2012年6月28日木曜日

部品で稼ぐコマツの強さ

米アップル社にあって、日本のパナソニックにないものといえば、製品そのものからの利益だけではなく、販売した製品から派生するサービス提供からの利益があるということです。これは言わずも知れたiTunesという音楽配信サービスを指しています。製品を販売するという行為以外から得られる利益であり、むしろ製品販売自体から得られる利益よりも安定しています。やや空回りという点は否めませんが、ソニーも、ゲーム、音楽や映画などのコンテンツサービスを提供しており、アップルと似たビジネスモデルを展開できる可能性を秘めた国内でも数少ない企業の一つであるといえます。
メーカーは、製品の販売だけでは、販売で得られた収入だけで終わってしまい、連続したヒット製品がなかった場合は、業績は不安定化することとなります。これこそが、メーカーの厳しさです。今年は良かったかもしれませんが、同業他社がヒット製品の開発に成功するなどすれば、来年も同様の業績が得られるかどうかは保証されていません。こうしたメーカーの厳しい環境の中で、安定した収益源を持っているのが、建機メーカーのコマツです。コマツの事業展開は素晴らしく、いまや世界各地で同社が製造した建機や鉱山機械が活躍しています。
 そして、コマツの利益の源泉として注目されているのが、部品の売上高です。建機や鉱山機械などは過酷な環境で使用されています。その分、部品の摩耗は激しく、販売した後に提供される部品供給の価格が本体価格を大きく上回るケースが多く、これが安定した利益をもたらしているようです。もっとも、このために部品を供給するチャネルがしっかりしている必要があり、同社はそれ相応の努力はしてきたと思われます。今日は、2012年6月14日付日本経済新聞朝刊のコマツに関する記事を紹介します。記事の題目は『コマツ、部品で3割稼ぐ』です。以下引用文。
『コマツは2013年3月期に連結営業利益の3割程度を交換用部品で稼ぐ見通しだ。建設機械や鉱山機械の稼働台数の増加に伴い、需要拡大が続く。今期の部品売上高は前期比16%増の3680億円と、前期に続いて過去最高を見込む。景気などの影響を受ける機械本体に比べ安定しており、収益の景気変動への抵抗力を高めそうだ。
建機は年1000〜3000時間、鉱山機械は年5000時間程度も稼働するため、新車でも数年で部品の交換需要が発生する。フィルター、油圧機器など取り扱う品目も多様だ。
伸びが大きいのは鉱山機械向け。資源価格が上昇した2000年代半ばから本体の稼働台数が急増し、続々と部品の交換時期を迎えるためだ。
鉱山機械は稼働時間が長いうえ部品単価も高く、稼働期間中に本体と同程度か約2倍の部品売上高が見込める。今期の部品売上高のうち、鉱山機械向けは29%増の2035億円と全体の55%を占める』
コマツは、引き続き安定収入を得ることになり、今後業績が上向くことが期待されます。右図は、同社の鉱山機械部門の売上高と売上高全体に占める鉱山機械の占める割合を示したものです。このグラフで注目されるのは、鉱山機械向けの部品の売上高の推移です。部品の売上高は、景気変動に関係なく増加しており、2013年3月期決算では鉱山機械の売上高の3割を占めるまでに達すると予想しています。確かに、リーマン・ショック後、本体・サービスの売上高が大きく減少している中でも、部品の売上高は着実に増加しており、収益の柱となっていることが分かります。
 コマツのように安定した収益源を持っている企業にキャノンがあります。プリンター事業は、ペーパーレスの流れがあるため、将来的には不透明感はあります。しかし、リーマン・ショック後、多くのメーカーが赤字決算となる中で、利益を出し続けた同社は、トナーやインクなど消耗品に安定した需要があり、粗利益率が高い理由にもなっています。製品の販売だけではなく、それから派生するサービスから得られる利益の方が大きいという企業構造を持つことこそが、日本のメーカーに求められるビジネスモデルではないでしょうか。

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