毎月催されている欧州中央銀行の理事会で、南欧諸国の国債を無制限で購入することが大筋で合意されました。これを受けて、欧米各国の株式相場が大きく上昇、特に、2012年9月6日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均が続伸し、約4年8ヵ月ぶりにリーマン・ショック後の高値を更新しました。このダウ平均の上昇の背景には、8月の非農業部門の民間雇用者数が前月比20万1,000人増加、予想を上回る内容であったことがあります。これまで足を引っ張っていた雇用関連の指数が持ち直しつつあるものと判断もあり、投資心理が徐々に改善しているようです。
右図は、6日から7日にかけての世界の金融市場の変化についてのフローチャートで示したものです。ECBの発表を受けて、市場がそれを好感し、南欧諸国の国債利回りが低下(価格は上昇)するとともに、欧米の株式相場が大幅に上昇しました。一方で、これまで、買われ過ぎとも言われていた米国やドイツなど格付けの高い国債が売られ、利回りが上昇(価格は下落)する状況となりました。翌日のアジアの株式市場は、ユーロ、米ドル高、そして欧米の株式市場の高騰を好感して、大きく価格を上げるという相場となり、特に、8月、9月の日経平均株価の下落幅は大きく、株式市場は錯綜していたところにやっと底値がみえてきた感が出てきました。やはり、米国は着実に回復している中で、ポイントとなるのは、欧州の債務危機の回避に向けたスキームがどのように合意できるかであり、この問題の早期解決こそが、今後の世界経済を決めるといっても過言ではないでしょう。
とろこが、このブログの書いている最中に、米雇用統計が発表された旨のNHK報道がありました。2012年9月7日付日経新聞夕刊では、雇用統計が予想を上回ったという内容だったのですが、NHKの午後9時のニュースでは、思わしくない米雇用統計が発表されたというものです。同報道によると、8月の米国の失業率は8.1%と前月と比べて0.2ポイントの改善にとどまったこと、景気の動向を示す重要な指標である非農業部門の就業者数は9万6,000人となり、市場予測の13万人程度の市場予測を大きく下回ったとのことです。そして、来週にも開かれる米FRBのFOMC(公開市場委員会)で追加の金融緩和が決定されるのではないかとの思惑が出てきており、2012年9月7日午後9時50分時点で78円台前半へと円高、ドル安方向へと一挙に動きました。そして、記事と報道の内容をチェックしていると、日経新聞夕刊の雇用統計は、米雇用サービス会社オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)のものであり、米労働省発表のデータでないことが判明しました。同種の雇用統計なのに、全く違う結果となっていることに驚きを感じるとともに、これに市場関係者が確実に反応しているという事実は、統計データとは一体何であるかという疑問を持ってしまう結果です。
ECBの理事会に関する記事が、2012年9月7日付読売新聞朝刊に掲載されてしましたので紹介します。記事の題目は『ECB、危機回避へ山場。金利据え置き、国債購入策も発表』です。以下引用文。
『欧州中央銀行(ECB)は6日の理事会で、ユーロ17カ国に適用する政策金利を過去最低の0.75%に据え置くことを決めた。一方、理事会後の記者会見で、ドラギ総裁は新たな国債購入策を発表する見込みで、ユーロ圏はスペイン危機を回避できるか、大きな山場を迎えている。ECBは2010年5月以降、市場からギリシャなどの国債を買い入れてきた。8月末時点の保有残高は約2085億ユーロ(20兆6000億円)に上る。しかし、ユーロ圏の一部の政府や中央銀行からは、①通貨を無制限に刷って国債を購入すれば、ユーロの信認を損ねる②保有国債が債務不履行に陥ればECBの財務が痛み、ユーロの信頼が揺らぐ③購入対象国の財政再建努力が緩む、などの批判を受け、3月半ば以降は購入を休止している。ECBが新たな購入策を発表するのは、購入に一定の条件を設けることにより、購入対象国にも自助努力を求めるとともにECBのリスクを減らし、こうした批判をかわす狙いがある。購入再開に反対しているドイツ連邦銀行(中央銀行)に理解を求めたい考えだ』
私は、ECBで購入が決定したものと思い込み、このブログを作成しました。しかし、新しい情報、詳しい記事の内容のチェックをしているうちに、買い入れ策を発表しただけで、まだ、決定事項ではないということが分かりました。よく「市場が判断する」といった類いの言葉が、金融市場の分析では使われます。上述の通り、雇用統計の一つをとっても全く違う結果となるということが、よく理解できるとともに、相場の結果が全く違うことになる可能性は十分にあります。リアルタイムで市場動向に関して書くことは難しい作業だと感じました。因に、上図は、上記の読売新聞記事に掲載された図表を元に作成した、スペイン救済のフローチャートです。これは、決定事項ではなく、ドイツ政府やドイツ連邦銀行の強い反対を受けて、頓挫する可能性が十分にあります。今後のECB、スペイン、ドイツの動向に注視したいと思います。
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