2012年6月23日土曜日

相次ぐ格下げ、続く欧米金融機関の危機

ギリシャ問題が根本的に解決したとはいえませんが、再選挙の結果が、欧州債務危機の拡大に一定の歯止めがかかることが期待されるものとなりました。ギリシャ国民は、緊縮財政を継続的に進め、ユーロから離脱しないと主張する新民主主義党(ND)を支持、スペインへと危機の連鎖を当面回避する上で、一つ目の課題をクリアしたといえるでしょう。今後は、財政緊縮派での連立政権が速やかに発足、内閣が正常に機能することが望まれるところです。これで株価が安定的に推移、今後上昇することが予想されたのですが、米格付け会社ムーディーズによる欧米金融機関15社の格下げの発表により再び混沌としてきました。発表を受けて2012年6月21日のニューヨークダウ平均(ダウ・ジョーンズ工業株30種平均)は前日比250ドル超の下落、引き続き欧米の金融危機は進行中であり、抜本的な解決には長い時間を要することを思い知らされました。
 2012年6月22日付日本経済新聞夕刊に、この格下げに関する記事が掲載されていましたので紹介します。ムーディーズの各付けではBa1からが投資不適格となります。ギリシャ、スペイン、そしてイタリアの銀行の相次ぎ格付けが引き下げられ、投資不適格となるなどして注目されていましたが、同記事によりバンク・オブ・アメリカ、シティグループも一歩手前まで来ていることを強く認識させられました。記事の題目は『米ムーディーズ、欧米金融15社格下げ』です。以下引用文。
『【ニューヨーク=西村博之】米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは21日、米モルガン・スタンレーやシティグループなど世界の15大手金融機関の格付けを一斉に引き下げた。欧州危機や世界景気の減速、規制強化の動きを踏まえた見直し。金融機関の資金調達コストが上昇する可能性があり、企業や個人向け融資などにも影響が及ぶ懸念がある。
 格下げ対象となったのは国際資本市場で活動する米欧やカナダの銀行と証券会社。ムーディーズは全社が「資本市場での活動に絡んだ重大な価格変動や損失リスクにさらされている」と指摘した。1段階格下げが4社、2段階が10社、3段階が1社あった
 この記事で日本に関連する部分は2つありました。1つは米モルガン・スタンレーに出資している三菱UFJフィナンシャル・グループです。リーマン・ショック直後は優先株で出資、連結の対象にはなっていなかったのですが、2011年4月頃に優先株を普通株に転換し、連結の対象となったようです。米モルガン・スタンレーには欧州の金融機関に対するCDSや保証債務があるはずです。普通株への転換により三菱UFJは、欧州債務のリスクを取り込むという結果となりました。もう1つは、野村證券の件です。3月の発表で野村證券の格付けがBaa3と投資適格の最下位にまで引き下げられており、後がないところまできています。ここのところ、インサイダー取引など不正に同社の社員がことごとく絡むなど、社内の士気が落ちていることがうかがえます。野村證券も破綻したリーマン・ブラザーズの欧州部門を買収したものの、収益に貢献しないという結果となっています。三菱UFJ、野村證券とも日本を代表する金融機関です。両社の早急な回復に期待したところです。
 ここで、米金融機関大手5社の株価の推移をみてみます。右図は、2008年1月末の株価を100として、データを指数化したものです。ムーディーズの今回の格付けの引き下げにより、右図で挙げた5社の格付けの水準と、リーマン・ショック後からの株価の回復度合いは完全に一致しています。特に、シティグループの株価は深刻であり、10分の1にまで下落していることが分かります。また、三菱UFJの連結対象となっているモルガン・スタンレーの株価も回復の気配はみられず、今後の動向が気になるところです。

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