ユーロ相場を今後の行く末を決定づけるであろう大きなイベントが無事に終わったようです。それは、独憲法裁判所によるESM合憲に関する審議とオランダ総選挙です。まず、独憲法裁判所は、ESMへの資金拠出に対して合憲であると判断しました。その結果を受けけか、ユーロ相場はやや持ち直しているようです。
しかし、2012年9月11日には、スペインで最大の経済規模を誇るカタルーニャ州の州都バルセロナで150万人が参加する自治権拡大を求める大規模デモが行われました。州側は「州の課税権を拡大すれば財政再建は可能」であると主張、スペイン中央政府との対立が表面化する事態に陥っています。つまり、余談は許さないというのが実情であるものの、南欧諸国を支援する側であるESMが、独憲法裁判所の判断を受けて10月から発足することが決まったことは朗報です。これに関する記事がNHK NEWS WEBに掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『ESM 独憲法裁判所が合憲判断』です。以下引用文。
『ヨーロッパの信用不安対策の重要な柱で、ユーロ圏の各国が資金を出し合う新たな基金「ESM=ヨーロッパ安定化機構」について、ドイツの憲法裁判所は、資金の拠出は合憲だとする判断を示し、ESMは、近く最大の出資国であるドイツでの承認を経て、来月にも発足する見通しとなりました。ユーロ圏では、財政状況の悪化した国を支援する「ESM=ヨーロッパ安定機構」という新たな基金の発足に向け、各国の承認手続きが行われてきたが、ドイツでは、与野党の議員などが「ESMへの資金の拠出は議会の予算権を侵害し、違憲だ」などとする訴えを起こしたことから、承認が見合わせていました。12日に開かれた審理で、連邦憲法裁判所のフォスクーレ裁判長は、ESMへの資金の拠出について、「憲法に違反しないという結論に達した」と述べ、合憲だとする判断を示した』
ESMについは既に活動しているものと思い込んでいましたので、まだ発足していない事実を知り驚いた感があります。日本や米国などでは、金融危機が勃発した際には、速やかに中央銀行の資金提供と政府による財政支援が決定されました。これは、ヨーロッパのように国が違うとなると対応が遅くなるということを教えてくれる事実であり、資金を拠出する側、受け入れ側双方に問題があり、欧州債務危機は根深いということがよく理解できます。
そして、もう一つのイベントがオランダの総選挙の結果です。2012年9月13日日本時間午後10時時点ですが、単一通貨ユーロを尊重する2党で過半数を占め、オランダが危機対策などを大幅に修正する可能性は低くなったそうです。オランダ総選挙に関する記事が2012年9月13日付日本経済新聞Web刊速報に掲載されていましたので紹介します。記事の題目は『オランダ総選挙、首相率いる中道右派が優勢か』です。以下引用文。
『【ハーグ=御調昌邦】オランダは12日、下院選を実施した。地元メディアによると、ルッテ首相率いる中道右派の自由民主党(VVD)が僅差で野党・中道左派の労働党を抑え、第1党を維持する見通しだ。上位の2政党は、基本的に欧州連合(EU)や単一通貨ユーロを尊重する政策を掲げており、同国が危機対策などを大幅修正する可能性は低くなった。ただ連立交渉には不透明な要素も残っている。オランダでは今年4月に財政再建策をめぐる政党間調整が不調に終わり、政権基盤が崩壊して下院選が実施されることになった。選挙の直接的な原因となった財政政策が最大の争点となった』
因みに、野党の労働党は、EUの基本政策を重視しながらも、国内の緊縮策の緩和などを主張してきました。しかも、前回選挙を10議席上回る勢いで議席を獲得しており、今後、連立交渉が難航することが予想されます。一方で、緊縮策に強く反対する左派の社会党は改選前と同数の15議席にとどまり、加えてEUからの離脱が掲げる極右の自由党は大幅に議席を減らす見通しです。ドイツとオランダ両国の財政状況は比較的に安定しています。上記2つの結果は、ユーロ存続にはプラスであるものの、ドイツで違憲を申し立てた与野党議員やオランダの総選挙の実施の背景には、南欧諸国に対する支援拡大に反対している人々が、両国には少なからず存在することを示しています。オランダで再び総選挙という事態となれば、これは欧州債務危機の再燃を意味しています。既に、この債務危機は、欧州内での解決は不可能な状況に陥っており、それらに属さない米国、中国、そして日本などが本格的に支援をする必要が出てきているのかもしれません。そうなれば、IMFが問題解決を主導、容赦のない財政再建が求められることとなります。
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