2012年6月22日金曜日

消費税率10%でも不足、プライマリーバランスの赤字解消

消費税率の引き上げがなかなか決まりません。6月20日夜に民主、自民、公明3党で、修正合意した消費税関連法案を衆議院に共同提出するまでは良かったのですが、その後、小沢氏を中心としたグループが離党をほのめかすなどの民主党は分裂の様相を呈してきました。そして、民主党は、6月21日までの国会会期を9月8日まで79日間延長することを採択、参議院での審議を念頭に「一定の時間が必要」であると判断したようです(2012年6月21日付朝日新聞朝刊)。
 私は、抜本的な支出のカットできない状況で、国民の負担を一方的に増やす消費税率の引き上げには反対です。しかし、公務員の給与の年俸化や歳出の一律カットなどの削減策が順調に進んだのならば、消費税率の引き上げはやむを得ないと考えています。ところで、ここで問題となるのは、3党で合意された消費税率の引き上げで十分であるか、ということです。2012年6月12日付産経ニュースWeb版に、IMFは15%、軽減税率には否定しているという記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『IMF、日本の消費税15%を提言、軽減税率には否定的』です。以下引用文。
『国際通貨基金(IMF)は12日、日本経済に関する年1回の審査を終え、高齢化社会に対応する安定的な歳入を確保するためには、消費税率を少なくとも15%に引き上げることが望ましいとの声明を発表した。
 消費税増税に伴う低所得者の負担軽減策として、食料品などを対象に軽減税率を採用すれば「税収を効率的に増やすことは難しい」と指摘し、否定的な考えを示した。 また、消費税率を10%まで引き上げることを含む社会保障と税の一体改革の関連法案の成立が「財政再建の意志を示し、投資家の信頼を維持するために極めて重要」とも強調した』
確かに、IMFが指摘するように食品などに対する軽減税率は適用しない方がいいかもしれません。なぜなら、20年もの長期間、デフレ経済に苦しんできた日本国民にとって節約は慣れたことです。食品の消費税率が低ければ、一斉に外食を止め、自宅での料理へと切り替えることが目に見えています。
また、15%という消費税率には、内閣府発表の『経済財政の中長期試算』(2012年1月24日)にも、裏付けられるデータがありましたので紹介します。上図は、消費税率が2014年4月1日より8%へ、2015年10月1日より10%へと段階的に引き上げられた場合の名目GDPとプライマリーバランス(基礎的財政収支)の推移を示したものです。これには、成長シナリオと慎重シナリオがあって、前者は名目3%成長、実質2%を、後者は名目1%台半ば、実質1%強をそれぞれ想定して試算しています。過去の日本経済と昨今の世界経済の動向を考慮すれば、慎重シナリオを適応するのが無難であり、そうした場合、プライマーバランスの赤字は2023年でも解消せず、名目GDP比率で3%程度の赤字となることが予想されています。名目GDPが500兆円で、3%の赤字ですので、単純に考えて6%程度の消費税率の引き上げが求められるのです。つまり、プライマーバランスを黒字化するには、消費税率は10%ではなく、16%であるということです。私には、上記試算の慎重シナリオでもやや楽観的な感じがします。やや持ち直しているものの、名目GDPは前期比でマイナスになることが多く、継続的に名目GDPが1%半ばの水準で成長し続けるか疑問が残ります。円高は続いており、しかも消費抑制的な税制が強化されるのですから、デフレからの脱却は難しいのが実情です。もっとも、国会に消費税関連法案が提出されたことは大切な最初の一歩です。財政危機回避のためにも、だらだらと議論するのではなく、早急な対応、つまりあとは時間との勝負になってきました。

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