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2012年9月26日水曜日

日本国債の保有、高まる海外勢のプレゼンス

 新聞等マスコミが、円高の要因について報じる時、その背景に比較的に安全資産とされる円を買って、外貨を売るという動きがあったと説明するケースが多いです。そして、外国勢が、ドルやユーロを売ってし、円を買った場合、何らかな形で、円建ての金融資産が増加することを意味します。それが、国際収支統計上何に該当するのかは分かりませんが、どういった形せよ海外勢保有の円建て資産は積み上がってくるのです。
 日本の場合、長年の経常収支の黒字によって積み上がった外貨準備高などは、米国債で主に運用、現在では外貨準備高は1兆ドル以上にもなっています。しかし、中国の外貨準備高は日本とは比較にならない規模になっています。今やその規模は3兆ドルを上回るまでになっており、そうした外貨準備を中国は、以前は米国債で主に運用していました。しかし、昨今では米国に過度に依存することを嫌ってか、ユーロなどの通貨に振り替えているそうですし、中国による日本国債の購入の動きも、新聞やニュース報道でよく目にします。

 こうした流れの中で、海外勢による日本国債の保有比率が上昇していることが分かってきました。日本銀行発表の資金循環統計では、2012年6月末時点で、過去最高の82兆円にも達してるそうです。特に、ここ数年の海外勢による日本国債の購入の動きは顕著であり、国内勢がむしろ減少傾向を示しているのと対照的な動きとなっています。海外勢の国債保有に関する記事が2012年9月21日付山陽新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『海外の国債保有、過去最高82兆円。6月末』です。以下引用文。

 『日銀が20日発表した2012年4〜6月期の資金循環統計(速報)によると、6月末時点で海外投資家が保有する日本国債の残高は前年同月比20.0%増の82兆円となり、過去最高となった。欧州債務問題を受け、比較的安全資産とされる日本国債を買う動きが続いているためとみられる。
 国債残高全体は4.2%増の940兆円。海外投資家保有分の占める割合は8.7%に上昇した。国内銀行や保険会社などが保有する国債も4.6%増の616兆円に拡大した』
 こうした海外勢が保有する日本国債は、たいていの場合、短期国債です。一方で、長期の国債を好むのが国内の生命保険会社となります。上図は、日本銀行調査統計局発表の資料から作成した所有者別の伸び率(対前年同月比)の推移を示したものです。図からは、家計、一般政府・公的金融機関の減少が目立つ一方で、海外、中央銀行(日本銀行)の保有残高が大きく増加していることを読み取ることができます。もっとも、国内の金融仲介機関の伸び率が小さくなったかといえば、決してそうではなく、保険が8.8%増、国内銀行が11.1%増とかなりペースで増加しています。
 2012年6月末時点で179兆円を保有する保険会社は長期の契約で保険資産を運用していることから、比較的に安定した資金であるといえます。一方で、146兆円を保有する国内銀行は、貸出金などの伸び率が低下している結果、運用する対象が日本国債に限定されていることが背景にあります。従って、国内銀行が国債で運用している資金は、比較的安定しているものの、一部は景気の動向に左右されることが考えられます。これらに対して、海外勢は逃げ足が速いことに特徴があります。それは、海外勢はほとんどを短期の国債で運用しているからであり、利回り上昇による価格変動リスクがない代わりに、趨勢が円安方向へと転じた場合、海外勢主導による日本国債の積極的な売り、そして、それがさらなる円安をもたらすこととなります。国債に関して、楽観的な論者が多いという気がしますが、私は楽観的ではありません。
 2014年4月に消費税率引き上げが5%から8%へと引き上げられた後が危ないと考えています。これは、価格的に大きい住宅、自動車、家電製品など耐久消費財を購入が進み、景気は着実に良くなる一方で、資金需要の拡大から国内銀行が保有する国債の残高が減少する可能性もあるからです。家計も、積極的な消費のために預金を取り崩し、かつ団塊の世代のほとんどが年金受給者となっている2014年〜2015年当たりはとんでもない事態になっている気がします。海外勢は、円安の流れが決定的となれば、資金を海外へと持ち去ることとなり、円安傾向に拍車がかかる上、海外勢が国債を売却することで国債利回りが急上昇することが予想されます。

