2012年6月4日月曜日

不動産バブルとスペインの金融機関

人間は懲りないと思います。日本が経験した不動産バブルとその後の崩壊により、失われた20年を目にした人々は、その教訓を全く生かせることができなかったのでしょうか。米国で発生した住宅のバブルの爪痕は深く、雇用情勢が再び悪化するのではないかという懸念が出てきています。事実、失業率はやや悪化したようです。そして、ヨーロッパへと飛び火した債務危機は、結局のところ不動産への投機行為がもたらし結果でした。つまり、不動産バブル崩壊により、金融機関の不良債権が増大、事態は大手金融機関Bankia(バンキア )の国有化にまで深刻化しています。
スペインの不動産バブルの背景には、日本のマネーがあるとのこと以前報道番組で観たことがあります。日本で超低金利の資金を調達し、それをスペイン国内で貸し付けるという方法です。案外、米国を襲った住宅バブルの崩壊、ヨーロッパの不動産投機、そして中国での不動産の高騰などの裏には、20年間という長期間の金融緩和によって生じた日本のマネー、具体的には円キャリートレードで生じたあぶく銭があるのではないでしょうか。そして、世界各地で発生している不動産バブルの崩壊と、その過程で起きている円高という経済現象は、日本発のマネーが発生元へと戻る、つまり返済等などの行為によって生じている可能性もあります。日本発の信用創造で円安になるのではなく、逆に信用収縮によって円高となっていることも十分考えられるでしょう。
スペインのバンキアに関する記事が、2012年5月31日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。同記事には、バンキア以外の金融機関の健全性を急ぐ旨の記載もあり、本格的な不動産関連の貸し付けに対する調査に乗り出しているとのことです。この調査の結果は怖いですね。海外では指摘されてはいたのですが、少なめに評価されていた不良債権が、調査の結果、日本でも蓋を開けてもると100兆円もの不良債権があったというのが判明し、金融危機となりました。スペイン政府及び金融機関も、今後より大きい不良債権の発生に備える必要があるでしょう。以下記事引用。
『【パリ=竹内康雄】スペイン大手銀行バンキアの190億ユーロ(約1兆8,600億円)の支援要請を受けた同国政府は、6月にもとりまとめる方向で支援策の詰めの協議に入った。デキンドス経財相は30日、資金を政府が設立した銀行再編基金(FROB)を通じて手当てすると表明した。
具体的にはFROBが債券を発行して市場から資金を調達する案が有力。ただ政府には額が大きいうえ、スペイン国債利回りと連動するFROB債で想定通りの金額を得られるかどうか不安視する向きもある。このため国債をバンキアに直接譲渡して資本増強する案も検討課題となっているようだ』
右図は、2012年5月31日付NHKの報道で紹介されたものです。赤色で表示している部分である建設・不動産向け貸出が全体の22%に達していることを示しています。このうち、不良債権比率は、建設で17.7%、不動産で20.9%にも及ぶことを示唆しています。もっとも、資産査定が本格化すると、この不良債権比率は一気に上昇する可能性があります。私が最も気にしているのが、住宅に対する貸出が、問題となっていないことです。住宅に関しても同様の傾向を示すはずであり、失業率が高止まりしているスペインでは当然の結果だといえます。全体の36%も占める住宅への貸出の不良債権化が拡大すれば、金融危機はより深刻化するでしょう。
そして、上記本道番組では、スペイン経済の悪循環についても説明していました。スペイン政府がスペインの金融機関を救済した場合、同国の財政が痛み、結果、国債価格の下落を通じて、スペインの銀行へと打撃を与えるというものです。つまり、右図の①から⑦の経路をたどって、再び財政赤字の拡大というパターンへと入ることです。このパターンとなった場合、スペイン経済及び政府は負の連鎖へと陥り、最終的には国際機関やECBの救済しか方法がないという事態になりかねないということです。ユーロ加盟国中第4位の経済規模を誇るスペインの救済は、ギリシャの数倍の労力を要します。これはリーマン・ショックを上回るインパクトがあり、未然に防止しなければ、世界経済は本格的はリセッションへと入ることとなるでしょう。

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