わが国の衰退を象徴する問題として、いつもクローズアップされるのは、既に減少へと転じている人口と、その高齢化率の急激な上昇です。そして、生産年齢人口が大幅に減少する一方で、65歳以上の人口は今後大幅に増加することが確実な状況にあり、早急に対策が求められるところです。もっとも、日本が鎖国をしていた江戸時代の人口が3千万人程度です。技術が劇的に進歩している中で、そこまで日本の人口は減る必要はありませんが、自国で食料が十分に賄うことができる程度にまで減ったとしても、国土の狭さを考えれば、特段不思議ではないとは思っています。
しかし、産業界からは、労働人口の減少は労働力不足を生じさせ、国内需要の減退とともに、企業そのものが弱体化する可能性を示唆する声が多い気がします。一方で、人口がある程度減少すれば、人口密度は劇的に低下し、少しは住みやすい世の中になるという可能性もあります。東京など大都市圏では、人口は過剰にまで集中、通勤だけでもかなりのストレスを抱えている人々が多いと思われる中、ゆとりある生活を取り戻すには、ある程度の人口減少はやむを得ない気がします。つまり、私は、人口減少そのものは深刻な問題ではないと考えているのです。そして、目指すは、ヨーロッパの中でも豊かとされる北欧です。人口規模に比して広大な国土は、人々に豊かさを体現させる最も有効な手段であるのです。しかし、そこに至までには乗り越えなければならない深刻な問題があります。それは、団塊の世代などの引退に伴う急速な人口構成の変動です。今のペースで高齢化が進めば、現役世代への負担は多大ですし、肉体的に過酷な労働を強いられる介護の現場では人手不足になることが十分に予想されます。
特に、問題となっているのが、認知症のお年寄りの急増です。右図は厚生労働省推計のデータです。認知症のお年寄りの数は急激に増加しており、当初の推計よりも10年も早く300万人を超えたことが判明しました。今後も増加傾向を示し、8年後には410万人に達することが予想されており、認知症のお年寄りを受けている施設が足りなくなる恐れが指摘されています。2012年9月5日付NHK午後7時のニュースでは、この問題について詳しく報道していました。厚生労働省が、打ち出した5カ年計画の柱は、「早めの診断や治療により症状を抑え、家族の負担を軽減し、自宅で療養できるお年寄りの数を増やす」という内容です。
これをフローチャートにしたのが上図です。対策は、①地域ごとに支援チームを設置し、認知症の早期発見と継続的な治療の実施、②早期診断可能な医療体制の確立、③自宅で介護が困難なお年寄りに対する施設受け入れ人数増の3つの柱で構成されています。専門家は、何よりも早期発見の大切さを指摘しており、病状の進行を和らげる治療薬等も開発されていることから早期発見できれば、家族や社会への負担も軽減できるとしています。報道は、早期治療の重要性と家族だけではなく、地域で支えるという点を強調する内容になっており、好感の持てる内容でした。
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