2012年6月17日日曜日

ギリシャ総選挙の結果と復調するか金価格

今日は、今後の世界経済を占う上で、最も注目されているギリシャ総選挙の投票日です。結果は、このブログを作成している時点では不明ですが、世論調査の結果からは、財政緊縮支持を訴える新民主主義党(ND)が、厳しい削減に反対する急進左派連合を僅差でードしているようです(2012年6月16日付読売新聞朝刊)。ギリシャでは、既に銀行預金の3分の1が引き出されており、犯罪の増加や自殺者の話題が注目されるなど、国民の間に不安感が蔓延しています。世界各国も、ギリシャのユーロ離脱という最悪の事態は回避したいという思惑で一致しています。しかし、ドイツなどを中心にユーロ諸国は、これ以上のギリシャに対する支援強化には消極的な姿勢をとっており、危機のまっただ中にあるスペインへの影響はどうしても回避したいという意味で、ギリシャのユーロ離脱を避けたいというのが本音でしょう。
 ここで、私の個人的な意見は、ギリシャに対してこれ以上の支援はするべきではなく、仮に財政緊縮に反対する急進左派連合が勝利したのならば、速やかに支援を打ち切り、ギリシャのユーロ離脱を容認するべきであると考えています。その結果、ギリシャ国債のデフォルトは必至であり、デフォルト後にギリシャ国内がどのような結果になるかを、世界へと知らしめることが大切だと思っています。意外と復活したギリシャ通貨、ドラクマが大暴落することによって、同国の輸出産業や観光産業が復活するかもしれません。とにかく、長引くことがマイナスなのです。仮に、ハイパーインフレーションと失業率が50%超などの悲惨な結果がギリシャを襲ったならば、それをみてスペイン国民が、積極的な財政赤字の削減に取り組むことの必要性を痛感すれば、財政緊縮策で同国と他のユーロ諸国は協調することができるでしょう。連鎖は、ギリシャで止めることが大切であり、だらだらとした対応は、ユーロの信頼回復には結びつかないといえます。
 上述の通り、ユーロ危機が泥沼の様相を呈している中で、有事の際の金(ゴールド)の価格が上昇しているのではないかと思っていました。しかし、現実は違います。金の価格は今年に入ってからも、2月にピークをつけた後、大幅に下落しています。もっとも、金価格は、工業用途中心のプラチナの価格を恒常的に上回っており、この背景には、世界的な景気後退に連動する形でプラチナが下がっている一方で、通貨の代替物である金が注目されているとも捉えることができます。ギリシャ総選挙の結果次第で、金の価格は大幅に変動することが予測され、急進左派連合が勝利した場合、投機的な金の買いが入るかもしれません。選挙結果と金価格に注目したいと思っています。
 ここで、金価格がプラチナ価格を上回っていることを記述している記事が2012年6月5日付日本経済新聞夕刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『プラチナより金、価格逆転が定着』です。以下引用文。
 『貴金属市場で金の価格がより実用性の高いプラチナ(白金)を上回る逆転が定着する気配だ。プラチナは自動車の排ガス処理に使えるなど特殊な機能があり過去30年近く金価格を2割〜2倍上回るのが常だった。欧州経済の低迷で工業用の消費が多いプラチナが大幅に値下がりする半面、金は不安心理を背景に株などから資金を移す動きが続き、価格が下支えさられている』
資源量は、金の方が圧倒的に多く、工業用途が8割を占めるプラチナは、燃料電池の触媒としても期待されています。従って、プラチナの価格が、将来的には金価格を上回ると予想されます。従って、通貨不安がある中で、金の価格とプラチナの価格の差こそが、市場関係者の不安心理であると捉えることもできます。ところで、金の価格には特殊要因があります。それは、金の最大消費国がインドということです。このことを説明した記事が『週刊エコノミスト』2012年6月19日号ありましたので紹介します。記事の題目は『インド、金の輝きは魅力だが、経常赤字の要因に』です。以下引用文。
 『国内(インド)ではほとんど金の産出がないため、多くを輸入に頼っている。10年度の金の輸入は輸入額全体の9.6%を占め、貿易赤字、ひいてはインド政府が悩む経常収支赤字の要因となっている。
 インド政府は12年度予算案で金の輸入関税を引き上げ(11年度に2%に引き上げたものをさらに4%へ)と、物品税の金宝飾への課税対象拡大を打ち出した。これに対し、宝飾品業界は一斉に大反対。小売店は抗議のストライキに乗り出し、物品税引き上げは撤回されることとなった』
 インドは、中国に次ぐ人口規模を有し、次の巨大市場として期待されています。しかし、その実態は、脆弱であり、海外からの赤字のファイナンスがなければ、経済を維持することができないという実態があります。通貨危機に苛まれた、東南アジア諸国では経験したことです。ギリシャと同様に、経常収支が慢性的に赤字となっている国は、持続的な成長に制限がかかります。しかし、インドが救われるのは、通貨の下落によりある程度、影響が緩和されるということです。ギリシャには、それがなかったため、危機が深化したといえます。インド経済が立ち行かなくなれば、危機の度合いはギリシャの比ではありません。金の購入額が多いインドには、通貨ルピーに対する不信感があるともいえます。しかし、盤石であったはずのユーロが危機を迎えた背景には、ギリシャが失ったものをインドは手放していないということです。それは、自国の金融政策を自らで決定することのできる権利です。

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