2012年9月19日水曜日

景気との連動性あり、低下する米国の合計特殊出生率

 どうも米国の合計特殊出生率が低下し始めたようです。先進主要国では唯一、人口の維持に必要な2.1をキープしていたのですが、失業率の高止まり、経済成長率の低下を背景に2を下回るまでに低下しているようです。合計特殊出生率とは、女性が出産可能な年齢を15〜49歳までと定義し、それぞれの出生率を出し、足し合わせることで人口構成に伴う偏りを修正、女性一人が産む子どもの数の平均を求めたものです。ニュースでもよく報道でされ、「1人の女性が生涯に産む子どもの数」と言ったりもしています。
 日本では2.1どころか、2005年には1.26にまで低下、少子高齢化の問題が叫ばれている中でちょくちょくと話題となっていました。幸いなことに、日本の合計特殊出生率は、1.26を底に期近の2011年には1.39にまで回復しています。一方、2012年9月10日付『実力をつけた韓国経済と沈没する日本経済』のブログの中で躍進を続ける韓国経済について書きました。そのブログは、今の韓国経済には、独創性、独自性がやや欠如しており、この点が韓国経済にとっての死角があるという結論で結びました。しかし、もう一つ死角があるとしたから、この合計特殊出生率の低下です。2009年のデータですが、韓国の合計特殊出生率は1.15にまで低下しています。原因は分かりませんが、38度線で北朝鮮と対峙している韓国は、徴兵制度により多くの若者ががかり出されています。急速な人口減少は、高齢化とともに、労働人口の減少を招くことで、日本よりも深刻な事態で招く恐れがあります。
 合計特殊出生率の低下は、女性の社会進出や晩婚化によりもたらされると言われていますが、やはり経済情勢の悪化も低下の要因と一つであるといえます。それが顕著にあらわれたのが、米国での合計特殊出生率の低下です。右図は、日米の合計特殊出生率の推移を示したものです。米国経済の景気の絶頂期である2007年の2.12をピークに大きく低下し、2010年では1.93にまで落ち込んでいます。2008年9月には、リーマン・ショックが起こっていることから、特に失業率の高止まりが影響しているものと推測されます。
 この主因は、「産み控え」という減少であり、経済環境が好転するまでは回復はしないとの見方もあるようです。この米国の合計特殊出生率に関しての記事が『週刊エコノミスト』2012年9月18日号に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『米国経済崖っぷち。生産性の鈍化や高齢化で劣化し始めた米国経済』です。以下引用文。
 『出生率の低下は先進国共通の話題だが、米国だけは例外とされてきた。
 ところが、その米国で出生率の低下が報告されている。米疾病管理予防センター(CDC)によると合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数)は、リーマン・ショック前の07年をピークに低下が続き、10年には人口の自然減につながる1.93%まで低下した。また、出生数も431万人をピークに減少が続いている。
 主な原因とされているのが、ヘザーさん(記事の冒頭に説明あり)のような景気の先行きを懸念しての「産み控え」だ。出生率の低下は、足元の経済成長に悪影響を及ぼすことはもちろん、将来的な成長期待を低下させ、需要の減少、物価の下落などを引き起こす。その典型例が、少子高齢化が急速に進み、デフレ社会に突入した日本だ。米国でも、このまま低出生率が続けば、GDPの7割を占める個人消費を直撃しかねない』
 記事では、3人目の子どもをあきらめる米国人女性を紹介していました。3人目が問題になることに驚くとともに、女性の社会進出が日本よりも進んでいるとされる米国では、子どもを持つことへの要求は強く、素晴らしいことだと感じました。もっとも、今の米国経済は、「日本化」という問題が叫ばれています。長期金利の推移が日本と近似していることから、そのような指摘があるのです。しかし、失業率が高止まりし、経済成長がさらに鈍化すれば、日本と同様な事態になり、少子高齢化が、さらなる経済の悪化をもたらすといった可能性も否定できません。経済危機を発端に起こった少子化が、さらなる経済危機をもたらすという悪循環から、今の米国はいち早く脱することが求められるのです。この点では、人口の多い中間所得層を重視、高所得者に対する課税強化を打ち出しているオバマ大統領の政策方針の方が、ロムニー氏の政策よりも、長期的には米国経済にプラスであるといえるでしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