2012年6月11日月曜日

魅力ある輸出拠点、ベトナム

世界の工場である中国で労働コストの上昇が懸念されています。アップル製品の製造を一手に引き受けている鴻海グループ率いるフォックスコンの工場も中国内陸部のより労働コストの低い地域へと生産の比重を移しているようです。しかし、内陸部でも労働コストの上昇は継続していること、やはり政治的リスクが依然として高いことから、そろそろ東南アジアの別の国への生産のシフトを考えてもいいかもしれません。
 右図(注)は、アジア主要都市の労働コストを示しています。図によると中国、マレーシア、タイ、フィリピンなどが高く、中程にインドネシアがあり、下位にベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーなどの国があることが分かります。どこで線引きを行うかという点が問題になりますが、一意に労働コストが低いからといって、インフラ整備の面で劣るカンボジア、ラオス、ミャンマーでの投資拡大にはやや疑問が残ります。そして、本命は労働コスト、インフラ整備の面からいってバランスの取れているベトナムが本命ではないでしょうか。ここで、(刈込)の記事を一部を引用します。
『従来、カンボジアへの投資を積極的に進めていたのは、主に中国や韓国の企業だったが、ここ数年は、日本企業の進出が加速しており、投資件数と直接投資額は、07年以降の5年間で39件、2.9億ドルと、94年から06年までの累計14件、2.2億ドルを上回っている。
この背景には、これまで日本企業が生産拠点を置いていた中国やタイ、ベトナムでの人件費高騰がある。これらの国では、近年、工場労働者によるストライキが起こるなど、人材の確保が難しくなっている。そこで新たに生産拠点の開拓を迫られた日本企業が向かった先が、より労働コストの低いカンボジアだった』
この記事を読む限りカンボジア、ラオス、ミャンマーの3国は労働コストの面からいって魅力はあります。しかし、インドネシアよりも安く、インフラ等が比較的整備されており、人口規模も大きいベトナムが最有力ではないかと考えています。そうした中で、ベトナムでのインフラ整備で日本企業が活躍している内容の記事が2012年5月16日付日本経済新聞夕刊に掲載されていました。記事の題目は『ベトナム輸出拡大、「日の丸インフラ」、住商が都市鉄道受注、港湾や空港なども』です。以下引用文。
『【ハノイ=伊藤学】日本企業によるベトナムへのインフラ輸出が本格化してきた。住友商事はこのほどベトナム初となる都市鉄道建設を受注。工費は約630億円で、2016年末完成を見込む。同国では最大の港湾整備や空港ターミナル建設なども日本企業によって行われている。企業進出が増えるなか、インフラ建設は投資環境の整備にもつながり、日本勢は官民一体で「日の丸インフラ」を広げる構えだ』
このインフラ整備の背景には、日本企業の進出ラッシュがあると考えられます。インフラ整備の具体的事例には、大成建設によるノンバイ国際空港第2旅客ターミナル、IHI、三井住友建設によるニャッタン橋、伊藤忠、商船三井、日本郵船などによるラックフェン港があります。カンボジアの2.5億ドルとは全く規模が違います。ミャンマーやカンボジアではなく、日本企業の工場として重要な役割を果たすのはベトナムが本命でしょう。
(注)『週刊エコノミスト』2012年5月15日号掲載。刈込俊二『カンボジアへの日本企業の投資拡大。「ミャンマーリスク」も先細り懸念も』。

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