、いまやヨーロッパの守護神になるほど政治的・経済的に繁栄しています。バブル期の日本の失敗は、上記の通りの財政政策だけではありません。ブラックマンデー直前の時期に、米国が、日独米の3カ国による協調的な金融緩和を要求したのに対して、ドイツが断固として反対したことがありました。その後、日本は金融政策が最も効果を上げるという金融の引き締めのタイミングを逸してしまい、バブル崩壊をもたらしたという事実があります。
とりあえず、宿泊先から帰って、人口動態に関するデータを調べてみるつもりです。
(注)藻谷浩介『デフレの正体-経済は「人口の波」で動く』、角川書店、2010年。

2012年1月11日水曜日

ボーイング787就航

全日空が世界に先駆けて導入を決定したボーイング787(ドリームライナー)がついに就航しました。驚くかな、最初の便が、私の生活の本拠地である岡山県の拠点空港、岡山空港でした。たまたまですが、就航前に岡山空港に行く用事があり、駐車場から空港ターミナル方を見ていると、787が駐機しているのに気づき、感動したということを体験もありました。今日は、ボーイング787と、わが愛する全日空について書かせていただきます(注)
 ボーイング787の就航を待ちわびていたのは、私だけではないです。50機導入を決定した全日空ばかりでなく、部品製造を担当する三菱重工業、富士重工業、川崎重工業にとっても朗報でしょう。787では何と約35%の部分を日本企業が受け持つだけでなく、主翼や胴体部などいわば主要部分を製造することになっており、これら企業とって収益にかなりのプラスの影響があると期待されます。この他にも、ジャムコ、パナソニック、ブリヂストンなどの企業が生産に参画しており、ボーイング787が「メード・ウイズ・ジャパン」と言われるのももっともです。
 2012年1月6日現在、860機の受注を世界の航空会社から得ており、安定した生産へと移行できれば、日本企業の享受できる利益はかなりのものになります。また、炭素繊維を多用するなど、日本企業でしか製造できない部品も数多くあり、今までのように買い叩かれるという事態には陥らないと予想されます。上記の企業に挙げてなかったのですが、炭素繊維そのものを製造している東レなど素材を生産する企業も注目されます。特に、欧州のエアバス社も、787に対抗する新型の航空機を開発中であり、その機体にもかなりの部分炭素繊維が使用される予定であり、ますますの需要増が期待できるところです。
 ところで、私は、JALではなく、ANAをよく利用します。岡山空港に初めて就航した東京便がANAであったことが始まりで、密度はうすいものの長い付き合いをしています。ほかにも、年に1度、北海道へ旅行に行きますが、それもANAを利用します。これは、マイレージを貯めだしたのが、ANAからだったこともかなり影響していると思います。でも、私にとって喜ばしいのは、全日空の初代社長に就任した美土路昌一氏が岡山県出身であることです。やはり、私はJALではなく、ANAをずっとパートナー企業として利用し続けようと思っています。
しかし、法的処理により競争相手であるJALの財務状況が好転、全日空は不利な立場に置かれています。また、LCC(ローコストキャリア)の日本進出だけでなく、そもそも存在していたレガシーの海外航空会社と比べても、同社は明らかに高コストであることは否めません。コスト削減に向け、エアバス社のA380を導入するのではなく、燃費効率を在来機種よりも20%も高めた、ボーイング社の787をいち早く導入するなど、全日空はコスト削減に向けた企業努力を着実に行っているようです。
最近の話題では、全日空は自らがLCCの航空会社であるピーチ・アビエーションを設立したり、東南アジアで話題となっているエアアジアと組んで、エアアジア・ジャパンを設立しました。羽田空港の発着便枠の増加や関西空港の有効利用など、わが国にLCCが入り込む余地は十分ある。加えて、47都道府県にほぼ全てに存在する地方空港を積極的に活用するには、LCCの活用は避けられないと考えいます。今後の航空業界は目を離せませんね。
(注)引用は、主に『週間ダイヤモンド』2011.11.19号。