2012年8月20日月曜日

消費税率引き上げと潜在成長率の低下

 消費税率の引き上げが国会で採決され、2014年4月に8%へ、2015年10月に10%へと引き上げられることが決定しました。引き上げに伴い、住宅や自動車など金額額が大きいものへの需要増加が期待される一方で、需要の先食いという現象をもたらし、その後の経済が不安定化する恐れもあります。特に、2014年の引き上げ後、マイナス成長を予想する見方が広がっており、今回の法案には、経済の急変時には増税を見合わせるという「景気条項」も含まれていることから、2015年に10%への引き上げに踏み切ることができないことも十分に考えらます。

 先日のIMFの副総裁のコメントでは、財政の健全化のためには、軽減税率を導入しないという前提で15%が望ましいとしています。つまり、わが国は、10%への引き上げにつまずいた場合、プライマリーバランスの黒字化という政府が掲げる目標は到底達成できず、急速に財政が悪化することが予想されます。このためにも、駆け込み需要による景気回復ではなく、2014年までには潜在成長率そのものを引き上げる必要があるといえます。上図は、OECD発表の主要7カ国の潜在成長率の推移を表しています。わが国の潜在成長率は、1987-96年の平均で2.5%であったものが、2012年には0.7%にまで下がっています。米国の潜在成長率が依然として2%を上回っているのとは対照的に、日本経済は体力が弱まっているという現実があります。因に、主要7カ国で日本を下回っているのはイタリアだけで、日本とともに、GDPに対する政府の債務残高が大きいことに共通点があります。やはり、このデータをみる限りでは規律ある財政政策こそが、長期的な成長率を高めることにつながると痛感させてくれます。

 2014年4月までには、潜在成長率そのものを高めなければ、消費税率を10%、そして最終目標の15%へ引き上げることはできません。時間が限られていますが、人口減少が既に始まっていること、民間の資本ストックが増加から減少へと転じたことから、労働、資本の増加から成長率を高めることはやや困難であるといえます。ならば、労働人口の増加や資本ストックの蓄積ではなく、TFP(全要素生産性)を高めることにより潜在成長率を高めることが考えられます。TFPとは、労働や資本の増加では説明できない生産性の増加を示し、通常は「技術進歩の進捗率」のことを指します。つまり、技術進歩により、労働や資本の生産性そのものを引き上げることで成長率を高めることを目指すのです。このことは、今後は効率的な人材育成、そして無駄がなく、確実に利益を上げることに絞った投資判断が求められることを意味しており、日本企業の経営者の能力にかかっているともいえます。シャープやパナソニックにおける投資判断のミスは、今後は許されないのです。
 わが国では、投資の最終需要の面ばかりが注目されており、将来的に実施された投資が、どの程度の付加価値を産み出すのかがないがしろにされている面があります。右図は、OECD発表の主要7カ国の需給ギャップの推移を示してます。需給ギャップは、実際のGDPと潜在成長率の差で表されます。90年代後半から2000年前半までの突出した需給ギャップを埋めるべく、莫大な額の公共事業が実施されました。そして、今存在するインフラを考えれば、政府による一連の公共投資が闇雲に行われきたという事実を読み取れることができます。例えば、空港です。ほぼ各都道府県に1つの空港があります。長細いとはいえ、狭い国土の日本に必要とは思えないほどの空港が乱立しているのです。また、継続的な人材育成のためには、本四架橋は3本同時に建設するのではなく、一本目が完成すれば、次を建設するという姿勢が求められたのです。つまり、投資の需要の面が意識された結果であるといえます。これでは、社会インフラが過剰となり、資本の生産性は徐々に低下することとなります。確かに、上記時期に政府による公共事業がなければ、日本経済は底割れになっていた可能性も否定はできませんが、無意味な公共投資を続けることにはマイナス面が多いといえます。
 消費税率の8%への引き上げはほぼ決まっています。つまり、時間は限られているのです。そして、技術進歩を軸においた潜在成長率の引き上げしか選択肢がないのがわが国経済の実情です。知恵をしぼった政府による政策はともかく、民間部門の奮起に期待されところです。

