2012年10月15日月曜日

トヨタ自動車の業績に暗雲、中国リスクとリコール問題

 トヨタ自動車の業績に回復がみられません。確かに、今年に入ってからは販売台数は回復傾向にあるものの、売上高、営業損益ともに2008年3月期をピークに大きく減少、特に売上高の減少傾向は続いており、同社を取り巻く環境が依然として厳しいことが伺えます。そうした中で、顕在化しているのが、他の日系自動車メーカーにも当てはまるのですが、中国リスクです。一方で、販売している台数が他社を大きく上回っていることから、トヨタ自動車だけに当てはまるのが大規模リコールの発生です。

 2012年9月の中国での新車販売台数が発表されました。161万7,400台と前年同月比で1.8%減となり、旧正月がずれた影響で2012年1月がマイナスとなったことを除くと2011年11月以来の減少となったそうです。原因として、景気後退で買い控えの動きが広がっていること、日本車の販売が急減したことなどが指摘されています。1,000万台の世界販売を目指すトヨタ自動車にとって中国市場は魅力的な存在ですが、反日デモと日本製品の不買運動の影響があり、約4万4,100台と前年同月比48.9%減の大幅な減少となりました。他の日系自動車メーカーも、ホンダ40.5%減、日産自動車35.3%減となり、軒並み大幅な減少を記録しており、日中間の領土問題が長期化する恐れもあることから、暗雲が立ち込めています。トヨタ自動車の中国での販売台数は、2011年は90万台弱です。トヨタ自動車の目標を妨げる最大のリスクとなっています。


 そして、もう一つの問題は大規模リコールが連発していることです。2012年10月10日にトヨタ自動車が発表したリコールは、パワーウィンドーの不具合によるもので、以前発生したフロアーマットやアクセルペダルの不具合によるリコールとは費用は少なくて済むとのことです。もっとも、今回のリコールは、世界で14車種・約743万台を対象とするものであり、1回のリコール台数は同社としては過去最大となっています。製品は快適に使えてこそ満足度が上がるものです。そして、使用期間中に満足に使ってからこそ、次も同じメーカーの製品が、消費者によって選ばれるのです。従って、度重なる大規模リコールは、長期的には、同社の販売台数の伸び悩みに影響を与える可能性が十分にあるといえます。

 大規模リコールの背景には、グローバル競争下の中で、自動車メーカーは、コストを下げるために世界規模で部品の共通化を進めていることがあります。部品の共通化による大規模リコールの発生、そしてジャストインタイムによる部品在庫の極端にまでの圧縮により、自動車メーカーの業績及び生産体制の不安定化が露呈しています。右図は、トヨタ自動車ホームページ掲載の売上高と営業損益の推移を示しています。やや陰りがあるものの、米国企業が着実に業績を回復されている一方で、日本企業の代表格であるトヨタ自動車は、依然として業績低迷に喘いでいます。東日本大震災時、タイの大洪水で自動車メーカーの生産がストップしたことは、記憶にも新しいです。それ以外にも一つの部品工場の生産がストップしたことで、トヨタ自動車全体の生産が滞るといったことが過去にも起こっています。同社は、1,000万台の世界販売を目指す前に、ビジネスモデルの再構築が求められているのです。

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