2012年1月10日火曜日

日本銀行による金融緩和

リマーショック、東日本大震災以降、日本銀行は継続的に金融緩和を行っている。毎日新聞2011年10月13日付記事では、以下の引用がありました。
『日本銀行は13日、9月6、7日に開催した金融政策決定会合の記事要旨を公表した。同会合では追加緩和を見送ったが、欧州債務危機への懸念から複数の委員が「事態の展開により先行き金融緩和が必要となる可能性がある」との認識を示し、追加緩和に言及していることが分かった』
日本銀行が金融緩和を実施し、マネーサプライを供給、経済を刺激する方法はいくつかある。そのうち、代表的なのが、基準割引率および基準貸付利率(2006年8月までは「公定歩合」と呼ばれていた)の引き下げ、預金準備率の引き下げ、そして公開市場操作による買いオペです。このうち基準割引率および基準貸付利率、預金準備率の引き下げは、これ以上の引き下げは不可能であることから、金融緩和へと結びつかない。従って、日本銀行が行うさらなる金融緩和とは、事実上公開市場操作による買いオペしかないこととなります。
 そこで、日本銀行は、2010年10月28日に資産買入基金を設置、総額35兆円の枠で、銀行から国債や社債などを購入し、日本銀行券を市中に供給、マネーサプライを増加させる施策を実施しています。その後、総枠は、東日本大震災を受け、11年3月に5兆円増、同年8月にさらに10兆円増やし、現在は50兆円となっている。そこで、この政策により、貨幣供給が実際に大きく増加しているのかどうかの疑問が残ります。
上図は、マネタリーベース、M3の伸び率を示したグラフです。マネタリーベースとは、日本銀行が直接供給することのできる貨幣のことで、現金、日銀当座預金の合計に当たる。一方、代表的な貨幣流通量を示すM3(以前はM2+CDであったが、郵便貯金の民営化に伴いM3となった)とは、M1(現金通貨+預金通貨)、準通貨(定期預金+据置貯金+定期積金+外貨預金)にCD(譲渡性預金)を加えたものです。M3の伸び率は2%前後の伸びを維持する一方で、マネタリーベースの伸び率が大きく変動しているため、結果として貨幣乗数の変動も大きくなっている。貨幣乗数とは、貨幣供給がマネタリーベースの何倍になっているかを示す値で、すなわち中央銀行が1単位、マネタリーベースを増加させた場合の貨幣供給の増加量を示したものです(注)
 このグラフで注目すべきは、2010年後半当たりから、マネタリーベースの伸び率が大幅に増加している一方で、M3の伸びに変動が小さかったため、貨幣乗数が大きく低下していることです。景気後退に伴って、民間の資金需要が減少、日本銀行がいくら資金供給を実施しても、M3は増加しないという状態になっています。つまり、日本銀行はマネタリーベースを制御できるものの、民間の資金需要がなかれば、信用創造の過程が機能せず、貨幣供給全体を増加させることはできないことを示しています。
累積する債務残高に伴い、積極的な財政政策を打てないなか、どうしても日本銀行の金融政策に期待するところがあります。しかし、日本銀行による金融政策にも限界があることをグラフは端的に表しています。
(注)二神孝一・堀敬一著『マクロ経済学』、有斐閣、2009年。

2012年1月9日月曜日

設備投資に変調

設備投資の増加は、総需要の増加に直接寄与するのに加えて、資本ストックの蓄積に結びつき、将来の生産活動にプラスへと寄与する。確かに、設備投資は国民経済にとって不可欠な存在です。一方で、過当競争ばかりに明け暮れ、収益性の低い資本ストックの蓄積は、減価償却費の増加を通じて企業収益を圧迫するなど、決してプラスの面だけではないです。わが国は、現在、設備投資<減価償却費の状況に陥っており、設備投資のあり方、つまり設備投資の質が疑問視されているところです。製造業の設備投資ばかりでなく、電力業界の設備投資は、電力供給を通じて生産活動そのものや生活に直結する問題です。このうち、現在の原子力発電所の稼働率を考えれば、原子力発電に対する過去の設備投資が完全に無駄になっていることを示しています。これは日本経済の成長にとってマイナスであり、減価償却費の増加→電力会社の収益減少→電気料金の引き上げ→生産活動の停滞という経路をたどって長期的に影響を与える可能性があります。原子力発電所の稼働率の低下は、国の原子力行政そのものの失敗であり、結果として、その負担を国民が負うことになるでしょう。
今日の引用は、『日本経済新聞』2012年1月7日朝刊からです。紙面トップに掲載された記事で『携帯3社、1.6兆円投資、スマートフォン通信急増』という見出しです。収益性の低い資本ストックの蓄積は、将来の負担となる旨、上で記述しましたが、設備投資の増加は、現在需要不足に陥っている日本経済にとって景気回復の足がかりになる要素であり(直接的な需要拡大と乗数効果によるもの)、注目したいところです。以下引用文です。
『携帯電話大手が2012年度の設備投資を拡大する。NTTドコモは当初計画に300億円を上積みし、ソフトバンクは前年度比5割増やす見通し。KDDI(au)を加えた大手3社の携帯関連事業向けの合計は1兆6000億円超と、3年連続で1割前後増える。スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の普及に伴う通信量の急増で回線不足への懸念が高まっており、高速基地局や基幹通信網の増強を急ぐ。』
以上の通り、スマホ普及に伴う激増する通信量に対応する設備を整えるための継続的な設備投資は不可欠です。米大手通信会社AT&Tが料金プランを定額制から従量制へと移行しましたが、現在、わが国で最も普及している料金プランである定額制を維持した上で良質な通信環境が得られるならば、消費者にとってプラスです。さらに、この記事には、設備投資の現状を簡潔に説明している部分がありますので、そのまま引用します。以下引用文です。
『通信業界は電力会社と並ぶ民間設備投資のけん引役で、設備投資全体の1割弱を占める。10年度の設備投資は2兆4000億円。携帯3社の投資が約6割を占め、今後も拡大が見込まれる。企業の生産拠点の海外移転加速に加え、10年度で同じく2兆4000億円の電力業界の設備投資は先行き不透明感が強まっている。ほとんどを国内に投じる携帯向け投資の拡大基調は民間設備投資を下支えしそうだ。』
 メーカー間で激戦を続けている韓国の高速ネットの普及率は、わが国を上回っています。国際競争力を維持する上でも、国民一人一人が高速ネットにつながれば、コミュニケーションの場を幅広く提供できるばかりでなく、ビジネスへの応用も十分可能です。通信インフラへの積極的な設備投資は、未来の日本経済とっても不可欠であり、後の人々があれは無駄な投資であったと言うことはないと思っています。右図は、2005年からの民間設備投資を製造業、非製造業別に表したものです。超円高の中、製造業が生産拠点の海外への移転が加速しており、来年度の設備投資は不透明感が高まっています。製造業の設備投資には景気の波の影響を受けやすいという性格を内在している一方で、比較的安定して推移してきたのが、非製造業の設備投資です。景気が失速する中でも、安定して投資をすることで、ビルトインスタビライザーの役目をきっちりと果たし、国内経済の下支えをしてきたといえます。電力業界という、もう一方の軸が揺らいでいる中、携帯各社の投資意欲は、日本経済にとってプラスとなるでしょう。また、電力業界が脱原発を唱え、再生可能エネルギーへの投資を拡大させることとなれば、やはり経済にとってプラスです。電力供給及び通信網は、国民にとって不可欠なインフラであり、国が「コンクリート」から「人」を重視した財政政策へと転換したと主張するならば、通信・電力等への支援を強化しても矛盾はないと思っています。

