またかという印象です。破綻したエルピーダメモリの後を確実に追っているルネサスエレクトロニクスを、産業革新機構やトヨタ自動車など官民が上げて支援するようです。私は、そもそもの設立母体であるNEC、日立製作所、三菱電機のうち、どれかの企業が、丸抱えでマイコン事業を引き受けるべきであったと考えています。従って、そのようなスキームでの処理ができない限りは、いくら出資しようとも結果は失敗することは目に見えています。理由は、従業員のモラルです。高コスト故、人員・人件費の削減などを実施する必要があり、それが直接に響くのはもちろんですが、同社のトップの責任やビジョンの欠如が、従業員の心理に影響していることは否めないと思います。やはり、今回の出資に参加、かつ事業本体がしっかりしており、財務体質も良好な特定の企業の傘下に入れるべきです。候補としては、財務体質が良好なトヨタ自動車などが考えられます。もっとも、マイコン事業は、各企業のノウハウが詰め込まれた点で、中立的である必要もあり、トヨタ自動車の完全子会社となれば、他の自動車メーカーの発注が激減する恐れもあります。ならば、パナソニックが候補になりますが、赤字を出し続けており、液晶パネル事業の再編に取り組んでいることから厳しいといえるでしょう。そこで、自動車製造には直接事業に絡んでいないこと、自らがCMOSなど半導体事業を既に手がけている上、リーマンショック以降も黒字を出し続けているキャノンが、適当ではないかと思っています。
ルネサスエレクトロニクスの株価は元々は10,000円近かったものが、期近では250円前後にまで下落しています。そして、現時点での同社の時価総額は1,000億円程度にとどまっており、企業規模が大きく縮小していることが伺えます。リーマン・ショック前後にキャノンは、1,000億円程度の自社株買いを数度行っており、購入した自社株を使って株式交換によりルネサスの買収は可能です。また、同社が保有している現金等同等物、つまりキャッシュでルネサスの全株式を直接購入し、完全子会社にすることもできます。自動車製造に関連しないこと、財務体質が健全なこと、本業がしっかりしていること、半導体事業に既に取り組んでいることから、キャノンがベストと考えています。
このルネサスエレクトロニクスに関する記事が、2012年9月22日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。マイコンの市場規模は、2011年で159億ドルです。そのうち、ルネサスの市場シェアは27%ですので、売上高は40億ドルを少し上回る程度です。1ドル=80円として売上高3,000億円強の企業に対して1,000億円もの出資はあり得ない話ですし、期近で出した600億円の赤字も信じられない額といえます。早急かつ抜本的な改革が求められるのは当然として、自動車用のマイコンで市場シェアは高いものの、市場規模のそのものの小ささには驚きを感じます。記事の題目は『ルネサス、官民で買収。革新機構・トヨタ・パナソニックなど。年内1000億円超出資』です。以下引用文。
『業績不振の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスに対し、トヨタ自動車やパナソニックなど日本の製造業の代表する企業が、政府系ファンドの産業革新機構と組み、1000億円超を共同出資をする方向で調整に入った。すでに交渉中の米投資ファンドへの対抗策をつくり、年内に過半数の株式取得を目指す。ルネサスは車や家電を制御するマイコンで世界首位。基幹部品の安定調達に向け、官民挙げて異例の支援体制を組む。出資企業としては日産自動車やホンダ、キャノン、ファナックなどの名前が挙っている。自動車部品メーカーではトヨタ系のデンソー、ホンダ系のケーヒンのほか、世界大手の独ボッシュなど海外勢にも出資を求めている。第三者割当増資などにより産業革新機構と合わせて1000億円超を出資し、ルネサスを共同買収する方針だ。現在、革新機構が中心になって出資案を策定中。10月中にもルネサス株主のNEC、日立製作所、三菱電機の3社や、三菱東京UFJ銀行、みずほコーポレート銀行など主力取引行に正式提案する見通し。マイコンは車や家電製品、産業機械などに多く使われ、モーターなどの動きをきめ細かく制御するなど頭脳の役割を果たす。ルネサス製は長期間使っても性能が劣化せず、最先端品は他メーカーでも代替が難しい』
出資する各社は、リストラ費用などの負担は負いたくないが、他社メーカーに独占されるのは望ましくないというが本音でしょう。こうしている中、米アップルのiPhone5がついに発売されました。アップルと韓国サムスン電子の訴訟合戦の中、アップルはサムスン電子からの調達比率を引き下げていることを記述した記事をよく新聞や雑誌の中で見かけます。しかし、今回のiPhone5の心臓部であるCPU、A6チップはサムスン電子に委託生産されたものだそうです。ルネサスが製造するマイコンも、耐久性の面で優れていると言われているものの、生産の遅延や開発能力の低下などの問題が顕在化すれば、その市場へと参入できる大手半導体メーカーは海外には数多くあります。サムスン電子なども着実に実力を上げてきており、製造規模で対応できる唯一の企業である故、対立関係にあるものの、アップルはA6チップをサムスン電子に任せたと思われます。エルピーダの処理に失敗し、ルネサスの処理に失敗しつつある現状を踏まえれば、どこかの日本企業1社の傘下に入れる方向で処理を進めるべきです。そして、その有力な候補としてキャノンがあると考えています。
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