2012年6月22日付日本経済新聞夕刊に、この格下げに関する記事が掲載されていましたので紹介します。ムーディーズの各付けではBa1からが投資不適格となります。ギリシャ、スペイン、そしてイタリアの銀行の相次ぎ格付けが引き下げられ、投資不適格となるなどして注目されていましたが、同記事によりバンク・オブ・アメリカ、シティグループも一歩手前まで来ていることを強く認識させられました。記事の題目は『米ムーディーズ、欧米金融15社格下げ』です。以下引用文。
『【ニューヨーク=西村博之】米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは21日、米モルガン・スタンレーやシティグループなど世界の15大手金融機関の格付けを一斉に引き下げた。欧州危機や世界景気の減速、規制強化の動きを踏まえた見直し。金融機関の資金調達コストが上昇する可能性があり、企業や個人向け融資などにも影響が及ぶ懸念がある。この記事で日本に関連する部分は2つありました。1つは米モルガン・スタンレーに出資している三菱UFJフィナンシャル・グループです。リーマン・ショック直後は優先株で出資、連結の対象にはなっていなかったのですが、2011年4月頃に優先株を普通株に転換し、連結の対象となったようです。米モルガン・スタンレーには欧州の金融機関に対するCDSや保証債務があるはずです。普通株への転換により三菱UFJは、欧州債務のリスクを取り込むという結果となりました。もう1つは、野村證券の件です。3月の発表で野村證券の格付けがBaa3と投資適格の最下位にまで引き下げられており、後がないところまできています。ここのところ、インサイダー取引など不正に同社の社員がことごとく絡むなど、社内の士気が落ちていることがうかがえます。野村證券も破綻したリーマン・ブラザーズの欧州部門を買収したものの、収益に貢献しないという結果となっています。三菱UFJ、野村證券とも日本を代表する金融機関です。両社の早急な回復に期待したところです。
格下げ対象となったのは国際資本市場で活動する米欧やカナダの銀行と証券会社。ムーディーズは全社が「資本市場での活動に絡んだ重大な価格変動や損失リスクにさらされている」と指摘した。1段階格下げが4社、2段階が10社、3段階が1社あった』
ここで、米金融機関大手5社の株価の推移をみてみます。右図は、2008年1月末の株価を100として、データを指数化したものです。ムーディーズの今回の格付けの引き下げにより、右図で挙げた5社の格付けの水準と、リーマン・ショック後からの株価の回復度合いは完全に一致しています。特に、シティグループの株価は深刻であり、10分の1にまで下落していることが分かります。また、三菱UFJの連結対象となっているモルガン・スタンレーの株価も回復の気配はみられず、今後の動向が気になるところです。
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