2012年6月25日月曜日

輸出拠点として見直される米国

米国が輸出拠点として見直されています。この点については、ブログでも何度か書きましたが、この背景には、ドル安により賃金水準が十分に低下、加えて政治的にも安定している上、人口が増加していることにより労働力が確保しやすいなどの要因があります。また、米国の政治的な力は、依然として絶大であり、この力を利用し、政治的に日本から輸出が国難な国にも輸出することが可能となり、日本企業が生産拠点を設ける動きはよく理解できます。
右図は、米ドルの対円、対ユーロ相場の推移を示したものです。米ドルの水準を直感的に把握しやすくするため、グラフは、ともに米ドルからみて外国通貨建てで表示しています(注)。つまり、グラフは下にいくほどドルは安いということ意味します。円相場については、2002年の1米ドル=135円前後から80円台前後まで一挙に下落しました。一方、米ドルの対ユーロ相場はどうでしょうか。ユーロ発足間もない2001年頃に1米ドル=1.20ユーロから0.8ユーロ近くまで低下しています。もっとも、米ドルの対ユーロ相場の安値は、2008年の1ドル=0.6ユーロ強という水準であるため、対ユーロでは米ドルはやや持ち直しているといえます。しかし、長期的なトレンドでは、米ドルは両通貨に対して大きく減価していると考えられます。
このドル安を背景に、米国の輸出や鉱工業生産の水準はどうなっているのでしょうか。右図は、米国の財・サービスの輸出と鉱工業生産指数(2007年=100)の推移を示しています。輸出は、リーマン・ショック後の2009年に大きく減少していますが、その後回復、2011年には2008年の水準を上回っています。そして、この輸出に見事に連動するように、鉱工業生産指数が変動しています。期近の2012年4月のデータでは97.4 ポイントまで回復しており、米国の製造業は2007年の生産水準にまでほぼ回復しているといえます。
 こうした中で、日本企業の中で輸出拠点としての米国を見直す動きがみられます。2012年6月24日付日本経済新聞朝刊に『ホンダ、米を輸出拠点』という記事が掲載されていましたので紹介します。以下引用文。
 『ホンダは米国からの輸出を拡大する。ドル安傾向が続いていることを背景に東南アジアへの輸出を始めたほか、中国、中東向けも増やす。2017年にも北米からの乗用車輸出を現在の約5倍の15万台程度に増やし日本並みにする。トヨタ自動車や三菱自動車も米国からの輸出を増やす計画で、工作機械大手の森精機製作所は韓国、台湾へ輸出を始める。各社は米国で生産能力を拡大しており、日本を軸とした供給体制を見直す動きが広がってきた』
このほか、ヤマザキマザック、三菱重工業、クラレ、キャノンなども米国からの輸出を増やす計画であり、輸出拠点としての米国が見直されています。この生産拡大で影響を受けるのは、日本国内で生産です。国際化により企業は生き残りますが、結果として日本国内は空洞化、製造業に従事する労働者は減少を続けることが予想されます。
(注)米ドルの対ユーロ相場は、通常他国通貨建てが馴染みがありますが、直感的に理解しやすいため、米ドルからみて自国通貨建てとしました。因に、外国通貨建てで示した米ドルの対ユーロ相場は、2012年6月22日現在で1ユーロ=1.25ドル前後です。

0 件のコメント:

コメントを投稿