2012年9月15日土曜日

シリコンウエハーで活躍する信越化学工業とSUMCO

 現在の私の一番の関心事が、パソコンやスマホなどIT関連機器ですので、ブログの話題の取り上げ方にやや偏りがある気がします。今日も何度か言及したことがある半導体シリコンウエハーに関することで、信越化学工業とSUMCOの業績について少しばかり書きます。
 この一連のブログでは、ソニー、パナソニック、シャープなど家電製品やAV機器を製造・販売するコンシューマーサイド、つまり川下側に位置する企業が、苦境に陥っていることを度々記述しました。そして、円高が定着する中で、これら業種の企業は、国内での空洞化は避けられないものの、企業が生き残るためには、海外への進出を主軸においた今後の経営方針が求められます。ならば、川上側に存在する企業は安泰なのかといえば、決してそうではないのです。典型的な素材メーカーであり、世界シェアも高い、半導体シリコンウエハーを製造・販売するSUMCO、信越化学工業の業績が決して良くないことが分かってきました。まずは、ホームページ掲載の決算短信から両社の売上高の推移を示してみました。上図によると、2007年度をピークに、SUMCO、信越化学工業とも売上高が大きく減少していることが読み取れます。リーマン・ショックの影響は大きく、売上高は、07年度のピークからの比較ではSUMCOは48.0%減、信越化学工業は23.9%も減少しているのです。これは、海外での需要の減少及び円高による採算性の悪化が考えられます。
 そして、もっとひどいのが、営業利益です。信越化学工業はやや持ち直し感があるものの、SUMCOに至っては09年度、10年度と2年連続の営業赤字へと陥りました。信越化学工業が持ち直したとはいえ、同社の営業利益はピークの2007年度の半分程度まで落ち込んでいます。ところで、同時期の信越化学工業の売上高は23.9%減少であったのですから、営業利益の減少が如何に大きかったかが分かりますし、同社の営業利益の減少が売上高の減少に原因とするものではなく、円高等による採算性の悪化ではないかと推測されます。
 ところで、SUMCOの業績回復に関する記事に2012年9月8日付日本経済新聞朝刊に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『SUMCO、49億円黒字。2〜7月最終。半導体ウエハー堅調』です。以下引用文。
 『SUMCOが7日発表した2012年2〜7月期連結決算は、最終損益が49億円の黒字となった。前年同期は13億円の赤字で、2〜7月期としては4年ぶりに黒字化した。スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の需要拡大で半導体用シリコンウエハーの販売が底堅かったうえ、不採算の太陽電池向けウエハーからの撤退も損益改善に寄与した。
 売上高は前年同期比19%減の1086億円。スマホやタブレット(多機能携帯端末)の需要が伸び、半導体用シリコンウエハーの販売は底堅く推移した。同社の主力品は高機能半導体などに使う直径300mmのウエハーが中心でニーズが高い。ただ、前年同期は震災直後に取引先が在庫確保のためにウエハーの調達を急増させ、今年はその反動が出て全体としては販売数量が減少した』
 改めて、両社の規模を考えていると、川上に位置する企業であり、世界市場でのシェアも高いことから、規模の大きい売上高と高い営業利益が予想していました。しかし、蓋を開けてみると売上高規模もたいしたことなく、営業利益率も普通の企業遜色ががないということが認識できました。右図は、信越化学工業のセグメント別の売上高と営業利益の全体に占める割合を示したものです。営業利益の%と売上高の%を比較した場合、営業利益>売上高となっているセグメントが相対的に利益率の高い分野が大きいといえます。図をみていると、塩化・化成品など汎用品の利益率が極端に低下していることが、別のセグメントでの営業利益がプラスとなっている主因であること分かります。
 2012年の従業員数は、信越化学工業が16,167人であるのに対して、SUMCOでは8,328人と大きく開きがあり、今後は、SUMCOが取り巻く環境が厳しくなることが予想されています。同社と信越化学工業の業況に一段として開きが発生することになるでしょう。川上に位置する業態にあっても、継続的な研究開発を進めるとともに、競争力のある製品を世に送り出さない限り、衰退は目に見えているのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