2012年9月27日木曜日

韓国の長時間労働と女性の雇用問題

 先日、NHKのニュース番組『ワールド Waveトゥナイト』(注1)を観ていましたら、韓国の労働問題について報じていました。報道によると、韓国では、小型トラックを使用した移動販売が流行っており、起業する人々が増加しているといった内容のものです。
 この影響もあって、韓国では小型トラックの需要が増加、新車では2〜3ヶ月待ち、中古車もよく売れているそうです。色々な移動販売があって面白そうなのですが、対象の品目にはコーヒー、日用雑貨、ゴルフ、骨董品など幅広くあり、中には刃物類の研磨のサービスをしている移動販売あります。この移動販売の増加の背景には、もちろん韓国における雇用問題が背景にあります。特に、若者の雇用問題は深刻であり、番組では就職活動で苦戦する若者の姿が映し出されていました。しかし、韓国では依然として長い労働時間で知られており、OECD加盟国でもトップクラスにあるという矛盾があります。つまり、サムスン電子、LG電子、現代自動車など国際的に活躍する企業がある一方で、それら有力な企業に就職できている人々とできない人々との間での格差が拡大しているという実態が浮かび上がってきます。上図は、OECDホームページに掲載の主要国の年間労働時間の比較を示しています。日本は1,733時間とOECDの平均である1,775時間を僅かですが下回っています。これに対して、韓国は2,193時間とOECD平均を大きく上回っているばかりでなく、調査対象となっている国々の中では、メキシコに次ぐ第2位になっています。この長い労働時間をより公平にシェアできれば、韓国の雇用問題はある程度解決することが考えられます。もっとも、詳細なデータを追っているわけでないため、労働時間が長い人々の方が賃金が安いということも推測されます。
 韓国の長時間労働に関する記事が『週刊東洋経済』2012年9月15日号に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『長時間労働、賃金格差・・・、「雇用の質」は最低』です。以下引用文。
 『OECD(経済協力開発機構)が発表したリポート「2012年雇用見通し」によると、韓国の雇用環境について、失業率は世界金融危機前の水準に回復したものの、「雇用の質」は調査対象国の中でも最低水準であることが明らかとなった。
 労働時間はOECD加盟34カ国中2番目に長く、加盟国の平均を2割以上も上回る。一方、所得階層別の賃金格差も拡大しており、男女間の賃金格差は加盟国で最も大きい。近年はパートタイムをはじめとする非正規雇用者数も増加しており、所得格差は固定化しつつある。
 正規雇用者の平均年収は昨年、実質購買力ベースで日本を追い越すなど、経済成長を背景に急速に拡大してきた。他方、低賃金労働者の割合は高まり、社会問題化している。脆弱な社会保障制度が低賃金労働者を増やしている側面もあり、政府は厳しい課題に直面している』
 女性の雇用に関する記述がありましたので、同じOECDホームページで調べてみました。右図は主要国の15〜64歳の女性総人口に占める雇用者の割合を比較したものです。グラフでは、韓国はイタリアを上回るものの、掲載国9カ国の中で下から2番目となっています。これは、女性の社会進出を間接的に表すデータでもあり、立ち後れている韓国の雇用問題を示しています。また、元データでは、調査対象36カ国(注2)中で27番目で、下位にはポーランド、スペイン、スロバキア、ハンガリー、チリ、イタリア、ギリシア、メキシコ、トルコがあるだけです。ここで面白いのは、OECD加盟国の中で最も長時間労働であるメキシコが、トルコに次いで女性の社会進出が遅れていることが読み取れ、長時間労働と女性の社会進出には関連があるのではないかと考えています。
 女性の社会進出が進めば、出生率が低下すると考えがちですが、実態は逆です。米国なども高く、女性の社会進出が最も高いとされる北欧諸国では、高い水準を維持しています。因に、ウェブ掲載データですが、スウェーデンは2.00をやや下回っている程度です。右図はアジア主要国の合計特殊出生率の比較を示したものです。韓国は1.24と、日本の1.39を大きく下回っているのが分かります。図にして意外だと思ったのは、シンガポールと台湾です。現在、シンガポールでは国をあげて出生率の回復に努めている一方で、台湾の低落ぶりはどうしたものかと感じるとともに、特殊な要因があると考えています。
(注1)2012年9月20日報道。
(注2)OECD以外の国が含まれているため。

0 件のコメント:

コメントを投稿