2012年10月22日月曜日

明るさを増す米住宅市場と米金融大手の業績

 米国の住宅着工は、2008年9月のリーマン・ショック前から減速傾向を示していました。この状況をみてか、米金融大手のゴールドマン・サックスが、何らかな金融商品を空売りした結果、サブプライムローンが原因となり、米投資銀行ベア・スターズが経営危機に陥り、最終的にはJPモルガン・チェースに買収されました。その後、リーマン・ブラザーズの経営も悪化、負債総額としては史上最大規模の約64兆円の倒産へと至り、これを期に世界経済は不安定化する事態となりました。リーマン・ショックでゴールドマン・サックスはかなり利益を出しており、今でも世界で最も印象の悪い金融機関の一つであるといえます。加えて、ゴールドマン・サックスは、ギリシャ債務危機の原因となったギリシャ政府による公的債務の隠蔽にも深く関わっているとされており、欧州債務危機の発端までも演出した金融機関として世界で名を知られています。
 もっとも、ゴールドマン・サックスも無傷ではおれず、200ドルを超えていた株価も、期近では100ドルをやや上回る水準にまで下落しています。ダウ工業株30種平均が、市場最高値に近づいている中での同社の株価低迷であり、金融機関の業績低迷が伺えるところです。右図は、2007年1月の水準を100とした場合のゴールドマン・サックスの株価とダウ平均の推移を比較したものです。どの時期を100としてグラフを作成するかにより、印象がやや異なりますが、リーマンシック前年当たりに同社の株価がピークに達してたことから、2007年1月を基準としました。ダウ平均が、リーマン・ショック後の下落を取り戻した段階で、ゴールドマン・サックスの株価は6割程度にとどまっていることが分かります。

 こうした中で、米金融機関の業績を左右すると思われる住宅着工件数が米商務省から発表されました。右図は、2007年9月までのデータしか追えませんでしたが、民間新設着工の推移を表したものです。残念ながら2006年当たりから減少傾向を示していた米国の住宅市場の大きな流れをつかめていません。年間の新設着工は、2005年の206万戸をピークに大きく減少、回復の兆しをみえてきたとはいえ、依然として年率で87万戸程度にとどまっており、米住宅バブルの後遺症が如何に大きかったかがよく理解できます。米住宅市場に関する記事が、2012年10月19日付日本経済新聞夕刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『米住宅市場に明るさ。9月着工4年ぶり高水準/価格底入れ』です。以下引用文。

 『【ニューヨーク=西村博之】米住宅市場に明るさが増している。9月の住宅着工件数は前月より15%増え、4年2カ月ぶりの高水準となった。低金利を背景に価格が底入れした中古住宅への引き合いが増え、欲しい物件を入手しづらくなった買い手が新築物件に向かっている。住宅市場の復調が消費を中心に米景気を下支えするとの期待が高まる一方、銀行の収益にも追い風となっている。(中略)
 FRB統計によると米家計が保有する住宅の純資産残高は年初から半年間で8600億ドル(13%)増えた。この結果、今年前半には住宅ローンの借り手130万人が、ローン残高が資産価値を上回る「債務超過」の状態を解消したという。多くの家計がお金を使いやすくなったのは間違いない。問題は「住宅」の追い風が勢いを保てるか。
 銀行の差し押さえ物件などがいずれ市場に出回る「影の在庫」は住宅の供給全体の6ヵ月分ともされる。これが、上昇の兆しが見える中古住宅の価格を圧迫するとの懸念が強い。
 経済全体に目を転じれば新築住宅の主な買い手となる若年層の失業率は高止まりしたままだ。安定した職がないと、ただでさえ基準を厳しくしている銀行から融資を受けるのは難しい。住宅市場の先行きには、不透明な要素も多い』
 住宅市場の回復を受けてか、米金融機関大手の業績に明るさがみえてきています。特に、米住宅市場の底打ち感から、住宅ローンの新規契約や借り換えが進んだことで、JPモルガン、ウェルス・ファーゴの業績回復が著しいといえます。一方、バンク・オブ・アメリカは、09年に米大手証券会社メリルリンチを買収した際に損失の情報開示が不十分であったことから、株主に対して24億ドルもの和解金を支払った影響が響き、前年同期比で95%の減益となっています。日本との関連では、モルガン・スタンレーの赤字決算です。連結対象となっている三菱UFJフィナンシャル・グループへの影響が懸念されるところです。上表の決算内容をみていると、米金融機関大手の収益状況は、好業績と業績不振という二極化現象が進んでいることが考えられます。

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