しかし、低価格の裏側には、非正規労働の存在など厳しい現実があり、彼らの低い賃金なくして、家電製品や外食などの低価格化は進まなかったと思われます。正規・非正規という雇用の二重構造は解消するべき問題です。製造業にとって、いくら国際競争力の維持が不可欠でからといっても、歯止めのかからない名目賃金の低下は、結果として国内需要の減少という悪循環を生みます。下げ止まらない賃金は、デフレ経済から脱却できない日本の象徴的な存在であるともいえます。
上図は、厚生労働省発表の(月額)税込現金給与の推移を示しています。2003年からのデータですが、継続的に減少傾向を示していることが分かります。このデータには、所定内に加えて、所定外、特別給与を含むもので、これを単純に12倍すれば、大体の年収を割り出すことができます。これに基づき得られる、2011年の年収は、大体380万円程度となります。先日、NHKの特集で語られていた年収も近い水準でしたので、感覚的に合っている気がします。
ところで、現在、電気料金の引き上げ問題で、東京電力の動きが注目されています。福島第一原発事故後、大幅な年収のカットが実施され、2010年に同社の平均年収が700万円前後であったものが、2011年に571万円と引き下げられています。実質国有化された2012年からはさらに低下、525万円となっており、この数字は、千人以上の大企業の平均年収である543万円を下回っています。しかし、2013年から実施される同社の年俸制導入により46万円アップされ、逆に大企業の平均を上回ることが指摘されています。2012年6月1日付朝日新聞朝刊に東京電力の年収についての記述がありましたので紹介します。記事の題目は『東電、社員年収引き上げ』です。以下引用文。
『東京電力は、2013年度から社員1人あたりの年収を今年度より46万円増やして571万円にする。全社員を対象にした「年俸制」導入にともなうもので、1千人以上の大企業平均より28万円高くなる。家庭向け電気料金の値上げの算定にも年収アップは織り込んでおり、利用者から反発が出る可能性がある』まさしく、独占企業の弊害ですね。もっとも、大企業の平均年収と比べるのではなく、一般家庭全般の電気料金を引き上げるのですから、中小企業も含めた平均年収と比べる必要があるのではないでしょうか。右図は、上記記事記載のグラフに、380万円という平均年収を付け加えたものです。やはり東京電力の年収の水準は高いことが分かります。
この人件費削減については、2012年6月7日付日本経済新聞夕刊にも記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『「人件費、削減足りない」、東電公聴会、値上げに反発』です。以下引用文。
『東京電力の家庭向け電気料金の引き上げを巡り、経済産業省は7日、消費者らの意見を聞く公聴会を開いた。消費者からは「人件費などのコスト削減が足りない」などと値上げへの反発が相次いだ。値上げ申請に至る説明が足りないとして、東電や経産省への不信を訴える意見も出た』年収ベースの問題だけではなく、東電などの大企業は企業年金などでも中小企業と比べて格差があります。退職金も含めると、開きはかなりの水準になるといえます。デフレへの連鎖をストップさせるという意味では、年収の引き上げはプラスなのかもしれませんが、コストの徹底した削減、そして電気料金の十分な説明なしの一方的な大幅な引き上げには問題があると感じています。
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