2012年1月8日日曜日

久しぶりの経済財政白書

以前、論文(むしろレポートですね)を作成する際、引用として『経済白書』(現『経済財政白書』)をよく利用しました。特に、同白書最後についている付録に付された計量分析が私にとって結構勉強になり、計量分析の作成方法をここから学んだともいえます。計量分析に興味を持ったのも、ここからの引用が切っ掛けで、懐かしいという気持ちになります。最近は、写真撮影や山登りなどに力が入っており、経済学に対する情熱がなくなってしまったようです。しかし、今年は違います。このブログの題目を『経済問題を考える』としたこと、毎日欠かさずブログをアップすることを今年の目標にしたことなど、経済学への探求心を呼び起こすことが、今は私の目標になっています。
 昨日、内閣府のホームページからiPadのiBooksにダウンロードした『平成23年度版経済財政白書』の付録データをもとに、グラフを作成してみました。このグラフは平凡なものですが、グラフを作成したツールはかなりのものです。まず、iPadの画面を見て、ウィンドウズパソコンでエクセルを使ってデータを入力しました。次に、マイクロソフトが提供するクラウドサービスであるSkyDriveにデータをアップしました。その後、ブログ作成は、Macを主に使用していますので、MacでSkyDriveにアクセス、Macにインストールされているエクセルを使って、SkyDriveに保存されているデータをダウンロードし、グラフ等を作成しました。そのうち、グラフのみを画像ファイルとして保存、上で表示されているグラフに至っています。iPadの画面を見てでのデータ入力は結構しんどいという感じですが(タップをするとページが変わったり、拡大した画面が急に元のサイズに戻ったりしたためで、iOSの次のバージョンでは「画面固定」の設定ができるようになれば便利だと思いました)、紙媒体を全く使用していないこと、ふんだんにクラウドコンピューター(そもそも、Googleが提供しているこのブログを作成しているBloggerというソフトもクラウドです)を使用していることなど数年前では当たり前ではなかった技術を利用している点で素晴らしいですね。
上記のグラフは、『平成23年度版経済財政白書』の付録に掲載されているデータを加工し 作成したもので、実質GDPの成長率と各項目別の寄与度の推移を表しています。1980年から2011年までの時系列データで、1980年代後半バブル時代の高い成長率と、その後の「失われた20年」時代の低い成長率が顕著に現れています。今回は私自身では全く計量的な分析は行っていません。しかし、グラフをみて、以下のことが読み取れます。期間を通じて成長率は低下傾向にあること、当たり前ですが民間設備投資がぶれが大きいこと、2009年度を除き公的資本形成が2000年度以降全ての年度でマイナスに寄与していること、輸出に依存度合いが引き続き大きいことなどです。外需依存から脱却しようとして提言された『前川リポート』が懐かしいですね。結局、日本は、外需依存から脱却できず、むしろ外需への依存度を高めている気がします。2012年1月7日午前1時16分時点で、1米ドル=77円07銭、1ユーロ=98円07銭まで円高になっています。これでは、欧州の景気低迷及び円高のダブルパンチを受け、依然として続く外需依存の経済体質からみて、成長率にはかなりマイナスに寄与すると思います。週明けの東京株式市場は荒れるのではないでしょうか。
今、12月の米国の雇用統計が発表されたようです。FTを読むと、前月の8.7%から8.5%へと低下、2009年2月以来の低い水準になったことが記述されています。このブログを書いている時点では、ダウは逆に30.58ポイントの下落になっており、別の面で市場関連者を失望させるデータが発表された可能性があります。

2012年1月7日土曜日

電子書籍に乾杯!

