2012年12月5日水曜日

減速する企業の設備投資と限界が見えてきた公共事業によるインフラ整備

 また、痛ましい事故が起こってしまいました。それは、山梨県の中央自動車動の笹子トンネルの崩落事故で、死者9人出す大惨事となりました。この事故は、トンネル設備の老朽化による事故ともに捉えることもできますが、2012年12月4日付毎日新聞朝刊によると、東日本高速道と西日本高速道路は、打音による検査も実施、中日本高速道路は打音による検査を実施していなかった旨の記事が掲載されていました。これが事実ならば、今回の事故は起こるべくして起こった事故ともいえ、中日本高速道路は管理責任が問われることとなります。
 橋りょう、高速道路などといったインフラの老朽化は、わが国特有の問題でありません。世界各国の政府が対応に追われているのが実情でしょう。もっとも、わが国に特有の問題なのは、財政赤字が拡大する中で、新たなインフラ整備だけでなく、既存のインフラの補修費や更新費に回せる資金に限界が出始めていることです。このような事故の再発防止のために、最優先に予算を確保する必要がありますが、この事故の発生は、現場の予算不足という時代の本格的な到来を暗に告げている気がします。

 また、公共事業が景気の底支えをするということはなく、今後の資本ストックの蓄積を左右するのは、民間設備投資の動向です。右図は、内閣府発表の国民経済計算より作成したグラフです。四半期ベースの実質経済成長率(年率)、民間企業設備及び公共投資の寄与度を示しています。景気変動の流れをつくり出しているのは、民間企業設備であることが、図から読み取ることができます。つまり、政府は、規制緩和などにより企業の設備投資意欲を如何に高めるかにウェイトを置いた施策が求められるのであって、債務残高から考慮して、政府自らが公共投資を積極的に行うことは慎むべきです。2012年12月4日のNHKの報道で、2010年度の社会保障給付費が103兆4,879億円と初めて100兆円を上回ったことが明らかになりました(国立社会保障・人口問題研究所発表)。社会保障費など国の義務的支出は今後、幾何級数的に増加する恐れがあり、裁量的な支出である公共投資は極力を抑える必要があるのです。そして、仮に予算が確保できたとしても、インフラの補修費や更新費へと傾注し、事故防止や災害復旧へと備える必要があるのです。


 こうした中で、今後の日本経済を支える企業の設備投資の伸びが鈍化していることが財務省発表の法人企業統計から判明しました。経常利益の伸びも鈍化するとともに、売上高は減少幅を拡大させており、景気が後退局面に既に入っていることを裏付けることとなりました。しかし、衆院選でも、原発再稼働の問題が争点となっているように、今後、安定したエネルギーを如何に確保するかが、わが国経済の最優先課題となっています。そして、再生可能エネルギーなどの分野においては官主導ではなく、民間主導による新エネルギーの開発が期待されており、それには企業による積極的な設備投資や研究開発が不可欠であるといえるでしょう。2012年12月3日付日本経済新聞夕刊に、法人企業統計に関する記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は、『設備投資2.2%増に鈍化。法人企業統計、7〜9月期世界経済の減速で』です。以下引用文。

 『財務省が3日発表した2012年7〜9月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比2.2%増の8兆8062億円となった。4四半期連続で増えたものの、世界経済の減速で先行きは見通しづらく、伸び率は4〜6月期(7.7%)から大きく鈍化した。製造業は減収減益となったが、全産業では経費削減により増益を確保した。
 財務省は「景気が世界経済の減速を背景に弱い動きとなっていることを確認する結果」との判断を示した。シティグループ証券の村嶋帰一エコノミストは「先行きの不透明感で設備投資が先送りされ、強めだった投資計画も今後下方修正される可能性が高い」と分析している』
 ここで、政府の役割は、有効需要創出を目的とした公共事業を推進することではありません。今や累積する政府債務こそが、民間経済主体の期待心理を悪化させる元凶であることを忘れてはいけません。その結果、将来の不安を反映して、家計は貯蓄へと邁進し、デフレ経済から脱することができないことは否定できないでしょう。民間企業も同様のことがいえるのです。明るい未来、開ける未来があってこそ、民間の経済主体が安心して設備投資や消費を積極的に行う素地ができるといえます。経済の軸である消費、そして設備投資の活性化の動向がカギを握るのであって、公共事業が引っ張るということは、財政状況が極度に悪化している今の日本にはあり得ない話です。

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