テレビを観ていると、中国人の観光客の日本での買いものをする姿が映し出され、その豪快さに驚きを感じることがちょくちょくあります。その対象は、ブランド品、家電製品、はたまた骨董品までと幅広く、札束が飛び交っています。しかし、日本政府が尖閣諸島の国有化した9月以降は、中国人の団体客のキャンセルが相次ぎ、地方の観光地や東京のショッピング街などで悲鳴が上がっています。今、ショッピングを目的として来日していた中国人は、韓国に押し寄せているそうです。
地方では、売上減少に厳しさが増している中、比較的友好関係が続いているASEAN諸国を中心に日本観光のPRを進めています。NHKのニュース報道でも、インドネシアからの観光客を誘致し、富士山ふもとをサイクリングするといったツアーを企画するなど、手をこまねいているだけではないようです。ASEAN諸国は所得水準も高くなっている上、魅力的なのは、その人口規模です。ASEAN加盟10カ国の人口は、中国の約13億人には遠く及ばないものの、域内人口約5億7千万人に達しており、北米自由貿易協定(NAFTA)約4億4千万人、欧州連合(EU)約5億人を大きく上回っています。今後の所得水準の伸び次第では、日本の観光産業にとってきっとプラスになります。現在は、一部の富裕層に限られる日本への観光ですが、これら人々に日本での観光を楽しんでもらえば、次へのステップに結びつくことになるでしょう。
訪日する中国人の激減は、航空業界にも影響を与えています。全日空、日本航空ともにキャンセルが相次いでおり、航空機の小型化や減便を決定、両社ともに「動向を注視していく」とのことです。先日、日本人が暴行にあう事件があったことから、日本からの渡航者も大きく減少すること予想されています。日本企業の間でも出張自粛の動きが拡大しており、日中間での経済交流が、このままでは沈滞する懸念が出てきています。IMF・世銀の総会でも、日本と中国との対立が世界経済に影響を与える恐れがある旨表明しており、速やかなる解決が求められています。中国人訪日の記事が、2012年10月20日朝日新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『中国人訪日、厳しい旅路。観光・小売りに影響』です。以下引用文。
『中国からの訪日客数が9月、東日本大震災前の2010年9月と比べて10.1%減となった。8月まで過去 最高のペースで増えていたが、尖閣問題で団体客のキャンセルが相次いで一転した。10月に入ってからも厳しい状況が続き、観光や小売業界に影響が広がる。日本政府観光局は19日、9月に中国(香港のぞく)から観光や仕事で訪日した人が12万3500人(推計値)だったと発表した。震災後に落ち込んだ11年9月より9.8%増えたが、震災前の10年9月と比べればマイナス。震災前と比較をした場合、減るのは5ヵ月ぶりだ。尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化で、訪日を取りやめる中国人が多かった』
中国側の論者に、日中間の経済交流が冷え込めば、打撃を受けるのは日本であるという考えを持つ方々がいます。しかし、貿易は拡大してからこそ、意義があるのであって、縮小均衡へと向かった場合、世界経済にとってプラスになることは一切ありません。中国本土でスマホの生産を担っている台湾メーカーも、日本から多くの部品を調達し、完成品へと組み上げています。これら部品が調達ができなくなれば、スマホの生産も滞ることを意味しているのです。加えて、中国の景気に直接影響を与える直接投資では、円高を武器に、日本企業は依然として高いプレゼンスを維持しています。2012年9月の金融業を除く中国への直接投資額は、84億ドルと前年同月比と比べて6.8%減少、4ヵ月連続で減少しています。日本からの投資がさらに減少すれば、鈍化傾向を示す中国経済がさらに悪化する可能性が高まっていくだけです。日中間の経済交流は、前進あっても後退させる余地は全くないのが実情でしょう。
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