2012年6月3日日曜日

為替変動とよくわからないFX

私は、FXの関して一切の取引はしていません。しかし、FX関連が提供するiPhoneアプリであるSimplex FXはよく利用しており、同アプリが提供するレートは、実際に外貨の購入(実需に伴うもの)を決定する際の判断材料にもしています。ギリシャに続く、スペインの危機により、週明け月曜日(6月4日)の相場が荒れそうなので今日は急遽、FX及び為替相場について書きます。
一時期、円相場が高騰するのを抑制する上で、FXなどの個人取引がリードしていることが注目され、日経新聞などにもその旨の記事が掲載されていました。しかし、私はFXの取引に関しては否定的な意見を持っています。2012年1月21日付『FXに一言』のブログでも否定的な見解を示しています。FXの取引では個人は外貨の買いが、売りを常時上回っており、そのことはデータでも裏付けることができ、確かに円高の進行を弱めている気がします。しかし、いったん為替相場が逆の円高方向へと進むと、FXで外貨の買いをしていた人の損失が極端に膨らみ、外貨の売りが、売りを呼び、為替相場の変動率(ボラティリティー)を増大させるのではないかと思っているからです。加えて、ある程度、円安が進むと、FXでの取引では反対決済をして利益確定をすることから、円の買いが必ず発生し、一定以上の円安には歯止めがかかってしまうことなどがマイナス面があります。
そして、何によりも大切なのは、FXの取引に傾注することは、金融取引というマネーゲームに時間や気が取れられることを意味し、貴重な勉強時間や労働時間が削がれるという意味でもマイナスだと考えています。確かにMT4(メタトトレーダー4)やミラートレーダーといった自動売買システムなどの方法もあるそうで、『週刊エコノミスト』2012年6月5日号掲載の『台頭するシステムトレード』という記事でシステムトレードについて紹介しています。同記事ではシステム取引の限界について記述しています。以下引用文。
『「自動売買といえどもほったらかしは禁物。思い通りの成果が上がっているか、常にチェックは必要だし、ひとつの売買プログラムが有効に機能するのは、長くて3ヵ月程度と考えたほうがいい」
つまり、3ヵ月に1回程度は売買プログラムの更新が必要になるわけだ。優秀な自動売買プログラムを利用すれば、高いリターンが得られる可能性があるが、どれほど優秀なプログラムでも永遠に勝ち続けることはできない。相場の流れが変わるからだ。そのときの相場の流れに合わない売買プログラムを利用し続ければ、損失がどんどん積み上がってしまう可能性がある』
また、FXには提示した価格で外貨や円の購入ができないという弊害もあるそうです。FXの取引業者が提示しているレートが、実際の反対側にいる金融機関が提示しているレートと乖離している可能性を指摘しています。その結果、高いレバレッジをかけていると約定が成立して1秒でロスカットに抵触することもあると、の別の記事(注1)で危険性を説明しています。これ以外にも思わぬ損失を出してしまうスリッページについても記述していますので、引用(注2)します。
『スリッページ(slippage)とは、英語で「すべる」を意味する。価格を指定せずに「ここだ」と思うタイミングで売買注文を出す成行注文で、注文発注時に表示されていたレートと、実際に取引が約定(成立)したレートが異なることをいう。また、あらかじめ売買したいレートを指定する指値注文や、指定した価格より高く(安く)なったら買う(売る)逆指値注文でも、指定したレートと異なるレートで約定してしまう場合に、そう呼ぶ』
 FXは、基本的には相対取引だということに注意しなければならないことです。提示レートの性格について熟知した上で取引を進める必要があると思います。それでは、FXの実際の取引状況と為替レートを参照することにします。対象は豪ドルで、右図はそれを示したものです。残念ながら、「くりっく365」で入手できるデータが5月2日までとなっているため、FXの「売り」、「買い」のデータは途中でなくなっています。しかし、同様の水準をたどったとすると、「買い」が「売り」を上回るという状況には概ね変化がないと思われます。そして、ここに暴落した豪ドル相場があります。豪ドル相場は、当局により政策金利が随時引き下げられていたこともあり、4月の1豪ドル=85円超から6月1日には75円台まで急落しています。この状態で、豪ドルのFXの取引で利益が出るのかどうか甚だ疑問があります。
6月1日の日本時間午後9〜10時の間に円・米ドル相場に大きな変動があり、ニュース番組を観ていて、一部の市場関係者から介入があったのではないかということが報じられました。しかし、その後の円・米ドルは元の水準に戻っており、介入はなかったのではないかと私は個人的に考えています。もっとも、市場は荒れています。危機の連鎖は止まってません。月曜日の朝に日銀による介入がないとはいえません。為替動向については、しばらくは注視が必要でしょう。
(注1)記事の題目は『FXの罠』
(注2)記事の題目は『「すべる」レートに気をつけろ』

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