毎日、ブログを書いているとどうしもネタ不足に陥ります。ここ20日間のブログでは、雑誌からの引用は多用しました。やや気が引けたのですが、一様、引用元を明確にして記述しましたので、問題はないと思います。ゆはり、一番安心なのは官公庁の資料である白書等からの引用です。今日、本屋さんの白書を置いているコーナーの前で、非常に悩んでしまいました。ここ数週間のことですが、『週刊エコノミスト』『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』などを連続して購入、出費がかさんでいるからです。
 今日も、平成23年度版の『経済財政白書』を購入しなければと思いました。値段は、通常サイズで2,100円、縮刷版で1,680円と内容の割にはリーズナブルな感覚はあります。しかし、今年の目標であるブログ作成のためとはいえ、毎日のおこずかいを節約し、購入できる状況ではないと判断し、その場を立ち去りました。その後、帰宅途上、内閣府のホームページからPDF版をダウンロードし、それをモバイルデバイスにインストール、パソコンの横に置いて、データを参照すればいいと考えが、頭の中に浮かび上がりました。幸い、私は第1世代ですが、iPadというデバイスを持っています。
 普段の生活において、iPhoneやiPodなど小さめのモバイルデバイスを常に手元に置き、ウェブや株価・為替データの参照や音楽・ゲームなどを楽しむというスタイルはとても便利です。いまやiPhoneやiPodのない生活は考えられないくらいです。その中で、割を食っているのが、私にとってiPadでした。家で音楽を聴くにはでかすぎるし、ビデオクリップを観るには、ドットの荒さがかえって目立ちます。ゲームはiPodが小さくていいです。現に、私はAppStoreからiPodにダウンロードしたテトリスや麻雀に完全にはまっています。外へ持ち歩くのは、もっぱらiPhoneです。なぜなら、iPodよりもバッテリーの容量が大きいですし(特に、私の場合、iPhoneのケースがバッテリーを兼ねているというアイテムを持っているためです)、iPhoneには電話機能やデータ通信機能が内蔵しているからです。この機能は、モバイルルーターなどがあれば、iPodでも代用できますが、やはり仕事場に音楽プレーヤーを持ち込むというのは抵抗があります。
 前置きが長くなりましたが、今日、埃をかぶっていたiPadがついに日の目を見るときが来ました。パソコンの左横にiPadを置き、今、ブログを作成をしているところです。先ほど内閣府から無料でダウンロードした『平成23年版経済財政白書』のPDFファイルをiBookにインストールし終わったところです。スムーズに本文が読めることに感動しています。カラー刷りの書籍(もしくはPDFファイル)は、iPadでみると実に綺麗ですね。下の写真がそれです。


 それでは、電子書籍について経済的側面から少しばかり書かしていただきます。米国では、販売数で、既に電子書籍が紙の書籍を上回っているそうです。少なくとも理由は3つあります。一つは、国土が広大であり、単位面積及び人口に比して本屋の絶対数が少ないということです。本屋から遠く離れた場所でも、電子書籍ならば、ボタン一つで購入できるからです(もっとも、米国における都市部から離れたエリアのネット事情は知りませんが)。
 それから、日本語や中国語ような表意文字に対して、表音文字である英語は、本のページがかさばるため、どうしてもスペースとってしまい、特に子供たちが読むには大きく、重すぎるというサイズになりやすいからです。特に、公立に限っての事情であると思われますが、学校教育の場では教科書は大切な存在であり、同一の本が代々受け継がれていくそうです。そのため、日本のように書き込みが許されず、後輩たちに引き継ぐため、大切に取り扱わなければならないのです。そして、最後の理由は、電子書籍のガリバーであるAmazonの存在があると考えてます。Amazonは、電子書籍を紙の書籍よりもディスカウントして販売しています。確かに、配送する手間はありませんし、そもそも印刷するコストを完全に無視することができますので、ディスカウントしても利益は確保できるからです。このAmazonが、Kindle等デバイスを提供し、しかもiPhone、iPad、パソコン版のKindleもあります。そして、同一アカウントならば、どのデバイスで読んでも、「しおり」などの読書記録が完全に同期されるという機能があり、非常に驚いています。この結果、EPUBなどの電子書籍の統一規格が策定され、出版物を作成する環境が整い、電子書籍の分野で日本よりも米国が先行したと思われます。
 我が国では、家電業界と同様に、電子書籍の分野でも、独自規格が乱立し、ビジネスが成立しにくい環境になっています。私が記憶しているだけでも、電子書籍に関わっている企業は、ソニー、シャープ等のメーカーから紀伊国屋、TSUTAYAなど本の販売する側にまで及んでいます。これに、黒船たるKindleが日本の出版業界へと進出することとなれは、さらに利益が出にくいという業態になりかねないです。EPUPのバージョンが3.0になり、縦書きにも対応できるようになりました。独自規格ではなく、日本でも統一規格を早急に策定し、消費者、購読者本位の電子書籍の市場育成が求められるところです。
今日は、文章だけのブログになってしまいました。明日からは、今日、iPadにダウンロードした『経済財政白書』を引用し、カラフルなものにしたいですね。

