スペイン経済に危機が迫っています。同国は、ユーロ導入国の中でドイツ、フランス、イタリアに次ぐ4位の経済規模を有します。ギリシャとは異なり規模が大き過ぎることから、処理に失敗した場合、ヨーロッパ経済全体に与える影響は甚大であり、早急かつ慎重な対応が求められているところです。もっとも、ヨーロッパ、特にユーロ圏諸国も一枚岩ではなく、支援に懐疑的なドイツなどの思惑もあって、対応が後手に回っていることが否めません。
スペイン経済は、過度な財政緊縮策により経済成長率が今後も低下することが予想されています。ユーロ統計局発表の資料によると、2012年マイナス1.8%、2013年マイナス0.3%と2年連続のマイナス成長という見通しとなっています。2011年のプラス0.4%とかろうじてプラス成長となっているものの、予測が的中した場合、2009年以降、スペイン経済はほとんど成長していないことになります。そして、これがさらなる税収の減少をもたらすという悪循環を生じさせ、結果、財政赤字の拡大に歯止めがかからなくなっています。そして、歳出カットは、公務員の人件費の大幅削減へとつながっており、失業率が高止まるという結果を招いています。
バブルに沸いたスペインの金融機関も危機を迎えており、第4位のBankiaが破綻するなど、金融機関への資本注入にも、スペイン政府は財政支出で対応していきました。しかし、この点においては、ユーロ圏の合意により救済基金により直接資本注入できるようになったため、スペイン政府の負担増とはならなくなりました。しかし、財政赤字額は依然として巨額であり、対GDP比率では、2010年と比べてやや改善しているものの、2011年にはマイナス8.5%と高水準にあります。
そして、欧州経済は9月〜10月にかけて日程が詰まっており、欧州債務危機は、正念場を迎えています。2012年9月1日付朝日新聞朝刊に、スペインに関連して欧州経済の9月危機について記述している記事が掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『欧州経済、危うい9月。スペイン、地方財政悪化』です。以下引用文。
『夏休み期間は穏やかだった金融市場で、欧州危機に対する不安が再び高まってきた。スペインでは地方財政の悪化や不良債権問題がくすぶり、南欧諸国への救済策をめぐるユーロ圏各国の足並みも乱れたまま。多くの火種を抱え、欧州危機は「秋の陣」に突入する。(中略)スペインのラホイ首相が30日、ユーロ圏への支援要請に慎重な発言をしたことがきっかけになった。金融市場は、ユーロ圏でつくる救済基金や、欧州中央銀行(ECB)がスペイン国債を買い支える支援策に期待しているが、ドイツなど支援する側には慎重論が根強い。スペイン自身も支援の見返りにさらなる緊縮財政を迫られることを警戒しており、「お見合い」が続く。スペインの財政危機に拍車をかけているのが地方財政の悪化だ。東部バレンシア州は30日、中央政府に財政支援を要請する額が45億ユーロ(約4430億円)を超える見通しだと明らかにした。同国最大のカタルーニャ州も50億ユーロの支援を求めるなどの動きが相次いでいる。巨額の不良債権にあえぐ銀行救済という喫緊の課題もある。スペイン政府は経営難の銀行への資本注入を検討しているが、そのお金はユーロ圏の救済基金から借りざるを得ず、政府の借金がふくらんでしまう』
9月6日には、欧州中央銀行理事会が開かれ、南欧国債の買い入れ再開策を検討されるのを皮切りに、12日には緊縮財政路線の是非が争点となっているオランダ議会選挙が行われます。そして、同日には、ユーロ圏の救済基金が合憲かをどうかを判断するドイツ憲法裁判所の判決が言い渡されます。ここで、ドイツが試されることとなります。ドイツ憲法裁判所が、仮に違憲という判断を下したのならば、ユーロ圏に激震が走ることは必至です。8月30日のロイターによると、ドイツ政府経済諮問委員会(5賢人委員会)メンバーのラルス・フェルト氏は、ユーロ圏が完全崩壊した場合、ドイツの国内総生産(GDP)が最大で10%が失われること、ギリシャがユーロ離脱に追い込まれただけでも企業に大きなリスクをもたらすとのことを警告したようです。ドイツ国民の中でも立場な違いから、支援するか、支援しないかで異なった意見があります。しかし、ユーロ圏の外にいるものにとっては、ユーロの完全な崩壊は是が非でも回避すべき問題であると一致している気がします。
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