2012年6月22日金曜日

消費税率10%でも不足、プライマリーバランスの赤字解消

消費税率の引き上げがなかなか決まりません。6月20日夜に民主、自民、公明3党で、修正合意した消費税関連法案を衆議院に共同提出するまでは良かったのですが、その後、小沢氏を中心としたグループが離党をほのめかすなどの民主党は分裂の様相を呈してきました。そして、民主党は、6月21日までの国会会期を9月8日まで79日間延長することを採択、参議院での審議を念頭に「一定の時間が必要」であると判断したようです(2012年6月21日付朝日新聞朝刊)。
 私は、抜本的な支出のカットできない状況で、国民の負担を一方的に増やす消費税率の引き上げには反対です。しかし、公務員の給与の年俸化や歳出の一律カットなどの削減策が順調に進んだのならば、消費税率の引き上げはやむを得ないと考えています。ところで、ここで問題となるのは、3党で合意された消費税率の引き上げで十分であるか、ということです。2012年6月12日付産経ニュースWeb版に、IMFは15%、軽減税率には否定しているという記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『IMF、日本の消費税15%を提言、軽減税率には否定的』です。以下引用文。
『国際通貨基金(IMF)は12日、日本経済に関する年1回の審査を終え、高齢化社会に対応する安定的な歳入を確保するためには、消費税率を少なくとも15%に引き上げることが望ましいとの声明を発表した。
 消費税増税に伴う低所得者の負担軽減策として、食料品などを対象に軽減税率を採用すれば「税収を効率的に増やすことは難しい」と指摘し、否定的な考えを示した。 また、消費税率を10%まで引き上げることを含む社会保障と税の一体改革の関連法案の成立が「財政再建の意志を示し、投資家の信頼を維持するために極めて重要」とも強調した』
確かに、IMFが指摘するように食品などに対する軽減税率は適用しない方がいいかもしれません。なぜなら、20年もの長期間、デフレ経済に苦しんできた日本国民にとって節約は慣れたことです。食品の消費税率が低ければ、一斉に外食を止め、自宅での料理へと切り替えることが目に見えています。
また、15%という消費税率には、内閣府発表の『経済財政の中長期試算』(2012年1月24日)にも、裏付けられるデータがありましたので紹介します。上図は、消費税率が2014年4月1日より8%へ、2015年10月1日より10%へと段階的に引き上げられた場合の名目GDPとプライマリーバランス(基礎的財政収支)の推移を示したものです。これには、成長シナリオと慎重シナリオがあって、前者は名目3%成長、実質2%を、後者は名目1%台半ば、実質1%強をそれぞれ想定して試算しています。過去の日本経済と昨今の世界経済の動向を考慮すれば、慎重シナリオを適応するのが無難であり、そうした場合、プライマーバランスの赤字は2023年でも解消せず、名目GDP比率で3%程度の赤字となることが予想されています。名目GDPが500兆円で、3%の赤字ですので、単純に考えて6%程度の消費税率の引き上げが求められるのです。つまり、プライマーバランスを黒字化するには、消費税率は10%ではなく、16%であるということです。私には、上記試算の慎重シナリオでもやや楽観的な感じがします。やや持ち直しているものの、名目GDPは前期比でマイナスになることが多く、継続的に名目GDPが1%半ばの水準で成長し続けるか疑問が残ります。円高は続いており、しかも消費抑制的な税制が強化されるのですから、デフレからの脱却は難しいのが実情です。もっとも、国会に消費税関連法案が提出されたことは大切な最初の一歩です。財政危機回避のためにも、だらだらと議論するのではなく、早急な対応、つまりあとは時間との勝負になってきました。