2012年1月6日金曜日

投資・貯蓄バランス

私は、経済誌というば『週刊東洋経済』『週刊エコノミスト』『週刊ダイヤモンド』の3誌がすぐ頭に浮かんできます。これに経営分野にやや比重が置かれているものの『日経ビジネス』を加えた4誌を読み、かつ日本経済新聞を定期購読していれば、日本国内の経済の動態については大体が把握できると思っています(これはあくまで個人的な意見です)。私は、このブログを書き始めた12月下旬までは、ちょくちょく『週刊エコノミスト』を購入し、私の好きな投資関連の記事をあさっていました。これは、『国債デフォルト』『日本沈没』などセンセーショナルな見出しについつい惹かれてのことで、やや表紙にのせられるいる感は否めません。ここへきて、毎日投資の話ばかりですと、段々とネタが尽きてきます。そこで、バランスをとるという意味も含め、先週の末、まず『週間東洋経済』を一冊購入しました。そして、この一連のブログにも、同誌に掲載されたブラジルに関する記事の一部を引用させていただきました。それでも、目線を変える必要があると考え、今日はなんと『週刊ダイヤモンド』を3冊も購入してきました(同誌を購入するのは数年ぶり、久しぶり過ぎて正確な年数がわからないくらです)。
 衝動買いに近いところもありますが、記事の内容をチェックしていると、まず驚いたのは図表の多さです。しかも、数字入り(つまりデータを加工し、引用することができる)の表やグラフで誌面が埋め尽くされています。ここで、図表等を満載し、よくない意味で、読者の購入意欲を刺激するという編集者の意図があること直感的に感じました。ところが、図表で埋め尽くされている記事の中で、大変興味がそそられる記事があるのに気づきました。それは、経営の話でもなく、投資の話でもありません。その記事は、なんと経済学を勉強したことがある人ならば、知っていなければならない基本的なことであり、かつ現在の日本経済が置かれている状況を簡潔にまとめたものでした。"経済問題を考える"上で大切なことなので、早速に引用させていただきます。引用元は、『週間ダイヤモンド』2011.19特大号の『データフォーカス』という連載記事で、題目は『"双子の赤字"に陥らないために財政健全化と成長戦略の実行を』(注)です。以下引用文です。
『少子高齢化の影響で、貯蓄投資バランスをめぐり、トレンドの大きな変化が始まった。まず、一国全体の設備投資が資本減耗を下回り(国内純投資の符号はマイナス)、純資本ストックは減少に転じた。潜在成長率はゼロ近傍まで低下した可能性がある。次に、国民純貯蓄の符号もマイナスに転じた。民間純貯蓄はプラスを維持しているが、政府純貯蓄の赤字幅がそれを上回った。富の蓄積過程は終了し、取り崩しが始まったのである。一連の動きが2009年に観測されたのは、リーマンショックの影響もあるが、トレンドを分析すると数年先に生じる現象が大きなショックで前倒しされたと推測される。』
次に、民間純貯蓄の運用が、財政赤字(国債)・民間純投資(民間純ストック)・経常黒字(対外純資産)であったのが、2009年からは国債への投資が引き続き持続する一方で、収益性の低い国内純資本ストックが取り崩され、収益性の高い対外純資産へと向かったとしている。そして、この結果が、長期金利の低位安定と円高が続いている原因となっているとのことで、上記の資金循環メカニズムの中で経常黒字が維持されていると(河野)は指摘している。
 ここで注意しなればならないのは、我が国は、国の残高債務が900兆円であるのに対して、民間の貯蓄残高が1400兆円あるから大丈夫だという論調をよく目にすることです。ストックとフローのことをごちゃ混ぜに語っているケースが多いですね。現在の状況が危機的なのは、本来的な意味でのフローの国内貯蓄で、フローの財政赤字や民間設備投資を賄い切れなくなり、どうしても海外の貯蓄(つまり経常収支の赤字)に依存しなければならなくなるということです。そうなれば、国内金利は急上昇し、さらなるデフレと円安によるインフレーションが日本経済を襲う可能性があるからです。これは、債務残高200%超を経験した第二次世界大戦後のイギリスが物語っています。その後の聚落は、サッチャー政権を登場するまで続きました。
 最近、私は経済学の書籍を読むことがなく、新聞の経済欄ばかりで済ましているという生活を日々送っています。この記事を読んだ後、慌てて経済学の入門書を読んで、上記記事の言葉のひとつひとつをチェックしている始末です。やはり、継続的な学問への探求心が必要ですね。
(注)河野隆太郎、BNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト

