2012年1月29日日曜日

生産と在庫の循環

生産と在庫の循環に関して新たな動きが出ているようです。わが国では、3.11の東日本大震災とタイの大洪水の際、部品供給がストップ、かなり長い期間、生産が滞る事態が発生しました。トヨタ自動車の「カンバン方式」に代表される部品の在庫を極端にまで少なくする生産体制が、日本企業のコスト削減に寄与し、国際競争力を維持してきたといっていも過言ではありません。しかし、昨年起こった部品不足による生産のストップは過去にも経験していることです。私の記憶の範囲では、トヨタ系のある下請け企業の部品工場が火事か何かで生産がストップしたことで、トヨタ自動車本体の生産ラインも停止、トヨタ系以外の部品工場から急遽調達したということがあります。今回も、これと似た事例ではありますが、影響を受けた規模、期間は過去にないものです。日本的経営の一つである「カンバン方式」を見直す時期にさしかかっているのかもしれません。
2012年1月16日付日本経済新聞朝刊に上記の旨指摘している記事がありましたので引用します。題目は『企業の在庫急増、持たざる経営、予期せぬ転換、震災・洪水機に』です。以下引用文。
 『企業の在庫が急激に増えている。昨年11月の在庫水準は前年同月比で8%増加し、1998年3月以来の伸びを記録した。大企業製造業が2010年10月〜11年9月に実施した在庫投資額は約30年ぶりの大きさだ。東日本大震災などで部品不足に陥ったことを教訓に、ぎりぎりまで在庫を絞る「持たざる経営」を見直す機運が出ている。
日本企業は経営効率を高めるため、1960年代以降に一貫して在庫の圧縮に取り組んできた。トヨタ自動車が開発した「カンバン方式」をお手本に、在庫を減らすことを重要な経営目標とする企業が多い。(中略)
在庫圧縮を見直す直接のきっかけは東日本大震災だ。サプライチェーン(供給網)の寸断により部品調達に支障が生じ、自動車などの減産につながった。タイの大洪水も家電の部品不足を招き、企業の在庫戦略見直しに拍車がかかった。』
過去最高の業績を出している米Apple社は、部品の在庫を極力圧縮する日本企業とは全くことなる経営を推し進めていす。同社は、iPhoneやiPadの新しい製品が発表される数カ月も前に部品メーカーに膨大なロットの部品を発注し、発売直前までに数百万台の完成品を準備するシステムをとっています。これは、日本企業が得意とする多品種少量生産とは相対する少品種大量生産の典型的なスタイルであるとともに、日本企業の躍進の中で廃れていった経営システムでもあります。米Apple社が、このスタイルの経営で、何故、今の日本企業では考えられない高い利益率をだすことができるのには理由はあります。つまり、それはAppleの「ブランド力」です。素晴らしいデザインや機能を持った製品を世に送り出し続け、一種、Appleの魔法ともいえる経営スタイルに消費者はとらわれているといえます。
私も、iPhoneを持っていますが、同社の姿勢が反映された素晴らしい製品だと日々感じており、いまだに2世代前の3GSを愛用しています。最新のアンドロイド携帯と比べて、さすがにスピードは遅くなっているものの、主要なアプリはいまだに利用できます。普段使っていて、全く問題なく、フリーズドすることもないです。 
日本企業も、自らの「ブランド力」を高めることで、利益率を高めるというスタイルへと転換するべき時がきたと思います。これまで、大手自動車メーカーなどは、下請けの部品メーカーにコスト削減やら納期やらの負担を押し続けてきたのです。その結果、中小の企業は疲弊し、バブル崩壊以降、労働者の賃金の減少に歯止めがかかっていません。雇用者所得の減少→消費の低迷→生産の低迷→雇用者所得の減少の悪循環をつくり出している元凶かもしれません。
Apple社がブランドを高めるには、10年くらいの年月を要したと思います。日本企業も、同社をまねるだけではなく、同社のブランド力に、日本企業が持っているものつづりの魂みたいなものを融合させることで新たなステップへと迎えることができると考えています。

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