新聞等マスコミが、円高の要因について報じる時、その背景に比較的に安全資産とされる円を買って、外貨を売るという動きがあったと説明するケースが多いです。そして、外国勢が、ドルやユーロを売ってし、円を買った場合、何らかな形で、円建ての金融資産が増加することを意味します。それが、国際収支統計上何に該当するのかは分かりませんが、どういった形せよ海外勢保有の円建て資産は積み上がってくるのです。
日本の場合、長年の経常収支の黒字によって積み上がった外貨準備高などは、米国債で主に運用、現在では外貨準備高は1兆ドル以上にもなっています。しかし、中国の外貨準備高は日本とは比較にならない規模になっています。今やその規模は3兆ドルを上回るまでになっており、そうした外貨準備を中国は、以前は米国債で主に運用していました。しかし、昨今では米国に過度に依存することを嫌ってか、ユーロなどの通貨に振り替えているそうですし、中国による日本国債の購入の動きも、新聞やニュース報道でよく目にします。
こうした流れの中で、海外勢による日本国債の保有比率が上昇していることが分かってきました。日本銀行発表の資金循環統計では、2012年6月末時点で、過去最高の82兆円にも達してるそうです。特に、ここ数年の海外勢による日本国債の購入の動きは顕著であり、国内勢がむしろ減少傾向を示しているのと対照的な動きとなっています。海外勢の国債保有に関する記事が2012年9月21日付山陽新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『海外の国債保有、過去最高82兆円。6月末』です。以下引用文。
『日銀が20日発表した2012年4〜6月期の資金循環統計(速報)によると、6月末時点で海外投資家が保有する日本国債の残高は前年同月比20.0%増の82兆円となり、過去最高となった。欧州債務問題を受け、比較的安全資産とされる日本国債を買う動きが続いているためとみられる。国債残高全体は4.2%増の940兆円。海外投資家保有分の占める割合は8.7%に上昇した。国内銀行や保険会社などが保有する国債も4.6%増の616兆円に拡大した』
こうした海外勢が保有する日本国債は、たいていの場合、短期国債です。一方で、長期の国債を好むのが国内の生命保険会社となります。上図は、日本銀行調査統計局発表の資料から作成した所有者別の伸び率(対前年同月比)の推移を示したものです。図からは、家計、一般政府・公的金融機関の減少が目立つ一方で、海外、中央銀行(日本銀行)の保有残高が大きく増加していることを読み取ることができます。もっとも、国内の金融仲介機関の伸び率が小さくなったかといえば、決してそうではなく、保険が8.8%増、国内銀行が11.1%増とかなりペースで増加しています。
2012年6月末時点で179兆円を保有する保険会社は長期の契約で保険資産を運用していることから、比較的に安定した資金であるといえます。一方で、146兆円を保有する国内銀行は、貸出金などの伸び率が低下している結果、運用する対象が日本国債に限定されていることが背景にあります。従って、国内銀行が国債で運用している資金は、比較的安定しているものの、一部は景気の動向に左右されることが考えられます。これらに対して、海外勢は逃げ足が速いことに特徴があります。それは、海外勢はほとんどを短期の国債で運用しているからであり、利回り上昇による価格変動リスクがない代わりに、趨勢が円安方向へと転じた場合、海外勢主導による日本国債の積極的な売り、そして、それがさらなる円安をもたらすこととなります。国債に関して、楽観的な論者が多いという気がしますが、私は楽観的ではありません。
2014年4月に消費税率引き上げが5%から8%へと引き上げられた後が危ないと考えています。これは、価格的に大きい住宅、自動車、家電製品など耐久消費財を購入が進み、景気は着実に良くなる一方で、資金需要の拡大から国内銀行が保有する国債の残高が減少する可能性もあるからです。家計も、積極的な消費のために預金を取り崩し、かつ団塊の世代のほとんどが年金受給者となっている2014年〜2015年当たりはとんでもない事態になっている気がします。海外勢は、円安の流れが決定的となれば、資金を海外へと持ち去ることとなり、円安傾向に拍車がかかる上、海外勢が国債を売却することで国債利回りが急上昇することが予想されます。
0 件のコメント:
コメントを投稿