2012年1月5日木曜日

長期金利の動向

私は少額ですが、外貨建ての債券を持っています。債券と書いたのは、国債以外にも州債、社債などもあるからです。株式と違って、債券の購入はシビアーです。株式は値がいくらでも気にしないでいいのならば、市場からいつでも購入できます。一方、債券は株式と異なり、市場(正確には店頭からです)から一端消えるとなかなか購入できないということです。先日も豪ドル建ての欧州開発復興銀行の割引債(2011.12.7時点、100豪ドル額面=39.47ドル、利回り5.830%、残存16年)を購入しようとしたのですが、何故か躊躇し(欲を出して利回りが上昇すると考えたのかもしれませんね)、翌日以降の購入にしようとついつい考えてしまいました。その考えが失敗を招いてしまったのです。翌日、ホームページをチェックすると、何とその「玉」はなくなっており、愕然としました。それ以降、欧州を中心とした金融市場が不安定化し、豪ドル建て債券の利回りは大幅に低下、購入するタイミングを完全に逸してしまったのです。デイトレーダーが株式で行っていることは、1分1秒が大切です。購入するタイミング、売るタイミングを間違えれば、大損失へと結びつくからです。しかし、私のような投資をするものにとっても債券の購入は厳しいです。機会利益の損失という表面に出てこない損失です。タイミングと決断が大切だということを痛感した瞬間でした。
 また、昨今のギリシャ債務問題を考慮すれば、株式と同様に、債券にもデフォルトリストは存在します。一方で、株式にはない、債券のリスクがあります。それは、再投資リスクです。債券は起債された後、固定化された利子が6ヵ月、もしくは1年に一度支払われます。最近知ったことなのですが、全ての国の国債が6ヵ月ごとに利子が支払われると思っていましたが、何と私が近日知った限りですが、少なくともドイツとフランスの国債は一年に一度の利払いです。そして、米国の場合30年債など超長期債を含めて色々な国によって異なりますが、一定の期間、定期的に利払いがなされた後、償還を迎えることとなります。その時、運良く、別の債券に乗り換えることができれば、何も言うことはないのですが、今のように世界的に景気後退の危機が叫ばれている中で償還を迎えると、たまったものではないです。再投資する先もないし、仮に1米ドル=120円で購入していた債券が償還されたのならば、とんでもない損失が確定してしまうことになります。その点、株式はデフォルトしない限り、再投資のことは気にせず、保有し続ければいいのですから。その点においても債券投資はシビアだと思います。
 ここで、今後の債券の動向に関するレビューが出ていましたので引用します。出所は『週間エコノミスト』2011.12.27号です。以下、引用です。
『欧州債務問題は日本の長期金利にも影響を及ぼしている。だが、欧州問題が深刻化する局面では、日本の長期金利が上昇する場合と低下する場合の両方がある。一概に、欧州問題が悪化すれば欧州債が売られて、日本国債が買われ、日本の長期金利が低下する、とは言えない。
11月下旬には欧州のみならず、世界的にソブリン・リスクが嫌気されたため、日本の長期金利についても、それまでの1%を夾んだ動きから1.05%の水準まで上昇して、レンジがやや切り上がった。
日本国内では年内に消費税引き上げの時期と幅を明記した税・社会保障一体改革の素案が作成される予定である。大綱の決定は年明けとなる見込みだが、消費税引き上げを巡る議論に政治リスクが加われば、長期金利には上昇圧力となろう。足元では金利が低下しているが、1.05%近辺への上昇もありうる。』
 上記の通り、今後国債の利回りの上昇を予測するレビューがありました。Bloombergのアプリによる2012年1月3日17時29分時点で、10年物の日本国債の利回りは0.98%まで下がっているようです。以前、米国と日本の国債利回りの推移を表したグラフをアップしました。今日は、ユーロ圏(エストニアを含む17カ国ベース)の10年物国債の利回りも加えたグラフを作成しましたので、それをアップします。やはり特徴的な動きを示しているのは、米国債の10年物国債の利回りです。2011年1月に4%前後であったものが、その後急低下しているようです。Bloombergアプリの最新のデータでも、2012月1月3日23時16分時点で、1.95%と低位で推移しており、安全資産としての米国債の価格急騰が目立っています。つまり、債券投資の局面がますます厳しくなっていることを示しています。

2012年1月4日水曜日

米国の宗教と大統領選

私は、米国の宗教事情に関心があるものの、知識がないため、今日は米国の宗教にスポットをあててブログを綴ります。米国の宗教=プロテスタント系キリスト教と思いがちですが、カトリックがかなりの割合を占めているのが実情です。これは、ヒスパニック系の流入が背景にあるかもしれませんが、4分の1程度を占めるようです。日本経済新聞2012.1.3付朝刊に、2012年の米大統領選の連載に以下のグラフが掲載されていましたので、そのまま引用します。グラフは、福音派プロテスタント26.3%、主流派プロテスタント18.1%、カトリック23.9%、その他14.9%、特になし・無回答など16.8%となっており、福音派プロテスタントが、主流派プロテスタントを上回っていること、15%近くの人がキリスト教以外の可能性があること、カトリックが主流派プロテスタントよりも多いことなどを示しています。
 宗教分離といいつつも、宗教が少なからず、政治に影響しているということは、世界各国で共通していることです。かつて政教分離を強く主張していたトルコでも、宗教色の強い政党が躍進しており、旧G7の国々の中でも、ドイツではキリスト教民主同盟(この政党については全く知識がありません)、日本では公明党などもある程度宗教がらみの政党ではないでしょうか。ブログを書いていると、余りに宗教に関する知識が少ないことに気づきましたので、ここからは、記事引用とします。引用元は上記グラフと同様です。
『【デイモン(アイオワ州)=中山真】今年秋の米大統領選に向け共和党の候補者選びの幕開けとなる3日のアイオワ州党員集会で、道徳や倫理で特に厳格とされる宗教右派の動向が焦点となってきた。保守的な土地柄で知られる同州はキリスト教右派の「福音派」の影響が強い半面、同派出身の有力候補は見当たらない。アイオワ州の結果は保守票全体の行方をみる試金石ともなる。』
キリスト教右派、「福音派」、保守票など聞き慣れない言葉が乱立してます。この言葉の共通点は、共和党の支持層であると考えてもいいでしょう。共和党は、日本との関係で考えれば、決して悪くはないと思います。過去の大統領の中でも、レーガン、ブッシュ親子の時代は、クリントンの時代のように「ジャパン・パッシング」などという言葉はなかったと思います。しかし、日本人自身にとって馴染みがあるのは、民主党支持者の多い、カリフォルニア州、ニューヨーク州など海岸側に位置する地域であり、共和党支持者の多い内陸部ではないです。確かに、日本の自動車メーカーは、いわゆるバイブルベルトと呼ばれる、保守的な地域にまで、工場を建設、日米の友好に寄与しているといえます。やはり、日本のメーカーは凄いですね。

2012年1月3日火曜日

正月はテレビ三昧

今年の7月24日のアナログ放送の終了を機に、私も薄型テレビを購入しました。購入したのはソニーのBraviaで、当初はテレビのみの購入にとどめました。その後、この機種に、外付けハードディスクが接続できることを知り、2TB(バッファロー製)のハードディスクを5台を追加購入しました。
 東芝製テレビの外付けハードディスクは、テレビ接続のハードディスクからブルーレイディスクへのダビングができるそうですが、私が購入したBraviaですと、そのテレビにしか対応できないとのことでした(つまり、テレビが変われば、録画したものは観られなくなることになります)。これは東芝が優れて、ソニーが劣っているという意味ではありません。ブルーレイと規格競争で負けた東芝が、ブルーレイ推進ではなく、あくまでハードディスクを中心に製品規格を推し進めているのに対して、自らが当初から策定したブルーレイが規格競争で勝ったため、ソニーがブルーレイを中心に製品規格を推し進めている立場の差によるものと考えています。
 それはさておき、それから5ヵ月過ぎた現在、5つのハードディスク全てに番組を録画し、正月は録画した番組を観て楽しんでいます。重複した番組もありますが、あと5台も接続できるのでハードディスクの価格が下落すれば(タイの洪水のせいで現在、価格上昇中)、新たに購入しようと思っています。
 そして、11月に入ってから、また、衝動買いをしてしまいました。上記の外付けハードディスクと同様、ハードディスクの製造が遅滞することから、ハードディスク内蔵のブルーレイレコーダーの価格が上がる、もしくは品薄になるのではないかと考え、1TBのハードディスク内蔵のソニー製のブルーレイディスクを手に入れました。購入した理由にもう一つあり、テレビが安物で1チューナーしか内蔵されておらず、録画している番組を否応なく視聴しなければならないという状況を打開したかったからです。ところが、新たに購入したレコーダーには、トリプルチューナーが内蔵されており、内蔵の1TBのハードディスクは1〜2週間程度で一杯になる次第です。家に帰れば、毎日、毎日ダビングという生活を過ごし、結局、ブルーレイディスクにいくらダビングをしても間に合わないという状況に陥りました。そこで、レコーダーにも1TBの容量ですが、急遽5台のハードディスクを購入しました。内蔵ハードディスクに録画した番組を一挙に外付けハードディスクにムーブし、ダビングのペースを落とすことができましたので、ほっとしているところです。それと、これという番組以外は、DRで録画せず、SRでの録画へと変更したという要因もあります。毎日、ブログとダビングの生活ですが、ちょっと落ち着いたという感があります。
今日は、テレビやブルーレイに関する記述ですので、日本経済新聞2012.1.3付朝刊の薄型テレビについて記述した記事を引用します。見出しは『薄型テレビ、サムスン、日本再参入。来年めどに家電量販に打診』で、ついにきたかという印象ですね。記事本文は以下の通りです。

 『【ソウル=尾島島尾】韓国サムスン電子は2013年をめどに、日本の薄型テレビ市場に再参入する方針を固めた。高画質で次世代テレビとして有望視されている有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)テレビや液晶テレビの高級品を販売する。サムスンは薄型テレビで世界シェア2割近くを占める最大手だが、日本市場は未開拓だった。消費者の選択肢が増える半面、収益悪化に悩む国内メーカーは対策が急務となる』

 確かに、日本国内での競争が激化するものの、消費者は選択肢が増えるというメリットを享受できます。もっとも、一番注目しているのは、サムスン電子が日本の高機能の薄型テレビと正面から対決して、どちらが勝かです。私が購入したテレビは、フルハイビジョンではなく、ハイビジョンです。しかも、画面サイズは26インチで、3Dには対応してません。現在ではもっと安くなっていると思われますが、5万円で購入しました。画面サイズを小さくしたのは、画質レベルが低いyouTubeなどのストリーミングの映像をテレビで観たかったこと、大型のテレビですと、光沢パネルが多く、非光沢がなかなか手に入らなかったことなどが理由です。しかし、驚くべきかな、このテレビはネット対応であることです。そして、ファームウェアのバージョンアップが逐次行われており、その都度、新しい機能が追加されています。これら機能をサムスン電子のテレビが搭載するかは不明ですが、がちで勝負して、かりに日本メーカーが勝利すれば、再び世界へと向けて飛躍するチャンスがあります。一方、価格競争に巻き込まれ、今でも少ない利益が激減し、一部メーカー、特にシェアの低い、シャープ、東芝、三菱電機などが脱落する可能性もあります(ソニーが脱落すると個人的に打撃が大きいので上記3社を敢えて挙げました)。上で挙げた3社が脱落すれば、ソニーやパナソニックにとって有利になります。現に日立がテレビ事業から撤退したようにです。今後の展開に注目したいと思っています。

2012年1月2日月曜日

わが国の投資環境

今日は正月明けで、ビールを飲んでしまたったので、短めのブログで終わらます。できる限り引用等は使用せず、自分が思うことを綴ります。依然、我が国の祝祭日が多いことが、日本経済新聞のコラムに掲載されていました。祝祭日=「市場の休場」ですので、法人や大口の投資家は知りませんが、私みたいな弱小の個人投資家にとっては投資機会の減少を意味しますので、祝祭日は極力少ないにこしたことはありません。今、この瞬間、欧米市場は動いていますが、12月31日に加えて、正月三が日が祭日となっている我が国の市場は休場しています。それで米国の休日を調べてみました。
米国の祭日は、日本とは異なり、慣習や州によって異なりますが、連邦法に基づくという定義ですと、以下で記した一年で10日となります。

 上記以外にも、2月2日(グランドホッグ・デー)、2月12日(リンカーンの誕生日)、母の日(5月第二日曜日)、父の日(6月第日曜日)などがあるとのことです。
一方、我が国の場合はどうなっているでしょう。カレンダーで今から数えてみます。振り替え休日とならないケースもありますが、18日もあります。これは、12月31日など本来の祝祭日でない日も含めての話です。私の記憶がある範囲だけでも、近年、新たに制定された祝祭日は「昭和の日」「みどりの日」「海の日」などがあります。これは、意図的に三連休などをつくり、内需拡大に結びつけようとした国の施策が裏側にあります。土日、祝祭日が休日である私にとって、労働時間が減る意味で望ましいことだという印象もありますが、本来は、企業サイドが積極的に労働者に対して休日を提供し、労働時間短縮を促すという努力を怠ったため、やむを得なく制定されたものだという認識があります。
 長くなりましたが、我が国の投資環境に話を戻します。話は単純です。今、まさに海外の市場は動いているのに、東京株式市場は休日です。現在、Bloombergのアプリで確認できるだけでも、韓国、インド、タイ、ロシア、イスラエル、トルコ、ギリシャ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、ドイツ、フランスなどの株式指数が値動きしているようです。午後11時以降には、米国市場が動き出します。深夜取引、市場外取引などは、日本でも機能していると思われますが、投資金額の少ない個人投資家は、祝祭日に市場で株式を売買することができません。これは、金融行政はより良い投資環境を提供する義務があるという意味で、我が国は他国と比べて劣後しているとことです。また、日本から市場参加者が少ないのをいいことに、シンガポールや米国の日経平均先物を取引する市場にて、日経平均株価がある程度決まってしまうことも意味しています。
 いくら内需拡大が必要だといっても、日本の文化・歴史に根ざさない祝祭日をやみくもに制定するということは如何だということです。金融市場が正常に機能するには、祝祭日は極力少なくし、労働者の休日は、(私が記憶している範囲で、間違いだったらごめんなさい)フランスやドイツで行われているように一定期間取得させていない企業に罰則を与えるという方法が望ましいと思います。ここで一つ訂正したいと思います。米国市場は1月2日は動いていないようです。振り替え休日で休場のようです。

2012年1月1日日曜日

ブラジル経済の動向

私はブラジルの投資信託を毎月累投で購入しています。投資している銘柄は、HSBCのブラジルオープンで、株式投信です。購入を始めてたころ、ブラジル政府は為替取引に対して課税することを表明、その適用税率は、特にブラジルの債券を購入する際に大きく、株式を購入の際は、その半分程度であったという記憶があります。ブラジル経済は2010年までは堅調に推移していましたが、2011年からはやや失速気味であることがグラフからでも読み取ることができます。為替に対する課税を行った結果、ブラジルレアルはかなり下がったと思われますが、一方で、経済成長率が鈍化しているのは、欧州危機に端を発する世界経済の成長率鈍化の影響であると考えられます。そして、レアル安が引き起こしたのが、消費者物価の上昇です。期近のデータでは7%台に突入しているようです。
 ブラジルの為替取引に対する課税は、コーヒー、鉄鉱石、大豆などの主要生産・産出国であり、ドルベースで取引されるこれら商品価格が、ブラジルレアル高により目減りし、ブラジルからみて受け取りの減少へとつながるということが背景にあります。緊急避難的な措置であり、やむを得ない施策であったともいえますが、意図的に為替に介入することは、望ましいとはいえないでしょう。
ブラジルの投資環境の惨状が理解できる記事が『週間東洋経済』2011.12.17に『ブラジル投信バブル、崩壊の危機』(注)という題目で掲載されていましたので、今日はその一部を引用されていただきます。冒頭に、ブラジル投信の動向に関する部分がありましたので、そのまま引用します。
『リーマンショック後、日本株離れが進む中で、ブラジル関連資産に投資するブラジル投資信託(投信)は、別世界のような盛り上がりを見せてきた。2009年1月時点では、純資産合計で5000億円だったブラジル投信は、11年7月に約16倍の8兆円まで膨張。日本で販売されている投信全体の2割弱を占めるまで急成長した。だが、順調に拡大してきたブラジル投信は、突如として嵐に巻き込まれた。今年の夏欧州債務危機をきっかけに基準価格が下落、資金流出に見舞われた。純資産は2割減の6.4兆円まで急減したのだ』
ブラジルレアル、ブラジルの株価指数BOVESPAの下落を考えれば、特にブラジルの株式投資はかなりの損害を出していると思われます。しかし、ブラジル経済は、短期的には足下が揺らいでいるものの、リオ・オリンピックまでの今後の4年以上の年月を考えれば、どうなるのでしょうか。『失われ10年』(悲しいことに、我が国の場合、失われ20年ですね)といわれた南米地域を襲った経済危機が再び到来するのでしょうか。ブラジル沿岸には、掘削技術の進歩により石油生産ができるようになり、現在では国内需要のほとんどを国内で賄っていること、ブラジルの資源を欲しがっている中国の経済規模が引き続き拡大していること、貧富の格差を是正する民主的な政権が樹立、政治が安定していることなど、ブラジルという国の内外の環境は、『失われた10年』当時と比べて格段に、ブラジルにとって有利に動いています。今、短期的ではなく、長期的な視点にたった投資スタンスが求められるところです。確かに、私もかなりの損失を抱えている気がします。気がしますと書いたのは、実は4年後のリオ・オリンピックの開催の日まで累投を続け、その間は残高・損失を一切チェックしないと心に決めたからです。4年後が楽しみですね。
(注)藤尾明彦著